腐女子だからこそ憤怒し、慟哭する!

作者:なちゅい

●尊いゆえに大切な……
 ぬいぐるみ、切手、メダル、模型……。
 コレクションというものは人によって様々なものが対象となるが、その女子高生、岩崎・亜貴が集めているものは一風変わっていた。
「やっぱり、BLは尊い……」
 亜貴の部屋の本棚には、BL……ボーイズラブ漫画の単行本がずらりと並べられている。彼女はいわゆる、腐女子なのだ。
 新しく調達してきた単行本を前に、鼻息を漏らす亜貴。見た目は清楚なだけに、男性が彼女の趣味を知ったら残念がるかもしれない。
「細マッチョが引っ張っていそうで、その実、華奢な子がリードしてそう」
 亜貴はやや鼻息荒くしながら、それらの単行本を存分に堪能していると。突然、部屋の中に2人の人影が現われた。
 1人は赤い帽子の人馬。そして、1人は骨とマントのみを纏う露出度の高い女性。いずれも胸元にモザイクが見える。前者は第八の魔女・ディオメデス、後者は第九の魔女・ヒッポリュテと呼ばれる、「パッチワークの魔女」達だ。
 そいつらは、単行本を持ったまま、人に見られたと硬直している亜貴の前で、彼女の大切にしているBLの単行本が詰まった本棚を壊し、本を破き始めた。
「あっ、私の選りすぐりの本が……」
 大切な本を散り散りにされてしまい、亜貴は愕然と両手足を部屋の床についてしまう。涙すら流すのは、いかに彼女にとってこれらの単行本が大事だったかを物語っている。
「私の大切な物、どうしてくれるのよ!」
 亜貴はすぐ、その消失感を怒りに変えてぶちまける。
 しかし、魔女達はニヤリと微笑み、手にする鍵でそれぞれ亜貴の心臓を貫く。この行為は魔女……ドリームイーターが人間の夢を得るための行為。
 身体には全く外傷を残していないものの、亜貴は目から光を失って倒れていく。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれど、あなたの怒りと……」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 2体の魔女がそう言うと、現われたのは学生服を着た2人の美少年。
 やや引き締まった体の少年と、華奢な少年で、先ほど、亜貴が読んでいた単行本の登場人物にも似ている。
「俺の大切なモノをよくも……!」
「大切な物を失うなんて、悲しいよね……」
 そんな言葉を囁き合いながら、2人はその家から外へと飛び出していったのだった。

 パッチワークの魔女達の暗躍。
 集まるケルベロス達を見て、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が小さく唸る。
「コンビを組んで活動する魔女、実に厄介だね」
 また、一般人が犠牲となってしまう為、いち早く対処せねばならない。
 今回動いたのは、怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと、悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテの2体だ。
 この2体の魔女は、とても大切な物を持つ一般人を襲い、その大切な物を破壊し、それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪って、ドリームイーターを生み出すようだ。
「生み出されたドリームイーターは2体1組で行動し、周囲の人間を襲ってグラビティ・チェインを得ようとするようだよ」
 今回の場合、華奢な美少年が『物品を壊された悲しみ』を語り、それを理解できなければ、細マッチョな少年が『怒り』でもって殺害してしまうらしい。
 戦闘では、怒りのドリームイーターがクラッシャー、悲しみのドリームイーターがスナイパーとして連携して戦闘を行うようだ。
「周囲の人間を襲って被害を出す前に、この2体のドリームイーターを撃破して欲しいんだ」
 現われるのは、制服を着た男子高校生風のドリームイーター2体のみ。配下などはいない。
 言葉を喋ることはできるが、それぞれ自身の悲しみを語ること、怒りを表現すること以外はできないようだ。
 この夢喰いは、直接攻撃とモザイクを飛ばす攻撃を主として行う。時に、怒りと悲しみをぶちまけながら、自分達の力を高めてくることもあるようだ。
「現場は、秋田県某所の田舎町だね」
 夕方、被害者宅周辺を夢喰い達は歩き回って移動する。見つけた者へと悲しみと怒りをぶつけて殺害しようとする為、出来る限り早く阻止したい。
 説明を終え、リーゼリットは更に続ける。
「ビーエルね……。面白いの?」
 あまり意識した事のないジャンルだったらしく、彼女が問いかけると、一部のケルベロス達が猛プッシュしてきたのに、彼女はタジタジになっていた。
「ま、まあ、それだけ熱意を持てるジャンルなら、被害に遭った女子高生の怒りと悲しみは大きなものに違いないのかな」
 被害者は自宅の自室にて倒れたままだ。ドリームイーターを倒した後で目覚めるはずなので、出来ればフォローをしてあげて欲しい。
「それでは行こう。ドリームイーターの討伐を。よろしく頼んだよ」


参加者
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
若道・咲百合(雑食性腐ァルキュリア・e24325)
キアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)
エレアノール・ヴィオ(オラトリオのブレイズキャリバー・e36278)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
ソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)
ミカエル・ヘルパー(白き翼のヘルパー・e40402)
明日葉・梨桜(ドラゴニアンの刀剣士・e41812)

■リプレイ

●魔女の暗躍とBL
 秋田県某所の田舎町へとやってきた、ケルベロス達。
 今回の依頼に対するメンバー達の反応は、大きく二分している。
「BLというジャンルに手を出したことはないけれど、尊さを感じる人がいるのならそれは一つのジャンルなのでしょうね」
 クールな印象を持たせるユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)だが、その実、アガリ症な彼女は今も少し緊張を見せていたようである。
「大切な物を壊された怒りと悲しみ……それを利用するなんて」
 カランコエの花を咲かせたウェーブヘアを揺らす、エレアノール・ヴィオ(オラトリオのブレイズキャリバー・e36278)はデウスエクスに対して、静かに怒りを見せる。
「大切な物を壊し怒りと悲しみによって、ドリームイーターを生成する魔女達を私は許せません……!」
 生真面目な態度のキアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)が叫ぶ。
 金に輝く胡蝶の翼を背に生やす彼女もまた、事件を発生させ続けているこの事件の元凶……パッチワークの魔女達に強い憤りを見せていたが。
「……それはそれとして、BLとは一体……?」
「ま、事件後だって知るのは遅くないでしょう」
 ヴァルキュリアのキアラには、初めて見聞きする言葉だったらしい。山奥で暮らしていたエレアノールも首を傾げており、『不思議な趣味』といった程度の認識だったようだ。
 自愛に満ちた笑みを浮かべて仲間達を見つめるミカエル・ヘルパー(白き翼のヘルパー・e40402)は、逆側のメンバー達へと視線を移す。
「BLかの。まぁコレに関しては……アレじゃな、適当に喋るとガチ勢から説教が……まぁええわい! ふはは!」
 女性多めのチーム唯一の男性、ソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)が豪快に笑う。全身に縫い目のある彼は適当に喋っているようにも見えるが、果たして。
「同志が……腐女子としての同志がそのような目にっ……!!! 許せません!」
 こちらも、ヴァルキュリアの若道・咲百合(雑食性腐ァルキュリア・e24325)。彼女は今回被害に遭った女性の救出依頼に、並々ならぬ意欲を燃やしていた。
「あと、それはそれとしてYAOIな敵さん達の姿も大変見たいですし、楽しみたいです!」
 咲百合はしっかりと本音を出すことも忘れない。ヴァルキュリアの彼女は、どうしてこうなったのか。
「この手のカプは華奢受けの方が概ねメジャーなのデスガ、被害者の方は逆……」
 同じく、普段はクールなモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)なのだが、この依頼に関しては思いっきり自身の考えを語る。
「ソウ、ツマリ、ワタシとしては同志ナノデス……!」
 饒舌になって熱く語るモヱ。ダメだ、こいつも腐ってやがる……。
「はは、にしてもなぁ。破られたのは悔しいが、新しく創る為の意欲とするべきなんだよ」
 メンバー達の様子に、男性のように振舞うドラゴニアンの明日葉・梨桜(ドラゴニアンの刀剣士・e41812)は軽く笑う。
 悲嘆にくれても意味がないと言う梨桜も残念ながら、腐の方面の捜索活動を行う1人である。
「さぁさ、未練も何もかも断ち切って前に進む為の楔としよぉかねぇ」
 すでに、被害者宅周辺を歩いているはずの夢喰いを探しに。梨桜は仲間達へとその討伐を促すのである。

 ケルベロス達は散開し、銘々の手段で索敵に当たる。
 キアラ、モヱは警察や行政に連絡し、周囲の住民の屋内退避勧告を協力してもらう。
 ミカエルはそれに加え、事前に注意喚起をニコ生で配信を行おうとしたが、個人情報の観点からか漠然とした注意しかできなかったらしく。その効果はさほど認められなかったようだ。
 空を飛べるメンバーは翼を羽ばたかせ、それ以外のメンバーは地上を注意深く見回す。
「さて! マッチョはどこじゃマッチョは! わしのマッチョと勝負じゃ」
 敵を煽るように周囲に呼びかけるソルヴィン。すると、2人の男が闇の中から姿を現す。
「大切な物を失うなんて、悲しいよね……」
 後ろの華奢な少年は、悲しみの言葉を口にする。
「あれが件の夢喰いね? ふふふ」
 白い翼で優雅に空を舞っていたミカエルもその姿を捉え、仲間達へとスマホで連絡する。
 集まるメンバー達は悲しみを口にする少年に全く同調せず、ついに手前の細マッチョが怒り始める。
「てめぇら、許さねぇぞ!」
「くっ……、ごちそうさまです!?」
 なぜか両手を合わせる咲百合は、できるだけ広い場所へと敵を誘導するよう後退する。
 エレアノールが周囲に人が歩いていないかと警戒する手前で、梨桜は剣気解放し、この場へと一般人が立ち入らないよう配慮する。
「許さねぇ……」
「いやだよ、これ以上失いたくない……」
 寄り添う2人は、少女より奪われた感情。それを改めて思い出したユスティーナは顔面を赤くし、発汗してしまう。
 アガリ症なユスティーナはそれでも、できるだけ平静を装うよう努めて。
「趣味のものを、それもただ感情を引き出したいが為に壊すなんて悪趣味な相手。意趣返しをしてあげなければね」
「人様の大切な物を破壊するとは……、相変わらず許せん! 成敗してくれるわい!」
 叫ぶソルヴィン。だが、彼は相手をじっくりと眺めながら、内心では。
(「見るならマッチョじゃが、ニャンニャンするなら華奢かの……わしがタチじゃが。逆がええかの?」)
 だめだ、こいつも早く何とかしないと。
 その間も、夢喰い達は戦闘を整える。敵意をむき出す相手に、ミカエルは自身のプロポーションを見せ付けつつ告げた。
「ええ、よくってよ。惨たらしく殺してあげるから」
 ニコ生での配信もそうだったらしいが、ミカエルは一般男性であれば熱狂してしまうような美貌の持ち主だ。
 だが、感情から生み出されたデウスエクスでは、相手が悪いと言うべきか。残念ながらミカエルの美貌にもまるで反応を見せない。
 ある程度、広い場所に出たところでキアラは意を決し、武器を取り出す。どうやら、警察隊が避難勧告してくれているらしく、この近辺に人気はない。
「怒りと悲しみによって暴れるドリームイーター、浄化し救ってあげましょう」
 メンバー達はドリームイーターの討伐を本格化させ、グラビティを敵へと繰り出すのである。

●悲しみと怒りをねじ伏せて
「こいつには指1本触れさせねぇ!」
「大切な物を失うなんて、悲しいよね……」
 飛び出してくる細マッチョ。そして、後方でモザイクを用意していた華奢な夢喰い。
 2体のドリームイーターを討伐するに当たり、回復役として動くキアラとモヱがいち早く動く。
 金の翼を広げるキアラは半透明の御業を出現させ、炎弾を相手へと投げ飛ばす。
 狙うは、仲間が各個撃破を目指す後方の華奢だ。浴びた炎でその身を焦がすそいつへ、モヱも続く。
「この手の華奢を残すと狂化覚醒するのが、そこそこお約束ナノデス……」
 どこのお約束なのかはともかくとして。モヱはミミックの収納ケースに偽物の財宝をばら撒かせる。それに気を取られた華奢へ、彼女はドラゴニックハンマーから砲弾を飛ばして足止めをはかった。
「悲しい、悲しい……」
「こいつには指1本触れさせねぇ!」
 まるでオウム返しのように、悲しみと怒りの言葉を繰り返す夢喰い。BLなどまるで解らぬユスティーナだが、生み出されたドリームイーターに不快さを覚えて。
「理解もしていないくせにそれらしさだけを真似たなんていうの、最高に趣味が悪いわッ!」
 殴りかかってきた細マッチョの攻撃を受け止め、ユスティーナは構えたアームドフォートから砲弾を発射し、華奢へと叩き込んでいく。
「どうして、彼をいじめるの……?」
 痺れに多少戸惑う華奢だが、それで動きを止めたわけではなく、モザイクをケルベロスへとばら撒いてくる。前線メンバーがそれを浴びることとなり、体に痺れを覚えていたようだ。
「倒さなくてはならないのに、なんでそうMOEるツボをつつくんですの?」!
 敵の挙動一つ一つが自身のツボにはまってしまい、MOEを求めて暴走しかける先百合。
 ただ、倒すべき相手だという認識を強く持つ彼女もまた、華奢に狙いを定めて砲撃形態とした竜鎚より竜砲弾を喰らわせる。
「魔法で細マッチョも華奢も、何でもござれよ」
 ワイルドな見た目のソルヴィンもまた、かなりがっちりとした肉体を持つ。彼は竜語魔法を操り、ドラゴンの幻影を放って華奢の体を燃やす。
「てめぇら、許さねぇ!」
 それは本心からの言葉なのか。それとも、元となった感情ゆえか。
「悲しくて腹立たしいのだろうが……。関係ないな」
 怒りを荒げる敵を一瞥し、毅然と言い放ったエレアノールもまた後方の華奢に視線を向けて轟竜砲を撃ち込み、その動きを制する。
 仲間との連携を重視し、袖口に隠し持つ惨殺ナイフを両手に持ち梨桜も華奢へと御業を呼び出し、敵の体を強く掴ませて動きを直接止めようとした。
 そこへ、翼を羽ばたかせたミカエルが敵を頭上から狙い撃つ。
「嬌艶な花の嵐に酔いなさいな」
 彼女が振りまくは嬌艶な香りの花。戦乙女たる彼女はその美貌で相手を惑わせようとした。
「邪魔なんだよ!」
 だが、そこへ細マッチョがモザイクを飛ばし、ミカエルを牽制する。
 モザイクに包まれたミカエルは雰囲気こそ崩さぬが、細マッチョに執着するようにグラビティを発し始めたのだった。

 怒りと悲しみ。2体のドリームイーターが共に襲い来る。
「こいつには指1本触れさせねぇ!」
「大切な物を失うなんて、悲しいよね……」
 それぞれが己の感情をぶちまけ、ケルベロスへと攻撃を繰り返す。
 確かに、互いに連携はしているのだが、その言葉だけを聞くとどうしても違和感が拭えない。感情から生み出された夢喰い達が、同じ言葉しか発せないからだろう。
 攻撃を受け続けるケルベロス達は、夢喰いの攻撃に耐え凌ぐ。
「今、癒します。蒼の抱擁にて、再び立ち上がる力を!」
 後方から献身的に仲間を支えていたキアラは、光の翼から蒼く優しい光を仲間へと放ち、仲間を包み込む。
 キアラら回復役の援護を受け、ケルベロスは悲しみを主張する敵に攻撃を集中させる。
 それによって、華奢な少年の夢喰いがぐらりと体勢を崩しかけたのを逃さず、咲百合が振るったファミリアロッドの尖端から飛ばす魔法の矢で敵の体を射抜く。
「悲しい、かな、し……」
 射抜かれた場所からモザイクを噴き出し、悲しみの夢喰いは霧散するように消えてしまった。
 残りは、細マッチョのみ。多少傷ついてはいたが、ソルヴィンは余裕綽々な態度で異なる次元から思念を察知する。
「宇宙の一端、垣間見せてやるかね」
 宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線を強引に捻じ曲げ、ソルヴィンは怒りの夢喰い目掛けて降り注がせた。
「ふふ」
 挑発を靡かせるミカエルは、残り1体の敵へとウイルスカプセルを投げ飛ばし、敵の回復阻害を行う。
「もう、怒ったぜ!」
 細マッチョは変わらず、ケルベロスに殴りかかる。それを抑えるユスティーナへとモヱは電気ショックを撃ち出し、回復と共に力を与えた。
 ミミック、収納ケースがエクトプラズムで作り出した武器で殴りかかり、敵の体を硬直させると、力を高めたユスティーナは黒い鎖を操り、細マッチョの体をきつく縛り上げて行く。
「これ以上、大切なモノは失いはしねぇ!」
 細マッチョもまた、怒りを力に変えて自らの傷を塞ごうとする。だが、縛りつけられ、石となりかけた体まで戻すことはできない。
 そいつ目掛けて咲百合は自らの体を光と変えて突撃すると、前線で仲間を庇って敵のモザイクに耐えていた梨桜が両手のナイフで続けざまに細マッチョの体を切り刻む。
「確実に仕留めてこうぜ?」
 敵の体から噴き出すモザイクを、血の代わりに浴びて体力を取り戻す梨桜。
「はい……。これで、最後だ」
 応じたエレアノールが仲間へと丁寧に返事をし、敵へとキツい口調で呼びかけ、魔法のブーツを撃ち出して細マッチョの体を強く蹴り込む。
「これ以上、大切な、モノを……」
 怒りの夢喰いもまた、全身をモザイクに変えて消え失せてしまう。
 一息つくメンバー達。張り詰めていた気を緩めたキアラは、ほろりと涙を流してしまうのだった。

●同志による手厚いフォロー
 ドリームイーター討伐後、メンバーは戦場跡の後始末を始める。
「……MOEに至る被創物達よ! わたくしたちに、力を!」
 咲百合は今までに目にしてきた創作物による興奮を回復の力に変え、周囲へと振り撒く。
 腐の力が幻想交じりに……と表現するとアレだが、しっかりと戦場跡の修復はできていたようだ。
「被害者さんへのフォロー、おまかせしますね」
 BLについて簡単に聞いたエレアノールは、「世界って広い」と困惑しつつ衝撃を受けてしまう。
 少々ハードルの高い趣味だと感じたエレアノールは、戦場を片付けた後、この場から撤収して行く。ミカエルもカクテルを飲みに行くと、BARに向かっていった。
 他のメンバー達は被害者、岩崎・亜貴の自宅へと向かう。
 キアラ、ユスティーナは彼女の自室を目にして、その惨状よりも、散らばるマンガの切れ端を目にして唖然としていたようだった。
 一応、被害者は高校生なので、描写はギリギリラインのものではあったので、念の為。
 目覚めた亜貴には、同志とも言えるケルベロス達がフォローに入る。
「とても辛い思いをされたと思いますが……、これからも追い求めましょう? 新たなMOEの出会いも、待っているはずですから」
 咲百合は複数所持していた自身のコレクションの一部を、亜貴へと譲り渡す。
「俺っちの作品で、少しは持ち直せないかい? なに、琴線に触れるかどうかは別だけどねぇい」
 BL創作を手がける梨桜が書いているのは、ガタイのいい兄さんと小柄な少年の話。奥手な恋愛もいいものだと、梨桜は亜貴にプッシュしていた。
 さらに、モヱは夢喰いに破られた本を、専門店のWEBサイトなどで探す。自身の経験を活かしてフリーマーケットアプリなどで、同じ本を取り寄せようと言うのだ。
 そんな同志のケルベロスの気遣いに深い感謝の意を表す亜貴へ、ソルヴィンがボソリと告げる。
「……お、そうじゃ、ジジイBLはあるのかの?」
 本人に深い意味はなかったのだが。そんな意味深な彼の言葉に、この場の女性達は様々な想像を巡らせるのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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