汝、殺さざることなかれ

作者:秋津透

 長野県安曇野市の山中に立つ、古ぼけた洋館。
 そこで鳥人間ビルシャナが、信者を集めて説法をしている。
「私は、依頼を受けて人を殺すことを仕事としておりました。いわゆる、殺し屋でございます。世界中、あらゆる宗教で殺人は悪とされておりますが、はははは、そんなものは単なる建前。ほとんどの宗教では殺人を悪としながら、宗団の敵を殺すことを善とする。いわゆる聖戦でございますな。どの殺人が悪で、どの殺人が善か、宗教団体が勝手に決めることができる。それもおかしな話でございますね。そこで私は考えた。実のところ、あらゆる殺人は善なのではないか、とね」
 くっくっく、とビルシャナは気取った笑いを漏らす。
「考えてもごらんなさい。世界を悩ませている問題の大半は、人口の過剰が原因となっている。食糧の不足、資源の不足、そこから起こる領土争い。何もかも、人間の数が少なければ発生しない。ならば、人間の数を減らす直接的な行為である殺人は、諸問題を解決する善行なのではありませんか? もちろん、人類の存亡が危うくなるような大量殺戮はいけません。人類が直面する問題を解決するため、人類を滅ぼしてしまっては本末転倒。きちんと管理され、殺す対象、人数を充分に吟味した賢明な殺人。それこそが、世界を救う善行なのです」
「おー! おー! おー!」
 集まった信者たちが、拍手喝采する。信者の性別、年齢層はさまざまだが、どうも自身に殺人経験があるのではないかと思われる、不穏な気配を漂わせている者が少なくない。
 それだけに、彼らは熱狂的にビルシャナを支持しており、中には次のビルシャナになりそうな者も見受けられる。
 ……やっぱり、とっとと阻止しないとダメだよ、これ。

「悟りを開きビルシャナとなった者の信者が、新たに悟りを開き二体目のビルシャナとなり、独立して新たに信者を集めるという、非常に恐ろしい連鎖事件が起きているようです」
 ヘリオライダーの高御倉・康が、深刻な表情で告げる。
「大本のビルシャナはヴィゾフニル明王といって、悪人こそが救われるという協議を広めたらしいですが、これの所在は掴めていません。皆さんに今回対応していただきたいビルシャナはヴィゾフニル明王の弟子と称して、最悪の悪人である殺人者こそが、まず救われるべきである存在であると説いています。集まっている信者の多くは、たぶん殺人経験があるかと思われる、とうてい一筋縄ではいきそうもない面構えをしており、ビルシャナを熱狂的に支持しています。放置しておいたら、殺人を善行として励んだ挙句、また新たなビルシャナが出かねない有様です」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「ビルシャナが説法をしている現場は、ここです。山の中にある古い洋館で、ビルシャナと信者以外は誰も近づかないようです。敷地は広いので、ヘリオンから直接降下ができるでしょう」
 そう言って、康は画像を切り替える。
「予知の中では、ビルシャナは説法をしているだけなので、能力やポジションはわかりません。ただ、元は職業殺人者……殺し屋だったと自称しているので、修羅場慣れしている可能性があります。うまく作戦を立てないと、逃げられてしまうかもしれません。そして、集まっている信者は十二名。説得不能とまでは言いませんが、かなり難しいと思います。更に、最悪、戦闘中にビルシャナ化する可能性もあります。場合によっては、殺してしまう危険性を冒してでも、早めにまとめて倒した方がいいかもしれません」
 殺人を善とするビルシャナに、容赦ない殺人で対処するというのも、どうにも皮肉な話ですが、と、康は複雑な表情で肩をすくめる。
「非常に厄介な相手ですが、放置はできません。どうか、これ以上ビルシャナが増殖することにないよう、よろしく対処をお願いします」
 そう言って、康は深々と頭を下げた。


参加者
アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子・e00783)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)
揚・藍月(青龍・e04638)
氷鏡・緋桜(矛盾を背負う緋き悪魔・e18103)
春日・春日(電気羊の夢を見る・e20979)
エミリ・ペンドルトン(ビルシャナを逐う者・e35677)
明日葉・梨桜(ドラゴニアンの刀剣士・e41812)

■リプレイ

●突入
「……集まってるようだな」
 長野県安曇野市の山中に立つ、古ぼけた洋館。その敷地内に降下してきたケルベロスの一人、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は、洋館の周囲に駐車している自動車やオートバイを見回し、それらのタイヤを片っ端から切り裂く。
「手伝おうか?」
 揚・藍月(青龍・e04638)が訊ねたが、蒼眞は作業の手を止めずに応じる。
「大丈夫だ。すぐに済む……これで完了だ」
「では作戦通り、二手に分かれて突入と行くか」
 髪を手でかき上げて逆立て、戦闘モードに入って言い放った氷鏡・緋桜(矛盾を背負う緋き悪魔・e18103)が、小さく苦笑して続ける。
「しかし、予想以上に小さい建物だ。これじゃ、分かれて突入してもすぐに再合流だな」
「ここまでボロ屋だと、ビルシャナはもちろん一般人の信者でも、窓や壁を破って逃げちまうかもしれねぇ」
 面白くもなさそうな表情で、嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)が唸る。
「油断はならねぇ。壁なんぞねぇもんと考えて、囲まんとな」
「信者連中がどれだけ邪魔に入りやがるかにも、よりますですね」
 珍妙な口調で、春日・春日(電気羊の夢を見る・e20979)が応じる。
「ま、ごちゃごちゃ大勢邪魔しにくるよーなら、まとめて薙ぎ倒しますですか」
「そうね。説得して信者減らす暇があればいいけど、こっちが突入した途端にビルシャナが一目散に逃げだすようなら、立ちふさがる奴は薙ぎ倒すしかないわね」
 言いながら、エミリ・ペンドルトン(ビルシャナを逐う者・e35677)は、わずかに眉を寄せる。するとアルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子・e00783)が、軽い口調で応じる。
「信者には、まとめて死を繰り返す幻覚見せて足止めしようと思うのですよ。ヒールにもなるグラビティだから殺しはしないと思うけど、発狂しちゃうかもしれないですね」
「orヒール のグラビティか? あれは敵と味方がはっきりしてる時に使わないと、思わぬ相手にダメージ与えたり、癒したりすることがあるから気をつけろ」
 何か悪い思い出でもあるのか、苦い口調で告げる蒼眞を、アルマニアはきょとんとした表情で見返す。
 一方、明日葉・梨桜(ドラゴニアンの刀剣士・e41812)は、ふっと鼻で嗤う。
「殺しが善かよ……馬鹿臭ぇ」
 さっさと始めようぜ、と、梨桜は裏口へ向かい、藍月、蒼眞、春日、藍月のサーヴァント(本人は弟と言っている)のボクスドラゴン『紅龍』と春日のサーヴァントのウイングキャット(名前はない)が続く。
 玄関側には、緋桜、タツマ、アルマニア、エミリ、アルマニアのサーヴァントのボクドラゴン『フリツェル』とエミリのサーヴァントのシャーマンズゴースト『田中』が向かう。
 そして両者は、一斉に洋館へと突入した。

●説得……?
「おや……ずいぶん大勢いらっしゃったようですが、どなたですか?」
 踏み込んできたケルベロスたちに向かって、ビルシャナが気取った口調で訊ねる。
 そして藍月が、穏やかな口調で応じる。
「どなたかと問われれば、ケルベロスだと答えよう。地球を侵略するデウスエクスを、討伐しに来た」
「な、なにいっ!?」
 信者たちのうち何人かは気色張り、何人かは顔色を変えたが、ビルシャナは平然と応じる。
「ああ、そのうち来るのではないかと思っていました。残念ながら、私の説法もこれまでですね」
「そうだな。ただ、殺し合いを始める前に、一つだけ問いたい」
 そう言って、藍月はビルシャナを見据える。
「貴殿は殺し屋だったそうだが、何故悟りを開いたんだ? 殺し屋が殺戮に疑問を持たねば、そうはならず、俺達に狙われる事もなかっただろうに」
 静かな口調で、藍月は淡々と問う。
「……そうなり果てるに至るまで、殺しは辛かったか?」
「ええ、辛かったですね。割り切ろうとした、弁解もした、感情を凍らせようともした……でも、ダメですよ。夢に見るんです」
 遠い目をして、ビルシャナは独言のように呟く。
「どんなに自分を騙しても、夢は正直だ。眠るたびに、殺した相手に殺し返される悪夢を見て跳び起きる。酒を飲んでも、薬を飲んでも、消えやしない。最後は眠るのが怖くなって、ふらふらになっても無理やり起きている。そんな馬鹿げた状態になったら、殺し屋なんぞ務まりません。そこで誰かに殺されるなり自殺なりすれば、それで終わったんでしょうが、幸か不幸か、たまたま私はヴィゾフニル尊師に出会った」
 そう言って、ビルシャナはくくっと笑う。
「悪人こそが救われる。殺人者でも救われる。教義としては、さほどユニークでもない。人間の宗教家でも、そう説く人はいる。でもね、人でないビルシャナに告げられて、初めて私は安心できたんです。ああ、私も救われるんだってね。理不尽なのは分かってますが、以来、私は安眠できるようになった。体調も整って、殺し屋に復帰しようかと思った途端、なぜかビルシャナになったのです」
「それで、殺しはやめて、説法を始めたのか」
 蒼眞が訊ねると、ビルシャナはくすくす笑いながら応じる。
「ええ、そうです。殺し屋に戻ろうとしたら、ビルシャナになった。安眠できるようになったら、眠らなくてもいい存在になった。これはいったいどういうことか、私なりに考えました。殺人者でも救われる。安眠してもいい。でも、だからといって無闇に殺していいわけではないようだ。ない知恵絞って考え付いたのが、社会的に許容される殺人……軍人や治安官による殺人ですね。殺人者が、今更そういう立場になるのは難しいですが、不可能ではない。極端な話、デウスエクスやケルベロスになれれば、普通の法で裁かれることはない。そういうことです」
「なるほど……しかし、そんな説法を続けさせるわけにはいかないな」
 そう言って、蒼眞は信者たちに目を向ける。
「一応忠告しておく。これが多分最後の分水嶺だ。大人しく法に裁かれるなら、仮に極刑に処されるとしても少なくとも人間としての生は全う出来る。ビルシャナに与するのなら、恐らく今ここでデウスエクスの一味として俺たちケルベロスに討たれるだろう。……強制はしない。自分の人生なんだし、末路位好きに選べば良いだろうさ」
「そうですね。まだ死にたくない人は、ケルベロスに投降なさい。もう死んでもいい、あるいは生きているのはイヤだという人は、私とともにケルベロスと闘いましょう」
 ビルシャナが告げると、女性信者四人と、男性信者のうち三人が両手を上げて叫ぶ。
「投降する! 殺さないで! あたしはまだ、死にたくない!」
「申し訳ないが……俺も、まだ死にたくない。やっと眠れるようになったんだ」
「よし、じゃあ、生きることを選んだ者は、事が終わるまで二階にいてもらう」
 投降した七人を連れて、蒼眞が二階への階段を上がる。
 残った五人の男を見やって、藍月が呟く。
「咎を認めず此処で処刑される……それもまた貴殿らの覚悟としておこうか」
「そんな大層なもんじゃねぇ。ブタ箱に叩き込まれて、死刑になるのを待つぐらいなら、ここで死んじまった方が早いってだけさ」
 男の一人が、ふて腐れたような口調で応じる。
 すると緋桜が、悲痛な声で訊ねる。
「お前たちが俺たちに殺されて……悲しむ者はいないのか? 誰かを悲しませないために、生きていようとは思わないのか?」
「いねぇな……ああ、思いつかねぇ。誰も彼も、俺がくたばったと聞いたら、ああ、せいせいしたと言うだろうよ」
 男の一人が言い、別の男が怒気荒く言い放つ。
「俺が死んで嘆いてくれる者がいるとしたら、このビルシャナ様さ。そのビルシャナ様を殺そうってんなら、及ばずながら俺が相手だ。俺は死ぬ気なんかねぇぞ。ケルベロスがなんぼのもんだ。同じ人間じゃねえか! ぶち殺したる!」
「ほーお、殺せるもんなら殺してみせるがいいのです」
 春日が鼻で嗤い、エミリが溜息をつく。
「まったくもう……殺すべきは殺すわよ。魂踏み躙る下賎の怪異、生かさざるべしと定めたら、汝、殺さざることなかれ、だわ」
 殺しを誇るでもない、恥じるでもない、ただ救われたいだけの卑しい魂を、いったいどうしたらいいのかしら、と、エミリは苛立たしげに唸る。
 そしてアルマニアが、詰まらなそうに呟く。
「死の幻覚を見せて脅そうと思ってたんですけど、もうとっくに、殺し返される夢見て怯えてたんですね。やれやれ」
 二番煎じじゃ面白くないですね、どうしましょうか、と、アルマニアは首をかしげる。
 そしてタツマが、ふうっと太い息をついて唸る。
「ビルシャナの説法は殺人者を厚遇しようなんて一言も言ってないと指摘しようかと思っていたが、聞いているうちに馬鹿馬鹿しくなってきたな。矛盾、理不尽、言い逃れと、本人が先回りしちまってるんじゃ話にならねぇ。多少は数も減ったようだし、あとはビルシャナもろともぶっとばすか」
「だなぁ……」
 こいつら弱ぇ、どーしよーもねーほど心が弱ぇ、そんな弱ぇ奴が殺しなんかすんじゃねーよ、と、梨桜が不機嫌そうに唸る。
 そこへ、投降した者たちを二階に監禁した蒼眞が階段を駆け下りながら訊ねる。
「誰か一人でも……心変わりはあったか?」
「ない」
 藍月が応じ、ビルシャナと五人の信者を見据える。
「では、始めようか」

●戦闘
「ゆくぞ」
 宣告すると、藍月はスイッチを入れて爆発を起こす。もっとも、爆発が起きているのはケルベロス側で、士気を上げ攻撃力を上げるための支援爆破である。
 そして『紅龍』が、ビルシャナに向けてブレスを放つ。しかし、信者の一人が庇おうとして飛び込み、たちまち全身を焼かれて炭と化す。
「ぐあああああああああっ!」
「おい……まだ間に合うぞ。投降するなら、命は取らない。少なくとも、この場では」
 蒼眞が勧告するが、男たちは蒼白になりながらも、頑なにビルシャナの傍から離れない。
 そこへ緋桜が飛び込み、信者の一人を手加減攻撃で打ち倒す。
「ぐはっ!」
「死にたいのかもしれんが、殺しはしない。俺は殺しが善だなんて思っちゃいないからな」
 厳しい口調で緋桜が言い放ち、続いて蒼眞も信者の一人を手加減攻撃で打ち倒す。
「ぐおっ!」
「事が終わるまで、寝ていてもらおうか」
 そして残る二人の信者を、タツマが一気に吹っ飛ばす。
「もし生きてたら悔い改めろ」
「……いや、生きてるわけないですよ、これは」
 アルマニアが、少々呆れた表情で呟く。
 列攻撃に手加減はなく、タツマの強烈なグラビティをまともにくらった信者二人は、頭を砕かれ頸を折られて即死する。
「死者三名、ビルシャナ変化はなしなのですか」
 正直、一掃しておいた方が、あとあと面倒がないとは思いますが、と、いささか物騒な呟きを漏らしながら、春日が味方前衛に状態異常耐性をつける。
 一方、名無しのウイングキャットは、盾となる信者を全員失ったビルシャナに飛びかかり、爪で無茶苦茶にひっかいた。
「がっ!」
 顔面から血を流し、ビルシャナはたじたじとよろめく。
「さ、さすがは神殺しのケルベロス……連れている猫ですら、私に傷を負わせるとは……」
「あのね、元は人間でも、一応デウスエクスなんでしょ? 猫の攻撃で驚いてるようじゃ、話にならないですよ?」
 こんな雑魚、さっさと片付けましょう、フリツェルさん、やっておしまいなさい、とアルマニアが命じ、ボクスドラゴンはブレスを放つ。
「くうっ……」
 苦しげに顔面を覆うビルシャナに、アルマニアはオリジナルグラビティ『空想召喚!(サモン・イマジネーション)』を発動させる。
「信者の説得に使おうかと思っていた技ですが、手番が来る前に信者がいなくなってしまいました。でも、せっかく用意したので使います」
 言い放つと、アルマニアは無数の蝶をビルシャナに向かって放つ。
「狂い咲く幻想をご覧あれ……サモン! グリムバタフライ!」
「ぐわあっ!」
 蝶の群れにまとわりつかれて、ビルシャナが絶叫する。これ、信者に使ってたら、ヒールとか説得するとか以前に即刻狂い死んでたな、と蒼眞が唸る。
 そしてシャーマンズゴースト『田中』が、踊るような動きからビルシャナに爪を突き立てる。
 実は、『田中』はビルシャナが発言するたびに挑発の踊りを踊っていたのだが、なぜかこのビルシャナにはさっぱり効かなかった。更に、非物質化した爪で霊魂を攻撃して怒りを誘おうと狙ったが、ビルシャナは光を発して自分を癒す。挑発に乗らないというよりは、挑発されていること自体に気付いていないようだ。
(「これだから、鈍感な奴はキライなのよ!」)
 声には出さずに苛立たしげに呟き、エミリがドラゴニックハンマーを砲撃形態にしてビルシャナを撃つ。
 更に梨桜が、惨殺ナイフでビルシャナの首に斬りつける。
「仮にも殺しで商売しようってんなら、無意識に殺してた、気付いたら殺してた、ぐらいにならなきゃ話にならねぇ。でなきゃ、相手の流れる鮮血(あか)が綺麗で見てぇとかさ。そういう単純明快な動機なしで、理屈こねて殺そうとするから、おかしくなるんだ」
「はは……同業者で、殺すのが楽しくて楽しくて仕方がない、という人もいました。そういう人は、迷わないし悩まないし挙句に悟ってビルシャナにもならない……でも、たいてい殺しに惑溺して、無用で危険な殺しに手を出して死にますけどね」
 そう言って、ビルシャナは小さく笑いを漏らす。
「きっと、そういう人は、ビルシャナの説法なんか聞くまでもなく、善悪も超越して、殺すことで自然に救われているのでしょう。うらやましい限りだ……あなたも、そういう人ですか?」
「へっ、知るか」
 鼻を鳴らして、梨桜は応じる。
 そして藍月が、オリジナルグラビティ『深淵招来(シンエンショウライ)』を発動させる。
「我招くは生命生まれし原初にして今を生きる者の来訪を拒みし暗闇……深淵招来! 急急如律令!」
「ぬおっ、こ、これは!?」
 驚愕するビルシャナを、藍月は大海の深淵に匹敵する水圧の水球で一時的に閉じ込め、その空間で刃の一撃を下す。
 そして、深手を負ったビルシャナに緋桜が沈痛な口調で告げる。
「恨んでくれていい。呪ってくれていい。お前たちを殺す事しか出来なかった弱い俺達が悪なのだから」
「いいえ……恨みも呪いもしませんよ。あなたがたは強い。善悪を超越して強い。どうか、強いままでいてください」
 静かに告げるビルシャナに、緋桜はオリジナルグラビティ『蒼氷の意志撃(アイス・レイジ・リベンジ)』を叩きつける。
「全く……悲しいな……」
 悲痛な呟きとともに放たれた、電磁加速させた音速を超えるパンチが拳周囲の気圧を著しく低下させ、ベルヌーイの定理により空気中の水分を氷に相転移、発生した氷を更にグラビティで増殖、強化し拳ごと氷礫を叩き込む。
 容赦ない直撃を受け、ビルシャナは粉々に砕け散った。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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