あんなに可愛らしい天使が……

作者:なちゅい

●流氷の天使
 先日、クリオネの新種が富山湾で発見されたと言う。
 クリオネといえば、可愛らしいフォルムで水中に浮かぶ流氷の天使として知られている。
 そんな話を聞いた少女、加藤・日和は何気なく自分のスマートフォンでクリオネの動画を見ていたのだが……。
「うわああああああああああっ!!」
 日和は思わず、スマートフォンを投げ捨ててしまう。
 頭部から伸ばす6本の触手。その上で、獲物へと食らいつく気色の悪い動き。あんなに可愛らしい生物なのに、あのモーションは……お世辞にも天使とは言いがたい。
「天使なのに……あんなの、いやだ……」
 あまりに衝撃的なあの映像は、ショックから嫌悪に変わってしまう。しばらく、クリオネの捕食が頭から離れず、それを振り払おうとしている彼女のそばに、忍び寄る影が……。
 その影は、日和を背中から手にした鍵で一突きする。外傷は残されていないが、彼女は言葉すら発することなく倒れてしまう。
 一方、鍵を引き抜いたのは、両手が翼のようになった魔女。その翼にはモザイクが掛かってしまっている。
 第六の魔女・ステュムパロス。それが彼女の名だ。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 そう魔女が声をかけると、そばに新たなドリームイーター……ふわりと浮かぶ人間よりも一回り大きなクリオネが現れる。しかも、嫌悪を色濃く表した為か、捕食形態のままで固定していた。
 新たに生まれた夢喰いは獲物を求め、家から飛び出て行ったのだった。

「クリオネの捕食を見た子供の嫌悪が夢喰いに狙われるそうだね」
 ある日、ヘリポートへふらりとやってきた塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)は、そんな話を持ちかける。
 すると、しばらくヘリオンで予知を目にしていたリーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)がケルベロスの前に姿を現して。
「うん、そのようだね」
 苦手なものに対する『嫌悪』を奪って、事件を起こすドリームイーター。主犯はすでに姿を消しているようだが、奪われた『嫌悪』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターが事件を起こそうとしている。
「怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしいんだ」
 また、『嫌悪』を奪われた女子小学生は自宅の居間にて、倒れてしまっている。
 ドリームイーターを倒せばこの少女も目を覚ましてくれるはずなので、うまく事件が解決できたなら、介抱の上でフォローなどあるとよいだろう。
 現場は、富山県の某住宅地。ドリームイーターは襲われた小学生の自宅周辺を徘徊している。
 多くはないものの、昼間は人の行き来がある地域。一般人が先にドリームイーターと出くわしてしまう前に人払いなど対処を行い、速やかに討伐へと当たりたい。
「現れるドリームイーターは捕食形態のクリオネの姿だね」
 全長は2メートルを超え、ケルベロスよりも大きいが、宙をふわふわとホバリングするように浮かんでいる。
 ドリームイーターは相手に食らい付こうとしてきたり、触手を伸ばして襲ってきたりする。両手を広げての回転攻撃も仕掛けてくるようだが、それらの攻撃はモザイクに覆われているようだ。
「捕食形態のクリオネは、かなり嫌悪感を抱かせる容姿だよ」
 普段が可愛らしいからこそ、そのギャップも大きい。とはいえ、人に害なす相手を放置してもいられない為、嫌悪に耐えながらも討伐せねばならぬだろう。
「一瞬ならまだ何とかって思うけれど、アレをずっと見続けながらだと、さすがにキツイよね……」
 予知でそれを見ていたリーゼリットも、かなり嫌悪を覚えていたらしい。彼女はその映像を振り払うように頭を大きく振ってから、最後にケルベロス達へとこう告げた。
「教われた少女の救出の為にも、ドリームイーターの討伐を。よろしく頼んだよ」


参加者
八代・社(ヴァンガード・e00037)
シヲン・コナー(清月蓮・e02018)
アカツキ・イェーガー(木漏れ日を宿す黒狼・e02344)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
アイリス・フォウン(金科玉条を求め・e27548)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
堂道・花火(光彩陸離・e40184)

■リプレイ

●クリオネと夢喰い
 富山県のとある住宅地へと降り立ったケルベロス達。
「クリオネって、あんなふうにご飯食べるんだ!」
 踊り子衣装を纏ったアイリス・フォウン(金科玉条を求め・e27548)は今なお、ヘリオン内で見た動画の衝撃が忘れられずに叫ぶ。
 露出が高く非常に色っぽい衣装のアイリスだが、その内面は非常に子供っぽく仲間達へと「よろしくよろしく!」と元気いっぱいに挨拶していた。
「話を聞いてクリオネが捕食するところを見てみたけど、確かにびっくりしたな……」
 一房だけ金の髪を持つ狼のウェアライダー、アカツキ・イェーガー(木漏れ日を宿す黒狼・e02344)にとっても、あの映像は衝撃的だったらしい。
「でっかいクリオネってだけで怖いのに、ずっと捕食形態なんて悪夢じゃないッスか……」
 今回現れる夢喰いに対し、周囲を警戒する堂道・花火(光彩陸離・e40184)。ドリームイーターというものの話題はよく耳にするものの、実物を目にするのが初めてとあって、花火は緊張を隠せずにいたのだ。
「クリオネさん、実は冷蔵庫で飼育可能と聞いたですが、捕食は見るなのタブーです? 餌やりの人はどうなるですかね」
 そんな中、仲間達と同じようにクリオネの捕食シーンを目にしたマロン・ビネガー(六花流転・e17169)だったが、彼女はそれに恐ろしさや衝撃を覚えるどころか、むしろ好奇心を抱いていた。
「偶にしか食事を取らないクリオネからすれば、数多の生物を多種多様な料理法で食する人間達の方が余程、残虐に見えているのだろうが……」
 藤色の髪を持つ中性的な青年、シヲン・コナー(清月蓮・e02018)がそんな主観を語るが。
「相手は子供だ。この手の理論は通じないだろうな」
 小さく嘆息するシヲンにとっては、夢喰い討伐より子供の相手の方が大変そうにも思えていたようだ。
「確かに、クリオネの食事風景は初めて見るとビックリするよね。仕方ない」
 地獄化した翼を広げる天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)は自身の役割を果たすべく空に舞い上がる。
「でも、それを利用されるのは許せないけどな」
「そいつをどうにかしないと大変なことになるッスね! 頑張るッス!」
 人の嫌悪感を利用する元凶となるパッチワークの魔女へと、アカツキは静かに怒りを示す。同じ考えの花火もまた、生み出されたクリオネの夢喰いを止めるべく気合を入れるのだった。

 ケルベロス達は索敵以上に、人払い対応に力を入れる。
 多くのメンバーがキープアウトテープを用意しており、それを周囲に張り巡らせていた。
 その間、地獄化した翼で蛍は空を飛ぶ。
 空を舞うこの感覚に酔いしれながらも、彼女は一般人が近づいてこないかどうかチェックする。発見すると、その近場のメンバーへと携帯電話で呼びかけ、避難、迂回を促す形だ。
 テープを張り巡らすメンバーは、その区域内の住民に家の中にいるよう指示を出して行く。自警団としての経歴を持ち、迅速な対処に当たる八代・社(ヴァンガード・e00037)もその1人だ。
 丁寧に対応を進めるメンバー達だったが、敵はお構いなしにその姿をケルベロスの前に晒してくる。
「大きいです! 『流氷の大天使』ですね!」
 それを目にして叫ぶマロン。事前情報のとおり、人間よりも大きな形で具現化したクリオネだ。ホバリングして移動するその頭は触手を伸ばし、確かに嫌悪を抱かせる見た目となっている。
「うっわー……、捕食形態ってだけでも気持ち悪いが、でっかいとまた一層気持ち悪いな……!」
 驚いてはいたものの、飄々とした態度を崩さぬ塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)。
 気持ち悪さは覚えるもついついそれをじっくりと見てしまう翔子だが、敵がモザイクを交えて攻撃を仕掛けてくれば構えざるを得ない。
 出現を受け、マフラーをはためかして空から降り立ってくる蛍。まずはこの場を落ち着ける状況にせねばならぬと武装を取り出し、彼女は仲間と共にその殲滅に当たるのだった。

●嫌悪なんてどこへやら
 ふわふわと宙を浮く、巨大クリオネ型のドリームイーター。
 頭部がモザイクに包まれる敵が攻撃するよりも前に、2人のケルベロスが攻め入る。
 日本刀「缺月」(けつげつ)を振るう社が先手を取り、手にする刃でクリオネの体を大きく切り裂く。続き、アイリスが躍りこみ、その跡をなぞるように舞踊刀で斬撃を重ねた。
 その傷痕からモザイクが零れるが、まだ傷は浅い。社もアイリスも一旦距離を取り、次なる攻撃に備える。
 そのメンバー達へとオウガ粒子を振り撒くのは、マロンだ。
「あれが噂のバッカルコーンですか!」
 敵の姿に目をキラキラと輝かせていたマロンはモザイク処理がかなりもったいないと思い、仲間への支援を急ぎ行って、それを吹き飛ばしたいと考えていた。
 捕食の為の触手を伸ばしたままの夢喰いも応戦し、ケルベロスへとモザイクを伴って捕らえて来ようとする。
「はいよ、一つ宜しく頼むよ」
 そこで、翔子が呼びかけると、彼女の腕に巻きつく白蛇のような姿のボクスドラゴンのシロが一鳴きして飛び出し、ケルベロスの盾となって夢喰いを抑える。
 その隙に、翔子自身は金針をロッドとして振るった。
「少しピリッとするよ」
 一声掛けて電気ショックを放ち、彼女は火力となる仲間達へと力を与える。
 シヲンは防御を高める為の支援としてロッドを突き出し、仲間の全面に雷の壁を構築していく。
 そのロッドの形は特徴的で、シヲンの箱竜ポラリスの手に似せて作られていた。そのポラリスは防壁から漏れてしまったメンバーの為にと、自身の属性を仲間へと注入させる。
 そんなボクスドラゴン達の動きは、非常に愛らしい。
 しばし見続けたくなりつつも、蛍は回復役として立ち振る舞い、全面にドローンを展開して仲間の守護と回復に当たっていた。
 箱竜の1体、封印箱に入ったアイヴィーがクリオネの姿に臆することなく果敢に突撃していく。一撃を加えたアイヴィーはくるりと反転して、オウガメタルを纏わせた拳で敵へと殴りかかる主のアカツキの後方へと戻る。その姿はなんともけなげだ。
 再び攻撃の為にと動こうとする夢喰いへ、後方から飛び掛った花火がそいつの頭上より流星の一撃を見舞う。彼は肉弾戦メインで相手にグラビティを叩きつけて行くようだ。
 幾分か怯みはしたが、夢喰いはすぐさま攻撃の為にケルベロスへと食らい付いてくる。
「……これ、下手するとトラウマものになりそうだな」
 次の瞬間、飛び出てきたのはアカツキだ。彼はモザイクに絡め取られるようにして、夢喰いにかぶりつかれてしまう。
 そこで、社が突き出す刀を胸部に受け、クリオネは少し身悶えしていた。
 仲間の支援もあって、触手から抜け出たアカツキは氷の螺旋を夢喰いへと浴びせかけて行く。
「どんな敵だろうと、退治するのがケルベロスだからな!」
 にやりと笑うアカツキは、さらに仲間の盾として夢喰いの前に立ち塞がるのである。

 ふわふわと浮くクリオネは、口円錐を広げて襲い掛かってくる。モザイクを伴って襲い来るが、見る者が見れば、目を背けてしまうほど嫌悪を抱かせる容姿に違いない。
 ただ、この場にいるのは、ドリームイーターと初対面という者もいるが様々な姿のデウスエクスと対してきたケルベロスだ。これしきで臆するメンバーはおらず、冷静に敵と対して交戦する。
 両手を広げて回転してくる夢喰い。その威力は決して小さくはないが、翔子はシロと共に耐え切り、とりわけ回復を行うシヲンや蛍を重点的に庇う。
 シロもまたケルベロスの体力を気遣いつつ、ブレスを吐いて攻撃を仕掛けてくれていた。それに合わせ、翔子は雷光を発してクリオネの体を電撃を走らせる。
 痺れの為か、身体を僅かに硬直させたクリオネへ、アイヴィーがブレスを吐きかけた。
 その間、アカツキはじっと敵を見つめて戦況や敵の能力分析に努め、逐一仲間達へと解ったことを伝える。
「綺麗なものには気をつけろってな」
 もちろん、隙あらばアカツキも攻撃を仕掛けていく。
 彼が呼び出した色鮮やかな蝶達は夢喰いの周囲を飛び回り、その魔力によって惑わされてしまう。
 そこへ突撃したのは、封印箱に入ったポラリスだ。主のシヲンは基本的に傷の深いメンバーへと緊急手術を施す。
 そして、3人と一緒に戦う箱竜に目を細めていたのは蛍だ。彼女は可愛らしい竜達に気持ち癒されながらも、仲間の為にと奮闘する。
「特別製だよ、ヒーリングバレット!」
 直接殴るのが好みの彼女だが、今回は回復役。
 構える砲台から癒しの効果のある薬品を詰めた弾を発射し、夢喰いのバッカルコーンに耐える仲間の治癒に当たっていく。
 クリオネの夢喰いは触手を蠢かせて猛然と食らいついてくるが、ケルベロスは嫌悪の感情すら抱くことなく、攻め続けていた。
「火力全開、手加減なしッス!」
 地獄となった両腕を燃え上がらせる花火。彼はそれを刹那強化し、炎を纏った旋風のようにして相手に叩きつけて行く。
「地獄の炎は、力任せに燃やすだけが取り柄じゃない!」
 花火が言うように、ただ燃やすだけではない。それ以上にその傷口を鋭利に切り裂くようにして攻撃していたのだ。
 舞踊刀に雷を纏わせて、アイリスは鋭く相手の体を突き貫く。
 スタイルの良い体を余すことなくさらし、妖艶に舞うアイリスの背後から、仕掛けるマロンがふと考える。
「あれでも巻貝の一種で、ナノナノさんの親類……です?」
 確かに見た目は似ている部分もあるが、この場にナノナノがいたなら、全力で拒否していたかもしれない。
「クリオネさんなら、寒いのも平気ですよね?」
 それはそれとして、マロンは巻貝対決をと巨大サイズのカタツムリの氷彫刻を召喚した。空中でそれは分裂し、鋭利な刃となってクリオネの体へと浴びせかかる。
 それまで、拳と刃を使って攻撃していた社が刀を収めて敵と距離を取り、2丁のリボルバー銃を取り出す。
 それらは、デウスエクス用の武器として利用する為の用意はされていない。その為、そのまま銃弾を撃ち込んでも敵にダメージは与えられぬが、社が決め技を使うとなれば話は別だ。
「見ろよ。こいつが、人が磨いた技の涯てだ」
 一射ごとに急加速して接近する社は両手の銃から36発もの銃弾を放ち、それら全てをほぼ同時にドリームイーターへと着弾させて行く。
「伊達や酔狂で、銃弾拳法五段『正拳士』、名乗ってるわけじゃねえのさ」
 銃の反動以外にもあらゆる運動エネルギーを自在に捻じ曲げて相手に叩きつけるのが、社の修める銃弾拳法だ。
 ただ、巨大クリオネは社の言葉を耳にすることなく全身をモザイクと化し、消え去っていった。
 敵の消滅を確認し、ボクスドラゴンのシロが翔子の元に戻っていく。
「シロ、ご苦労さん」
 定位置である主の腕に巻きついたシロは、愛らしく一声鳴いて応えたのだった。

●二面性を受け入れて
 夢喰いを討伐し、ケルベロス達は手早く事後処理を始める。
 アカツキは分身の力を癒しに転化し、翔子は属性注入するシロと共に電気ショックを破壊箇所へと放つ。
 マロンもまた、ゆきみメタルさんから粒子を飛ばしてひび割れた地面を幻想で埋める。ドローンを飛ばす蛍は、その綺麗なオウガメタルに目を奪われていたようだ。
 間もなく補修も終わり、ケルベロス達は被害に遭った少女、加藤・日和の様子を見に彼女の家へと向かう。
 しばらくして、布団に運ばれて眠りについていた日和が目を覚ます。
 町医者であるシヲンがメンタルチェックを行い、問題ないと判断してから仲間達へと声がけを促した。
「クリオネの捕食を見て、びっくりしたよな」
「オレもクリオネのあんな姿にビックリしたッス! 怖いよね!」
 アカツキ、花火が共感を示すと、日和は小さく頷く。
「確かに怖いよね、ビックリするよね。私も初めはそうだったよ」
 そこに、しゃがんで少女に視線を合わせた蛍もまた、少女の気持ちに理解を示す。
「でも、天使みたいな仕草も沢山してるよ、してるよ!」
 そんな子供っぽい口調のアイリスは携帯を操作し、普段泳ぐ流氷の天使の動画を見せてみていた。
「可愛いよね! 気持ち悪いのも可愛いのも、どっちもクリオネなんだよ」
「あれもクリオネの1つの姿だし、だからこそ、いつもの可愛さが際立つと思うッス!」
 花火もそれに同意し、少しずつ慣れるッスと少女に話す。
 少女が大きく動揺しないかと見ていたシヲンが問題ないと仲間達に頷くと、彼自身もこれだけはとフォローの言葉を口にした。
「天使に似ているが、クリオネは天使ではない。生物であれば他の命を食べて力をつけねば生きられない」
 それは、君もクリオネも、僕らケルベロスも同じだと、シヲンは少女を諭す。
 アカツキもまた、日和に対して口を開く。
「生き物は、こちらの想像を越えるような姿を見せる時があるんだ」
「『悪魔だ!』等と言われてますが、そこに囚われて彼らを嫌いになるのは勿体無いです」
 さらに、マロンが日和に驚きながらも、興味津々なクリオネについて力説する。
「普段の可愛さだけじゃなく、生きる為の強さも含めて『クリオネ』だと人を惹きつけるのかも、です!」
 目を煌かせて力説するマロンに、ちょっと圧倒される日和。
 そのマロンの頭にはいつの間にか、バッカルコーン形態のクリオネを模した可愛いナイトキャップがあった。それには、心を鷲掴みされてしまうような愛しさすら感じてしまう。
「クリオネにとっては生きるためにしていること、しかも一生で何度かしかない大切な瞬間なんだよ」
 もう少し、少女が大きくなったときに理解してもらえるように。蛍も優しい言葉で日和に言葉を選んで呼びかける。
「同じ地球にはそういう生き物もいるんだって、認めてあげて欲しいな」
「気持ち悪いからって遠ざけちゃうと、ずっと気持ち悪いままになっちゃうよ」
 翔子もそこで、合いの手を入れる。謎の多いクリオネを興味を持って調べてみるのもいいことだと。
「綺麗な一面だけじゃないからな、この世の中は」
 それを、好きな男の子で実感せずにすんだのはラッキーだったのではないかと社は言うが、それには日和も少し複雑な表情をしていたようだ。

 物事の一面を知った少女は少しだけ大人になる。ケルベロス達は少女の成長を見届けから、この場を後にして行くのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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