「お集まりいただきありがとうございます。現在、創世濁流阻止戦が行われていますが、調査を行っていたケルベロスからの情報によって、新たな事実が判明しました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は手元の書類を確認しながら、集まったケルベロスに任務の概要を説明する。
1つ目の情報は、ワイルドスペースの奥地に城のようなものの存在を察知した、ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)の情報。
2つ目の情報は、『王子様』の本拠地が城であると推測して調査した、久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214)の情報。
最後が、『王子様』がワイルドスペース内で活動していると想定して調査した、フィア・ミラリード(自由奔放な小悪魔少女・e40183)からの情報。
「この3人の調査と、創世濁流に注ぎ込まれたハロウィンの魔力の流れなどを多角的に分析した結果、山梨県の山中のワイルドスペースに『王子様』の城がある事が判明しました。
ワイルドスペースの中心には、『王子様』の居城があり、ティーパーティーなども行われているようです。
このワイルドスペースは『外部からの侵入を絶対に許さない』特性があり、侵攻は不可能でしたが、創世濁流を引き起こした影響で、少数精鋭での侵攻作戦が可能になりました」
侵攻できるケルベロスは100名程度の少人数となるが、絶対不可侵の拠点である事から『王子様』側も迎撃準備を整えておらず、短期決戦ならば充分に勝算があると思われる。
ジグラットゼクス『王子様』を、この戦いで撃破する事ができれば、ドリームイーターの目論みを大きく狂わせる事が出来るだろう。
「あるいは『王子様』の撃破が出来なくても、拠点に攻め込み有力なドリームイーターを撃破する事が出来れば、今後の戦いが有利になるのは間違いありません。
非常に危険な作戦となりますが、皆さんの活躍に期待しています」
続けて、セリカは資料を配る。
「このチームの皆さんは、『パティシエール鈴音』のもとへ向かっていただきます。
『王子様』の側近のお菓子職人で、ハロウィンの五方面侵攻作戦においては鍵で貫いた人々からお菓子型のドリームイーターを具現化して事件を起こしていた存在ですね。
本来は非戦闘要員のようですが、『王子様』の危機となれば、手勢のお菓子型ドリームイーターを率いて駆けつけようとするでしょう」
司令塔であるパティシエール鈴音さえ撃破出来れば、お菓子型ドリームイーターは右往左往するだけで、『王子様』の援軍に向かう事は出来なくなると想定される。
今回の出撃部隊全体の作戦目標は、連携作戦により『王子様』を孤立させ、決戦で倒す事。仮に鈴音の撃破が難しい場合も、『王子様』への援軍を阻止する事が出来れば、充分な戦果となるだろう。
「パティシエール鈴音は、城の厨房にいます。
美味しいお手製スイーツでの魅了を得意とし、甘党を優先的に襲うとの事です。
ただしその優先は『甘党であればあるほど鈴音のスイーツの魅力に抗えず、戦力を削げるはず』という思考からくるようなので、絶対に甘党しか狙わないというわけではなく、それ以上にウィークポイントとなる人員を見つけた場合は目標を切り替えてもくるでしょう。
また、鈴音はジャマーとしてお菓子型ドリームイーターを活性化させます。
お菓子型ドリームイーターはクラッシャーおよびディフェンダー。あまり強くはありませんが、その数はかなり沢山いるようです」
鈴音の優先撃破を目指すとしても、ただ闇雲に狙えばディフェンダーに防がれ、クラッシャーを放置すれば鈴音によって強化されてゆく。何らかの対策が必要となるだろう。
更に、時間がたてば敵は次々と集まってくる。その点にも留意しておきたい。
一通りの説明をして、セリカは深々とケルベロス達にお辞儀をする。
「ワイルドスペース内では、互いに連絡を取り合う方法はありません。ですがこの連携作戦は、すべての部隊がその役割を最良の形で果たし、結果を出す事が出来れば、きっと成果を得られます。皆さんのご武運をお祈りします」
参加者 | |
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ユージン・イークル(煌めく流星・e00277) |
レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931) |
ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294) |
レオン・ヴァーミリオン(焦がれの全域・e19411) |
椿木・旭矢(雷の手指・e22146) |
クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545) |
アイカ・フロール(気の向くままに・e34327) |
キアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085) |
●
トランプ兵チームの奮戦により作戦通り突入を果たし、パティシエール鈴音チームの8名は脇目も振らず城の厨房を目指した。
制限時間は『王子様』のワイルドスペース侵入後30分。向かう先が先だからか、行く手に邪魔が入る事もなく、一同が目的の場所へ到達した時点で、経過時間は約10分。
「早く、王子様をお助けに行かないと……、!?」
王子様のため設えられた素晴らしい厨房で、振り返る鈴音。彼女はまさにこれより恋しい人の救援に駆けつけるべく、手勢のお菓子型ドリームイーターを取り纏めたところだった。
レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)は、厨房いっぱいのお菓子と夢喰い少女達の美味しそうな甘い香りに思わずうっとりしそうになってしまうが、グッと我慢する。
「いいえ……何でもありません。王子様への恋だなんて童話のようで素敵ですね? ええ、そう考えていただけですとも!」
本音では美味しいスイーツに目がない。だがそれを敵に悟られるわけにはいかないのだ。
「恋心とは甘いお菓子のようなもの。パティシエール、あなたの恋もきっとそうなのでしょう」
キアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)は、蝶の輝きを象り描き出す二本の槍を両手に構え、真っ直ぐに鈴音を見据える。
「叶わぬ恋ほど苦いモノもないけれど、君の恋を此処で止める。存分に恨むといい」
レオン・ヴァーミリオン(焦がれの全域・e19411)もまた、黒塗りの白衣の裾を翻し飄々と立ち塞がる。
「あなた達ケルベロスね。私の恋も、王子様も、止めさせなんかしない……!」
鈴音は片腕を横へ広げる。その合図でお菓子の少女達が、鈴音を守る陣形を展開する。
アイカ・フロール(気の向くままに・e34327)は、ウイングキャットのぽんずのもっふりした尻尾を撫でて後衛に促し、襲い来る夢喰い勢に立ち向かう。
「パティシエール鈴音さん、ようやくお会い出来ましたね。『王子様』の元へは行かせません!」
ゼリーパフェの魔法、マシュマロの雨。甘いお菓子が飛び交う戦いが始まる。
●
「甘い物が好きなのは誰? この香りに抗える?」
鈴音は空中に粉砂糖や素敵なスパイスを撒いて、技巧を凝らしたお菓子を自分の周囲に具現化する。魅惑的なその香りが、前衛を襲う。
「うわぁっ、なんて美味しそうなんだ!」
「ううっ、今は戦わないといけないのに、素敵な香りに涎が出そうであります!」
ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)と、クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)。手筈通り、盾役の二人が全力で魅了されたふりをする。
ユージンは戦闘前から持参のお菓子を食べる姿を見せ、クリームヒルトは厳選したお気に入りのスイーツのアクセサリをこれ見よがしに装備している。その上示し合わせての演技、文句なしに効果的だった。
ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)は特別製の杖を振るい、その前衛をヒールする。
「美味しいでしょ? 私なら甘党のあなた達を満足させられます」
わざと鈴音に聞こえるように言う。魔女の家(レープクーヘンハウス)を掛けられた味方は甘いお菓子に囲まれたような気分になっているはずで、それをもって盾役の甘党アピールの一助とする目論見だった。
だがその精神的な効果は敵にまでは伝わらず、鈴音は不思議そうに首を傾げたのみ。思うようにはいかなかったが、有用性としてはジャマーからのBS耐性付与が残った。
「お菓子達! そこのネズミのウェアライダーと、甲冑のヴァルキュリアを狙いなさい!」
「しまった! 卑怯であります!」
掛かった。クリームヒルトは作戦通りとの思いを内心だけに抑え、盛大に焦る演技をしてヒールドローンの群れを操り、味方を警護させて盾とする。
「甘いものなど女子供の食べるもの! 俺は女子供は大好きだが甘いものはキライだ!!」
椿木・旭矢(雷の手指・e22146)は逆に、攻撃手として被弾を避けるべく大きく宣言。本心では好きな気持ちをひた隠し、催眠にも防具で抗った。
(「百でも二百でもかかってこい……!!」)
対多人数は燃えるところ、全力を持って迎え撃つ。九尾扇の羽を多節鞭の如く伸ばし、群がるお菓子の少女達を打ち据える。
『食ベテ、食ベテー!』
ドーナツのリング、キャラメルの礫。お菓子の少女達は鈴音の指示に従い、盾役の二人目掛けて甘いお菓子で攻撃してくる。
「しまった、思わず!」
ユージンはお菓子攻撃にわざと頭から突っ込み、さも独り占めしたくて抗えなかったという風に仲間を庇う。身体を張ってのアピールは、敵の目をまんまと欺くのに充分な演出だった。
●
「貴女のお菓子はあまりに魅力的とのこと。確かに自信に違わぬ腕前なのでしょう、けれど貴女に時間を与えるほど私達は甘くはないのです!」
竜砲弾を放ち、レカが狙うは鈴音。囮となる友達に寄せる信頼を砲撃の力に変える。
仲間が敵前衛を蹴散らしている間に、鈴音の下拵えをするのが彼女の役目だ。
「僕は、甘いお菓子なら大切な人にもらってるから遠慮するよ。まぁ君と同じく片想いだけどね、鈴音さん?」
レオンもお菓子は囮役に誘導するよう振る舞いつつ、敵の集中攻撃を受けたユージンを緊急手術で大きく回復させる。そうしながら、後方から敵群の行動を観察し、予測を組み立てる事も怠らない。
「王子様のためにお菓子を作れるなら、片想いなんて些細なこと。私のお菓子の魅力が分からない可哀想な人達は後で片付けてあげる、さあ、もーっと美味しくなりなさい!」
鈴音は手元でホイップクリームを泡立て、お菓子の少女達へぽいぽい飛ばして追加する。
「そのお菓子でこの甘党達を満足させることが出来るでしょうか!?」
アイカも囮役を指さして、敵の攻撃の誘導に務める。甘い香り、美味しそうなお菓子攻撃――激しく魅力的だが、甘党である事は作戦のため必死に隠す。
「ますます、おいしそうな姿で戦いにくいでありますね!」
クリームヒルトは更にもドローンを操り、防御を固める。囮となる以上、最大限の守護を重ねておきたい。
「見事なお菓子だと思いますが、あくまでそれだけのこと。相手のお菓子に惑わされるほど理性を失くしてはおりませんゆえ」
キアラもまた攻撃の担い手側。甘い物は好きな方だが周りのお菓子には目もくれず、殊更に興味のない素振りを見せて、冷気を帯びた手刀でお菓子の少女達を凍結させるべく薙ぎ払う。
『甘イヨ、美味シイヨ!』
ビスコッティの槍、ベリームースの波状攻撃。お菓子の少女達は少しずつ数を減らしながらも囮役を狙う。
「アイカちゃん、足止めだ!」
「はい、ユージンさん!」
ユージンが槍を構えて高速の回転斬撃を繰り出し、アイカは黒太陽を具現化して黒光を照射する。二人の息の合った攻撃が、お菓子の少女達から回避の余裕を奪う。
そこへぽんずは太い尻尾を振るってキャットリングを飛ばし、ユージンのウイングキャットであるヤードさんは白い清浄の翼ですかさず味方を癒す。
「生意気ね! これでも食らいなさい!」
濃厚チョコレートケーキと甘酸っぱい杏ジャムのハーモニー、ザッハトルテがユージンに放たれる。鈴音のスペシャルデザートだ。
「ぐはっ! なんて心が満足する一撃なんだ!」
防具でしっかり軽減しながらも、彼は勿論演技を忘れない。実際美味しいのだけれど。
「仮にも食に携わる職人が悪事に加担するなんて許せません!」
ズミネが高らかに『幻影のリコレクション』を歌い上げる。甘い声による歌がお菓子の少女達の戦意を揺らがせ、鈴音による活性化と拮抗する。
(「黒焦げにするのがもったいないような、うまそうな女の子達だが……そうも言ってられないか」)
旭矢は心の内でだけ思い、灼熱のドラゴンブレスを吐いて焼き払う。お菓子の少女達が崩れて消えた後には、香ばしいカラメルの匂いが漂った。
「ディフェンダーは焼き菓子だね。これで2体以下だ」
後方からの観察に基づき、癒しの雨を降らせながらレオンが告げる。
それは、盾役が手薄となった鈴音に狙いを切り替えるという作戦合図。
「効いているように見えるのに、こんなに耐えるなんて……召し上がれ、スペシャルデザート!」
効率的に戦力を削ぐはずが思い通りにならず、鈴音は焦る。クリームヒルトを襲うは、特製フレッシュフルーツタルト。
「こ、これは……なんて美味しいでありますか!」
特別甘党というほどではない彼女だったが、それを差し置いても鈴音のお菓子は本当に美味しくて、思わず演技を忘れそうになるほど。治癒の光翼(チユノコウヨク)を広げて、仲間もろとも自身にキュアを掛ける。
(「あのスイーツは食品サンプル、食品サンプル……!」)
アイカはつい視線が羨ましそうになる。ああ、サクサクのタルトに色とりどり宝石のような果物! だが悟られてはいけない、歯を食い縛り耐える!
「私の矢がアイカさんのお力となれるのならば、どのような相手でも射抜いてみせましょう!」
「レカさん……! ありがとうございます、ご一緒します!」
自然と身体が動く。妖精弓をキリリと引き絞り放ったレカのハートクエイクアローが鈴音を射るのに合わせ、シャドウリッパーの密やかな斬撃で急所を掻き斬るアイカ。
「くっ! こうなったら、構ってられないわ!」
鈴音は甘党の優先排除を断念し、後衛へ魅惑の香りを撒き散らす。合わせて手勢の攻撃対象も切り替わる。
「立て直させませんよ!」
ズミネが杖から雷光の魔法を迸らせ、鈴音へ向けて放つ。パラライズの嵐が襲う。
「甘い想いは好きですが、甘いだけのお菓子はご遠慮願います。パティシエール鈴音、お覚悟を」
根底の内気さも泣き虫も押し隠し、戦闘中のキアラは勇猛果敢な戦乙女。御業が炎弾を放ち、鈴音をあちこち焦がす。
(「アラームはまだ鳴らない。このまま、押し切る!」)
への字口の無表情で、弱点とも脅威とも見られぬように控えめに、旭矢は淡々と仕事をこなす。可能な限りお菓子からは視線を外す。数多の稲妻を呼び寄せ、手指に似て敵を掴み取る雷の手指(ライノシュシ)。
(「……大事な友達を、最後まで守るんだ。恋心じゃない分劣るかもしれないけど、鈴音さんが戦う理由と一緒だね」)
囮役を果たして積み重なった痛手に、身体が思わず膝をつきそうになった。けれどまだ仲間の盾となるべく、振り払うようにシャウトして、ユージンは再び立ち向かう。
「男の子の意地、見せてあげるよっ!!」
●
ケルベロスの戦いは群れでの戦い。一丸となって目的を遂げようとする強い意志の重なり合いは、どんなスタンドプレイよりも確かな勝利を近づける。
周到に突き詰めた作戦、個々人の役割を果たす熱意、仲間との信頼関係。
彼らは持ち得る力を最大限に尽くし、不安要素があっても皆でそれを補い合えるだけの努力を積み重ねた。その想いは裏切られる事無く、申し分のない戦果を得る形で発揮された。
「うぅ! こんな、ところで……!」
劣勢となった鈴音。ズミネの鉄扇によってジグザグに斬り裂かれながらも、力を振り絞りお菓子を放つ。華やかなクロカンブッシュがメディックを襲う。
「ボクが護るであります!」
大きなシールドを掲げ、クリームヒルトが庇う。テレビウムのフリズスキャールヴの応援動画に癒され、どこまでも仲間を護る。
「あなたのその恋心は人類の敵――甘い夢は此処で終わりにします!」
金色に光り輝く胡蝶の翼を広げ戦うキアラが、一羽の黄金に輝く光の胡蝶を召喚し、閃光の如く突撃させる。既に動きも鈍い鈴音を追尾によって追い詰め、重い威力を炸裂させる胡蝶閃(コチョウセン)。
旭矢がハンマーから放つ凍結の一撃。手近な焼き菓子の最後、フロランタンの盾で鈴音を庇ったお菓子の少女が、しゅわっと炭酸が弾けるように消える。
「これで、簡単には庇わせない」
遠巻きからはまだお菓子の少女達が集まって来ようとしているが、鈴音が指揮する余裕をなくしているためか、即座に割り込んでくるようには見えない。
「僕にもお菓子をどうも。でもこれは鈴音さんが大切なひとのために作ったものだろうし、ね。――さようなら。地獄で会おう」
受け取らないよと微笑んで、レオンは悪性因子・無限縛鎖(マリグナント・バインディング)を与える。地を這いずる鎖となった影が敵を殴打し、更に追い込む。
「王子様……! 鈴音は、王子様のために……!」
鈴音はオレンジ色のカップケーキを握り、満身創痍で尚も戦意を失わない。
仲の良いユージンとレカがそれを阿吽の呼吸で足止めして、アイカに振り返る。
「今だよ!」
「決めちゃって下さい!」
仲間達が、そして友達が作ってくれた隙に、アイカは最大限の力で黒影弾を放つ。
「――鈴音さんっ! 私も、一口食べてみたかったですっ!!」
最後の時まで耐え抜いた、心からの叫びだった。パティシエール鈴音は砂糖細工のように撃ち砕かれ、その甘い恋心ごと打ち果たされた。
アラームが短く鳴り、すぐ止んだ。レカがリストウォッチに設定していた残り時間、10分前を告げる音だった。
●
鈴音を撃破した後のお菓子の少女達は右往左往するだけで、攻撃して厨房の奥に逃げ帰らせる事は容易であった。これで王子様の増援に向かう事はない。
「撤退まで、あと何分だ?」
「ええと……あれ? 過ぎてますね」
旭矢に尋ねられ、時計を見て首を傾げるレカ。強制的に弾き出されるはずの時間から、僅かながら確かに過ぎている。
「ということは、時計塔を目指した方々が成功したのですね」
無事に戦闘を終えた安堵感から目尻に浮かぶ涙を拭い、キアラは超越の魔女チームの動向を察する。
「後は、王子様との決戦に向かった方々次第ですか」
ズミネは扇に付着したお菓子の欠片を払い、案じるよう振り仰ぐ。
「きっと大丈夫であります。皆様を信じるでありますよ」
フリズスキャールヴを労うクリームヒルトが言う通り、ここは信じて、祈るしかない。
だが彼らが無事に王子様のもとへ辿り着いていたなら今頃、パティシエール鈴音が増援に現れない事から、こちらのチームの成功が伝わっている頃だろうか。
「名残りは惜しいですが、私達も撤退でしょうか?」
強制撤退にならないとあらば、自主的に撤退するのみ。主を失った厨房で、残されたお菓子に我慢出来ずあれこれ味見していたアイカは、今もマカロンを頬張っている。なお、ぽんずとヤードさんも。
「食べてたんだ。まぁ普通に美味しそうだよねぇ」
「さすがアイカちゃん、輝かしいやっ☆」
レオンがのんびりと愉快そうに言い、ユージンがキラキラ明るく笑う。
誰一人として深手を負う事もなく、8名と3匹揃って作戦は終了。ケルベロス達は、課せられた役割を最良の形で果たす事に成功したのだった。
作者:青雨緑茶 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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