●髪の毛欲しい
「はぁ……はぁ……」
「うぅ……い、痛い……。痛ぃぃ……」
深夜、人気のない道端で、頭を押さえて蹲る女性を見下ろす男が一人。どこにでもいるサラリーマン風の男だったが、その手に握られたのは紛れもない髪の毛の束。
「これで……これで俺も、髪の毛を失う恐怖から救われるんだ。……あぁ、でも駄目だ。もっと、もっと髪の毛を手に入れなければ……」
そう言って、男は女性から力任せに引っこ抜いた髪の毛を口に入れると、そのまま豪快に咀嚼し始めた。髪の毛を食べれば、自分はハゲにならずに済む。そう信じて止まない男の瞳は、既に狂気の色に染まっていた。
●抜け毛病棟
数日後。病院に集患された男だったが、その様子は怯えの入り混じった、見るに堪えないものだった。
「うひぃぃぃっ! 髪が! 髪の毛が2本も落ちているじゃないかぁぁぁっ!!」
部屋の中に、髪の毛が少しでも落ちているだけで大騒ぎ。今に自分がハゲになると騒ぎ、見舞いに現れた親族達にも髪の毛を寄越せと迫る始末。
「嫌だぁぁぁっ! 俺はまだハゲたくない! ハゲたくないんだぁぁぁっ!!」
拾った抜け毛を慌てて口に放り込む男だが、そんなことでは気休めにもならない。その間にも、男の精神は刻一刻と、ハゲへの恐怖によって蝕まれて行った。
●頭髪喪失症候群?
「召集に応じてくれ、感謝する。今回、お前達には、とある病魔を退治してもらいたい」
その日、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)よりケルベロス達に告げられたのは、病院の医師やウィッチドクターの努力で、とある病気を根絶する準備が整ったとの報だった。
病魔の名前は、ハゲロフォビア。体毛、特に髪の毛が失われる事への恐怖を病的に煽り立てる病魔で、取り憑かれると自分の抜け毛に恐怖を覚え、猟奇的な妄想にすがり実行に移してしまうという。
「現在、この病気の患者達が大病院に集められ、病魔との戦闘準備が進められている。お前達には、この中でも特に強力な『重病患者の病魔』を倒して貰いたい。患者の名前は増田・茂(ますだ・しげる)。どこにでもいる、普通のサラリーマンだ」
この機会に重病患者の病魔を一体残らず倒す事ができれば、この病気は根絶され、もう、新たな患者が現れる事も無くなるそうだ。勿論、敗北すれば病気は根絶されず、今後も新たな患者が現れてしまうので、決して油断はできないが。
「この病魔は戦闘になると、『ハゲ』に関わる技を使って攻撃してくるようだな。具体的には……熱光線を発射し、炎で相手の髪の毛を焼き尽くす。ハゲ頭から強烈な光を発射して敵を怯ませる。奇妙な踊りで自らを回復し、同時に妨害能力を高めるといったところだ」
戦う側からしても、精神的になかなか嫌な攻撃を仕掛けてくる。まともに正面から戦うと厄介な相手だが、攻略法がないわけではない。
「今回は、この病魔への『個別耐性』を得られると、戦闘を有利に運ぶことができる。個別耐性は、この病気の患者の看病をしたり、話し相手になってやったり、慰問などで元気づける事で、一時的に得ることができるぜ」
個別耐性を得ると、戦闘時にこの病魔から受けるダメージが減少するので、戦いを有利に進めることが可能となる。重要なのはハゲへの恐怖心を和らげることなんおで、ハゲても問題ないと説得したり、ハゲないための説得力ある知識を披露したりすることで、相手の心を揺さぶることができれば問題ない。
また、その他にもハゲへの恐怖について、優しく話し相手になってあげるだけでも構わない。とにかく、戦う前にいかにして茂をハゲ増し……もとい、励ましてやるのかが鍵である。
「正直、髪の毛の心配などしたことはないんだが……それでも、当人にとっては切実な問題なんだろう。なにより、こんな理由で猟奇的に人を襲うようになってしまっては、誰も救われないぜ。病魔を根絶するチャンス……上手く利用して、確実に撃破してくれ」
病魔のせいで理不尽に泣かされる人が、いない社会を作るのもケルベロスの務めだ。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
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倉橋・鈴花(白桜の花弁・e02647) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
坂口・獅郎(烈焔獅・e09062) |
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468) |
相良・りりこ(目指すはスイーツ系女子・e26710) |
天原・雛菊(未知を見つめ光る瞳・e33733) |
未明・零名(ネームレス・e33871) |
●ハゲに至る病
閉ざされた病室の扉を開けると、そこの隅に丸くなっていたのは、頭を抱えて震える一人の男だった。
増田・茂。不幸にも、病魔・ハゲロフォビアに憑依され、ハゲへの恐怖から奇行に走ることになってしまったサラリーマン。
「失礼するぜ、増田さん。俺達は、ケルベロスだ」
病室に入ると同時に、坂口・獅郎(烈焔獅・e09062)は部屋の片隅で丸くなっている茂るに挨拶をした。だが、対する茂はそんなことなどお構いなしに、目の前の獲物……ケルベロス達の頭髪を狙って飛び掛かろうと身を乗り出して来た。
「ちょっと待ってくれ! 増田さん、この頭……髪の毛生えてるように見えるかい?」
「……えっ? あ、あれ? もしかして……」
慌てて獅郎が制止したことで、茂も少しだけ理性を取り戻したようだ。なるほど、確かに彼の頭に生えているのは髪の毛でも、ましてや獅子の鬣でもない。
「語るも昔、デウスエクスの攻撃に巻き込まれて、髪いっぺんになくなっちまったんだ。おかげで頭はこの有様さ」
どこか自嘲気味に自分の頭部を指差す獅郎。そこにあるのは本物の頭髪ではなく、地獄化によって補われた、燃え盛る火炎のような何かだった。
「それでも、アンタが髪の毛がなくなるのが怖いって気持ちわからなくもないぜ。髪ってほら、一生モンだろ? 何度も抜いたら生えてこなくなっちまうことだってある」
だが、それだけ何度も抜けるということは、何か悩みでも抱えているのではあるまいか。その悩みこそ、頭髪にダメージを与える元凶ではないかと諭す獅郎だったが、茂は未だ震えたままだ。
「悩み……ストレス……えぇ、ありますよ! このまま髪の毛を全部失ったらと思うと、もう夜も眠れないんですよぉぉぉっ!!」
だから、助かる方法があったら、一刻も早くなんとかしてくれ。それが駄目なら、せめて誰かの髪の毛食わせろ。両目を血走らせ、そんなことを平然と叫んでしまう辺り、茂はかなり重症だった。
「禿げること、そんなに怖いかな? あんまり神経質になると、それこそ髪にもよくないし、折角の内面の魅力が見えなくなっちゃうと思うな」
大切なのは、外見でなく内面だ。髪の毛の有無など、それに比べれば些細なこと。そう言って宥める未明・零名(ネームレス・e33871)だったが、ともすれば茂は相良・りりこ(目指すはスイーツ系女子・e26710)の隣に佇むウイングキャットのフサリを凝視し、その身を包む体毛を引っこ抜かんと狙っている始末。
恐らく、茂も頭では解っているのだろう。だが、病魔によってもたらされるハゲへの恐怖心が、彼の理性を奥深くまで侵食してしまっているのだ。
「増田さんはハゲになる事を怖がってるみたいだけど、自分が欠点に思ってる事って、案外他人から見るとチャーミングだったり個性だったりするんだよね。それに、ハゲに怯えてる人より堂々としてる人のほうが凄くカッコイイと思うの!」
「堂々と、ですか……。でも、やっぱりハゲって……その……ネタにされて馬鹿にされるじゃないですか……」
りりこの言葉に少しだけ希望を見出した茂だったが、それでも未だ半信半疑。たかがハゲ、されどハゲ。病魔の影響力というものは、どんなものであっても馬鹿にできない。
「私たちだって、お婆ちゃんになれば皺だらけになるの。本当はちょっとやだなって思うけどね……。でも、外見に関係なく素敵って思えるくらい、中身の魅力的な人になれたらいいなあって思うの。……だよね、マーナ?」
ボクスドラゴンのマーナガルムに同意を求めるようにして、零名が改めて茂に告げた。
人間、どんなイケメンであっても年老いる。その時に、頭がハゲないという保証はどこにもない。ならば、ハゲか否かを気に病むよりも、中身を磨くことが大切だと。
「遅かれ早かれ、人間ってのは人間である限り、老化は避けられないと思うわ。それは増田さんだけでなくて皆一緒なの。だから、増田さんの悩みは、皆同じことを思ってると思うわ」
長い人生の中で見れば、その悩みを抱えるのが少しばかり早いか、それとも遅いかの違いでしかない。その上で、最近は頭がハゲた後の楽しみ方、ハゲとの付き合い方も豊富になっていると、愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)が続けて言った。
「ウィッグで自分の好きな髪型にするのもいいし、スキンヘッドや帽子だって素敵だと思うわ」
頭髪がないということは、むしろウィッグで髪型を自由自在にできるのと同じこと。同じハゲでも、いっそのこと開き直ってスキンヘッドにしてしまえば、それはむしろ清々しいと伝えてみた。
「うぅ……。そ、そんなこと言われても……それは、御老人になってからのことじゃないですかぁ……。俺はまだ、こう見えても20代なんですよぉ……」
もっとも、病魔によって植え付けられた不安は相当のもの。彼女達の激励によって辛うじて理性を保っている茂だったが、しかしネガティブ思考は相変わらず。
20代でハゲてしまえば、彼女もできなきゃ結婚も無理だ。家庭を持てなかったことから会社での評価も下がり、出世もできずにリストラ候補。女性社員からは駄目なハゲとして嘲笑され、なんとか定年まで勤めたとしても、その後は髪の毛を失った頭部と同じく、寂しく孤独に死んでゆくしかないと、茂は光を失った瞳で淡々と語っていた。
「どう考えてもあり得ない事を心配されている……。でも、本人にとっては本当に心配な事……」
あまりに凄まじい論理の飛躍に、聞き役に徹していた倉橋・鈴花(白桜の花弁・e02647)は、本気で茂のことが心配になった。
このネガティブ思考も、病魔のもたらす恐怖心故か。このまま末期まで病状が悪化すれば、今に彼は髪の毛を求めて猟奇殺人に走るか、もしくは自ら命を絶ってしまうかもしれなかった。
「はぁ……はぁ……。あ、頭では解っていても、身体が髪の毛を欲するんですよ……。あぁ……髪の毛……髪の毛……。一本でいいから、誰かの髪の毛を食べないと……」
食毛衝動を必死に押さえていた茂だったが、これ以上は限界に近い。しかし、ここで諦めてしまっては、彼の身に巣食う病魔との戦いが困難になる。
こうなれば、言葉だけの説得ではなく、多少は身体を張ることも止む無しか。衝動と理性の狭間で苦しむ茂を救うべく、ケルベロス達は次なる手段に出ることにした。
●失う恐怖
「うぉぉぉっ! 髪の毛……髪の毛……お前の毛を、食わせろぉぉぉっ!!」
耐え難き食髪衝動に押され、茂は半狂乱になってケルベロス達に襲い掛かって来た。
「仕方、ないですね……!」
暴れる茂を取り押さえるべく、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は彼を抱きしめて背中を擦ろうとした。が、それよりも早く茂の手が伸び、真理の髪の毛を揉み上げから一直線に引っこ抜いた。
「……っ!!」
「あぁ、髪の毛だ……。これで、俺の髪も元通りに……」
なんというか、これは酷い。髪は女の命とも言われるのに、それを強引に引っこ抜いて、あまつさえ食べようとするとは。
「髪の毛が無いのって、誰にとっても怖い事かもですが……私はそんなの気にしないのです」
それでも、ペインキラーで痛みを誤魔化し、真理は茂に笑顔で言った。むしろ、それをネタにして場を和ませられるような人の方が、好感を抱くとも付け加え。
「……ハッ! あぁっ!? す、すみません! つい、取り乱して!!」
自分の仕出かした事に、我に返った茂は大きく頭を下げて謝った。そんな彼の手から髪の毛の束を預かり、彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は改めて尋ねた。
「今は、この髪の毛は差し上げられません。感染リスク等から、あなたを守るために」
毛髪は理容店などで得られるが、しかし病気の治療として提供するのであれば、『医学的な有効性』を把握した上で管理しなければならない。だからこそ、必要なのは情報だ。茂が人の毛髪を見て何を思い、なぜ毛髪を欲しいと考えたのか。その欲求の根源は何なのかと。
「根源、ですか? そんなの、ハゲたくないに決まってるじゃないですか! なんだか知らないけど、髪の毛を食べたら、それが生えて来るような……そんな気がして、仕方ないんですよぉっ!!」
もっとも、病魔によって突き動かされている茂にとっては、細かいことなど良く解っていなかったようだ。
だた、ひたすらに人の髪の毛を欲する。同じ人体の部位を欲するような病気ということであれば、悠乃も似たような症例を知っている。
ヴァーンベーリ氏病。人血を求める欲求と理性の破壊を症状とする希少疾患。だが、病魔がもたらす病という以外には、現段階での共通点を見つけるのは難しかった。
「そんなに髪が食べたいの? ……いいわよ。私の髪を召し上がれ」
ただし、その前に少しだけ話を聞かせて欲しい。そう言って、天原・雛菊(未知を見つめ光る瞳・e33733)は優しく茂に微笑みかけた。
「ハゲは悪くない。自然なことよ。ハゲを笑い、蔑み、偏見を持つ人達が間違っているの。間違ってる人達の為に、生き方を変えてしまわないで」
「うぅ……で、でも、世間にはそういった人の方が多いわけで……」
「茂さんなら、ハゲも似合う。大丈夫、笑って! 清潔感あるハゲは綺麗な女性にモテるのよ」
そもそも、世の中にはファッションとして、敢えて自分の髪を剃る者もいるのである。また、寺の坊主も髪の毛はないが、彼らは蔑まれることもなく、むしろ尊敬の対象として崇められる存在だ。
「み、皆さん、ありがとうございます! なんだか、少しは希望が湧いてきました」
茂の言葉は精一杯の強がりかもしれなかったが、それでもケルベロス達は構わなかった。
人間の身体だけでなく、心を蝕む邪悪な病。それを地球から根絶すべく、彼らは茂の身体に巣食う、ハゲロフォビアを召喚した。
●そのテカり、封じます!
茂の身体から呼び出され、ケルベロス達の前に現れたハゲロフォビア。その姿は、さながら巨大な電球を頭部に持つ、てるてる坊主の化け物だった。
「な、なによ、病魔のあの頭! 髪の毛を生やした事もないくせに、茂さんの気持ちを弄んだというの!?」
あまりにブッ飛んだ姿に別の意味で驚愕の表情になる雛菊だったが、対する病魔は彼女達の気持ちなどお構いなしに、強烈な光を放ってきた。
「わああ! 超痛あぁぁ……って、あれ? 思ってたよりも、痛くないかも」
思わず目を伏せたりりこだったが、予想に反して敵の攻撃の威力は低く、拍子抜けした顔になっていた。
先程、茂の話を懸命に聞いて、彼を励ましてやったこと。それが功を奏して、ケルベロス達の身体に病魔の攻撃へ対する耐性が付いていたのだ。
「いくよ、フサリ! 反撃開始!!」
練り上げた気を光弾へと変え、りりこは病魔へと発射する。フサリも尻尾のリングを敵に投げ付けたところで、続けて零名と瑠璃が床を蹴り、そのまま鋭い脚の一撃を繰り出した。
「後ろは任せたよ、マーナ!」
「プロデューサーさんは、皆のフォローに回ってね」
二つの蹴りが炸裂する瞬間、零名と瑠璃は背中を任せる、それぞれの相棒の名を呼んだ。
マーナガルムのブレスが炸裂し、ウイングキャットのプロデューサーさんが、敵の放った閃光の効果を除去して行く。
「こいつはお釣りだ。一発食らってみろ!」
光る紅葉を纏った指先で貫いて、獅郎が退魔の力を敵の体内へ流し込む。瞬間、その力が病魔の内部を駆け巡り、凄まじいエネルギーの奔流を伴って爆発した。
「……髪の毛……私も、焼かれるのは、やだな。……ツインテール、できなくなったら困りますし、お姉ちゃんがなんていうか」
桜の花弁を雨のように降らせながら、鈴花がフードを深く被り直した。
こんなやつに、大事な髪の毛を焼かれてなるものか。金輪際、人々をハゲの恐怖で振り回すことのないように、ここで確実に根絶せねば。
互いに、一歩も譲らない激しい攻防。ハゲロフォビアの光線は見た目こそ派手だが、耐性を付けたケルベロス達には大したダメージも与えない。互いに応酬を繰り返して行けば、病魔は瞬く間に追い詰められ。
「ただの不安かも知れないですが……疑心、暗鬼を生ずるです。此処で根絶してみせるですよ!」
ライドキャリバーのプライド・ワンと共に、真理が渾身の一斉射!
アームドフォートから放たれた砲弾が、乱射されるガトリング砲の弾が、次々に病魔へと降り注いだ。
だが、ここで倒されてなるものかと、ハゲロフォビアも珍妙な踊りで自らを回復し、粘り続ける。もっとも、あまりにふざけた見た目から、それはケルベロス達に更なる怒りを覚えさせるだけだった。
「まだバカにする気? この愚か者がっ!」
完全にブチ切れた雛菊が、病魔を正面から殴り飛ばした。
割れる電球。砕け散る頭部。その場に崩れ落ちた病魔に対し、最後は悠乃が聖なる楔を叩き込む。
「古の祈り、守りの印、危害を封じる力をここに」
今、この時より封じられ、二度と再び出て来るな。調停者の戒めを全身に受けて、ハゲロフォビアは綺麗さっぱり消滅した。
●輝かしい未来
戦いは終わった。ハゲへの恐怖で人々を蝕む忌むべき病魔は、ケルベロス達の手によって倒された。
「もう、大丈夫ですよ……。髪の毛が抜けること、怖がる必要もありません……」
そっと鈴花が茂に声を掛ければ、先程までの狂気はどこへやら。病魔が退治された今、茂の中からハゲへの恐怖はすっかり消えていた。
「皆さん、ありがとうございました。……あぁっ!? そ、そういえば、髪の毛! 俺、あなたにとんでもないことを!!」
だが、先の戦いの前に真理の髪の毛を引っこ抜いたことを思い出し、茂は真っ赤になって平謝りしていた。
こんな素敵な方の髪を引き抜くなど、謝っても許されることではない。もし良かったら、お詫びに今度、食事でも奢らせて欲しいと。
ドサクサに紛れて好意を示しているようにも見えるが、それはそれ。そんな彼と真理のやりとりを微笑ましく眺めながら、雛菊は静かに天井を仰いだ。
(「こんな私でも……人々の苦しみを見守る事しか許されなかった私でも、これからは誰かの力になれるのね」)
ハゲに対する世間の偏見はなくせない。しかし、少なくともハゲを貶める病魔からは、茂を解放してやることができた。
今は、小さなことからでも、少しずつ。やがて訪れる眩しい未来の為に、それを積み重ねていこうと改めて心に刻み込んだ。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月28日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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