超人ファイト!

作者:天木一

「うおーーー!」
 中学生くらいの少年が体操服を着込み、元気な掛け声と共に小さめの丸太を担いで学校の裏山を駆け回る。
「とりゃーー! マッスルバスター!!」
 そして丸太を人に見立て、跳躍して着地と共に丸太に衝撃を与える訓練を始める。
「うーん、やっぱり筋肉が必要だなぁ。パワーがないと人なんて持ち上げられないし」
 自分と同じサイズの人間を担いでジャンプなんて出来ないと少年は軽い丸太を担ぎ直す。
「マンガでも超人レスラーはみんなムッキムキだしね! もっともっと鍛えるぞー!」
 勢いよく駆け出そうとした時だった。目の前に幻武極が出現し立ち塞がる。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 その言葉通りに少年の体が動き、火事場の馬鹿力を引き出されたように体を逆さに持ち上げブレーンバスターのように構えると、足を掴みジャンプして着地と共に関節を極める。だが幻武極には一切のダメージを与える事は出来ていなかった。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 少年の手を振り解いた幻武極は何事もなかったように着地し、手にした鍵を少年の胸に突き刺す。すると少年は意識を失い倒れ込んだ。
 その隣に少年と同じ顔をした存在が現れる。体はムッキムキとなって膨れ上がり、プロレスラーが着用する赤いショータイツにブーツ姿だった。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 幻武極がレスラーにそう言葉をかける。
「うおおおおおぉ! マッスルマッスル!!」
 少年レスラーは猛り吠えると、一気に山を駆け出して町に向かった。

「シャドウの武術家、それもプロレスラーが現れるみたいね!」
 声を弾ませながら草薙・ひかり(闇を切り裂く伝説の光・e34295)が新たな敵の情報を告げる。
「幻武極というドリームイーターが現れ、マンガを参考にしたプロレスの練習をしている少年を襲って、自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているようです」
 資料を手にしたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい説明を始めた。
「結果モザイクは晴れなかったようです。ですが武術家のドリームイーターを生み出し、暴れさせて被害を出そうとしています」
 少年の理想である漫画的な超人レスラーが、その人を超えた力を発揮して被害を出してしまう。
「今なら一般人と接触する前に敵と接触できます。犠牲が出る前にドリームイーターを撃破してください」
 学校の裏山から下りてくるところを待ち構えれば敵に遇う事が出来る。
「ドリームイーターは中学生の少年の姿を基本として模写しています。そこから理想の筋肉質な体を作り出し、ボディビルダーのような見た目となっているようです。その見た目通りタフで超人的パワーを用いてプロレス技で戦うようです」
 その力は少年どころか人を超えている。油断すれば痛手を負う事になるだろう。
「学校周辺には避難警報が出されていますので、一般人が巻き込まれる心配はりません。それに、武術家ドリームイーターは武を知らしめたいと、戦いを挑めば逃げる事はないようです」
 既に避難は始まっており、人々は学校から離れた場所に移動している。
「子供が漫画に憧れる気持ちは利用する敵を倒して、少年を助けてあげてください」
 お願いしますとセリカは一礼するとヘリオンへ向かう。
「相手がプロレス、それも超人プロレスというなら相手に不足はないねっ。全力で叩きのめしてあげる!」
 どんな技を見せてくれるのかと、ワクワクした様子でひかりはその身に力を漲らせる。それに触発されたように闘争心を高めてケルベロス達も準備に向かった。


参加者
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)
マイ・カスタム(シノビングコンピューター・e00399)
天谷・砂太郎(チンピラなお兄さん・e00661)
アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)
宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)
草薙・ひかり(闇を切り裂く伝説の光・e34295)

■リプレイ

●四角いリング
 人気の無い中学のグラウンドにケルベロス達が降り立つ。
「少年の夢を勝手に歪めるなんて。助けてみせる。プロレスやってる身としては特にね」
 子供に夢を与えるプロレスを悪用させないと、両腕に鎖を巻き黒を基調としたセクシーコスで獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は意気込む。
「いいですねぇ。凄く前途有望ですねぇ。とは言え被害を出させるわけにも行きませんしここは肉体を駆使して叩いておきましょうか」
 リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)は未来のプロレスラー候補を潰させはしないとリングの設置に取り掛かった。
「超人プロレス……! よもやその言葉をこのリアルで聞くことができようとは! この戦い、負けられない!」
 昂る心を抑え切れずにマイ・カスタム(シノビングコンピューター・e00399)は、その体から闘気を漲らせた。
「超人プロレス……学ぶところも多いかと思いますが、夢喰いは砕かせていただきます!」
 赤いチャイナ服にスパッツと動きやすい服の上にプロテクターを装着した幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)は気合十分で敵を待つ。
「漫画やアニメのヒーローに憧れる気持ちって大切だよね! 明日のプロレス界を背負う男の子の夢を取り戻して魅せるよ!」
 愛用のゼブラ模様のリングコスに身を包んだ草薙・ひかり(闇を切り裂く伝説の光・e34295)は楽しそうに憧れていたヒーローを思い浮かべる。
「そういや一昔前にあったね、そういう漫画」
 天谷・砂太郎(チンピラなお兄さん・e00661)は昔目にした事のある漫画を思い出す。
「でも試合でもないのにわざわざ相手の流儀に合わせて戦うのか」
 そしてやる気満々の仲間達を見渡してこれは止めようがないと納得する。
「格闘家相手でなく、一般人相手に技を使ってしまうなんて、格闘家としてあるまじき行為だと思います、です……?」
 でも格闘かならいいのかと思い至って、アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)は首を傾げる。
「プロレスですか。かつてはプロレスラーはガチで強いと思ってた時期もありましたねえ」
 懐かしむように宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)は遠い目をする。
「現在はショーとして楽しんでますが……って口に出したら怒られますよねえ」
 ふるふると体を震わせ誰にも聞こえぬよう呟いた。
 皆でマットにブルーシートを敷き、大きな木の杭を四隅に突き立てコーナー代わりに、そこへ縄を引いてロープに見立てて簡易リングが完成した。

●超人プロレス
「マッスルマッスルッ」
 裏山から真っ赤なリングコス姿のマッチョなレスラーが下りてくる。その顔だけは少年らしさが残っていた。
「私たちとプロレスしましょう」
 その前に堂々と姿を見せた銀子が近づいてプロレスに誘う。
「そこ行くプロレスラーさん、突然ですがあちらであなたの力を見せてください、です♪」
 アンジェラが呼びかけ校庭に作ったリングを指差す。
「まさか、逃げるとは言いません、ですよね?」
 可愛らしい少女の挑発にレスラーはいきり立つ。
「このオレとプロレス勝負だと! いい度胸だ!」
 筋肉をぴくぴく動かしレスラーが足を止める。
「プロレスラーなど所詮総合格闘技でやられ役になるだけの存在! この天才格闘家であるわたしが真の格闘というものを見せて差し上げましょうねえホッホッホ」
 仲間の後ろに隠れながら挑発した日出武は、チラッと仲間を見て決して皆さんに言ってる訳では無いんですよと目配せする。
「ほぉ? ならばプロレスの神髄を味わえ!」
 颯爽とレスラーはリングに跳び乗ると、続いてケルベロス達もリングに入る。
「前にあんだけいると邪魔になりそうだし、俺は下がって後方支援でもしてますかね」
 一歩下がった砂太郎は、仲間をフォローしようと腕から静電気を増幅した電撃を放ちひかりの体を活性化させる。
「女性陣が前衛で男性陣は後方ですか。うん……羨ましいような面子が立たないような……まあ、華やかな女子プロ風味でもいいんじゃないかな。うん」
 派手なコスと引き締まった肉体美を眺めながらリチャードは手にハンマーを持った。
「無制限一本勝負! ファイッ!」
 そしてカーンッと試合開始を告げるゴングを鳴らす。
「世界にプロレスを魅せつけるつもりなら、まずはこの私を倒してみてね!」
 ひかりは今までに手に入れたベルトと王冠を被り、チャンピオンとしての威厳を見せつける。
「まずはお前からだ!」
 レスラーが掴み掛かると、ひかりは装飾を外して手と手を合わせ組み合う。
「このファイトスタイルを選んだ以上、覚悟は十分なんだろうね? それじゃあまずは破鎧衝から!」
 プロレスで戦うのならば遠慮はしないと、駆け出したマイは横からラリアットを叩き込みよろめかせた。
「いざ勝負!」
 正面から鳳琴が龍状の輝くグラビティを拳に集め大きく踏み込み打ち出す。放たれた龍が敵を吹き飛ばした。
「ふんっ」
 ロープに弾かれて戻り、フロントハイキックを鳳琴に叩き込んで蹴り倒す。
「次鋒、リチャード! 行きます!! グオゴゴゴゴ!!」
 小手調べと突撃したリチャードはその筋肉に止められ、担がれるとボディスラムで場外に投げ飛ばされた。
「どんな分厚い筋肉の鎧も、紅蓮の闘魂が打ち砕く!」
 突っ込んだ鳳琴は龍の如き炎を纏い、反転して背中からぶつかり敵を仰け反らせる。そこへ大きく跳んだアンジェラは虹を纏って急降下して顔を蹴りつける。
「軽い!」
 がっしりとレスラーの腕が脇の下に回りロックすると、持ち上げ潰すようにベアハッグを掛ける。
「わ、わたしごと遠慮なくやってください、です!」
 万力に締め上げられるような痛みに苦悶の顔を浮かべたアンジェラは仲間に呼び掛ける。
「皆さん大変ですね……わたしは格闘家らしく効率的にやらせていただきましょう」
 こそこそと日出武は場外に隠れ、敵の隙をついてバールを振り抜き尖った先端を突き刺す。
「王者の戦いを見せてあげるよ!」
 ロープの反動を利用して高く跳躍したひかりはドロップキックを顔に浴びせる。
「お次はスターゲイザーをお見舞いする!」
 続いて勢いよく跳躍したマイもドロップキックで背中を打ち抜くと、力が抜けアンジェラが脱出する。
「おおっとドロップキックが炸裂したー!」
 実況しながら砂太郎が怪我人に気を拳大の光る玉にして投げつけ、体内に入ると治癒力を高めみるみる内に怪我を癒していく。
「ほらほら、そんなものなの?」
 挑発しながら銀子は螺旋の力を込めてエルボーパットを顔面に叩き込む。
「これが私のクンフーです、超人プロレスの技を見せてみろっ!」
 疾風のように駆け込んだ鳳琴は回し蹴りを放つ。それを腕でガードされると回転して後ろ回し蹴りで腕を弾き、更にもう一度回し蹴りを側頭部に叩き込んだ。
「意識を刈り取ってあげるわ」
 銀子は鎖を操り敵の脚に絡ませて動きを止めると、反対側にハイキックを見舞い頭を打ち抜いた。ぐらりとよろめくが足に力を入れて踏み留まる。
「流石にプロレスラーはタフね」
「この攻撃に耐えられるものなら耐えてみなさい、です!」
 アンジェラはポストに跳び乗り翼を広げて高く飛び、真っ直ぐに加速して敵に体当たりをぶつけた。そして背後から組み付き首に腕を回しスリーパーホールドを掛ける。
 だがレスラーはそのまま背後に倒れてアンジェラを地面に叩きつけた。
「相手の隙をつき、こちらは無傷で最低限の労力で倒す。これこそ格闘家ですねえ」
 その肥満体からは想像できぬ俊敏さで近づき日出武は倒れた頭を蹴りつける。
「そこそこ! その調子で攻めて……むひょひょ~、コレで相手も一貫の終わりだわさ」
 場外で転がっていたリチャードはまるでマネージャーのように指示を出しながら、隠し持っていた栓抜きを投げつけて、瞼から流血させて逃げる。
「パワーの前に小細工は無駄ー!」
 目を閉じたままレスラーは低くタックルするとマイを逆さに抱き上げ、高く跳躍すると地面に脳天を直撃した。
「持ち上げられて……これはパイルドライバー……それもジャンプしてからのマッスルドライバーだーー!」
「うぉ!? ウギャアー!」
 頭を押さえて転がり派手なリアクションでマイがダメージを表現すると、熱く解説を入れながらも砂太郎は気の玉を投げてすぐに治療を施す。
 マイが屈んで痛みを堪えるところに敵が近づくと、一気に立ち上がりチョップを胸に叩きつけまだ戦えると睨みつける。
「まだまだこれからだ!」
「効かん効かん!」
 それに対してレスラーもチョップを返しチョップの応酬が始まる。
「それならこれはどうだ!」
 そこへロープの反動を借りて加速したひかりはラリアットを仕掛ける。だがマイをチョップで膝をつかせた敵が振り向いてラリアットを放ち、相討ちで薙ぎ倒されたのはパワーで負けるひかりの方だった。

●フィニッシュホールド
「マッスゥルーー!!」
 筋肉を膨らませレスラーが吠えて掴み掛かる。
「私もやりましょう……受けきって、勝つっ!」
 仲間を守ろうとした鳳琴の体を逆さに担ぎ上げ高く跳躍すると、両脚を開き落下の衝撃を使って関節を極められる。
「ぐぅううぅッ……!!」
 鳳琴は苦悶の声を漏らしながらも耐え、殴りつけて何とか拘束を解く。
「これは大技! マッスルバスターが綺麗に決まったー!」
 砂太郎はウイルスカプセルを放り投げ、拡散したウイルスにより敵の治癒能力を低下させた。
「空中殺法なら身軽なこちらに分があります、です♪」
 跳躍したアンジェラは星のオーラを纏わせて踏むように蹴り、反動で距離を取った。
 注意が上に向いたところへ、銀子は鎖を首に巻きつけて持ち上げ、背中から地面に投げ落とすチョークスラムを決めた。だが倒れながらも手が銀子の足首を掴み、立ち上がると空へと放り投げ跳躍して逆さに担ぎ両脚を広げる。
「ダ、ダメっ、こんな姿……」
 あられもない姿でマッスルバスターを極められ、着地と共に銀子は声も出ぬ衝撃を受け地面に放り捨てられた。
「そんな筋肉ムキムキのうすらとんかちなんて、そのまま倒してしまいましょう!」
 野次を飛ばすリチャードの言葉が、精神攻撃となって意識を散漫とさせる。
「わたしは天才だ~!! ゆえにプロレスに負ける訳がないのですよ~!!」
 その隙にまるでヒールレスラーのように、日出武は手にした光の剣で背中を滅多刺しにする。
「パワーで負けていても、勝つのは私たちよ!」
 立ち上がったひかりは駆け出しもう一度ラリアット勝負を挑む。互いの腕が交差する時、ひかりは屈んで躱して通り抜け、ロープの反動で戻り振り向いた敵にラリアットを叩き込んでマットに叩きつけた。
「プロレスにのんびり倒れてる暇はないぞ!」
 マイは追い打ちとばかりに膝を上から叩き込み、二―ドロップで鼻を折った。
「フゥー! マッスゥー!」
 起き上がり気合を入れるが阻害され傷が癒えない。そこにマイは素早く背後に回り腰に手を回す。
「受けてみろ! この私の、全身全霊の、忍ジャーマンを!!」
 一気に高く持ち上げるとその加速のまま急降下し後頭部を地面に打ち据えアーチを描く、ジャーマンスープレックスが決まった。
「ぐっこの程度!」
 頭を振ってレスラーは起き上がり、目の前のアンジェラの体を逆さにして抱き上げコーナーに登って高々と跳躍する。
「一度見せた技は破られてしまいます、です!」
 アンジェラは翼を広げて無理矢理空中で回転すると上下が反転し、敵の頭を地面に打ち据えた。
「これは!? マッスルドライバー返しだー!」
 白熱した実況をする砂太郎は掌から帯電するグラビティ製の糸を作り、敵の周囲に張り巡らせて触れる度に痛みを与えて行動を阻害する。
「絶対許さない……」
 ゆらりと立ち上がった銀子の胸元から全身に紋が広がり全身を強化する。
「私の全力、受け切れる?」
 一瞬で接近して蹴り上げ浮かせると自らも跳んで組み付き、きりもみするように顔から地面に墜落させた。
「隙あり!」
 いつの間にかリングに上がり敵の背後を取ったリチャードは、屈んでそっと足を引っ張り妨害する。
「真剣勝負の邪魔だ! 踏み潰すぞ!」
「ははーー! 申し訳ありません!」
 ガバッとジャンピング土下座により命乞いしたリチャードは、その体制から脛に拳を打ち込んだ。
「これが幸家の……私のフィニッシュブロー…、です!」
 鳳琴はプロレスを真似て相手の腰に腕を回して投げ倒し、そこへ龍纏う拳を胸に突き入れた。
「砕けろぉぉっ!」
 龍のグラビティが貫通し地面を砕く。
「レスラーは3カウントまで倒れることはないのだ……!」
 胸に風穴を空けながらも立ってファイティングポーズをとった。
「頑丈ですねえ、なら新しい秘孔の研究にもってこいですよ~」
 日出武が上半身の急所らしき場所へ指を突き刺したり拳を叩き込む。すると筋肉が膨れ上がり破裂した。
「アンタは強いレスラーだったよ」
 ひかりは組み付きフロントスープレックスで投げる。そのまま次々と7種のスープレックスを繰り出し、最後のジャパニーズオーシャンを極めて敵の背をマットにつけた。
「1! 2! 3!!」
 3カウントと共にカンカンカーンと終わりのゴングが鳴り響いた。

●特訓
「いい勝負でした!」
 超人プロレスを学ぶ事が出来たと鳳琴は満足そうに汗を拭った。
「やはりプロレスはこの程度でしたねえ」
 ぼそりと呟いた日出武は誰かの耳に入っていないかと周囲を見渡し、大丈夫そうなのを確認して内心安堵していた。
「そういえば……被害者の少年は保護されてたっけ?」
 プロレスに熱中して忘れていたとマイは大事な事を思い出し、ケルベロス達は裏山へと向かった。
「これで治療は終わりだ、解散解散」
 手早く砂太郎が治療を施すと少年は目覚める。
「でもなんか物足りないな……呑みにでもいくか」
 自分の役目は終わりだとこの後の予定を考え始めた。
「えっと、なんで寝てるの?」
 少年に起きた事件の事を説明していく。
「あなたの武を見せてください、です♪」
「見たいの? 本当は秘密だけど、助けてくれたお礼に見せてあげるよ!」
 アンジェラが少年にお願いし、丸太を担ぐ特訓メニューを見せてもらう。
「諦めずトレーニングを続ければ、きっともっと強くなれると思います、です♪」
 そして一緒に特訓を手伝い始めた。
『2倍のジャンプを加えれば、パワーは倍になる!』
 そんな練習をこっそり眺めながら、リチャードはそう書いたアドバイスの紙を投げ入れた。
「今度は本物のリングで私と試合しようね! 10年位なら待ってあげる!」
「マジ!? おっしゃー! がんばるぞー!」
 有名なレスラーであるひかりの言葉に、目の色を変えて少年の練習に熱が入る。
「少しは少年の夢が満たされたかしら」
 汗を流し充実した様子の少年に、銀子は自然と微笑んで仲間に加わろうと駆け出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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