「これがハロウィンの魔力。 ウフフ、この力があれば、私のワイルドスペースは濁流となり世界を覆い尽くすことすら可能となりますわ」
ワイルドハントは、そう言って、嬉しそうに両手を広げる。
そこは、山奥にある今は使われてない豪華な別荘。
肉感的な身体を惜しげなく晒す露出度の多いボンテージファッション、足を優雅に組み換え、ワイルドハントはニタリと嗤う。
「ケルベロス、とかいう輩がワイルドスペースをいくつも潰しているらしいけど、そんなもの恐れるに足らぬ。あの、『オネイロス』を増援として派遣してくれた『王子様』の為にも、必ず、この『創世濁流』作戦を成功させますわ!」
「ハロウィンのイベントが終わったばかりだが、緊急事態です」
皇・基(en0229)は、急ぎケルベロスの仲間達を呼び集める。
「ドリームイーター最高戦力であるジグラットゼクスの『王子様』が、六本木で回収したハロウィンの魔力を使って、日本全土をワイルドスペースで覆い尽くす『創世濁流』という、恐るべき作戦を開始したようです。現在、日本中に点在するワイルドスペースに、ハロウィンの魔力が注ぎ込まれており、急激に膨張を開始しています。このまま膨張が続けば、近隣のワイルドスペースと衝突し爆発、合体して更に急膨張し、最終的に日本全土が一つのワイルドスペースで覆い尽くされてしまうでしょう。幸い、皆の活躍もあり隠されていたワイルドスペースの多くを消滅させている為、ハロウィンの魔力といえど、すぐさま日本をワイルドスペース化するまでの力は無いようです。至急、急膨張を開始したワイルドスペースに向かい、内部に居るワイルドハントの撃破をお願いします」
基が言うには、戦闘が行われるのはワイルドスペースという特殊な空間だが、戦闘自体に支障は無いとのこと。
敵は、ドリームイーターがよく使うモザイクを飛ばしたり、心を抉る鍵を使った攻撃をしてくるらしい。
「今回気になるのは、ワイルドスペースには『オネイロス』という組織からの援軍が派遣されるらしい事です。オネイロスの援軍は『トランプの兵士のようなドリームイーター』のようですが、詳しい戦闘力は不明です。援軍は一体のみですが、ワイルドハントと同時に戦う事になるので、苦戦することになるでしょう」
ワイルドスペースを破壊するためには、ワイルドハントを倒さなければいけない。
しかし、今回はワイルドハントの他に敵がもう1体居る。
これが、勝敗を左右する重要なポイントになるだろう。
「オネイロスの援軍はあくまで作戦を成功させるために呼ばれた存在。ワイルドスペースが維持されないとなれば撤退するでしょう。基本的には、ワイルドハントさえ倒せばワイルドスペースを消すことが出来るので、創世濁流を阻止する、という点で作戦は成功です。ただ、この援軍として派遣される『オネイロス』という存在のことですが、今回特に重要視されているスペースにはオネイロスの幹部と思われるような強力なドリームイーターが護衛として現れる可能性があります。幹部は強敵ですが、作戦の中核戦力である彼らを撃破する事ができれば、今後の作戦が有利に運べるかもしれませんね。ただし、幹部と遭遇した場合に、『幹部の撃破を狙う』のか、或いは『ワイルドスペースの破壊を優先する』のか、君達で意思を統一しておく事が重要でしょう。オネイロスの幹部は戦闘力が高い為、中途半端な作戦でどちらも撃破できずに敗退する、という事態は避けたいですね」
すべての判断は、現場で戦うケルベロスの仲間達に任せることになる。
「さすがは、ジグラットゼクスの『王子様』。ドリームイーターの最強戦力の生み出す作戦……簡単に勝たせてはくれませんね。ですが、多くの仲間達がワイルドスペースを破壊してきた結果、この作戦を阻止するチャンスを得ることができた……その活躍をムダにしないためにも、創世濁流作戦、必ず阻止しましょう」
参加者 | |
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烏夜小路・華檻(一夜の夢・e00420) |
シエイラ・レマトゥーニ(隠れ筋肉系女子・e00728) |
露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406) |
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080) |
久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214) |
リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939) |
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140) |
本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557) |
●ワイルドハント、そして……
ギリギリまで高度を落とすヘリオン、ケルベロスの仲間達は次々と山林へ飛び降りた。
「こっちはハロウィンで必死に頑張ったのに、それでも来るって何なんですかね……」
久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214)がボヤく。
「まあ、何とかするしかないわな。それに、援軍つきって、ハードモードやったな」
「見た目がシエイラさんにそっくりらしいけど敵、迷う必要は無いっぽい! それより、援軍の情報が足りないのが問題っぽい!」
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)と露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)が口々に言った。
「……ワイルド、ハント……戦うの、ハジメテ……頑張らなきゃ……」
リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)が言う。
「とにかく、えみかの相撲をみせるっすよ! ワイルドスペース場所開幕っす!」
そして、本田・えみか(スーパー電車道娘・e35557)が力強く言った。
あまり使われないらしい荒れた山道を駆け抜けた先に、目的の別荘が建っている。
正面玄関を抜けると、目の前に広がるモザイクに包まれた部屋。
バラバラに崩れた両開きの扉らしき場所を開きくぐり抜けると……。
「やっぱり現れるのね、ケルベロス」
空間の奥から、ツカツカと進み出るワイルドハント。
前髪に隠された瞳、恥ずかしがるように紅潮する頬、しかし、ごく僅かな部分しか隠していないボンテージ衣装に身を包んだワイルドハントがニタリと微笑む。
「ワイルドハント、ここで好き勝手させるわけにはいかないよ……!」
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)が叫ぶ。
「まぁ、シエイラ様と似た姿ですのね。とても魅力的で……倒すのが、もったいない位ですわ」
その姿を見た、烏夜小路・華檻(一夜の夢・e00420)が言う。
「う……わ、私の偽者なんて……すごい……えっちな服装で……は、恥ずかしいです……さっさと、やっつけてしまいたいです……」
自分に似た姿に戸惑うシエイラ・レマトゥーニ(隠れ筋肉系女子・e00728)。
「倒す、ですって? アハハハ! オモシロイ事を言うのねぇ。そう簡単に、倒せるとでも、思っているのかしら?」
ワイルドハントがそう言うと、その前に立ちふさがるように現れるもう1体の敵。
まるで童話に出てくるトランプの兵隊のような姿のドリームイーターだ。
ワイルドハントは、大胆なM字開脚でしゃがみ込み、煽るように言う。
「『王子様』の作戦は必ず成功するわ。貴方達は、ここで私達に倒されて、屍になって見届けなさい!」
●オネイロスの救援
(「一度痛い目見たからね、今回は、違うよ!」)
妖刀『供羅夢』を手に飛び出した利香。
敵は、斬撃が届く距離にいる。
しかし、オネイロスの援軍が立ちふさがるようにワイルドハントを庇い邪魔をする。
繰り出された一撃を受け止め、今度は立ちふさがる援軍を攻撃した真奈が言う。
「はずれか」
オネイロスの幹部が派遣されている場合もある、という話だったが、このトランプ兵のようなドリームイーターはどうも幹部ではないようだ。
とはいっても、この作戦の障害になる存在に変わりはない。
「まあ、こいつも逃がさんけどな」
(「……絶対……絶対っ……みんなで、帰りたい……」)
リィナのオウガメタルから放たれた粒子が、前列の仲間達に注がれる。
敵を倒す為に、リィナが願うのは仲間達の無事だ。
だから、
「頼りないかも、しれないけど……みんなの、サポート……頑張るっ……みんなを、守りたい、気持ちに、迷いは、ないから……!」
着崩した着流しの袖を流れるようにたなびかせ、床を踏み込むと征夫が仕掛ける。
「ちょっと外法ですが……落月っ!」
鮮やかな身のこなしから仕掛けられる攻撃に、援軍の足が止まる。
「あら、やだワ。 私は、もう少し後ろから眺めさせてもらおうかしら? うふふ」
そう言って、ワイルドハントは後方に引っ込んだ。
「ん、頑張るだけっぽい」
メガネを外した睡蓮は、短く一言そう告げて、モザイクに崩されたワイルドスペースの天井高く飛び上がると急降下、オネイロスの援軍を急襲する。
トランプを連想させるペラペラとした身体だが、しっかりとした手応えが睡蓮には伝わった。
首元に夜空をイメージしたスカーフを巻いた貞淑なイメージとは一転、ワイルドハントに負けずとも劣らない魅惑的な肢体を活かす衣装に着替えた華檻。
後ろに下がったワイルドハントにフォーチュンスターを繰り出す。
星型のオーラがワイルドハントに直撃すると、ただでさえ隠す部分の少ない服が破れる。
「後ろに隠れていないで、わたくしと、愉しみましょう?」
「……ふふ、愉しみは、後に取っておく趣味なのよ」
(「うぅ……私の偽物、私の格好もたいがい、ですが……あんなハレンチな服装で、このままじゃ、ますますっ……」)
「げ、元気になってくださーい!」
特製マッスルドリンクを混ぜたサキュバスミストで仲間達を援護するシエイラ。
この戦いの先を見据え、仲間達の状態に気を配る。
あの自分を勝手に模したワイルドハントの姿を長く晒されないためにも、攻撃は最大の防御だ。
「はっけよーい!」
威勢の良い、えみかの掛け声。
前に立つえみかは、炎を吐くと、オネイロスの援軍と自分を炎の土俵で丸く囲んだ。
「同じ土俵に立ったからには、えみかの相撲に付き合ってもらうっすよー!」
オネイロスの援軍は、プシューっと顔が真っ赤に変わり、怒りの表情を浮かべた。
●攻防
征夫が轟竜砲を放つと、オネイロスの援軍が一瞬動きを止めた。
「華檻さん!」
征夫が手を伸ばした掌にパン! とタッチし、入れ替わるように躍り出た華檻がファナティックレインボウを決める。
よろよろと、膝をつきそうなオネイロスの援軍。
「元気におなり! まだ、倒れるには早いわよ!」
ワイルドハントは、弱っていたオネイロスの援軍にモザイクヒーリングをかけ叱咤する。
破れかけた身体の一部をペタペタと張り付いたようにモザイクで修復していく様子を見ていた睡蓮。
スッと、オネイロスの援軍の背後を取っただけのように見えたが……トランプのような身体がバラバラに千切れ、ハラハラと四散する。
「次にバラバラになるのは、ワイルドハントっぽい」
しかし、援軍を絶たれたワイルドハントは、絶望するどころかニタリと笑みを浮かべる。
まだ余裕があるのだろう。
それを見たシエイラは仲間達の守りを固める。
何度かの攻防を繰り返し、ワイルドハントに焦りの色が見え始める。
明らかにあがる息、回復が全く追いついていない様子だ。
「ハッ!」
張り手から繰り出されたオーラの塊がワイルドハントに被弾する。
胸元に手を当て、何か投げかけるような仕草をする利香。
濃厚なラブフェロモンにかけられた生命力奪取の呪いが、ワイルドハントから力を吸い上げていく。
「アッ、はぁあん!」
「どんな物も過剰摂取にはご用心♪」
「お、チャンスやな。あんたらの詳しい目的は知らんけど、この作戦は潰させてもらうで!」
真奈の見た目とても可愛らしい女の子、という容姿からはまったく想像できない、なんの容赦もない会心のフルスイングの一撃が、ワイルドハントの頭を直撃した!
「あ、がぁっ……!」
「きっと……もう、少し……がんばって、みんなっ……」
リィナの生み出したドラゴンの幻影が敵を炎で包み込む。
「そろそろ、沈んでもらうぜ!」
もがくワイルドハントに轟竜砲を放つ征夫。
よたよたと、今にも倒れ込みそうになるワイルドハントだったが、苦し紛れに鍵を取り出し攻撃を仕掛ける。
しかし、すかさず飛び出しダメージを肩代わりする睡蓮。
「今日のボクは盾役。そう簡単には沈まないっぽい!」
「シエイラ様、最期は、お任せしますわ」
艶やかに微笑みそう言った華檻は、舞うように飛び上がると、藻掻くワイルドハントに強烈な蹴りをお見舞する。
「ちょっと、全身に力が入っちゃうかもしれません……!」
シエイラの身体に筋骨隆々とした筋肉が浮かぶ。
それと同時に、高まったオーラを敵めがけ放つシエイラ。
「ぐっ、あぁあ!!!」
オーラが、ワイルドハントに喰らいつく。
●濁流は……
「くあ、あ、あ、まさかっ……王子様っ……!!」
何かに縋るように、中空に手を伸ばしたワイルドハント、しかし、その手がパタリと落ちる。
「……10カウント、KOですね」
征夫が言った。
ワイルドハントと、そしてワイルドスペースが、何事もなかったかのように掻き消えていく。
モザイクに包まれた不思議な空間は、ワイルドハントが倒されたことで、蘇生濁流の本流とはなれず、そのまま静かに消失した。
「完全勝利、だね♪」
利香が言う。
手強い相手ではあったが、今回は快勝だ。
ワイルドスペースが消えると、その場は本来の食堂へと戻った。
「……とくに、壊されているものもなさそうっすね!」
周りを見回し、えみかがそう言った。
「……みんなが、無事で、……よかった……」
そう言って、ふわっと微笑んだリィナ。
「あんたも、よう頑張ったで。 はい、飴ちゃんいるか?」
そんな彼女に飴を差し出し、真奈もニコッと笑う。
「オネイロスの援軍、も……消えてしまいましたね」
今回その姿を模されたシエイラ。
普段通りの、控えめな様子でそう言って辺りを見回す。
「シエイラ様の姿を真似たり……今回の『創生濁流作戦』は止めることが出来たようですが本質的な手がかりは、得られませんでしたわね」
ケルベロスの暴走した姿を模すワイルドハントとそんな彼等が生み出すワイルドスペース、そしてオネイロスと言われる組織……いまだ謎の多いドリームイーターの本質的な秘密を解き明かすような何かは、今回残されていない様子だった。
(「……それにしても、やっぱりオリジナルの方が魅力的ですわね♪」)
戦いが終わり、黒のセーターに袖を通しながら、華檻はシエイラをうっとりと眺めそう言った。
じーっと、先程のワイルドハントの姿思い浮かべながら、見比べるように見ていた睡蓮は、何かを納得したように頷くとポン、と手を叩く。
「な、なんですか?」
戸惑うように聞いたシエイラに、メガネを掛け直した睡蓮が言う。
「うん。 他に援軍は、無いっぽい。 早く、作戦の成功を報告してあげたほうがいいっぽい!」
何に納得したのか、ソレには触れず、睡蓮はそう言って笑顔を見せた。
えみかが言う。
「ワイルドスペース場所、無事終幕っす!」
こうして、ケルベロスの仲間たちは勝利を収め、別荘を後にするのだった。
作者:stera |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月15日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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