創世濁流撃破作戦~ワイルドスペースは全てを飲み込む

作者:白鳥美鳥

●創世濁流撃破作戦~ワイルドスペースは全てを飲み込む
 ワイルドスペースの中、女の子……しかし、その身体の半分は沢山の黒い獣が吹きだした姿をしているワイルドハントがいた。
「へえ、これがハロウィンの魔力、カ。この力があれば、あたしのワイルドスペースは濁流となって、世界すら覆い尽くす事も可能だろうネ」
 新たな力を得たワイルドハントは満足そうだ。
「ケルベロスとかいう奴等が、ワイルドスペースをいくつも潰してるって話だけど、恐れる必要なんてねぇナ。何せ、あの『オネイロス』を増援として『王子様』が派遣してくれたんダ。『王子様』の為にも、必ず『創世濁流』作戦を成功させてみせるゼ!」

●ヘリオライダーより
「みんな、ハロウィンのイベントが終わったばかりで申し訳ないんだけど、緊急事態が発生してしまったんだよ」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、ケルベロス達に、事態のあらましを説明する。
「ドリームイーター最高戦力である『王子様』が、六本木で回収したハロウィンの魔力を使って、日本全土をワイルドスペースで覆い尽くす『創世濁流』という恐るべき作戦を開始したんだよ。現在、日本中に点在するワイルドスペースにハロウィンの魔力が注ぎ込まれていて、急激に膨張をし始めているんだ。このまま膨張が続いたら、近隣のワイルドスペースと衝突して爆発、そして合体して更に急膨張、最終的に日本全土が一つのワイルドスペースで覆い尽くされてしまうんだよ」
 そう一気に言ってから、デュアルは一息つく。
「幸いな事に、みんなが活躍してくれたおかげで隠されていたワイルドスペースの多くが消滅しているんだ。だから、ハロウィンの魔力といっても、すぐさま日本をワイルドスペース化するまでの力は無いんだ。だから、みんなには急膨張を始めたワイルドスペースに向かって、内部にいるワイルドハントを倒して欲しい」
 デュアルは状況の説明を続ける。
「戦闘する場所は特殊な空間ではあるんだけど、戦闘には支障は無いよ。だから、心配せずに思いっきり戦ってくれて大丈夫。ここにいるワイルドハントは女の子なんだけど……半身は黒い獣が沢山吹きだしている姿をしているんだ。女の子も手足が獣と化してるから……獣の要素が強いみたいだよ。だから、それを活かした攻撃をしてくる。……後、実は、このワイルドスペースには『オネイロス』っていう組織から援軍が派遣されているらしいんだ。詳しくは分からないんだけど、『トランプの兵士のようなドリームイーター』みたいだよ。でも、戦闘力は分からない。ただ、ワイルドハントが頼りにしている援軍だって事は考慮しておいた方が良いかな? 援軍に来るのは一体だけみたいだけど、ワイルドハントと同時に戦う事になるから、苦戦する事には間違いないと思うよ」
『緊急事態なんだ』、そうデュアルはもう一度、その言葉を言った。
「相手の思い通りにいってしまったら、ワイルドスペースで日本全土は覆い尽くされてしまう。謎の多いドリームイーター組織『オネイロス』の援軍も気になるかもしれない。でも、ワイルドハントさえ倒してしまえば、『創世濁流作戦』は阻止する事が出来る。これは今まで調査を頑張ってくれたみんながいたからこそのチャンスなんだ。俺はみんなの事を信じているよ。だから、頑張ってね!」


参加者
寺本・蓮(眼鏡が本体疑惑・e00154)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
イピナ・ウィンテール(眩き剣よ希望を照らせ・e03513)
志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)
穴吹・醍吾郎(何でも屋の様な何か・e14091)
除・神月(猛拳・e16846)
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)
杉本・神楽(当たって砕く豪快さん・e40822)

■リプレイ

●創世濁流撃破作戦~ワイルドスペースは全てを飲み込む
 ワイルドスペースに乗り込んだ先に、ワイルドハントがいた。
「毎朝鏡でよく見るツラに似てんナー?」
 その姿を見て、除・神月(猛拳・e16846)が、どこか楽しそうな表情で殴り掛かっていく。
「自分と闘る機会なんてそうねーシ、腕っぷしの方までちゃんと再現出来てっか調べてやんヨ!」
 鋭い蹴りがワイルドハントを襲うが、素早い身のこなしでかわされてしまう。俊敏な動きだ。
「っと、速いナ。まあ、そっちの方が闘り甲斐があるってもんだけどナ」
「何、言ってんダ。このあたしに勝てるとでも思ってんのカ?」
 直ぐに体勢を立て直したワイルドハントは自信あり気な表情でそう言うと、そのまま神月に向かって多くの獣を纏ったその右腕で殴り掛かっていく。それを何とか受け止めるが、かなりの力だ。しかし、それはもう一人の自分の様な相手が弱いよりも強い方が神月としては嬉しい。
「スピードが速い……なら、これで!」
 レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)はオウガ粒子を放ち、神月達に癒しと集中力を上げていく。
 そんな時、どこからともなく槍が、志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)達を一閃した。いつの間にか、ワイルドハントの傍には槍を構えたトランプの兵隊を思わせる姿のドリームイーターがいる。
「早速、援軍がご到着って訳ね」
 受けた傷の痛みを感じながら、空はそう呟く。
 援軍が来る事は聞いている。どうやら、この槍を構えたトランプ兵っぽいものが援軍らしい。
「負けられません……皆さん、一層の奮起を!」
 イピナ・ウィンテール(眩き剣よ希望を照らせ・e03513)は皆にそう鼓舞すると、まずは予定通りに目標を援軍の方に定める。彼女がエクスカリバールを投げつけ、それに合わせて、ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)も重い蹴りを放つ。だが、トランプ兵はその攻撃を次々とかわしていった。
「援軍も速いね、これはどちらも攻撃を当てるのに苦労しそうだ」
 九尾扇から幻影を生み出して自らに纏わせながら呟く寺本・蓮(眼鏡が本体疑惑・e00154)。自らのサポートとしての役割も重要になってくるからだ。
 空、杉本・神楽(当たって砕く豪快さん・e40822)も続いて、トランプ兵を狙っていく。空のドラゴニックハンマーは当たったものの、神楽のブラックスライムは直ぐに体勢を立て直されてかわされてしまった。
「知り合いの美人の姿かっさらって暴れとるんを放っておけるほど、人間出来てないんだよなあおっさんはさぁ!」
 穴吹・醍吾郎(何でも屋の様な何か・e14091)が狙うのは、あくまでワイルドハント。空の霊気を乗せてワイルドハントを斬りつけた。
 ワイルドハントの纏う獣達が牽制する様に唸り声を上げ、それがラインハルト達を痺れさせていく。そこにトランプ兵が雷を纏わせた槍で突きにくるが、それが仲間達に届く前に神楽は痺れた身体を押して抑えにかかった。
 神月は体勢を整え直すとオーラの弾丸をトランプ兵に向かって放つ。神楽に抑えかかられていたトランプ兵は身を翻して避けようとするが、抑え抱えられていたお陰もあり命中した。そして、間髪おかずにイピナとラインハルトが連携しながら斬撃を加えるが、身体が自由になったトランプ兵は、その攻撃はひらりひらりとかわしていってしまう。しかし、蓮の放ったブラックスライムが、その身体を捕らえる事に成功した。
「皆さん、お気をつけて!」
「みんな、確実に当てていこう」
 レイラの放つ雷の壁と、空の放つオウガ粒子がイピナ達を包み込んでいく。
「目標は、この美人さんの偽物で問題ないよなあ?」
 醍吾郎に『この美人さん』と言われた神月は、その言葉ににやりと笑う。
「ああ、本物はこのあたしだからナ。みんな、頼むヨ!」
「はい!」
 神月の言葉に、イピナが強く答え、ラインハルト達も強く頷く。元々の目的はワイルドハントを倒し、創世濁流を阻止する事。こちらを逃しては話にならない。
「とはいえ、こっちも速いんだけどナ。次は当てるゼ!」
 神月は構え直して、ワイルドハントを見据える。トランプ兵も面倒だが、自分の偽物の方が余程やっかいだ。だが、揺るぎない自信がある。本物は自分、だから勝つのも自分なのだ。笑みを浮かべつつ、ワイルドハントに飛びかかると降魔の一撃を放った。今度は確実に命中する。
 だが、同じようにワイルドハントも笑みを浮かべた。
「こっちもお返しダ!」
 攻撃を受けた反動を活かし、そのまま神月に多くの獣を纏った強烈な一撃が襲いかかる。
「神月さん、直ぐに回復します!」
 直ぐにレイラが動き、神月に施術を施して傷を癒していく。
「もう一回行きますよ」
 イピナの投げ放ったエクスカリバールが、避けようとするワイルドハントを追いかけて命中した。だが、攻撃の間を見て、トランプ兵も動き出す。槍による光の一閃がイピナ達を薙ぎ払った。
 蓮はトランプ兵に、ラインハルトはワイルドハントに、それぞれ攻撃を仕掛けるが、まだまだ速度の落ちない二体は素早い動きでかわしてしまう。
「……これは、俺もワイルドハントに集中すべきかな」
「はい、面倒な相手です……」
 とにかく、相手の速度を落とさない事には始まらない。蓮の言葉に、ラインハルトも頷いた。
 空の日本刀の刃がワイルドハントの急所を捕らえる。だが、続く神楽の蹴りの方は、直ぐに身を翻したワイルドハントには上手く入らなかった。しかし、すかさず醍吾郎が斬りつけにかかり、その刃がワイルドハントを捕らえる。間髪入れずに神月がオーラの弾丸を撃ち放ち、命中させた。
 仲間達の怪我、戦闘状況を確認しつつ、レイラはオウガ粒子をイピナ達に重ねてかけていく。
「捕らえたっ」
 蓮の放つ漆黒の闇が幾重にもなってワイルドハントを捕まえる。そこを狙って、イピナはオーラの弾丸を撃ち放ち、ラインハルトの輝きを伴う蹴りが叩き込まれた。
「まだまだダっ」
 ワイルドハントの右手に蠢く獣たちが、それぞれ吠えはじめる。その吠え方は独特で空達の思考をかき乱していく。一方のトランプ兵は鋭い突きで神楽に向かって放つ。それを何とか受け止めつつ、カウンターでトランプ兵の魂を喰らった。
 空は意識を保たせつつ、ワイルドハントを強烈に殴りつける。更に醍吾郎は空の霊気を乗せて斬りつけた。
「皆さん、これで……」
 レイラの放つオーロラの光は空や醍吾郎、そして自身を包み込み癒していく。それと同時に奪われかけていた意識も取り戻させていった。
 神月の渾身の蹴りがワイルドハントに叩き込まれる。
「ラインハルトさん」
「はい、行きましょう」
 イピナの声掛けにラインハルトは頷く。二人の連続した重い蹴りと魂を喰らう一撃が次々とワイルドハントに叩き込まれた。
 ワイルドハントの纏った獣達が、また違った声を上げ始める。今度は威嚇と牽制を交えた声。それに思わず神楽達は怯む。更にトランプ兵による一閃が襲い掛かった。
 敵が攻撃をしている間に蓮はワイルドハントに一気に詰め寄ると電光石火の蹴りを叩き込む。更に続けて空の刃が急所を捕らえ、神楽の放つブラックスライムが絡みついた。そこに醍吾郎の重い蹴りが叩き込まれる。
「皆さん、ワイルドハントの動きが鈍くなっています。回復は私にお任せを。皆さんは全力でお願いします!」
「サンキュ、任せたゼ!」
 レイラの言葉に、神月は笑顔で応えるとワイルドハントに向かってオーラを撃ち込む。レイラの方は神楽達に光のベールを纏わせて傷を癒していった。
 ワイルドハントは獣を纏わせた右腕で神月を狙うが、神楽が間に入って防ぐ。
「俺が相手をしてやるよっ!」
 神楽はそのまま、魂を喰らう一撃をワイルドハントに喰らわせた。
 トランプ兵は雷を纏わせた突きをイピナに向かって放つ。それを、イピナはバールを使って何とか受け止めた。
 蓮がブラックスライムを放ってワイルドハントを幾重にも捕らえていく。そこに、イピナの放つオーラの弾丸が撃ちこまれ、ラインハルトは魂を喰らう一撃を放った。
「我は牙、突き立て抉り、喰らい尽くす!」
 空は螺旋の力による巨大な爪のオーラを両腕に纏わせる。そしてワイルドハントに螺旋の力を次々と叩き込んでいった。更に醍吾郎の重い蹴りが叩き込まれる。
 レイラの放つ光のオーラがラインハルト達を再び包み込んで傷を癒していく。
 神月は傷ついたワイルドハントを見て、にやりと笑った。
「知らねーんなら教えてやるヨ、あたしってばサイキョーなんだゼ!」
 掌に拳を打ちつけ、自らを鼓舞する。そして全速力でワイルドハントに向かっていく。全身全霊を乗せた右拳が思いっきりワイルドハントを殴りつける。その勢いに吹き飛ばされたワイルドハントは、そのまま砕けて消えていった。それを見てトランプ兵は撤退していく。
 ワイルドハントが倒れた為にワイルドスペースは消えていく。
「皆さん、ご無事で良かったです」
 レイラは怪我の酷い仲間達に治療を施していく。彼女の癒しによって、激戦の疲れも取れるようで、ほっと息をつく。
「作戦、成功ですね……」
「イピナさん、お疲れ様でした。皆さんも、お疲れ様でした」
 大きく息をつくイピナに、ラインハルトは声をかけ、全員にも労いの声をかける。
「すっげー楽しかったゼ、ありがとな偽者」
「私はあんまり楽しく無かったけど? まあ、無事に倒せて何よりかな」
「ははは、そうやな、確かに違いない」
 すっきりした表情で笑う神月に、友人である空と醍吾郎は苦笑いを浮かべる。でも、こんな事を言えるのも、無事にワイルドスペースを消滅させることが出来たからだ。
「ワイルドスペースの情報が手に入らなかったのは残念だったけどね」
「いいだろ? 思いっきりぶん殴ってやって倒したんだからさ!」
 少し残念そうな蓮に、神楽が豪快に笑う。
「皆さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした!」
「お疲れ様ー!」
 ワイルドスペースの無くなった事に安堵しつつ、全員無事である事に感謝しつつ、皆で笑顔を浮かべたのだった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月15日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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