秋に咲く向日葵絶対許さない明王!

作者:林雪

●秋は紅葉だろビルシャナ
『秋ったら紅葉だろぉー! 他に見るものなんかないだろぉー! コスモスだの彼岸花だの、あげくの果てに向日葵なんか……ちーがーうーだーろーっ!』
 そう叫びながらビルシャナが訪れたのは大分県のとあるファームの花畑。温暖な気候を利用して植えられた2万本もの向日葵が、今の季節に開花を迎えているのだ。
『秋ったらこう、切ない感じに赤とか茶色の葉っぱがヒラヒラ……っと散る風情が最高なんだ! 向日葵みたいなノー天気な花は却下! 無理! ていうか、ちーがーうーだーろー!』
『そうだそうだ! 向日葵はちがう! 秋は秋らしく!』
 ビルシャナに洗脳されてしまったらしい、数名の男女が囃し立てる。ちなみにそう叫んでいるビルシャナの身体は向日葵色に近い黄色の羽毛で覆われているのだが。
『散るがいい! 秋にそぐわぬ元気一杯の向日葵め!』
 叫ぶやビルシャナは孔雀型の炎を放ち向日葵畑を火の海に変えてしまったのだった。

●向日葵を守れ
「秋に咲く向日葵が許せないビルシャナが現れたよー……またピンポイントに許せないんだなあ」
 ヘリオライダー、安齋・光弦が呆れた風にそう言った。この事件を調査していたルルゥ・ヴィルヴェール(竜の子守唄・e04047)も、短く息を吐いて口を開く。
「秋に咲く向日葵なんて、とっても素敵なのに。紅葉が綺麗なのもわかりますけど、だからって向日葵が許せないっていうのは……そっちの方がよっぽど許せません」
「ねー、本当だよルルゥちゃんの言う通りだよ。てなわけで、現地は大分のファームにある花畑。地元の人たちがお散歩に来てたりするから、花畑で先に待ち構えてさくっと倒すのがいいんじゃないかな。ついでに向日葵も見物できるよ」
 向日葵畑に出現するビルシャナは1体、だが厄介なことに、このビルシャナの主張に賛同して信者となってしまっている人間を4人連れている。
「4人はすっかりビルシャナのサーヴァントみたいな気分でいるみたいだけど、生身の人間だから。戦闘になる前に説得して欲しい」
 基本、ビルシャナの無茶な言い草に共感してしまうような人たちなので、理屈や正論よりも、インパクトのある説得が有用なようだ。
「向日葵のすばらしさを訴える、とかかな? あとは……秋だって切ないばっかりじゃないとか?」
「そう言われると難しいですね。赤い葉っぱが好きなんでしょうか……イチョウなんかは秋だけど黄色ですしね?」
 光弦とルルゥが色々ツッコミどころをあげる。
「まあ、やり方はみんなに任せるけど、この人たちが説得出来ないまま戦闘になっちゃうと、当然君たちの邪魔をしてくるから不利になるよね。本気で攻撃したら簡単に死んじゃうし。なるべく強引にでも説得出来るといいね。もし説得に失敗しちゃってもビルシャナさえ倒せば彼らは元に戻るから、救出は可能だよ」
 資料によれば、信者の4人はそれぞれ秋に対してこだわりがあったり、夏の向日葵にトラウマがあったりと、これまたかなり個人的な因縁で信者化しているらしい。
「彼らは戦力としてはまあ、邪魔だなあくらいなものだけど。ビルシャナ本体は炎に氷、あと催眠術も使うみたいだから油断はしないでね」
 ビルシャナ化した人間を元に戻すことは出来ないが、無意味に花畑が荒らされ、一般人にも被害が及ぶ可能性を放置は出来ない。ルルゥがきっぱりと言った。
「こんな理不尽な理由で、向日葵の花を散らすわけにはいきません。守ってあげましょう!」


参加者
アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772)
ルルゥ・ヴィルヴェール(竜の子守唄・e04047)
華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)
水無月・一華(華冽・e11665)
暁・万里(呪夢・e15680)
宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)
モモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)

■リプレイ


 秋から冬へ、紅葉から落葉、季節はどことなく物悲しい景色へと移り行く頃だが。
「うわぁ……」
 自分の背よりも高く伸びた、立派な向日葵を眩しげに見上げてルルゥ・ヴィルヴェール(竜の子守唄・e04047)が思わず感嘆の声を漏らした。今日は晴天、間近で観る向日葵もさることながら、一面を覆い尽くす黄は、最後に残った夏の名残のようでもある。
「すごい! すごい! この季節にこんなに咲いてるなんて!」
 ウイングキャットのアナスタシアとともにキャッキャウフフ感を出しているのは華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)。今回の灯の作戦のカギとも言えるのは、何を隠そうこのアナスタシアである。黄金色に輝く毛並み、何よりも尻尾で揺れる向日葵リング。ビルシャナ如きの暴論は捩じ伏せる勢いで挑む。
 陽光の照る花畑、心地よい風が頬を撫でていく。この状況で、オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)が眠気を誘われないはずもない。向日葵色の髪を持参の大きな羊のぬいぐるみに埋めて、しばしの午睡。仲良しのテレビウム・地デジも勿論一緒である。
「……やはり、間違いないですね……」
 モモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)も、めっちゃカッコイイ顔をして腕組みし、見事な花畑を見つめていた。黄色、波打つ黄色……この色が相応しいのは『彼ら』しかいない……! 力強い確信を得たモモコの黒い瞳がキラーンと輝く。
 一方、少し離れた木陰では。
 髪を後ろに纏め一見短髪風に、体には何やら白い布を巻きつけた装いの水無月・一華(華冽・e11665)が不安げにセリフをおさらいしていた。
「ああ心配です……上手に出来るかしら……でもきっと万里くんと一緒にやれば大丈夫……大丈、ぶ?」
 いつもなら笑って優しく大丈夫だよ、と言ってくれるはずの暁・万里(呪夢・e15680)、だが今の彼の表情は鬼気迫るものがあり、その装いは思い切り腰を搾りウエストラインも美しい黄色のマーメイドドレスである。今回、一華と万里は信者説得の為に小芝居……否、壮大なオデッセイを演じるつもりなのである! 気合いが入っている!
 思い思いに敵を待ち構える、向日葵畑のその真ん中で。
「狂い咲く桜だってある。秋に向日葵……いいものじゃないか」
 黄色い輝きの中に静かに馴染む黒髪を靡かせ、宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)が景色を見渡しながら、なぁアレクセイ、と隣を歩く青年に声をかける。
「秋といえば秋薔薇でしょう?」
「はい、薔薇な。うんごめん知ってた」
 相手が向日葵許さないでも蒲公英許さないでも、アレクセイ・ディルクルム(狂愛エトワール・e01772)は全くブレない、薔薇ガチ勢の男である。薔薇の姫君のために生きる男なので仕方ない。
「寒空の下にも可憐に美しく、清楚に一段と香り高く咲き誇る秋薔薇……愛しき我が姫の如きあの美しさを解せぬとは嘆かわしい」
「うん、秋薔薇いいよ俺も一番好きなのは薔薇だ、綺麗だし可愛いし堪んないよな、わかる。だが! 今は! 向日葵! な!」
 美しく微笑みを返すアレクセイだが、これは全然話を聞いていない顔だ、と季由には手に取るようにわかる。頭上で主と似ても似つかぬ体形のウイングキャット・ミコトがちょいちょい通りすがりに向日葵を食おうとするのを止めながら、俺がしっかりしないとダメだ……と気合いを入れなおす。
 ふと、何かの気配を感じ取ったのか、オリヴンが翡翠色の双眸をぱちりと開き、身を起こした。次の瞬間。
『ちーがーうーだーろーっ!』
 平和な花畑を劈く、かん高い声が響き渡った。
『そうだ! 向日葵はちがう!』
 続いて、複数の人間の声。今回の敵、秋に咲く向日葵絶対許さない明王と、その信者の登場である!
 ちょうど畑の入り口で大声で向日葵批判を始めてくれたため、ケルベロスたちは彼らをあっさりと取り囲むことが出来た。
「こんな見事な向日葵の、何が違うって言うんですか」
 ルルゥが珍しく声を厳しくする。
「種を植えてここまで大きくして、全部一斉に咲かせるのは大変なんですからね。庭師さんたちの苦労を無駄にさせませんよ」
「そうです! 例えお天道様が許しても、このもふもふキャットが黙ってません! 尻尾の向日葵リングが目に入らぬかです!」
 灯の言葉に合わせたかのように、アナスタシアがくるりと回って尻尾を見せる。
『黙れ、こうるさいケルベロスども! お前らの相手は、こーいーつーらーがー! するッ!』
『お任せ下さい!』


 すっかり正気を失った感じの信者4人が、ビルシャナの前に立ちはだかる。それぞれふたりとサーヴァントでの説得開始!
『あ、暑ぅ……せっかくウザい夏が過ぎて涼しい秋が来たのに、向日葵なんか見てるだけで暑くなって、こんなに汗が出てきちゃったじゃないか……!』
 夏の暑さの象徴、向日葵が許せない信者の男、真木がフーフー言いながら汗を拭く。そこまで太めというわけではないが、既に脇汗がすごい。
「真木さん、向日葵を見て連想するなら、夏の暑さじゃなくて夏の青空にしましょう!」
 ルルゥが、空の美しさ爽やかさを思い起こさせようと、爽やかな声で切り込んだ。しかし。
『フン、青空なんてつまり、晴れてるってことじゃないか! 汗かいちゃうだろ!』
「それだ。だからこそ向日葵はお前には必要なものなんだよ」
 反論に対し、すかさず季由が論点を変えて踏み込む。
『必要? 何が必要だっていうんだ!』
「ヒマワリオイルだよ。なんとこいつは、夏に欠かせない制汗剤の材料にだってなるんだ……お世話になってるだろ?」
『せ、制汗剤……』
 どうやら、相当お世話になっている模様。
「向日葵が秋に咲いている。つまりそれは春夏秋冬、いつでもお前を助けてやる、というメッセージを発しているんだ!」
『向日葵が、俺を助けてくれている、だと……?』
「そうだ。その証拠に花言葉は『私はあなただけを見つめる』」
 早速強引な論法で真木を揺さぶる横では、尾木の説得が始められる。
「聞いて下さい尾木さん。黄色が似合うのは、ビルシャナだけではありませんよ」
 モモコが、ごく静かな声で話し始めた。
『フン、何を言うのかと思えば。この世界で黄色と言えばビ……』
「黄色といえば、この子です!」
 モモコがぬいぐるみを取り出した瞬間、どこからともなくピー、と放送禁止音が鳴った。続けてカッとなんやかんやが光る。
『チュウ……』
 尾木の視線の先には国民的、否、世界的人気を誇る黄色いネズミのぬいぐるみ……。
『待てよぉ女! 貴様かなりムチャしてるし言ってるって気づいてるか!』
「パクり鳥は黙っていてください!」
『お、おまゆう……』
「尾木さんのわからずや! そんなに言うなら……」
『いや俺何も言ってないけど……』
 尾木の戸惑いを余所に、モモコが再びぬいぐるみを取り出した。再びピー、と大きな放送禁止音。何だかよくわからないなりに、自分もぬいぐるみを抱っこして面白そうに眺めているオリヴン。
『クマの……さん』
 尾木の視線の先には国民的、否、世界的人気を誇る黄色いクマのぬいぐるみ……。
「真に黄色が似合うのは、この子です!」
『ぐ、ぐはぁあ!』
 謎のダメージを受けて地に倒れた尾木の元へ、オリヴンがトコトコと歩み寄った。そうして少しだけ身を屈めると、耳元に内緒話のように囁いた。
「尾木さん、向日葵ってね、黄色だけじゃないんだよ。白とか、紫とか、グラデーションだって、あるよ。色んな色があってたまたま尾木さんが見たのが黄色ってだけ、で。しかもビルシャナは黄色しか、ないけど向日葵は沢山色がある分、偉いとおもうよ」
『つ、つまり、ピーさんの方が……』
「向日葵の方が、偉いと、おもうよ!」
 オリヴンが綺麗な笑顔を浮かべてそう言いきった。ガクリ。完全に陥落した尾木は戦意を喪失、ビルシャナの元から立ち去るのだった。一人目説得成功!
 相当ヤバいながら成功を収め、続けとばかりに灯が、切ないポエム女・木下に向けてアナスタシア越しに話し始めた。
「木下ニャん! 秋はセピア色の方が創作意欲が湧くと、貴女は言いニャすが!」
『な、ま、まさか猫がしゃべっ……』
 てると見せかけてるつもりなのこの子? と思った木下だったが、灯は作戦成功、と気を良くし、ますます滑らかに猫語を話す。
「正直それ、普通ですニャ。創作者がそんな普通の感性で良いのですか! いえダメです!」
 反語も交えて絶好調、そこでスッ……と離れ、アナスタシアにおやつのドーナツを与える灯。向日葵の色を模した黄色と焦げ茶の美味しそうなドーナツ、大喜びでそれを食べ始めたアナスタシアから……灯は突然それを取り上げる!
「えっ?! 灯さん?!」
『な、何だこの子……』
 ルルゥと、ついでに説得中の真木までこれには驚いて声を上げ、アナスタシアは哀しい目を灯に向ける。心なしか尻尾の向日葵まで萎れている。
「これ、これですよ木下さん!」
『何よどれよ?! てか、可哀想なことしてんじゃないわよ!』
「咲き誇る向日葵! からの向日葵にゃんこの哀しい目! この輝けるメルヘンな世界の中に潜む一片の切なさを見出してこそ真の創作者と言えましょう!」
 めっちゃ笑顔でドーナツを食べ続ける灯。だがこれは作戦、こうしてシアが哀しいというか怨めしい顔で灯を見れば見るほど、向日葵の寂しい側面を主張出来る……と灯は信じているモグモグ!
『あ、秋は物悲しい季節よ。こんな黄色い花似合わないわ!』
 アナスタシアのしょんぼりした様子を気にしながらも、そう主張し続ける木下に、アレクセイがゆったりと口を開いた。
「秋は物悲しい? ……秋という季節だからこそ薔薇の美しさが引き立た……」
「向日葵。アレクセイ、今は、向日葵」
「向日葵? ああ……向日葵も同じです」
 季由にツッコまれ、薔薇推しの男が向日葵を語り始めた。
「秋の向日葵は、過ぎ去りし日々を思い起こさせる……」
 真っ直ぐに太陽を見つめ咲き誇る、金蜜の髪を靡かせる女神のように美しい姿……脳内に浮かぶ絵は間違いなく彼の愛妻なのだが、ここは説得の為と、甘やかな笑みを木下に向ける。
「顰めっ面をしていないでこの向日葵の様に笑うといい。きっと世界が変わります」
『……っ』
 動揺する木下。同じタイミングでルルゥが真木に向かって微笑みかけてみた。
「真木さん、そうですよ。向日葵は夏の暑さの中でも上を向いて立ってます……同じように空を見てみたら素敵だって思いませんか?」
『……っ』
 もはや真木と木下は陥落寸前、ここだ、と灯が声を張り上げた。
「そう……向日葵も常に明るい花ではない。それを! 今からこのおふたりが見せてくれます!」
 呼ばれて登場したのは、太陽神アポロン役の一華、そして女神クリュティエ役の万里。
『えぇえー?! 何コレ、違うだろー!』
『ビルシャナ様! 私は騙されませんとも!』
 唯一、まだビルシャナに貼りついていた信者の宇都木が悲鳴を上げる。
「ビルシャナでもわかるひまわり講座~」
 妙に気合いの入った化粧とナイスバディ、やたらレベルの高い女装の万理がそう言い、一華が緊張しつつそれに続く。男女配役が逆なのは、芝居でも一華をフるなんて有り得ないからである。
「ギリシャ神話編~……ええ、と。本日のわたくし、イチポ……アポロンです! ぴかぴかしますよ!」
『ぴ、ピカピカ?』
 咄嗟にモモコが先に触れたヤバい黄色いぬいぐるみを出したが、何故かミコトが突然じゃれついて見えなくなった。
「アポロン様! 何故私の愛を受け入れて下さらないの!?」
 万里演じる女神は嫉妬に狂い姉を殺害、恋敵を次々陥れた結果アポロンの寵愛を失い太陽を見つめたまま向日葵になってしまったというストーリー。オリヴンは面白そうに膝を抱いて座って眺めて、信者たちもこの派手なパフォーマンスから目が離せない。
「さてはアポロン様、お姉様のことが好きなのね! おのれあんな女グサァア」
「うそ。突然そんな過激派なんです? ノーですよ、ノー暴力!」
「オッケーお姉様亡き今、あなたの愛は私のもの……まだ駄目? なんで? 他に好きな者でもいらして!?」
「……わ、わたくし、わたくしは……はんぺん派だからです!」
『はんぺん?! どっからはんぺん出てきた?!』
 緊張のあまりセリフが飛び、結果好物をねじ込んできた一華やべえ可愛い、と思いつつ万里がなんとか誤魔化す。
「食い気の前に恋は無力……こうしてはんぺんに負けたショックで何日も立ち尽くし、クリュティエは向日葵の花となりました……というわけで、向日葵は悲恋の花なんだよ。上っ面だけで批判しないで、それにまつわるあれこれくらい調べてよね」
「ポジティブそうというのは宇津木さん、貴女の思い込みでしてよ!!」
 オリヴンと地デジが行儀よく拍手をすると、3人の信者たちも釣られて拍手。『なんかすごかった』というのが洗脳を解いたポイントだった。ルルゥが丁寧に誘導する。
「では皆さん、ビルシャナを退治しますので向こうへどうぞ」
『拍手すんのかよお前ら! ちーがーうーだーろー!』
「さて、無事お帰り頂けたところで、鳥退治といきましょうか」
 アレクセイがIgnazを構え、ドレス姿のまま華麗に配置についた万里が指を鳴らした。
「開幕だ『Arlecchino』」
 戦いがやっと幕を開ける。呼び出した道化の手はビルシャナの黄色い羽根を毟り取る!
「これで思いっきりやれますね」
 と、モモコがイズナを鞘から抜き、斬れ味も鮮やかな一閃を放つ。
「なんか、面白かったね」
 地デジにそう言いつつ、オリヴンがふわふわブーツから星型のオーラを蹴りこむと、向日葵色の羽毛が更に飛び散った。
「宵の風鳴り、猫の声。狙った獲物は逃がさない……!」
 季由の詠唱とともに現れた猫の幻影、そこにミコトとアナスタシアが混じって舞うと、それは向日葵畑の猫の集会のようだった。
「良かったですねシア! お友達が出来ましたよ!」
 灯が楽しげにそう言って、勝利っぽい一撃を叩き込む! 流石にこれで沈みはしないものの、ビルシャナは順調に削れていく。
「否定される向日葵ちゃんの気持ちも考えてください!」
「そうですよ! こんなに一生懸命咲いてるのに」
 一華が青い刃を閃かせれば、ルルゥは今日一番の気持ちを籠めて、陽光を、その陽に向かって咲く花への讃美を歌い上げた。
『おのれケルベロスどもーッ!』
 ビルシャナが自棄気味に放った炎が向日葵を焼いたが、ケルベロスの守りは崩せない。攻撃は容赦なく鳥をひん剥き、とどめをさしたのはアレクセイ。向日葵畑の真ん中、ビルシャナを養分に咲いたのは黒い薔薇。
「向日葵も見直したところですよ」
 最後の微笑は、彼の姫の為に。
 かくして無法者は倒され、畑はケルベロスたちによって修復された。また来る夏への思いを胸に、彼らは夏の名残の向日葵を楽しむのだった。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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