舞い落ちるイチョウの葉に包まれて

作者:なちゅい

●綺麗な落ち葉を見ていたら……
 島根県にある閑静な住宅地。そこに、イチョウの並木道がある。
 11月にもなり、その道はたくさんのイチョウの落ち葉が舞い落ちている。その光景は実に幻想的にも思えてしまう光景だ。
「しばらくこうして見ていたいわね」
 買い物袋を両手に下げた松倉・綾は、木の葉が幾重にも振り重なるその道を眺める。
 とはいえ、ボーっとしているわけにもいかない。自宅のパン屋で使う買出しを頼まれていたのだ。すでに買い物を終えていた彼女は、家路を急ぐ。
 そんな綾の背後に、葉を翼のようにして背負う、紫の衣装を纏った少女の姿があった。
 少女が近場のイチョウの木に謎の花粉を振りかけると、その木はめきめきと音を立てて異形化して動き始めた。
「えっ……?」
 突然、襲い掛かってきたイチョウの木。足が竦んで動けなくなった綾は蔓触手となった枝に捕らわれてしまい、その木の幹に取り込まれてしまう。
「自然を破壊してきた欲深き人間どもよ。自らも自然の一部となり、これまでの行いを悔い改めるがいい」
 葉の翼を持つ少女は攻性植物。鬼薊の華さまは動き始めたイチョウの攻性植物を一度見上げた後、その場から消えていったのだった。

 ヘリポートのあるビルの外。
 すでに秋は深まり、舞散る落ち葉が季節の移り変わりを実感させる。
 ケルベロス達は風に吹かれるその葉を目にしていると、その近くにリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が立っていた。
「奇遇だね。依頼説明を聞きに来てくれたのかな」
 彼女はイチョウの葉を手に取って物思いに耽っていたが、他にもケルベロスが集まってきたことを受けて表情を引き締める。
「イチョウの攻性植物が見つかったって話だな」
 久堂・悠月(悠久の光を背負うもの・e19633)の言葉に、リーゼリットは頷く。彼女は周囲の一般人に聞こえぬよう配慮しながら、予め視た予知について語り出す。
 現場は、島根県某所の閑静な住宅地。
 さほど人通りの多くないイチョウの並木道に、植物を攻性植物に作り替える謎の胞子をばら撒く人型の攻性植物が出現するという。
「その胞子を受けたイチョウの木が攻性植物に変貌して、近くにいた女性を宿主にしてしまうんだ」
 取り急ぎ現場に向かい、この攻性植物を倒して欲しいとリーゼリットは話す。
 攻性植物は1体のみ現われ、配下などはいない。戦いではクラッシャーとして攻撃を行い、蔓触手、実弾、舞葉という3種の形態を使い分けて攻撃してくる。
 取り込まれた女性は攻性植物の幹と一体化しており、普通に攻性植物を倒すと共に命を落としてしまう。
「救出を目指すなら、相手にヒールを掛けながら戦う必要があるよ」
 そうすることで、戦闘終了後に攻性植物に取り込まれた女性を救出できる可能性が生まれるのだ。
 なお、現場は比較的人通りの少ない並木道ということもあり、近隣の人々も避難を行っている。到着直後に、簡単な人払いを行うだけで問題ないだろう。
「あと、人型攻性植物の姿はその場にはもうないようだね」
 そちらも対処したいところだが、今は現れたイチョウの攻性植物の対応に尽力したい。
 依頼としては攻性植物の討伐だ。被害の拡大だけは避けなければならない。
「ただ、攻性植物に寄生された人も救出したいとなれば、簡単なことではないよ」
 リーゼリットは説明に加え、語る。皆で連携をとって辛抱強く戦うことが、女性の救出に繋がるはずだ、と。
「それでは、行こう。皆の活躍を願っているよ」
 彼女は最後に、信頼するケルベロス達へと微笑みかけたのだった。


参加者
アリル・プルメリア(なんでも屋さん・e00097)
安曇・柊(告罪天使・e00166)
スレイン・フォード(ロジカルマグス・e00886)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)
シェーロ・ヴェントルーチェ(青空を駈ける疾風・e18122)
久堂・悠月(悠久の光を背負うもの・e19633)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)

■リプレイ

●欺瞞による被害者
 島根県某所。
 閑静な住宅地に降り立ったメンバー達は、現場へと急ぐ。
「鬼薊の華って攻性植物は、植物全ての代弁者のつもりみたいです、けど……」
 おもむろに、やや不安げな表情をした童顔の青年、安曇・柊(告罪天使・e00166)が口を開く。
「自然からの罰を気取る心算か? ……気に喰わぬ」
 金のストレートヘアを靡かせるロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)は、怪訝そうに顔をしかめて。
「受ける必要もない罰を与える等、只の暴行に過ぎぬ。断じて、思い通りになどさせてなるものか」
 罪と罰について、ロウガは思うことがあった。不当な罰や、その名を借りた人型攻性植物による欺瞞を彼は許せずにいる。
「そもそもデウスエクスで侵略者です、し、普通の植物でもないんですよ、ね……」
 柊は改めて、その素性を認識していたようだ。
「……文明活動が自然を切り崩したというその論は、正しいのやもしれない」
 スレイン・フォード(ロジカルマグス・e00886)は表情を崩すことなく、人型攻性植物の主張に一定の理解を示す。
「しかし、その正論を通して維持できる社会ではない。……生憎ではあるが、押し通るとしようか」
 まして、その論者がデウスエクスであればなおさらだと、スレインは語った。
「くぁ~、またぞろヘンな植物が出て来たのオチ」
 真面目に語るスレインの後ろで、赤いペンギンの着ぐるみに身を包むヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)が声を上げる。
「こう言う雑草はサクッと燃やし、銀杏をつまみに一杯と行きたいのオチね~」
「そうだね、無事終わったら銀杏集めでもしようかな。……その前に、何とか無事に助け出さなきゃだね」
 何でも屋店長のアリル・プルメリア(なんでも屋さん・e00097)は、寄生された女性の為にと着替えを用意して来ている。
 気に入ってくれたなら、お店に来てイロイロと選んでもらうのもいいとアリルは話すが、その場合はお客としての対応とのことである。
 そんな一行は程なく、イチョウ並木へと足を踏み入れた。
 舞い散るイチョウの葉は無残に切り裂かれ、幻想的な光景は見る影もない。
「季節の風情が台無しじゃねーか、どこのパニック映画だよ」
 現場の惨状に、久堂・悠月(悠久の光を背負うもの・e19633)が悪態づく。
 その後ろからは、顔面の半分を大きな瞳が描かれた布で覆った、葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)が「キヒヒ♪」と怪しげな笑みを浮かべ、現場周辺にテープを張り巡らせていた。
 そして、通りの中央には、暴れ狂う攻性植物の姿がある。その幹には、寄生されて取り込まれてしまった女性の姿が……。
「さーて、ちゃんと助けられるように頑張らないとな……」
 青年にも見えるが、まだ子供っぽさを残すシェーロ・ヴェントルーチェ(青空を駈ける疾風・e18122)。彼にとって、今回はウィッチドクターになってから始めての依頼だ。
 知り合いのウィッチドクターのことを思い返しつつ、シェーロは気合を入れる。
「いくよ、悠月の兄ちゃん」
「ああ。折角の綺麗なイチョウ、嫌なまま終わらせるのは惜し過ぎる」
 親しい間柄のシェーロに声をかけられた悠月も、女性を見つめて構えを取った。
「絶対倒して、助けてみせる」
「あ、あの……、がんばります」
 捕らわれの女性を救う為に。柊も周囲を見回しながら仲間達へと声をかけ、攻性植物へと立ち向かっているのである。

●仲間と共に救出を
 根を動かしながら、ケルベロスへと向かってくるイチョウの攻性植物。
 そいつは高く広げる枝をまるで触手のように操って、襲い掛かってくる。
 やや怯えた様子を見せていた咲耶が真っ先に札を取り出し、それに封じられた呪を解き放つと球状の雷が現れる。
「雷纏いし精霊を、振り切れぬ物はないと知れ!」
 攻撃に関しては素人丸出しの咲耶だが、それをなんとか操って攻性植物へと飛ばす。
 高い追尾性能を持つ一撃は巨体を捉え、その身を灼いていく。
 敵の蔓触手の前に立ちはだかるのは、一行の盾役となるヒナタだ。
 子ペンギン達を引き連れるヒナタは歌って踊り、相手を挑発しつつ取り出したバスターライフルからエネルギー光線を発砲する。
 それは、攻性植物の上部、枝葉を貫く。この後、戦いは長期戦となることを踏まえ、ヒナタは敵の火力を少しでも削いでおこうと考えたのだ。
 実際、直後に敵の蔓触手を受けて腕を縛られていた彼だが、思ったよりはダメージがなかったようで。
「くぁ、ザ~ンネ~~ン。その攻撃は通らないのオチよ」
 それでもなお、ヒナタは相手に対して堂々と胸を張っていた様子だ。
 まだ、攻撃役メンバーはいると判断し、ロウガは攻性植物に……そいつに捕らわれた女性の体力を気遣い、回復へと当たる。
「舞うは許しの花、癒しの円環――祝福の五色、其の身に宿りて闘う力に――全てはやがて還る刻(イノチ)の為に――」
 オラトリオのロウガが髪に咲かせた薔薇。そこから赤、蒼、紫、黒、白の花びらが舞い、幹の女性を包み込む。
 色とりどりの花びらには、ロウガが時空制御能力の一端を込めており、相手の体に働きかけて傷を癒す。心地のよい薔薇のアロマによって、女性の表情が幾分か和らいでいたようだ。
 ただそれは同時に、寄生主である攻性植物を活性化させることにも繋がる。
「あの……、あの人の為に、強く……」
 この場にいない大切な人を想う柊は竦みかけた足を気合で動かし、ウイングキャットの冬苺と共に攻性植物の動きを止めようと動く。
「……えぇと、その、気をしっかり持ってください……」
 聞こえないかもしれないと思うものの、それでも彼は女性へと呼びかけずにはいられない。
 そして、冬苺が投げ飛ばす尻尾のリングに合わせ、柊は流星の蹴りを見舞う。複数の枝にリングが絡み、さらに強い衝撃を受けて攻性植物がほんの一瞬動きを止めた。
 ただ、チームの火力として立ち振る舞うスレインは、じっと敵を見つめていて。
(「私が出しゃばり過ぎても失敗するだろう」)
 確かに、攻性植物を倒しさえすれば、依頼としては成功だ。
 だが、それで女性を救出できなければ、それはスレインにとって、チームとして失敗でしかない。
 この場はひとまずドラゴニックハンマーを構えた彼は、轟竜砲を打ち込むことで相手の動きの阻害に当たる。
 続くシェーロは攻性植物へと魔術切開を行い、ショック打撃を行いつつも女性の傷を塞ごうとする。
 まだ慣れぬグラビティではあるが、そこはケルベロス。シェーロは見事に縫合し、女性に活力を与えて見せた。
 そんなシェーロを後方から目にする悠月は、その場で斧を取り出す。
「コア・イグニション 《動力炉点火》」
 その斧に備わった動力炉を起動させて自らの力を高めた彼は、周囲へと魔法陣を展開して。
「悠久の光を今ここに……。こいつは効くぜ! ブラストグロウッ!!」
 そのまま悠月は前方に眩い光を発し、刃を振り下ろす。
 メリメリと裂ける大木の音。ダメージは決して少なくは無いが、仲間達が女性の体力を見てくれている為か、すぐに危なくなる状態ではなさそうだ。
「みっくん、やりすぎちゃ駄目だからね、注意だよ」
 続き、アリルは攻撃にと飛び出すミミックのみっくんに呼びかけると、小さくその身を縦に揺らしたみっくんはエクトプラズムで作った武器で殴りかかる。
 アリルもそれを認め、蔓触手に腕を縛られたままヒナタを解放すべく気力を撃ち出す。
 そこで、攻性植物は一斉に、自身に実る銀杏の実を銃弾のように発射してくる。
 ヒナタ、アリルが防御態勢でそれを凌ぐ横で、みっくんもまた態勢を低くし銀杏の弾丸を堪える。
 それが止むと、メンバー達は再び、攻性植物へと攻撃と回復を再開するのだった。

 イチョウの攻性植物は、自身を主張するように葉を幅広の刃に飛ばし、ケルベロス達を切りつけてくる。
 それらの攻撃はしっかりと、前線メンバーが受け止めてくれていた。
「ガルド流見習い武術、せんせの手刀の真似!」
 アリルは手刀を振り下ろして仲間に喝を入れ、ヒナタも子ペンギンと共に歌って踊る。
「くぁ、さ~、ステキなステージを見せてやるのオチね~」
 謎のショーではあったが、しっかり癒されるのが不思議なグラビティである。
 それでも、広範囲に渡る攻性植物の攻撃はケルベロス達の体を深く傷つけて行く。
 長期戦に臨んでいたこともあり、回復役として立ち回る咲耶の援護なしではとても耐えられなかっただろう。
「皆の怪我をぜぇんぶ治しちゃおうねぇ」
 符術を使い、咲耶は仲間の回復に全力を尽くす。
 リングを嵌めた手で咲耶の投げつけた符が盾となって仲間を守り、次の敵の攻撃直後は繋がれた符を鎖のようにして魔法陣を描き、仲間の傷を癒す。
 対して、攻性植物の攻略を目指すメンバー達。
 ジャマーとして立ち回るロウガ、シェーロの2人は女性の体力を気遣い、その回復を中心としてグラビティを繰り出す。
 薔薇の花びらを舞わせ、芳香を漂わせて寄生された女性を癒すロウガ。その命が第一と考え、彼は立ち回っていた。
 そんな中、女性の体力が十分と見れば、攻性植物を弱らせる為にとロウガも攻撃に出る。
「理無き神の刻、調停の下に命ず!! その動きを停めよ!!」
 古代語を紡ぐ彼の手から、魔法の光線が放たれる。攻性植物の根元へとそれは命中し、僅かにその身体を石のように硬直させた。
「ここはこっちで回復するよ」
 シェーロはできるだけロウガと連携し、戦いを進める。
 万花繚乱【森羅天煌】≪スフィア・フローラリア≫を携えたシェーロは祝福と癒しを宿した矢を放ち、女性の体を射抜く。その矢は光となって女性の体内へと吸い込まれ、弱る彼女の力として転化した。
 当然のごとく、攻性植物まで力を取り戻してしまう。そいつはまたも蔓触手となった枝でメンバーを締め付けようとしてくる。
 翼猫の冬苺が身を呈してそれを受け止める横から、柊が飛び出した。
「あの、いきます……」
 シェーロの回復で破邪の力を得た力を霧散させるべく、柊はチェーンソー剣から発するモーター音を直接攻性植物へと浴びせかける。
「えぇと……、もう少し、あと少しです」
 音を止め、柊はさらに女性へと呼びかけ続けていた。
 さらに、反対側からスレインが躍りかかる。仲間の援護は受けていたが、傷が思ったより深いと判断した彼は体内のエネルギーを電気エネルギーへと変換していく。
「冷却材となってもらおうか」
 跳躍したスレインは敵の枝を強く殴り付け、エネルギーを一挙に放出する。そうしてクールダウンした彼は発熱していた傷をも塞いでいたようだ。
 その後も交戦が続く中、ケルベロスは女性の体力の維持に努め、攻性植物の活力を削る。
「かいふくー、かいふくー……そろそろ助けられる……かな?」
 前線で耐えるアリルが自身や仲間の回復にと、地獄化した翼を広げたタイミング。
 みっくんの被りつきを受け、攻性植物の幹から女性の体が若干剥がれかけてきていたことにアリルは気づく。
「アリル! サポよろしく!」
「おっけー、よろしくー!」
 アリルが救出できると判断して悠月の呼びかけに応じ、腕に巻きつけた攻性植物を蔓触手形態として相手を縛りつけて行く。
 そうして動きを制した敵へ、悠月は稲妻を纏った槍で敵の根元を貫いた。
 イチョウの攻性植物は大きく態勢を崩しかけたものの、トドメには僅かに届かない。女性の体はほぼほぼ木から剥がれているのだが……。
「くぁ、さ~てそろそろ……締めと行こうのオチね!」
 ヒナタも相手のダメージ回復を意識して立ち回っていたが、ここぞと仕掛ける。
 バスターライフルの砲塔を突きつけた彼は、攻性植物のグラビティを中和し、枝が分かれる部分目掛けて光線を発射していく。
 宙を飛ぶ光の筋が消えると、攻性植物の体に大きく風穴が穿たれていた。
 そいつがそのまま後方へと崩れ去っていくと、寄生から解放された女性は前のめりに倒れる。
 そこに、駆け寄った咲耶が女性の体を支えると、スレインは女性の無事を確認して一息ついていたのだった。

●降る木の葉は万人に等しく
 戦場跡となったイチョウ並木へと、柊は祝福の矢を撃ち出し、ロウガは光る盾を展開していく。
 光る矢と盾はひび割れた道路を埋めて行き、幻想によって舗装された道にはらり、はらりとイチョウの葉が舞い落ちてきた。
 そして、救出した女性、松倉・綾へ、シェーロは施術を行う。体力を取り戻した綾が目を覚ましたのを見て、柊が呼びかける。
「えぇと、あの、動けますか?」
 綾はこくりと頷いて身を起こす。すると、彼女は攻性植物に襲われたときのことを思い出して、表情を陰らせた。
「大丈夫ぅ? 怖かったろうけど、もう心配いらないからねぇ」
「災難だったな、もう安心だ」
 同じく、咲耶、そして悠月が笑いかけつつ元気付けると、周囲の修復を終えたロウガもこの場へとやってきて。
「略奪の為の欺瞞に過ぎぬことだ。そなたに、降る罰などありはしない」
 ロウガのフォローを受け、綾はええとスッキリしないながらも納得するよう言い聞かせていたようだ。
「お急ぎの買い出し中だったみたいですし、その、ご自宅まで荷物、持ちます」
「そうだねぇ、お家まで送り届けようかぁ」
 柊と咲耶は、アリルの用意した服に着替えた綾を彼女の自宅であるパン屋へと連れて行く。
 その間、スレインは人型攻性植物の現れた並木道の調査を行っていた。
 花粉など、何か形跡、物証があればと考えた彼だったが、残念ながらそれらしきものは発見できなかったようだ。
 そばでは、ヒナタは楽しそうに地面に落ちた銀杏を拾っている。
「くぁ~、今晩のおビール様のおつまみのオチよ」
 戦いによる被害で潰れた銀杏もあったが、それでも、彼は小腹を満たせるくらいの量は拾えていたようだ。
 同じく、アリルもまた銀杏を集めていたのだが、その後ろから悠月がそっと近づく。2人はアリルが店長、悠月が店員という間柄だ。
 アリルの頭上へと、悠月はイチョウの葉をぱらぱらと落としていく。
「ははっ、アリル秋バージョンだな! いい感じだぞ?」
 彼女の金髪に咲くプルメリアをイチョウが引き立てるように彩る。それに悠月が笑うと、銀杏を集めるアリルが頬を膨らませて。
「悠月くん、ふざけてないで手伝ってよー! 銀杏たくさん集めて一儲けするんだから」
 そんな彼女を手伝うべく、微笑む悠月も銀杏を拾い始める。

 見上げれば、黄色の葉がとめどなく落ちてくる。メンバー達は時間が経つのを忘れ、そんな幻想的な光景を眺めていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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