●愛知、名古屋なバイキング
はふはふもごもご。
「エビフライを口いっぱいに頬張れるなんて夢のようや、こりゃあうまいうますぎるのう」
じゅるじゅるずるん。
「やわらかいのう。この歯ごたえのなさ、味噌で煮込むなんて、見た目ばっちいけど、こりゃまたどうして」
「スパゲッティに餡を掛けるとはのう、じゃが絡みつく熱さがくせになるわ」
「うみゃ〜、うみゃ〜わ。この手羽先、皮のぱりぱりぐあいが最高みゃ〜」
ドスッ……ドス、ドスドスドスドス。
「ん? 何だ、この音は」
重量物を積載した大型トラックのような振動音が近づいて来る。
ガシャーン、クワッ!!
窓硝子を破って突っ込んで来たのは、巨大な鳥のような姿の異形、ビルシャナ——六道衆・餓鬼道であった。
「名古屋、いや愛知メシだと?! うどんにフライ、スパゲッティに小倉トースト……、何でもありじゃあないか、愚弄するにも程がある!!」
次の瞬間、念動力で料理が載ったテーブルを宙に浮かび上がらせると、バイキングを楽しんでいた客を目がけて叩き付ける。
ひゃあやめて、やめてください。
当たり前のように、悲鳴を上げる人々の声に耳を貸さず、六道衆・餓鬼道は大暴れする。
かくして楽しいランチタイムは瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と変わるのだった。
●黒幕あらわる
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)の食べ放題バイキング調査により、六道衆・餓鬼道の足取りを掴むことが出来た。色々食べ歩くシィカの様子を想像しながら、ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は依頼の話しを始める。
「現れるのは、六道衆・餓鬼道。名古屋——いや愛知メシと言うべきだったね。その食べ放題バイキングの会場に襲撃を掛けることが分かった」
九州地方の地図、大分県の別府市の辺りを指し示しながら、六道衆・餓鬼道、当人が、ホテルで行われている食べ放題バイキングを襲撃すると告げた。
「敵は、六道衆・餓鬼道のみ。たまたま目にした愛知(名古屋)メシバイキングの内容が無節操であると、怒っている。と言うわけで、戦場となるのはこのホテルの大食堂。立地は海が遠くに見える山の麓、近くに別のホテルや旅館もあるようだけど、周囲は山地と同じと考えてもらって構わない」
六道衆・餓鬼道は食べ放題バイキングをぶちこわす為だけにやって来ているので、その目的は直ぐに達成できる。
当然、ケルベロスと積極的に戦う理由は無い。故に速やかに戦いを仕掛け、逃亡を阻む工夫は必須になるだろう。
「信者から沢山のビルシャナを生み出したことに見られるように、六道衆・餓鬼道の戦闘力はかなり強大だよ。皆が今までに戦ったビルシャナがどのような敵だったかまでは、僕は知らないけど、手抜かりが無いように充分に注意してね」
六道衆・餓鬼道の攻撃能力は念動力や、教義に因んだものとなっている。攻撃自体はビルシャナの特徴に準じているようだが、その強さは桁違いのようだ。
単独行動故か、逃亡を想定した身軽さを重視していているようで、無造作に仕掛けるだけでは、たちまち逃亡を許してしまうだろう。
「数多くの信者をビルシャナに導いた張本人だ。相応の力は持っているだろうし、一筋縄では行かないと思う。だけどこの事件に終止符を打のは、君らのような純真かつ勇敢で、気力に満ちたケルベロスだけなんだ」
これから向かう場所は難しい判断も迫られる、死と隣り合わせの戦場。分かっているのに、皆を連れて行くのは、六道衆・餓鬼道の影響を受けてビルシャナになる者が二度と現れないようにする為。
今こそあなた方の協力、勇気、力、知恵が必要とされている。
参加者 | |
---|---|
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773) |
アゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528) |
風魔・遊鬼(風鎖・e08021) |
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642) |
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983) |
セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407) |
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677) |
●壊された幸せ
ガシャーン!
バリバリッと硬い物が砕ける音、続いて人々の悲鳴が着地したばかりのケルベロスたちの耳に届いた。
急ごう。
ホテルの建物までの50メートル程を一挙に駆け抜け、大食堂に突入した一行が目にしたのは、我が身かわいさに逃げようとする無秩序な人々の群れだった。
「正義のケルベロス参上デス! 慌てず騒がず、避難をお願いしますデース!」
まずはパニックを収めよう。そう考えて、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は声を張り上げた。
瞬間、全身の武装から迸る前向きで清らかな気配、恐怖から来るエゴばかりだった人々の気持ちが、プリンセスモードの効果によって勇気と友愛に塗りかえられて行く。
出口に向かおうとしていた男が足を止めて、怪我人を助け出そうとしているスタッフに手を貸す。
出口に殺到していた人たちが互いに道を譲りはじめて、次第に秩序が回復して行く。
「誰じゃあ!」
ぐちゃぐちゃの料理が載ったままのテーブルを蹴り飛ばし、六道衆・餓鬼道はシィカを睨みつけた。
軽く横に跳んでそれを避けたシィカの後方で窓硝子が砕け散り、あんかけスパゲティだけが外に飛んで行く。
「よくも、崇高な名古屋メシをこんなに。許し難い暴挙だ!」
いきなり言い放った、ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)が、名古屋愛を語り出す。
「名古屋は全国でも指折りと言える食文化の発展が発達した土地であり、定番からローカル、ディープなものまで、多種多様な料理こそ名古屋メシの魅力だ! 何が不満だ? いやそれ以前に、ここまで食べ物を粗末にして、罪悪感は無いのか?」
足元に散らばる手羽先揚げと餓鬼道を見比べるように視線を上下させる。
「……知らん。な」
くだらん。と、一笑に付する餓鬼道であったが、視線はしっかりミスラに向けられている。
ならばと、言葉を続けようと意気込むが、ネタは間も無く尽きてしまう。
だが、入れ替わるように、ビルシャナの前に、食べ物を持参した3人組が踊り出る。
「またか? 今度はいったい何なんだ!」
「中華まんって色んな味が少しずつ手軽に楽しめて良いですよね〜!」
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)がまず、持参した中華まんにかぶり付く。
瞬間、中華まんの内部に仕込まれた具が弾けた。
「熱っ、あつつつうっ!!」
咳き込む、セレネテアルの様子をみて、餓鬼道は緊張の糸が切れたようにポカンとしている。
すかさず、ジャジャーンと、ポロ袋を掲げるのは、ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)だ。
「うーん、やっぱりひとつじゃなくて、色々なものを味わえるって最高よねっ!」
袋の中には、たくさんのおにぎり、ハンバーガー、サンドイッチが入っており、ジェミは見せびらかすようにしながらそれらを食べ始める。
「もぐもぐ、うん、おいしいっ!!」
そこに負けじと、セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)が、ビハインドのサイレントと並び立ち、見せつけるようにして、フライドチキンにかぶりつく。
次はどれにしようかな?
セデルは無造作におにぎりを選び口に運ぶ。
片手で抱えられるだけの食べ物しか見せていないが、マイバッグの中にはまだ色々入っているようだ。
単一の食べ物を食べると言う教義なら、目の前でいろいろな種類の食べ物を食べれば怒り出す、その予想に反して、餓鬼道は、どうリアクションしてよいか分からずに瞬きを繰り返す。
「先ほどは不覚をとりましたが、中華まんって、スリルもあって良いですよね〜!」
コンビニではチャレンジャーな具材が多くて楽しいですっ! 中華まんの熱のダメージから立ち直った、セレネテアルの語りが冴える。
(「こいつらは、いったい何がしたいのだ?」)
バイキングもぶちこわして気分スッキリ、直ぐにこの場を立ち去るつもりだった餓鬼道は、3人の楽しげな様子がなんだかわからないけれど、気になってしまい、つい興味を抱いてしまったという感じで、眺め続けている。
そんな餓鬼道の気変わりを警戒するように、脇に無人機を浮かべた、アゼル・グリゴール(アームドトルーパー・e06528)は避難が続く出口近くをガードするように立っている。
「このホテルのことを一番しっているのは、キミたちスタッフなのデース!」
だからキミたちの手伝いをする。懸命に動き回り、避難の支援を続けるシィカの姿を見れば、風魔・遊鬼(風鎖・e08021)もまた、その手伝いをするしかない。
ヒールで命を繋がれた重傷の民間人が、次々と運び出されて、自分で動ける者も無事に脱出した。
ホテルのロビーは野戦病院の如き有様ではあったが、誰もがケルベロスたちの来援に感謝し、助けられた命を大切にしなければ。と、気持ちを強くしていた。
そんなタイミングで、窓側を警戒する、花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)は、何台もの救急車が近づいてくるサイレン音に気がついた。
もちろんそれは餓鬼道の耳にも届いている。そして窓の外、植え込みの向こう側で、回転灯の赤い光が揺らめく様を目にした、餓鬼道はケルベロスたちの不可思議な行動の意図を察した。
「言いたいことはそれだけか?」
「もちろんです! ファーストフードですら、それぞれの味があっていいですよね。1種類のみしか食べないなんて、つまらない教義が馬鹿らしく思えます、ねえ皆様?」
「「「ねー!」」」
応じて、セデルが餓鬼道を指し示せば、セレネテアルとジェミが同調して、声を合わせた。
「ほほう、それは何よりだな。で、謀りごとはうまくいったのか?」
人気の無くなった大食堂見渡す餓鬼道は、退路を塞ぐように窓側で身構える綾奈、そして客が残っていないことを指さしで確認しているスタッフの方を見て、嘲るように鼻を鳴らした。
「え?」
次の瞬間、立ち去ろうとしているスタッフたちの方に、錫杖を向ける。
「やめて!」
窓側からの綾奈の叫びが轟くと同時、餓鬼道の念動力が発動する。
即座にアゼルと遊鬼が、身を挺して庇おうと足を踏み出す。
しかし、2人とも攻撃を重視したポジションを取っており、ディフェンダーと同じ動きは出来なかった。
剥がれた絨毯が波を打つように浮かび上がり、たちまちスタッフたちの足が取られる。
そこに宙を舞ったテーブルや食器、ガラス片が襲いかかり万事休す――かに見えたその時、紙一重のタイミングで突っ込んできたジェミとセデルとが、最悪の事態を食い止めた。
「ははははは、さらばだ。ケルベロスの諸君!」
包囲に穴が開くのを狙っていたかのように、餓鬼道は窓側ではなく、扉が開いたままの出口に向かって駆け出した。
そこに、頭上からシィカの声が響く。
「この外道! 絶対に許さないデース!!」
瞬間、天井を強く蹴りつけて勢いを加えた飛び蹴りが、怒りを孕んだ流星となって餓鬼道に衝突する。
「ギャアアッ!!」
楽に逃亡できると思い込んでいた、餓鬼道は思いがけない痛打に悲鳴を上げる。
床に叩きつけられた巨躯は、バリバリと皿やテーブルを砕きながら滑り、大食堂の中心へと戻される。
●戦い
「ここは私たちにまかせて、早く」
逃げ遅れたスタッフを出口の外に押し出すと、ジェミとセデルは傷の痛みに耐えながら、背中で扉を閉めた。
これで避難は完了。もう守るべき民間人は残っていない。
一方、大食堂の真ん中に戻された餓鬼道はぶつけどころのない怒りに震えているように見えた。
「報復には許しを、裏切りには信頼を、絶望には希望を、闇のものには光を。許しは此処に、受肉した私が誓う、“この魂に憐れみを”」
「さぁ、これからが、本当の戦いです」
ミスラの紡ぐ祈りの言葉が力の加護と変わる中、綾奈がメタリックバーストを発動すると同時、放出された無数のオウガ粒子が室内に満ちて、加護を受け取った者の超感覚を覚醒させる。続けて、前衛の間を飛び回る、ウイングキャットの夢幻の羽ばたきが清らかな空気をもたらす。
簡単には逃走できないと悟った餓鬼道が苛立ちから歯噛みする。
一方、幾ら時間を掛けても、倒しさえすれば良い状況に持ち込んだケルベロス側の気持ちは楽だ。
餓鬼道の前で、空気の流れが渦を巻いた。
「皆、避けて!」
またしても念動力を発動したと見破ったジェミが声を上げれば、後ろに跳んで間合いを広げる。
再び、部屋の中にあるあらゆる物が、車輪の如くに飛び回る。ダメージは小さかったが、重ねた加護は霧散してしまう。
アゼルのガトリングガンが唸りを上げる。爆炎の魔力を孕んだ弾丸の連射が餓鬼道に命中して炎が爆ぜる。次の瞬間、火災報知器のベルが鳴り響き、スプリンクラーの放水が始まる。
戦場は土砂降りの雨の如き様相を見せるが、餓鬼道を苦しめる炎は消えない。そこに震える巨体を狙って前に踊り出た遊鬼が螺旋掌を繰り出す。しかし、伸ばした掌は何処にも触れることなく空を切る。
「やっぱり厳しいよね。体を貫く氣の流れ……いっぱい感じてっ!」
セレネテアルは両手の掌を突き出す。放って吸い寄せる気の循環が巻き起こり、その流れの中を飛ぶ、ウイングキャットの、みるにゃが、清らかな気配を振りまいて行った。
敵の姿と前衛を見比べてから、ジェミは間合いを詰める。命中が心もと無いことは理解している。だが、当てさえすれば弱点を破壊できる。
「こいつで、ぶっ飛ばすっ!」
次の瞬間、強い思いと共に繰り出した一撃が巨体を貫く。やった命中した、浮かれるわけでは無いが、気持ちが顔に出る。それじゃあ私も。と、セデルは宙高く跳び上がると、虹の軌跡を描く蹴りを繰り出した。
「援護なしですと、厳しいですね」
蹴撃の勢いを殺すように着地したセデルが唇の端を噛みしめる。しかし、ビハインドのイヤーサイレントが念を込めると、テーブル、食器、ガラスの破片、餓鬼道の足元に散らばるありとあらゆる物が凶器となって襲いかかった。
戦局は先の見えない長期戦の様相を見せる。
それでも逃亡を許さないのは、集中力を保っていたこともだが、ビルシャナ発生の連鎖を絶ち切りたい強い気持ちがあったからかも知れない。
(「こいつも典型的な多様性全否定のタイプです。今、ここで引導を下さなければ、同じようなビルシャナが発生し続けるでしょう。私はいろいろなおいしい料理を食べたい。だからこんなアホウ鳥は食べ物を粗末に扱った報いを受けるべきなのです」)
アゼルの放った刃の一閃が塞がり掛けた傷跡を斬り広げる。重ねられたバッドステータスが花開いた機を逃さずに、遊鬼は踏み込んで、餓鬼道に掌を押し当てる。流し込んだ螺旋が体内で暴れ出す確かな手応えを感じた直後、餓鬼道は口から肉片混じりの血の塊を吐き出して膝を着く。
「さぁ、行きますよ、夢幻……」
前衛への加護が打ち消される度に、綾奈はメタリックバーストを放ち、ウイングキャットもまた清らかな気配をもたらし続ける。これらは直接敵を落とすものでは無かったが、もたらされた癒しと命中精度を高める支援は、それを打ち消すための、一手を敵に強いていた。
「ぷっぷー! 一つの物しか食べないなんて、ただの子供の好き嫌いデース! それでたくさん食べることが教義だなんて抱腹絶倒もいいとこデス!」
シィカが言い放つと同時、煌めきを帯びた蹴りが餓鬼道を打ち据える。
敵に足止めの効果を重ねることは、味方全体の命中率の底上げとなる、これが彼女の足止めに拘わる理由だった。だが、それを重ねることが出来るのはセデルと共に戦うビハインドのソフィアのみ。
破砕音と共に床を滑るようにして吹き飛んで行く巨躯が踏み留まり、錫杖を床に突き立てる。鉄輪のぶつかり合う厳かな響きに応じるように清らかな光が巻き起こり、光の中で餓鬼道は傷の無い姿へと戻って行く。
「ガッデム! それはないのデース!!」
目指す効果を顕す前に打ち消されてしまえば、言葉も乱暴になってくるが、対する餓鬼道はバイキングに怒鳴り込んで来たことを忘れかけるほどに冷静だ。
「餓鬼道さん、あなたは美味かったという過去の事実に固執して逃げてるだけの臆病者ですよね〜! 悟りには程遠いですっ!!」
癒すために振るい続けた力を攻め手に変えて、セレネテアルが包帯にしか見えないケルベロスチェインを投げ放てば、逃れようと跳びあがる餓鬼道を追尾するように伸びて行く。だが長さが足りない、そう見えた瞬間、
「ひとつなんて、せこいこと言わずに、顧客の心を捕らえて放さない、コンビニの多様性に学ぶべきですっ!」
叫びと共に溢れるコンビニ愛が、包帯に極限を超える伸びを与え、逃げ切るかに見えた餓鬼道に絡みつく。
バランスを崩して落下する巨躯。
機を逃さずに、ウイングキャットの爪撃、ミスラの繰り出す、氷と炎、それぞれの名を冠する槍の連撃に穿たれて餓鬼道の巨躯は大きく揺らぐ。
「あと少しよ、ここで必ず仕留めるッ!」
「わかりました!」
ジェミ、セデル、そしてビハインドの繰り出す三連撃が炸裂して、餓鬼道は窮地に追い込まれる。
圧倒的な容量を誇っていた体力は既に癒やせないダメージに埋め尽くされて、癒したとしても後が無い。
アゼルの繰り出した絶空斬が一挙に傷口を開かせたのは、そんなタイミングだった。
「ふ、ふざけるなあっ!!」
瓦礫の山に掛けた足で踏みとどまり、苛立ちを爆発させるように餓鬼道は吠えて、その大きく開かれた口が、アゼルを狙う。それは一点突破で逃走しようとする餓鬼道の一か八かの賭け。
だが、輝く羽根を暴走させた少女が立ちはだかる。
「やらせはしません!」
凜とした叫びと共に綾奈は全身を光の粒子と変えた。そして外に向かって駆け出そうとする餓鬼道に突撃した。
小麦色の暖かな光が空間を埋め尽くし、一際明るい無数の光の粒が舞う。
光が織りなす幻想的な風景の中で、餓鬼道の手から錫杖が滑り落ちて、前に進もうとする脚は動かなくなる。
間も無く、無数の光の粒と変わった巨体は、満開の桜が風に散るようにして、消滅した。
かくして六道衆・餓鬼道は討伐された。
「餓鬼道討ち取ったりッ! これで少しはビルシャナ被害も減るといいわね」
ジェミが明るく勝ち鬨をあげる中、アゼルは黙って黙祷した。
廃墟と化した大食堂は、ヒールを掛けると何ごともなかったように修復され、改めてヒールグラビティの偉大さを感じさせた。
「いろいろあったけれど、ボクはみんなと、戦えて本当に良かったデース」
食べ放題バイキングの調査は大変だったと、お腹の余った肉をつまむシィカの肩をジェミがぽんと叩く。
「それなら筋トレなのね」
「え? ボクはギターより重い物なんて持ったこと無いのデスよー」
そう言って、逃げるように駆け出すシィカだったが、表情はとても明るかった。
作者:ほむらもやし |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月26日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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