狂騒の秋薔薇

作者:森下映

 秋薔薇が見頃の薔薇園の中を、20代前半くらいの女性が、丁寧に様子を見ながら歩いている。
「うん、みんな夜もとってもキレイだね! おじいちゃんも空から見ててくれてるかなー?」
 祖父の持ち物だった薔薇園の世話を継いでもう1年が経とうとしていた。昼間は一般開放をして、地域の方に楽しんでもらう――という祖父のやり方も継いでいる。
 まだまだ勉強が必要なことばかりだけれど、難しいこともたくさんあるけれど、薔薇はいつも彼女の心を高揚させ、時に優しく、今は天涯孤独の彼女を慰めてもくれる。
「よし。明日は早朝開園もあるしそろそろ……、ッ!」
 突然彼女の後ろから蔓の様なものが伸び、たちまち彼女を縛り上げると棘を伸ばして刺し貫いた。
「どう……し、て……」
 女性はがくりと頭を垂れ、意識を失う。彼女を襲ったのは巨大化したハイブリッド・ティーローズ。謎の花粉にとりつかれ、攻性植物になってしまったのだ。
 宿主を得た大輪の薔薇の、怪物じみた声が辺りに響いた。

「大事に育てていた薔薇に襲われるなんて辛かっただろうな……」
 気を失う前の女性の言葉から慮り、ベラドンナ・ヤズトロモ(ガラクタ山のレルヒェ・e22544)が言った。傍には白毛に光を湛えたボクスドラゴンのキラニックスもいる。
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、
「ベラドンナさんのおかげで予知できたのは幸いでした。急ぎ現場に向かって攻性植物を倒して下さい。簡単ではありませんが、女性を救い出すことができる可能性も残っています」

 攻性植物は1体のみ。戦闘時には捕食、触手、光線といった攻撃方法を使用する。ポジションはクラッシャー。
「取り込まれた女性は攻性植物と一体化しており、普通に攻性植物を倒すと死んでしまいます」
「でも、相手にヒールをかけながら戦うことで、戦いが終わった後に助けだせるかもしれないんだね」
「はい。ヒールグラビティをかけてもヒール不能ダメージは少しずつ蓄積しますので、粘り強く戦えば助け出すことができるでしょう」

「難しいかもしれないけど、頑張らなきゃ」
 ベラドンナは手にした銀槌をぎゅっと握り、
「皆さんも、よろしくお願いします」
 白角のある茶髪の頭をぺこりと下げた。


参加者
藤守・つかさ(闇視者・e00546)
八剱・爽(エレクトロサイダー・e01165)
高辻・玲(狂咲・e13363)
メアリ・メアリ(花と遊戯・e22394)
ベラドンナ・ヤズトロモ(ガラクタ山のレルヒェ・e22544)
イヴリン・アッシュフォード(アルテミスの守り人・e22846)
薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)
宝来・凛(鳳蝶・e23534)

■リプレイ


「メアリちゃんたちは初依頼だから、キラキラがお兄さんみたいに守ってあげてね」
 象牙かミルクか滑らかな角に薄色の柔髪。ベラドンナ・ヤズトロモ(ガラクタ山のレルヒェ・e22544)が言い聞かせると、ボクスドラゴンのキラニラックスはフンスとちょっと張り切っている様子。愛称の通りキラキラ輝く真っ白な光と炎の竜。メリーは黒い肌に巻き角、ふわふわ巻き毛に翼を隠した眠たげな瞳の羊の仔の花食み竜。薔薇に鼻先を近づけ興味を示している。
「育てたお花が誰かを傷つけるなんて、きっと悲しいことです」
 片手には灯花の燃えるガラスのランプ、もう片方の手には短めのロッド。たっぷりのレェスと色とりどりの花の香を纏った花詠みの少女メアリ・メアリ(花と遊戯・e22394)は編み上げの靴で一歩一歩先を急ぐ。
「だからメアリ達で止めましょう、お姉さんを助けましょう」
「うん」
 ベラドンナにとっては妹の様にに可愛いばかりのメアリ。大きな銀の瞳に見上げられると護らなければと思うとともに自分も強くなる気がする。
(「こんなところにまでデウスエクスの手が及んでしまうのだな」)
 黒髪に連なり咲いて玉となる髪飾り、耳元に揺れる銀は月を見上げて華送る猫。イヴリン・アッシュフォード(アルテミスの守り人・e22846)。
(「私たちの力で平和を取り戻せねば」)
 多くの者に平和な世界を。気づけば心を得て森で暮らしていたレプリカントの確固たる願い。
「人が想いを寄せるものを利用するのが得意だよな、ホント……」
 夜風と薔薇の薫りが括られた襟足の髪を撫でていった。藤守・つかさ(闇視者・e00546)。喪に服す黒を纏い手にする日々はまだ続く。それでもブレスレットのレプリカは思いとともに優しく、誓いととともに強く、白が在る事での黒。
「これで何度目かしら?  今回も必ず救出しますわ」
  白衣を羽織り、愛用の貴石を銀の髪に尖り耳に、指に胸元にと身につける。薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)。今日はランタンもたくさんぶら下げている。
(「御爺様が遺した、宝物――」)
「大切な命と花園を、狂える植物に明け渡す訳には行かないね」
 高辻・玲(狂咲・e13363)が言い、
「そやね」
 薔薇園は春以来の宝来・凛(鳳蝶・e23534)。あの時選んだ、玲の黒髪に冠の如く咲く深紅の花と同じ薔薇。試行錯誤し育てた花が咲いた時の感慨は一入で。それだけに女性の心を思うと居ても立っても居られなかった。自分と似た境遇も。
「気持ちよく秋薔薇楽しめるよう頑張ろ……あ」
  八剱・爽(エレクトロサイダー・e01165)が振り返った。水色の髪と宝石染で作られた衣服の袖と裾が柔らかく流れる。
「でも早朝開園あるんだっけか。長居はしない様にしねーと」
 軽い言葉と身のこなし。ヘッドホンをつけ星の欠片散らしブレードを滑らせる姿は怖いものはなさそうで、けれど脆さを抱えてもいそうで、隙あらば夜が爽と遊ぼうとする様で。
 そして前方、蠢く影が見えてきた。
「ひどい」
 思わずベラドンナが言う。蔦に絡みつかれ棘に刺し貫かれた女性の正気のない肌の色が皮肉にも薔薇の赤に映えて浮かび上がっていた。


「ギシャアアアア!」
 赤薔薇は咆哮のち触手を伸ばして襲いかかってきた。
 しかしその時には既に爽の唇は古代語の詠唱を奏で終わっており、
(「異形から戻す事は叶わぬも、出来る限りは」)
「彼女とこの地の平穏は取り戻してみせよう」
 玲は紅字の護符を1枚、御業に命を下す。爽の全身から発射した様に見えた光線と、巨大な掌となって摑みかかる玲の御業が広角から薔薇へ向かうと同時、つかさは近道だと言わんばかりに真っ向から蔦を飛び抜け、潜り、蹴り飛ばし、黒槍を手に駆け抜けると花の口の中を裏まで突き通した。通電に震える花を間髪いれず光線が穿ち石化した全身を巨大な手が握り潰す。
「心の支えを……家族も同然の人と花の関係を歪めるなんて、ほんま忌まわしい」
 右目に残る一筋の刀傷。瞼の裏には過去が焼きつく。しなる黒鎖が凛の袴を捌いた足元に守護陣を描き出し、ウイングキャット瑶は主人の髪に咲く椿柄の羽織靡かせ飛んだ。伸ばした爪でまずは右で次に左でと瑶が見事に薔薇を引っ掻くと、なぜか玲が満足げ。
 庇いに入ったイヴリンへ絡み付こうとする蔦。志願した役目、イヴリンは凛からの加護をも得て躊躇いなく立ちはだかる。
  が、突如出現した雷の壁に触手が怯んだ。
「今ですわ」
 ロッドに残る雷の残滓を振り払いながら、怜奈が言う。イヴリンは蔦に絡みとられる寸前にアームドフォートをの主砲を全開、一斉に発射した。
 悶え苦しむ薔薇、イヴリンの手足にも蔦の棘が傷を刻む。だがそこに竜達の回復。後遺症を取り除き、傷を癒す。
「わたしも守りを固めます」
 風信子色の豊かな髪がふわりと揺れて、鎖が作り出した魔法陣が仲間へ守護の呪を重ねた。ベラドンナは軽く合図をしたつかさに 1つ頷き、竜の銀鎚【ブレシンの災厄】とトンと地面へ打つと詠唱を開始する。
「『滅びの王国より、記憶を呼び起こす。火刑台の主。狂気の松明よ』」
 喚び起される刻まれた記憶、封じられた狂える竜の尾がベラドンナの琥珀の瞳に閉じ込められた様に映り込む。黒煙に乗った渦、哮りつつも狂花の花弁がはらりと枯れ落ちた。
「この戦場で誰一人倒れさせませんわ」
 ヒールの足で斬り込んだ怜奈がお得意の秘薬と魔術でオペを施した。女性の肌色が戻り始めるとともに薔薇も勢いを取り戻す。
「粘り強く、ですわね」
 怜奈が言った。


「デカっ!」
 自分を飲み込もうと薔薇が開けた口を見て、爽のピンクの瞳が丸くなった。そこへチリンと鈴の音。後方からキラニラックスが爽の前に飛び出る。代わりに飲み込まれ毒に白い毛並みが染まった後も、熱色の瞳は一歩も退かない。
「サンキュ!」
 キラニラックスの横、Meteorbitで地面を叩き、両膝を胸へひきつける様に爽が同じ高さまで跳び、
「俺もきっちり働かねぇとな」
 長い足を空中で胡座に組み、親指と人差し指で摘んだスマホをゆらゆらさせたかと思うと、爽と薔薇がノイズに歪んだ。
「『快楽に沈め』」
 絢爛豪華夢又夢。誘いこむ電脳世界の仮想海庭さあご一緒に。薔薇をも虜に見返る爽は、
「調整よろしく!」
 スマホに術式をしまい、トンと伸ばした両脚で着地、つかさに伝える。
「ああ。救い出す為にもきっちり回復するさ。 『満たされて咲き乱れろ、輝ける華』」
 つかさの全身が蒼く輝き、少しずつ光が花弁の形となって上に向けた掌に集う。そこへ流し目1つ。ぶわりと渦を描く様に飛びゆく癒しの華が薔薇と女性へ届いた。
「キラキラ、大丈夫?」
 ベラドンナがロッドを本来の姿へと変化させながら言う。キラニラックスは振り返りはしないものの尻尾の先をゆらり。『月を追うもの』はベラドンナの手元から一直線に薔薇へと向かい、花弁を茎を食い破った。
「ダメージの増加が認められますかしら」
 怜奈はロッドをメスと使い、太茎を断つように切開手術を施す。
 ヒール量は中衛2人の回復でほぼ賄うことができた。またアームドフォートの砲撃を見切られ躱されることの多くなってきたイヴリンへは玲が声をかけ、手加減攻撃を挟む。
「!」
 薔薇が吐き出した光線の前に凛が飛び込んだ。熱い。右の瞳の地獄が啼く。だが、
「負けへんよ!」
 凛は炎負った手で刀を抜く。瑶が尾をしならせ飛ばした二重の球飾りが蔦を縛り上げたと同時、一閃。呪は炎を消し止め、斬り払われた斬撃は弧を描いて薔薇の咲く上を走り、重ねて狂花の『首』を締め上げた。そして、
「『全て、断ち斬る』」
 狂咲は自らも同じ、想いは掠めど心は今此の時に研ぎ澄ます。玲の鮮烈な刀の閃きのち鋭く涼やかな太刀風が狂花を襲った。逃げられぬ重圧に花弁散らした姿を認め玲は納刀、瑶は頰の血を拭う凛の顔を覗き込む。とそこへ、メリーが傷を癒しにやってきた。
「おおきに」
 凛が言う。途端辺りに雪が降り始めた。
「『白は純粋。穢れを知らぬ花の加護を、灯しましょう、灯しましょう』」
 雪とも見えたのは白い花。メアリがくるり、花々がくるり。純潔の象徴たる白い花弁が降り注ぐ、癒しと浄化の花魔法。親の事は知らないけれど導の魔女を師と持って。メアリの魔法は今仲間の番犬達のために花開く。


「通さない」
 黒髪が捲れ上がり、緑の双眸が見えた。イヴリンが盾にした肘下が直撃を受け燃え上がる。その後ろから飛び上がったつかさへ歯を剥き出して薔薇が襲いかかる。が、つかさは花弁を蹴って勢い後ろへ宙返り、空いたスペースにそつなく入り込んだ怜奈が回復をかけた。
「様子が少し変わったかしら」
「そうだな」
 逆さのまま一瞬つかさが目を閉じる。瞬間爆発が起こり、薔薇の蔦が弾け飛んだ。目を開けたつかさは足を振り抜き着地する。
「ゼファーくん、お願いします、ね」
 西風の精霊の吐息がメアリの元からイヴリンへ届き、加護となった。メリーも疲れを見せずに回復を重ね、メアリと共に戦線を支える。手応えが番犬達に生まれつつあった。
 ブレードにあしらわれた輝石が地上に星が落ちた様に瞬いた。爽の手加減をいれた蹴り。
「こんなもんじゃねぇの?」
 爽が言い、
「畳み掛けてみましょうか。 『エルバイトシュトゥルム』」
 怜奈は耳元から外した電気石へ秘薬を一垂らし、極限増幅した静電気を突風に乗せて放つ。イヴリンは演算回路を高速で機動、身の丈程もある緑に染まる弓を引き絞った。放たれた矢は荒れ狂う電気嵐に荒れる花の中央を射抜く。
「悪夢はもうお仕舞。 彼女は現に――君は深い眠りに就くと良い」
 磨き抜かれた刀身が玲の手元で閃き、
「散らす他に手が無くて堪忍ね。せめてこれ以上の悲劇が起きんよう、彼女を返して――お休み」
 さぁ――遊んどいで。凛の元から焔の胡蝶が飛び立った。太刀風が戯れに止まる業華の勢いを増し、苦し紛れに薔薇が放った光線は、しゅるりと杖から蛇の姿に戻ったウルくんがメアリの腕に巻きつき蛇睨み。熱線と石化の光線がぶつかりあって砕け散る。
「キラキラ、あと少しだよ」
 そう言ってベラドンナが詠唱に入ると、キラニラックスは光と焔のブレスを浴びせかけた。そしてベラドンナの指先に星が瞬き、光線に貫かれ、完全に石化した薔薇がぼろりぼろりと崩れ始める。番犬達は一斉に駆け寄り、女性が地面に落ちる前にイヴリンが抱きとめた。
「よかった……」
 ベラドンナがマントをさっと女性にかける。
「直ぐに回復しますわ。 ……と、」
 怜奈が振り向き、
「男性陣は此方を見ない!」
「お、おう」
 勢いに釣られくるりと気をつけの姿勢で爽が後ろを向いた。キラニラックスもベラドンナの匣鞄にすぽん。つかさは後ろ向きのまま、
「あー……おつかれさん」
「お疲れ様」
 玲が苦笑した。


「久しぶりに作業着じゃない服着たよ」
「とってもお似合いです、よ」
 メアリが花魔法で編んだドレスには、さりげなく薔薇があしらわれ。
「……素敵ですわね」
 怜奈も感嘆する。そして女性の申し出に甘えそれぞれ散策へ。
「幻想的ですわね… …でも、少し寒いかしら?」
 怜奈は白衣の前を留め、
「では僕は瑶様が冷えるといけないから、」
 玲はちゃっかり瑶を自分のストールにくるんで抱えた。
「嗚呼、花ともふもふ……天上にいる気分だよ」
「はいはい温かくて良かったな」
 凛はそう言って自分はもふらーを巻き直す。
「フレンシャムですね」
 玲の薔薇を見て女性が言った。
「私のもなかなかですよ! 赤ならこれも自慢です」
「パパ・メイアンかな。秋は香りや色が深まるというけれど、これは一際素晴らしいね」
「春も綺麗やったけど、秋もまた違った情緒があるね」
 ビロードの様な花弁に顔を近づけ凛が言う。
「頑張ればこんなに深みが出るんや、凄いなぁ」
「なぁ、白い薔薇でオススメある?」
 爽が言った。白薔薇は彼が好きな歌姫のモチーフフラワー。写真を撮って差し入れのメッセージカードにしたい。
「これはどうでしょう。ファビュラスというんです」
「うわ、何ていうか……ファビュラス!」
  幾重もの花弁を湛えた白薔薇を撮影しながら爽が言う。女性は笑って、
「ぴったりの名前ですよね」
「っしゃ、いいの撮れた! 写真だと香りは残せなくて残念」
 爽は白薔薇に鼻先を近づける。
「勉強にも癒しにもなって、彼女にもおじいさまにも感謝やね」
 凛が言う。玲は瑶のご機嫌をとりつつ頷き、
「次の春も遊びに来たいものだね」
 この先も花と幸に満ちた日々が続くように。
 どうか此処に平穏が在り続けますように。
 願わずには、いられない。


「ベルお姉さん」
 手近な薔薇を眺めていたベラドンナの元にメアリが駆け寄る。
「もしよければ一緒にお花を見ませんか?」
「もちろん! キラキラはメリーのことみててあげてね」
「きらきらくん、よろしく、ね」
 キラニラックスは任せてとばかり胸を張る。ベラドンナは華篝を借り、メアリと手を繋いだ。
「夜だからかな、薔薇の香りが強いね」
「メアリ、ドワーフですから今もお昼のようにはっきり見えるけど、夜闇に混じる薔薇の花って、きっと妖しくきれいなのでしょう、ね」
「うん。なんだか不思議」
 言いながらも、繋いだ小さな手の温かさがくすぐったい。と、薔薇の前に立ち止まる人影が見えた。
「イヴリンさんもお散歩ですか?」
「ああ。ベラドンナは薔薇の品種などは知ってるか?」
「私、薔薇は詳しくないのです……」
「そうか。私もだ」
 にっこりと微笑むイヴリン。
「でも、秋薔薇は香りが良いというお話を聞きました」
「では目で楽しむだけではなくて、こうやって芳香を観賞するのも秋薔薇の醍醐味なのだな」
 イヴリンが目を閉じる。薔薇の香りは、以前暮らしていた森の香りも思い出させただろうか。


(「品種なんて詳しくないけど、綺麗なものは綺麗、だよな」)
 つかさは、時折立ち止まっては薔薇を写真に収めていく。恋人も娘の様なテレビウムもきっと喜んでくれるはず。
「つかささん、お一人ですか?」
 ベラドンナとメアリが通りがかった。
「ん? 今日は、独りかな?」
「今日は?」
「ああ。 今度は恋人と来たいから、下見中ってとこだな……」
「恋人……大人は違う……」
 ベラドンナもお年頃ではあるのだが。
「ベルお姉さんはどんな色の薔薇が好きですか?」
「んー……やっぱりピンクかなぁ? これみたいな」
 見ればピンクの花弁に白が滲んだ、
「ストロベリーアイスっていうんだ」
「おいしそうな名前です、ね」
 メアリの笑顔も何だか甘い。そして、
「あ、おねえさん、あれ」
 視線の先にはメアリのドレスを着て、慈しむ様に歩く薔薇の精の様な女性の姿。ベラドンナとメアリは顔を見合わせ、ぎゅっと手を握り直して方向を変える。
 作業着の彼女もきっと同じくらい美しいのだろうと思いながら。

作者:森下映 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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