病魔根絶計画~Hの喪失……?

作者:質種剰


 隔離病棟の一室。
「出せっ! ここから出してくれーっ!」
 年の頃は、四十路の坂を越えたぐらいか。
「ワシはこんなところでじっとしてる訳にはいかんのだ!!」
 いかにも働き盛りのサラリーマンといった風情の男が、窓の鉄格子を揺すって叫んでいる。
「ワシは残った髪の毛を守りたいだけなんだ! 本当に最初はそれだけだった!!」
 ここまでなら、男性であれば誰もが頷ける切実な心の叫びに聞こえるだろう。
 しかし。
「けどなぁ、残りの髪の毛だけではやはり心もとないとも思うからこそ、ワシはフサフサな奴の髪の毛を食べて、自分もフサフサになりたかった! あの頃のワシに戻りたかったんだ!!」
 もはや続きが理解不能であった。
「あなた……」
 病室の外では、男の妻らしき婦人が、声を殺して泣いている。
「どうして他人様の髪を毟るだなんて……真面目だったあなたからは考えられない」
 そんな事件を起こされたら泣きたくもなろう。
「大体……気にする程ハゲてなんかいないのに……少し薄くなってきただけじゃないの……!」
 妻の呟きは、誰に聞かせる訳でもない故に、本音であった。


「また、皆さんに病魔の討伐をお願いしたいであります」
 小檻・かけら(清霜ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「病院の医師やウィッチドクターの方々の御尽力によって、この度は『ハゲロフォビア』という病気を根絶する準備が整ったのであります」
 現在、この病気の患者達が大病院へ集められ、病魔との戦闘準備を進めている。
「皆さんには、その中でも特に強い、『重病患者の病魔』を倒して頂きたいであります」
 今、重病患者の病魔を一体残らず倒す事ができれば、この病気は根絶され、もう新たな患者が現れる事も無くなるという。勿論、敗北すれば病気は根絶されず、今後も新たな患者が現れてしまう。
「デウスエクスとの戦いに比べれば、決して緊急の依頼という訳ではありません。ですが、この病気に苦しむ人をなくすため、必ずや作戦を成功させてくださいましね」
 かけらはぺこりと頭を下げた。
「さて、皆さんに討伐して頂く『ハゲロフォビア』についてでありますが……」
 かけらの説明によると、ハゲロフォビアは頭部が豆電球になったてるてる坊主のような外見をしているらしい。
 ハゲロフォビアは、眩い頭部を向ける『ハゲフラッシュ』で、近くの敵複数人へ頑健に満ち破壊力のある光を浴びせ、威圧感を与えてくる。
 それに加えて、ハゲビームなる魔法を放ち、近くの敵1体へ火傷を負わせたりもする。
 時には軽快にハゲタップダンスを踊って、自らの体力を回復させる事もあるようだ。
「もし、戦闘前にこの病魔への『個別耐性』を得られたなら、戦闘を有利に運べるでありますよ」
 個別耐性とは、今回ならば憑魔病の患者の看病をしたり、話し相手になってあげるなどの慰問によって元気づける事で、一時的に得られるようだ。
「個別耐性を得ると『この病魔から受けるダメージが減少する』ので、どうぞ積極的に狙っていってくださいね」
 かけらはそう補足して説明を締め括り、ケルベロス達を激励した。
「どうか、この病気で苦しんでいる患者さんを助けて差し上げてくださいましね。憑魔病を根絶するチャンスでもありますから……」


参加者
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
ペーター・ボールド(ハゲしく燃えるハゲ頭・e03938)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
カレンデュラ・カレッリ(新聞屋・e14813)
阿波田・毛々良(名前を呼んではいけないあの人・e22457)
栗山・理弥(見た目は子供中身はお年頃・e35298)
有馬・左近(武家者・e40825)

■リプレイ


 隔離病棟。
「突然恐れ入ります。ご主人について、二、三お尋ねしても宜しいでしょうか?」
 千歳緑・豊(喜懼・e09097)は、まず廊下のベンチに座っていた碓氷夫人へ話しかけていた。
 眼の色と同じ瑪瑙のループタイかよく似合う、いかにも上品で落ち着いた物腰のレプリカント男性。
 彼の頭髪は問題なくフサフサであり、ロマンスグレーはかくやといった風情だ。
(「碓氷君に『中身が愛されている』実感を得て貰えれば……」)
 それが、豊が夫人に接触した理由であり、彼女から『夫の良い所』を幾つか聞き出した意図である。
「主人は……こうなる前の話ですけれど、優しい所もありました。結婚前はしょっちゅう料理を作ってくれましたし、今も誕生日には必ず何かしらくれますの」
 夫人から望み通りの返答が聞けた豊は、満足して病室へ足を踏み入れた。
「誰か知らんが頼む! ここから出してくれ!」
 ベッドから飛び起きた碓氷が懇願する。
「今のご時世、結婚しているだけでも十分勝ち組だ」
 そんな彼を手で制して、豊は言った。
「容姿なんて問題にならないほどにね。現に奥さんは碓氷君の優しい所が好きだそうだよ」
 と、決して見た目は重要ではない事を強調してハゲます。
 ちなみに豊自身は、『別に羨ましいわけではない』とは言うものの、内心、独身のアラフィフとして妻帯者が結構羨ましいようだ。
「貴美が……?」
 碓氷は虚を突かれた様子で妻の名を呟いた。恐慌が一時的にでも治っているのは良い事だ。
 続いて。
「あら私は坊主頭の殿方のが素敵だと思っていますわよ?」
 エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)がファサァと髪を梳きながら、病室に入ってきた。
 灰色の髪と褐色の肌を持つ馬のウェアライダーの女性で、クラシカルなエプロンドレスの看護服がよく似合っている。
 地球を守る傍ら、密かにオタク趣味に生きたいという野望を胸に秘めた、自由の為に戦う鎧装騎兵だ。
「坊主頭の何が素敵なもんか! ワシは最近毎晩のように髪がハラハラ抜け落ちて丸坊主になる夢を見るんだ! 朝飛び起きた時の寝覚めの悪さったら無い!」
 カンカンになって怒る碓氷の苦悩を受け止めようと、根気強く聞き役に徹するエニーケ。
「では、悪夢を見なくて済むように良い物を差し上げましょう」
 荷物から取り出したモヒカンのかつらを笑顔でプレゼントしては、
「かつら……」
「きっと、とてもお似合いになりますわよ」
 と、落ち込む碓氷を全力で持ち上げ、かつらを着けさせた。
「まぁ素敵! まるで誂えたみたい」
 さっと取り出した手鏡を碓氷の前へ翳しつつ、エニーケは激励する。
「良い若返りっぷりではないですの。明日からこの姿で会社に行きなさいな」
「そ……そうか?」
「ええ。もっとご自身の頭髪に自信をお持ちになるべきですわ」
 戸惑いながらもモヒカンを外そうとはしない碓氷を見て、ぱちぱち拍手するエニーケだ。
 一方。
「『あの頃』とはいつの事ですか? どうか教えて下さい」
 イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は、碓氷の凝り固まった恐怖の原因を探ろうと問いかけている。
 ドワーフにしてはわりかし老け顔な成人男性で、短く刈り込んだつけヒゲが特徴。
 秩序を重んじ、自他共に己の生き方に反する事を嫌うも、融通が利かない訳ではないらしい。
 ミミックのザラキを連れた、漆黒の髪も充分な鎧装騎兵である。
「一体あなたは禿で何を失うと怯えるのですか。あなた本来の望みや守りたいものは何ですか」
 碓氷の本当の望みや守りたいものを自覚させて奮起を促すべく、丁寧に答えを引き出そうとするイッパイアッテナ。
(「幸せな在りし日の思い出……殊に奥様と関連した物だろうか」)
 そんな予想を胸の内に巡らせながら。
「禿げで失うのは……何というか、父親の威厳でもあり、ずっと信じていた若い自分でもあり……」
 ぽつりぽつりと素直な心境を吐露する碓氷を、イッパイアッテナは優しく見守っている。
 他方。
「うっはっは! ハゲが怖くなるなんざ愉快な病気もあったもんだなァ」
 ケラケラと陽気に笑うのはカレンデュラ・カレッリ(新聞屋・e14813)。
 金髪碧眼の美青年ガンスリンガーで、大衆紙の特派員をしているイタリア人の男性だ。
「ハゲはカッコ良いぞ! ハゲても人気のある俳優だっているじゃ無いか!」
 カレンデュラは、懐からハゲのイケメン俳優の写真を取り出して、碓氷へ見せつけた。
「そうは言うが……俳優は持って生まれたオーラがあるじゃないか」
「オーラがなければ作れば良いさ! 何なら、今からハゲとくか?」
 しかも、自身の短く整えた金髪は豊かに照り映えている為か、躊躇いなくバリカンのスイッチを入れる。
 顔面蒼白で断る碓氷に、次は俳優っぽいポーズを決めさせて写真を撮り始めた。
「ナイスだ、その頭の輝き! ハリウッド俳優にもなれる!」
 碓氷を良い気分にさせようと、とにかくおだてにおだてるカレンデュラ。
「……見え透いた世辞を」
 更には、
「どうしてもフサフサになりたいなら、海藻に含まれるヨウ素が髪を元気にするんだぞ!」
 そう力説しては、ワカメで育毛を促進すべく、碓氷へ椀子そばならぬ椀子ワカメを薦めた。
「はい、どんどん! 諦めるなっ、フサフサになりたくないのか!」
 気圧された碓氷が1杯食べたが最後、カレンデュラはワカメを死ぬ程食えと押しつけてくる。
「ワカメばかりこんなに食えるかよ兄ちゃん」
「俺のことはコーチと呼べ!」
 最後には、碓氷の頭へワカメを張り付けてヨウ素を頭皮に浸透させんと図った。
 べちゃぁっ!
「いいぞ、今日からお前は最強の育毛戦士・フサフサマンだ!」
 カレンデュラがますますテンションを上げる中、碓氷のワカメだらけの頭は、豊が蒸しタオルでしっかり拭いてくれた。
 ともあれ、カレンデュラの底抜けの明るさが、碓氷のささくれ立った気を紛らわせた事は確かである。
「大丈夫だよおじさん! ボクおじさんのために色々調べてきたんだよ!」
 栗山・理弥(見た目は子供中身はお年頃・e35298)は、子どもらしい元気さを前面に押し出して、碓氷の強張った心をほぐそうと試みる。
(「ドワーフは幸いにというか、年とってもハゲる心配は少ないからな……」)
 どう見ても小学生にしか見えない風貌がコンプレックスの高校生ドワーフ。
(「……いいことなんだけど、それはそれでちょっぴり悲しい気がするのはなんでだろうな?」)
 つけヒゲは付けない主義の理弥だが、そこはドワーフ、綺麗な赤茶の髪が元気良くツンツンと跳ねているので、この日は毟られるのを恐れて帽子で隠していた。
「髪の成長の鍵を握るのはこの毛母細胞ってヤツ。毛母細胞を活性化できれば髪は生える!」
 自作のフリップを両手で掲げ持ち、デフォルメした細胞の絵を指し示す理弥。
「髪が生える……!」
 身を乗り出す碓氷。
「そして何より毛母細胞は強い! 禿げてても毛母細胞は生きてる場合が多いんだって。諦めずに頑張ろうよ!」
 理弥は、碓氷が自分の頭に希望を持てるよう懸命にハゲました。
「生活習慣に気を付けたり……匿名で相談できるところもあるみたいだよ。何よりストレスはハゲの大敵だから気を付けて!」
 理屈の伴った彼の説明に、碓氷も集中して話を聞いている。
「それと……かの名探偵だって晩年は完全に禿げ上がったけど、それでも世界中で愛されてるじゃん? 気にして俯いてる方がカッコ悪いよ!」
 最後に、推理マニアらしく探偵小説の挿絵を見せて、ぱぁっと笑顔になる理弥。
「ふむ、ふむ……毛母細胞の活性化……ハゲを気にし過ぎる方がカッコ悪いか……」
 碓氷はしきりに頷いて、理弥の言に感じ入った風であった。
「ハゲたらハゲたで最終手段! 髪が無いなら地獄化すればいいんだよ!!」
 ペーター・ボールド(ハゲしく燃えるハゲ頭・e03938)は、彼ならではのハゲ救済理論を自信満々にぶち上げてみせた。
 本人は懸命なリハビリ(?)を経て見事頭髪を地獄で補う事に成功、地獄を燃え盛るように噴出して自慢の髪型だと見せびらかすのが趣味だそうな。
「良いか? よ〜く見てろよ!」
 そんなペーターは隣人力も併用しつつ、地獄化した頭髪——本人曰く地獄ヘアーを勢い良く燃え盛らせる。
「ひっ……熱くは無いのかね?」
「全然!」
「まるでキャンプファイヤーのようだ」
 地獄ヘアーは真っ赤に広がってアフロになったり、天を衝く勢いで燃え上がってモヒカンになったりと、炎の髪ならではのパフォーマンスで碓氷の目を楽しませた。
「むしろハゲたからこそ、俺はこんなにイカス髪型にできたんだぜ!」
 いかに地獄ヘアーが素晴らしいかをアピールするペーターは、とても生き生きして楽しそうだ。
 一般人である碓氷には例え気休めでも、『ハゲた後でも素晴らしい髪型にできる未来はある』と、ハゲる事への恐怖心を和らげようとハゲますペーターの気持ちは真摯であった。
「……その炎の毛、五分刈りにも出来るのかね?」
「お安い御用だぜ!」
 なればこそ、碓氷が自分からリクエストする程に、彼の心を和ませる事が出来た。
「貴様……俺様がいくつに見える? 答えてみろ」
 と、やたら居丈高な態度で問い質すのは、阿波田・毛々良(名前を呼んではいけないあの人・e22457)。
 のっぺりとした顔でいつもキレ気味な、紛う事なきハゲたおっさんだ。
 代々薄毛の家系故に『毛の生えが良くなる様に』との願いを込めて毛々良と名付けられたのだが、結果はご覧の有様である。
「むぅ……意外と30前とかか?」
 何かの引っ掛け問題と受け取った碓氷が、素直に回答した。
「40である。貴様とそう変わらぬ。時に俺様を見るがいい」
 どうやら毛々良は、同じ40代でありながら既に頭部が不毛の地と化した自分と、まだ悪く言っても薄毛程度の碓氷とを引き比べて、
「我が威光示す頂きが不毛となり早5年。かつての栄華は未だ戻らぬ」
 自分と比べたらまだまだマシだから頑張れ——と、彼なりの言葉でハゲまそうとしていた。
「だのに貴様はその程度で取り乱しおって!!」
 ツルツルの毛々良だからこそ言える、気迫のこもった叱責である。
「それは……申し訳ない」
「その程度で闇の側面に堕ちるなど時期尚早であると心得るがいい!!」
「う、うむ……」
 毛々良のショック療法とでも言うべきキツいハゲましは、碓氷を見事に萎縮させたのだった。
 その傍ら。
「毛が無かなら、月代にすれば良か」
 有馬・左近(武家者・e40825)は、まるで侍のような発想から来るハゲ解決策を口にして、豪快に笑う。
 現に左近の髪型はちょんまげで、そもそもハゲが気になるのなら剃ってしまえば良いのでは——と本気で思っているからだ。
 一筆書きの眉や爛々と光る眼、あちこちに傷が走った顔が迫力のあるドワーフだ。
 年齢以上の風格を漂わせる彼だが、頭髪においては実に若々しく、眉同様に黒々と密生していた。
「ないごて禿ぐっんをげじと?」
 左近は、何の衒いなく碓氷へ薩摩弁で問いかける。
「え? ない……げじ……?」
 どうして禿げるのが怖いんだ? と訊いたのだ。
 碓氷は少し思案してから、振り絞るように言った。
「……正直に言うと、他人にあの人禿げてると馬鹿にした目で見られるのが何より怖い」
 左近はニカッと笑って、ペーターと毛々良の禿げコンビを引き合いに出す。
「こん二人に比べたらあんたはまだまだ禿げちょらん。こん先油断せな大丈夫にごわす」
 ペーターは地獄ヘアーを逆立ててニヤリと笑ったし、毛々良も褒められていないのに胸を張って踏ん反り返った。
「そう言われると……まぁ確かに」
「心ん持ちよう一つにごわす、綺麗に剃ってしまえばそれも見栄え良かばい」
 左近は、碓氷へ本当のハゲはこういうものだと見せつける為、何と自分でもちょんまげをを剃髪して、彼の度肝を抜いた。
 結果、8人の体を張った慰問のお陰で、ハゲロフォビアの個別耐性を無事に得る事ができた。


 病院のウィッチドクターの病魔召喚によって、碓氷の身体から『ハゲロフォビア』が引き摺り出された。
「髪が無くても楽しそうなのもいるけど、やはり私も他人事ではないからね」
 豊は、碓氷とドクターが避難する時間を稼ごうと、即座にハゲロフォビアへ向かってリボルバー・ドラゴン改を撃つ。
 目にも止まらぬ速さの弾丸が眩い頭部へ命中、ガラスに蜘蛛の巣状のヒビを入れて突き抜けた。
 カッ——!
 ハゲロフォビアは眩い電球頭をお辞儀みたいに下げて、ハゲしい光を放射してきた。
「うわっ、眩しっ!」
「眩し過ぎて何も見えねぇ!」
 ペーターやカレンデュラが、ダメージを受けながらも余裕のあるリアクションをしていたが、
「うおおおお、俺の髪があァーー!!」
 うっかり尻餅を着いて後ろへ倒れた拍子に、カレンデュラはさっきのバリカンへ頭から突っ込んで、貴重な頭頂部の毛を失うというハプニングも。
「ハゲ頭の光っていうのは、傷つけるだけのものじゃねえんだよ!」
 一方対抗心を燃やしたペーターは、ハゲ頭から放つ朝日の如き光で前衛陣を包み、今のプレッシャーを消し去った。
「無事、碓氷さん達は廊下へ出られましたか」
 と、安堵するのはイッパイアッテナ。
 前衛陣の配置に火計の陣を見出して、彼らへ破魔力を与えた。
 ザラキは相棒の意思に忠実にメスを構えて、ハゲロフォビアの体を斬りつけている。
「これは碓氷のおっさんの分、そしてこれはっ、俺の毛根の分だァアー!」
 髪が残念な事になってしまったカレンデュラが、八つ当たりな怒りに震えながら静寂のルネッタをぶっ放す。
 天井より跳ね返った弾丸はハゲロフォビアの頭を貫き、ガラスの割れ具合がまるで禿げ散らかした頭のようであった。
「貴様の命を毟り取ってくれるわ!!」
 構えたファミリアロッドから毒々しい緑の稲妻を射出するのは毛々良。
 しかし、稲妻が当たったハゲロフォビアがそもそも電球頭である為か、毛々良の頭からは1本しか毛が生えてこない。
 しかも当然一時的な見た目であり、すぐ風に吹き飛ばされ抜けてしまった。
「ハゲは笑い事じゃないんだよ!」
 理弥は睡眠作用のある『見えない弾丸』を撃ち出す。
 被弾した衝撃と共に強烈な睡魔がハゲロフォビアを襲い、禿げ散らかし坊主はくらくらとよろめいた。
「キェェェェッ!!!!」
 日本刀の柄を耳元まで振り上げた独特の構えから、『一の太刀を疑わず』袈裟懸けに振り下ろすのは左近。
 一見ただ振り下ろしているだけに見えるも、その実は雲の合間を耀く稲妻の如く、ハゲロフォビアの身の守りごと、頭上から叩き潰した。
「これ以上ハゲの人間を怒らせなさんな……このハゲェー!!!」
 エニーケは大音声で口汚い罵りの言葉を浴びせる。
 鋭く突き刺さった言葉の暴力がハゲロフォビアの心を抉り、ついにトドメを刺したのだった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月28日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。