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「ううう、さむーい!」
秦・祈里(豊饒祈るヘリオライダー・en0082)はマフラーに顔をうずめて情けない声を出した。
「最近冷え込むようになってきたわねぇ」
エルヴィ・マグダレン(ドラゴニアンの降魔拳士・en0260)も、白い息を吐きだしながら身震いを一つ。あ、と思い出したように付け足した。
「温泉でのんびりとかできるといいんだけど……」
祈里は、乗った! と言わんばかりに手をたたく。
「それならね、僕おすすめの温泉があるんだよ! ここなんだけど……」
彼が手にしていたのは、旅行情報誌だった。載っていたのは、北海道にある温泉宿。
「日帰りの入浴プランがあるんだけど、どうかな。日ごろ頑張ってるケルベロスのみんなが羽を伸ばすにはもってこいじゃない?」
広々とした大浴場、紅葉の中の露天風呂、そして、休憩室には大きな暖炉。のんびりとした素敵な時間が過ごせそう、と二人はさっそく案内を作り始めた。
「でね、たまにはのーんびり温泉に浸かって、ロッキングチェアに揺られながら暖炉で暖まって……お友達と語り合ったりっていう時間も良いかなって」
エルヴィは、用意したチラシを見せながらケルベロスの参加を募る。休憩室の大きな暖炉では、マシュマロを焼くこともできるらしい。ロッキングチェアで揺られながら読書をするも、大きなふかふかのソファで転寝するもよし、テラスで夜風に当たるもよし。
「最高のリラックス時間にして、身も心もあったまろう! じゃあ、行くよ~!」
祈里は意気揚々とヘリオンへ乗り込むのであった。
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「焼きマシュマロ……」
弦巻・ダリアは顔こそ無表情のままだが、その青い瞳をキラキラさせてひとつ呟いた。
「焼こう!! たくさん!! マシュマロめいいっぱい、くれ!」
ルヴィル・コールディが焼く気満々でそう言うと、秦・祈里がボウルいっぱいにマシュマロを持ってくる。
「美味しいよ~! たーっくさん焼いてね!」
暖炉の火にあたりながら、梯・茲野はそう言えば、と顔を上げる。
「焼きマシュマロってはじめてかも!」
「ふわふわになるねぇ……ちょっとくらげさんみたい?」
八千草・保が焼いたマシュマロを見つめてそう言うと、茲野は頷く。
「ほんとう! くらげさんみたい」
「この間と違って今度は食べられるね」
以前、皆で出かけた海月水族館の事を思い出しながら四人はマシュマロを口に運ぶ。
「食感が面白いね」
「やわらかくて甘くて、とってもおいしいわ!」
淡く焼き色の付いたマシュマロは、口の中に入るとふわっととろけてゆく。
「おおっ甘いな~」
「ルヴィル。はい、あーん!」
茲野に促され、ルヴィルは口を大きく開ける。
「ふふー。おいしい?」
「うめええ」
優しい甘味が染みわたる。
「もう一個焼こう……もっと焼こう」
保がどんどんマシュマロを焼いていく。これがなかなか、止まらなくなるのだ。
「暖かい飲み物に浮かべるのもやってみたいね」
ダリアの言葉に保は頷く。
「あ、ここあに浮かべるのもええなぁ」
良いタイミングでエルヴィ・マグダレンが現れる。
「はいっ。ココア。あっちのカウンターに色々用意してるわよ」
礼を言うと、早速ココアの中へマシュマロを投入した。
「……うん、あまーい感じ。何や、ほっとするねぇ」
「うん、飲み物が濃厚になってとっても美味しい」
そんな面々の傍らでシャーマンズゴーストの苧環がじゃんじゃんマシュマロを焼いている。
「焼いてくれるのは嬉しいけど入れ過ぎたら液体がなくなっちゃう」
「ダリアはんも、ルヴィはんも、たくさん食べてー」
ダリアの器にも、ぽんぽんマシュマロが増えていく。
「あっ、保まで」
もー、と言いながらも、どことなく楽しそうだ。
「ここのはんも、ええ甘さになってるかな?」
うん、と茲野は大きく頷く。
「思わず笑顔になっちゃうわ」
「よーし食べるぞー!」
苧環がもってきてくれたおかわりに、ありがとうなと告げるとルヴィルは食べる速度を緩めずにマシュマロが浮かんだホットミルクを飲み干す。
「ところで……焼いてばかりじゃなくてちゃんと食べてる?」
ダリアはそう問いながら、保へマシュマロを差し出してみた。
「……ん、ふわふわ、美味しい!」
自然に保の顔が近づいてきて、一口でマシュマロをぱくりと食べてしまう。ふんわりとした彼の笑顔が、この場の幸福感を何より物語っていると言えるだろう。
「はぁ……甘くて、あったかくて。しあわせ!」
茲野の幸福なため息と、皆の笑い声があたたかく談話室へととろけていった。
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「温泉気持ちよかったですね、エルスさん!」
ロゼ・アウランジェは、ふーっと息を大きく吐くと満足そうに頬に手を当てる。溜まった疲れも洗い流して、気分もさっぱり。
「寒い日には温泉に限ります」
その言葉に頷き、エルス・キャナリーは答える。
「本当に気持ちいいよね~」
「暖炉でマシュマロを焼けるみたいです! やってみましょう」
芯まで温まり、頬はほんのり上気している。二人は休憩室のふかふかのソファに柔らかなクッションをたくさん詰め込むと、そのふわふわの海にぽふん、と沈んだ。そのまま、暖炉でマシュマロを焼き始める。
「マシュマロって、本当に不思議な食べ物ですねー」
ぷくう、と膨れるマシュマロを見つめ、エルスは両手で持ったカップでゆっくりとココアを啜る。
「そろそろ、出来上がり……?」
「みて、エルスさん! 美味しそうなふわふわ、とろーりな焼きマシュマロができました」
ロゼが嬉しそうに綺麗な焼き色の付いたマシュマロを見せると、エルスも自分の分をとって、ふーふーと吹き、一口頬張る。外はかりっ。中はふわっ。エルスは目を輝かせ、ロゼに同じように焼けたマシュマロを差し出す。
「これ、すごく美味しいの! ロゼ様も一口! あ~ん♪」
そんな彼女の笑顔と目の前のマシュマロに微笑み、ロゼも一口。
「甘くてとっても美味しいです! エルスさんもどうぞ」
お返しに、と差し出すと、エルスも嬉しそうにそれを頬張る。ココアとホットミルクで乾杯して、マシュマロをおかわりすると二人はまた顔を見合わせて笑った。
(「笑顔のエルスさん、とっても可愛いなぁ」)
ロゼはこのエルスの笑顔を生み出した甘い物を『大正義』と確信する。
「えへへ、幸せなの♪」
「心も体もポカポカで、幸せです!」
それは、大切な友人となら尚更。
●
水無月・鬼人は、恋人であるヴィヴィアン・ローゼットの姿をまともに見れずにいた。見慣れない浴衣姿に、ふんわりと染まった頬、乾ききっていない艶やかな髪。
「なんだな。たまには足の伸ばせる温泉てのもいいもんだ」
ふかふかのソファに寄り添って座ると、洗い髪の香りがふわりとこちらにまで香ってなんとなく落ち着かない。
「そういや、暖炉でなんか、マシュマロ焼いてるが……あれ美味いのか?」
ヴィヴィアンが興味深そうに顔を上げるのを見て、鬼人は立ち上がり、マシュマロを手に取る。
「聞いた事はあっても、やった事なくてな」
上手く焼けたらヴィヴィアンに食べて欲しい。そう言った彼にヴィヴィアンは一つ頷いた。
「はい」
心配には及ばず、綺麗な焼き色の付いたマシュマロが仕上がる。
「ふわとろで美味しい……鬼人、焼くの上手だね」
「よかった」
まったりとした時間に、当然のように顔を見合わせてゆるりと微笑みあう。
「いつの間にか、二人で居る事が当たり前みたいになってるけど、これって本当は、特別な事なんだよな」
ふと、そんなことを鬼人がいうものだから。ヴィヴィアンは小さく頷いた。
「鬼人との時間は、一瞬一瞬が大切で、かけがえのないものなの。……それが当たり前になるって、すごく嬉しいことだよ」
――当たり前だけど特別な時間……ずっとそれを、感じていきたいな。彼女の言葉に、鬼人も柔らかく笑んだ。
「だから、少しでも長く、安らかな時を一緒に、な。ヴィヴィアンと一緒だと、心の底から、そう思うよ」
「うん……」
心も、体もぽかぽかと優しく温まっていく。ヴィヴィアンはふんわりと気持ちよくなってきて、その頭をこてん、と鬼人の肩に預けた。
(「ん……?」)
鬼人は微睡む彼女を起こさないよう、そっと肩を貸す。
(「なんだか、眠くなっちゃいそう……せっかく鬼人といるのに、もったいないなあ。でも、少しだけ……」)
夢の世界へ落ちてゆくなか、ヴィヴィアンはそんな風に葛藤した。肩を貸している当人としては、全く不満などなく、
(「こうやって、可愛い寝顔を見られるのも、俺の特権ってな」)
と、満足しているくらいだったが。
――今だけは、この微睡みに身を任せちゃっても、いいよね……?
●
「寒い日に暖かい部屋と温かい食べ物、いいよなあ。のんびり寝られるし読書もできるとか最高じゃねえか」
エリオット・シャルトリューはそう言うと、ロッキングチェアにゆったりと腰かけた。
「……ふう、あったまる」
大きく息を吐き、レスター・ストレインは暖炉の炎を見つめた。
炎が爆ぜて、部屋全体が寛いだ笑い声に満たされる。
「こんな部屋でのんびり読書ができたら最高だね」
そんな二人の間で、エリヤ・シャルトリューは暖炉で揺れる炎をぼんやりと見つめ続けていた。
「エリヤよぉ、お前さん出来上がりが楽しみなのは分かるが、ボーっとしていると危ねえぞ」
エリオットは事情は察していた。けれど、そう言って意識を逸らしたかったのだ。
「……暖かいから、ぼーっとしてた。ごめんね」
儚げな笑みが、揺れる。
「あ、焼けてるね」
美味しそうに焼けたマシュマロを頬張ると、思わず笑顔になる。あたたかくて、美味しくて、解きほぐしてくれるような。
「火傷しないようにね、リーヤ」
「一気に食べると危ないぞ」
二人に言われて、うん、とエリヤは頷く。
「そうだね、ヤケドには気をつけなくちゃ。折角のおいしいもの、しっかり楽しみたいよ」
「ミルクに溶かしても甘くておいしいんだって。やってみよう」
そう言ってレスターがホットミルクにマシュマロを乗せる。
(「ふたりとも屍隷兵関連の依頼で悩んでたから、少しでも気晴らしになるといいんだけれど」)
そう思っていると、
「ホットミルクは安眠効果があるんだったか?」
エリオットが不意に口を開いた。レスターは確か寝つきが良くない。エリオットは知っていたのだ。少しは落ち着くといいな、と。
「辛かったらいつでも言いな、俺は大抵暇しているからよ。話し相手は出来るぜ」
そういって優しく笑うと、レスターもありがとう、と小さく笑う。傍らで、またエリヤはぼんやりと炎を見つめていた。
(「火はなんだか気になるけれど怖いばかりじゃない。火のやさしい面もあるんだよね」)
そんな考えが、ぽつりと浮かぶ。全てを焼き払う炎も、こうして優しく温めてくれる炎も、『炎』なのだ。
(「揺れる火を見ていると不思議な感じ。火が僕の無くし物を教えてくれるかは分からないけれど。何かを語りかけてくるような」)
でも、考えるのは後だ。今は大切な兄弟と友人と、あたたかな時間を過ごしたい。
「リーオ達が生まれ育った家にもこんな暖炉があったのかな、安楽椅子の似合う一家団欒の間……」
レスターは温かな団欒を知らなかった。
「暖炉はあったぜ。家にも少人数の学校にもな。寒い日は丁度今日みたいな感じだった」
あはは、とエリオットは軽く笑う。――何もかも懐かしい。今はもう、帰れない場所。 けれど。その傷をも癒す優しい時間を。
――語らう友と甘いミルクがあれば冬の長い夜も楽しく過ごせそうだ。
●
温泉から上がると、シェリー・シュヴァイツァーと鮫洲・蓮華は揃って休憩室に向かう。メニュー表を持ってうろうろしている祈里を呼び止めると、ココアをリクエストした。
ソファに腰かけてホットココアを飲みながら、シェリーはほうっとひとつ息をつく。
久し振りにゆっくり出来たうえに、素敵な友人と過ごす時間はすごくすごく楽しくて。表情も緩めてリラックス状態である。
「蓮華、今日は誘ってくれてありがとう」
瞬間、蓮華の顔がぱぁっと晴れる。
「良かったー、こういうのきっとシェリー好きだと思って!」
自分の方から誘ったはいいが、本当に楽しんでくれているか少し心配だったのだ。とても楽しい、と言って貰えたことに、安心してほっこりする。
(「いつか自分からも、お返しのお誘いしないとなあ……」)
そう思いながら、シェリーはまたココアを一口。
マシュマロを暖炉で焼いてココアに乗せると、また一段と甘味が増して美味しくなる。ふわふわのマシュマロをはふはふと頬張り、シェリーは傍らの蓮華の笑顔に心まで温かくなるのを感じた。
「あったかい暖炉にこうして寛げる時間ってホントにいいね」
「そうね」
蓮華はほわっと頬を染めながらマシュマロを口に運ぶ。
「こういうホワホワした時間をゆったり過ごすの好きそうだと思ったし、これからちょっとずつ寒くなっていくし……暖かい思い出にしたいなぁって思うんだ」
ね、とシェリーの顔を覗き込むと、シェリーも優しく目を細めるのだった。
「蓮華と一緒に最高の時間を過ごせて本当に良かった。……きっと、思い出すたびに胸があたたかくなるよ」
――もちろん、冬の寒さも軽く吹き飛ばすくらいに。
●
「おいで有理」
鉄・冬真は、ソファの上で優しく手招きをする。招かれるまま御影・有理は彼の元へ向かった。手を取ったその時、ぐっと引き寄せられてそのまま二人同時にソファへ倒れ込んでしまう。
「ふふ、あはは」
思わず笑ってしまって、冬真は小さく謝罪した。驚きはしたが、有理もまさか起こるそぶりなどなく。彼に抱きすくめられるままくすくすと楽しそうに笑っている。
「去年、君は遠くから街の光を見つめていたね。けれど今はその光の中にいて……そんな君の隣に僕がいられる。だからとても幸せな気分なんだ」
冬真がそう言うと、有理は一つ頷いた。
「去年は想像もできなかった。こんなにも光に満ちた場所にいるだなんて」
――こんなにも、貴方を愛してしまうなんて。
有理は、じっと冬真の瞳を見つめる。
包み込んでくれる腕、優しい瞳、そして穏やかな笑顔。全てが、愛おしく感じるのだ。
「冬真、よく笑うようになったよね。貴方が傍で笑ってくれるだけで、私はとても幸せなの」
少しくすぐったそうに、冬真は笑う。
温かな指先、淡く染まる頬、輝く瞳や愛らしい笑顔も全てが愛しい。
――何度言葉を交わしても触れても想いは増すばかり。
(「笑顔が増えたのは、愛しい君が笑いかけてくれるから」)
君のおかげだよ、とだけ告げ、もぞりと起き上る有理に合わせて冬真も起き上った。
「ね、暖炉の方へ行こうか。一緒にホットミルクを飲もう」
「うん、温まろう」
二人はホットミルクを手に、暖炉のすぐそばのソファに寄り添って腰かける。
「ホットミルク片手に君と肩を並べた夜を思い出すね」
冬真が教えた、温かくて優しい味をまた二人で。
……光の中へ連れ出してくれてありがとう。有理は眩しそうに冬真を見つめる。そして、そっとカップを持つ彼の手に自分の手を重ねた。
「これからもずっと、冬真だけを愛してる」
僕も、と冬真はその上に更に一回り大きな自分の手を重ねた。
「これからもずっと、君だけを愛している」
――温もりと愛を教えてくれた、かけがえのない貴方を。
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二人は、互いに温泉の中で思案していた。
「まさかデートしてくれるとはなぁ……思い切って声掛けてみるもんだぜ」
このあとはクリスマスが控えてるし……。
桔梗谷・楓は想像(という名の妄想)を膨らませてぶくぶくぶくとゆっくり湯に沈んでいく。
マリー・ビクトワールはというと、余裕であった。
「デートの御誘いに断る理由が無かったからのぅ。了解してみたがどう出るかのぅ……ま、どうにかなるじゃろう」
このあとの楽しみに想像を膨らませつつ、あたたかな湯につかってふーと長く息を着くのだった。
「マリーお待たせ。マシュマロ持ってきたぜー!」
湯上りの楓がマシュマロを手に暖炉へ駆け寄る。
「楓殿! マシュマロを持ってきたんじゃな」
このまま食べるのではなく、焼くと聞いてマリーは目を瞬かせる。
「マシュマロ焼きとな? わらわは、食べた事無いんじゃが……これがのぅ……」
ぷくう、と膨れたマシュマロを見て、感嘆のため息を漏らす。
「俺もマシュマロ焼き食うのなんて久しぶりだ。……っと、こんなもんかな?」
ふー、ふー、と息を吹きかけたあとで、
「ほらマリー、あーん」
と、差し出す。
「可愛いレディの口が火傷しないようにちゃーんと冷ましたから安心して食っていいぜ」
もちろんそれにたじろぐでもなく、マリーは一口でそれを頬張ってしまう。そして、
「美味しいのじゃ!」
飛び切りの笑顔を見せた。
「じゃ、俺にもちょうだい?」
口を開けて待機する楓にマリーは大きく頷く。
「楓殿も欲しいんじゃな。ほれ、あ~ん」
「ふぎゅ!?」
押すなよ押すなよってやつである。どうぞどうぞってやつである。
「ちょっと熱かったかのう?」
大丈夫かと問われ、楓は何度も頷く。気を取り直して。
「さて、ホットミルクはいかがでしょうか? せっかく温泉入ったのに湯冷めしちゃいけねぇだろ?」
「ホットミルクとは、気が利くのぅ♪」
受け取ると、マリーはご機嫌でホットミルクを口へ運ぶ。そして、テーブルの上に置いたあたたかな湯気が立ち上るホットココアを差し出すのであった。
「楓殿も湯冷めしないようにわらわもココアを用意しといたのじゃ」
彼女の優しさにちょっとじーんとくる。なんかものすごくアッツイような気もするが。
今度はやけどをしないように。ゆっくり、慎重に口に運ぶ楓であった。
●
「あれ……?」
サイドテーブルに空になったカップを置いて、ロッキングチェアで寝息を立てる真田・結城を見つけ、祈里はブランケットをそっとかける。
「……リラックスしてくれたみたいだね、良かった」
起こさないように静かにその場を離れると、テラスへ出た。
「エルヴィさん」
「祈里」
ストールを羽織ったエルヴィが振り返る。
「来てよかったわね、温泉」
「うん、みんな楽しそうで本当に良かった!」
空を見上げれば零れ落ちそうな星々。ケルベロス達の胸に今日の思い出が光り続けますように、と小さく祈るのであった。
作者:狐路ユッカ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月27日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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