至高の味は危険な香り

作者:雷紋寺音弥

●至高の香り
 伊豆七島、新島村。
 夏の間はサーファー達で賑わうキャンプ場も、秋にもなれば人の姿は見られない。だが、そんな人気のないキャンプ場にて、なにやら異様な匂いのする煙が上がっていた。
「人間の一生は有限なり。故に、食すことのできる食事の量にも限りがある」
 焚き火の前で語っているのは、羽毛の生えた鳥頭のデウスエクス、ビルシャナだ。こんな場所にまで現れては、おかしな教義を語って聞かせ、信者を増やそうとしているようなのだが。
「さすれば、全ての食事を、この新島名物である『くさや』とし、命果てるまで食べ続けよ! 焼いて良し、生でも良し、おまけに健康にも良く保存も効く、正に万能食なのだからな!」
 古来、くさやは本土に住まう者達への、献上品だったという話もある。そんな蘊蓄を語りながら、ビルシャナは周囲に集まった者達へと熱弁している。そんなビルシャナの言葉に賛同し、周りに集まった者達は一斉に焼けたくさやを手に取ると、一心不乱に噛り付き始めた。
「ヒャッハァァァッ! この匂い! この味! たまんねぇぜ!!」
「身体の芯に染みわたる、くさやパワー! これで俺も無病息災の健康男だぁっ!!」
 くさやさえあれば、他に何も必要ない。全身が異臭に染まって行くのも構わずに、信者達は焚き火の煙を浴びながら、ひたすら目の前のくさやを食べ続けていた。

●くさや道に堕ちた者達
「健康食品の中には、味とか見た目とか、後は臭いがヤバいものがあるってのは知ってるっす。でも……さすがに、そればかり食べて、健康になれるはずもないっすよね……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、何とも頭の痛い事件が発生したと、自分の垣間見た予知について語り始めた。
「伊豆諸島にある新島村で、ビルシャナの発生が確認されたっす。今回の事件は、六道衆・餓鬼道のビルシャナの信者が、新しくビルシャナ化したものらしいっす」
 ダンテの話では、ビルシャナは周囲の人間に自分の考えを布教して、配下へと変えている真っ最中らしい。その内容は、『くさやこそ至高の食べ物であり、人間は365日、くさやのみを食べ続けるべき』という無茶苦茶なものだ。
「放っておくと、ビルシャナの教えに賛同している一般人は、完全にビルシャナの手駒になってしまうっす。そうなる前に、ビルシャナを撃破して人々を救うのが今回の目的になるっすよ」
 もっとも、ビルシャナの影響力は極めて強く、まともな説得では信者達の目を覚ますことはできない。くさや以外の食べ物を勧めたところで、彼らは口にさえしようとしないだろう。最悪の場合、くさやを強引に食べさせられたり、くさや液をぶっかけられて、あらゆる物をくさや風味にされてしまうのがオチである。
「説得の際に重要になるのは、内容よりもインパクトっす。くさやより強烈な臭いの食べ物を勧めるとか、くさや味の斬新な料理を勧めるとか、とにかく普通じゃない何かが必要になるっすね」
 ちなみに、説得が成功しないまま戦闘に突入した場合、信者達はビルシャナのサーヴァントのような存在となる。彼らはくさやの食べ過ぎで口臭が強烈なくさや臭になっているが、しかし肝心の戦闘力は最弱レベル。そのため、まともに倒すと簡単に死亡してしまう。
 唯一の幸いは、現場となるキャンプ場に他の人間がいないことだ。元より、教義に納得できない者は最初からビルシャナの周りになどいないので、人払いの手間が必要ないのは助かるのだが。
「戦闘になるとビルシャナは、くさやっぽい感じの技で攻撃して来るっす。どれも、こっちの攻撃を当てにくくする効果を持っている上に、ビルシャナ自体も意外と素早く逃げ回るから、注意が必要っす」
 なんにせよ、これ以上の被害を防ぐためにも、ビルシャナを野放しにしておくわけにはいかない。そう言って、ダンテは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
アイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)
馬鈴・サツマ(取り敢えず芋煮・e08178)
ロザリア・レノワール(黒き稲妻・e11689)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
ミーシャ・クライバーン(トリガーブレード・e24765)
簾森・夜江(残月・e37211)
望月・理央(梨園の猟犬・e40334)

■リプレイ

●耐え難き匂い
 シーズンオフのキャンプ場は、夏場の喧騒が嘘のように閑散としていた。
 こんな季節に、島のキャンプ場を訪れる物好きなどいないはず。だが、そんな殺風景な場所の真ん中で、何やら焚き火を囲んで騒いでいる人影が。
「珍味は色々ありますが、これはキツイですね。味は良いのでしょうけど、ずっと嗅いでいるのは辛いです。迅速に終わらせなくては……」
 風下に立っていた簾森・夜江(残月・e37211)が、漂ってくる匂いに思わず鼻を摘まんだ。
 煙だけでも、十分に分かる凄まじい匂い。正直、こんなものばかり食べていて、果たして身体は大丈夫なのかと思う程。
「ビルシャナのキチガイ度合いが強まっているのは気のせいか? こうなってしまった以上、とにかく退治するしかないな」
 焼いたくさやを前に舞い上がっている信者達を目にして、冷めた口調で呟くミーシャ・クライバーン(トリガーブレード・e24765)。だが、その間にも信者達は次々にくさやを焼きまくり、それを頭からバリバリと齧っている。
 ここまで頭のネジがブッ飛んだ相手には、まともに接しても効果はない。ならば、まずは仲間意識を持ってもらおうと、望月・理央(梨園の猟犬・e40334)が実にフレンドリーな様子で信者達に問い掛けた。
「おー。お前らさ、くさやばっかり食べてんだって?  いーじゃんいーじゃん、健康にいいよなぁ、あれさ」
「おっ! なにやら、話の解りそうなやつが来たな! そう、遠慮するな。もっと、こっちに来て、お前もくさやを味わうんだ!」
 案の定、信者達は仲間が増えたと思い、何の警戒心も抱かずに理央のことを迎え入れた。
 こうなってしまえば、こちらのもの。すかさず理央は、先程とは打って変わって心配した表情になり、信者達に問い掛けた。
「そんなおめーらに聴きてぇんだけど……栄養は足りててもカロリーは大丈夫か? 最近、変な痩せかたしてきたやつとか居るんじゃねーの?  てゆーか、居ねぇとおかしい」
 栄養とカロリー、炭水化物に糖分なども、しっかり摂取しないと意味はない。くさや以外の食品も、しっかり摂らねば意味はないと言ってのけ。
「勿論、サプリとかで代用って効かねぇものも多いんだからダメだぞー。 ほら、ビルシャナ。 お前も羽がしおれてきてんじゃねぇのか?」
 すかさず、ビルシャナの方を指差してみたが、肝心の鳥頭は何ら動ずる素振りさえも見せなかった。
「ハッハッハ、世迷い事を! 貴様こそ、タンパク質でもエネルギー源になるというのを知らんのか?」
「それに、減った分は食えばいい! 食事の量そのものを、減らしているわけではないのだからな!」
 だから、お前も難しいことなど考えず、もっとたくさんくさやを食え。それだけ言って、再びくさやを焼き始める信者達。
 なんというか、これはなかなか強敵だった。勢いでくさやを信仰しているのではなく、中途半端に科学的な知識を持っているのが鬱陶しい。
「『くさや』とて防腐剤、着色料、保存料、様々な科学物質が入っていて。そればかりでは体に良いハズもない。だからとて、健康に良いものだけを採る、これも健全とは言い難い。毒も栄養も食す、両方を美味いと感じ血肉する度量こそ食には肝要だと思うぞ」
 すかさず、ミーシャが続けて諭そうと試みたが、しかし信者達の鼻の穴は、完全にくさやフレーバーに毒されている。くやさこそ、真理! くさやこそ正義! そんなくさやスパイラルに陥ってしまった彼らにとって、彼女の言葉はむしろ逆効果。
「うるせー! てめぇこそ、新島伝統のくさや液を知らねーのか!!」
「新島のくさや液はな、伊豆七島の中でも元祖……つまり、原初のくさや液なんだよ! 天然無添加、爺さんの爺さんの、そのまた昔の爺さんの代から続く、家宝の液体を馬鹿にすんじゃねぇ!!」
 新島のくさやは、未だに昔ながらのくさや液を使う伝統産業。どこぞの工場で作られた、量産品と一緒にするな。防腐剤だの保存料だのといった下りにプライドを傷つけられたのか、信者達は今にも壺の中に溜めてある、くさや液の原液をブチ撒けそうな勢いで迫って来た。
「全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだと言われる。その意味が解るか?」
 如何に万能食であっても、過剰摂取は命取りだとアイリス・ゴールド(愛と正義の小悪魔・e04481)が言って聞かせたが、ブチ切れた信者達は止まらない。このままでは本当に、ここにいる全員が、頭からくさや液を被る大惨事になってしまい兼ねない。
「まあ、まあ、そう荒れるな。確かに、くさやは美味い。伝統的な製法を守っているなら、添加物の心配もないのだろう」
 ここで信者達を怒らせては元も子もない。ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)が宥めたことで、なんとか溜飲を下げてくれたのか、くさや液ブチ撒けによるスメルハザードの危機は免れた模様。
 もっとも、これでは説得が振り出しに戻っただけだ。このままでは、信者達を覚醒させるためのインパクトが足りない。ビルシャナが気を緩めた隙を見て、ラギアは改めて事前に用意しておいた、ホットドリアン汁を信者達に勧めてみた。
「これは飲物で、食物ではない。甘いモノはホッとする。心が健康になるぞ」
「ボク特製の蒼汁(アジュール)もいらんかね? さ、安心したまえ、君達向けにくさやエキスもふんだんに配合してある」
 ドサクサに紛れ、アイリスも胸元から蒼く輝く、名称し難い冒涜的で狂気的な味の栄養ドリンクを取り出して信者達に勧めた。
「そうか! では、遠慮なくいただこう!」
 何ら警戒することなく、怪しげな臭気を放つ液体を口にする信者達。だが、漂う猛烈なドリアン臭に反し、彼らの反応は今一つだった。
「う~む……なんというか、くさやに比べて刺激が足りんな」
「くさや、くさや……ぁあ、またくさやが食いたくなってきた!!」
 突然、何らかの禁断症状を発症したように喉元を掻きむしり、信者達は再びくさやに殺到してしまった。見れば、ラギアの持って来たくさやパスタの中から、くさやだけを取り出して食べている者も。パスタのみ、見事に除けて食べている辺り、彼らの脳内は相当なレベルでくさやに汚染されていると言っても間違いではなかった。
 その一方で、蒼汁を飲んだ者達だが、これは混ざっていた成分が効いたのだろうか。
「ぐはっ……! な、なんだ、これは!? くさやの匂いにも勝るとも劣らない、この凄まじく冒涜的な味は!?」
「あはは……大きなくさやが、たくさん空を飛んでるぞ……。ああ、凄いな。ムロアジの群泳かな?」
 人間の味覚が許容できる限界を超えた味に、蒼汁を飲んだ者達は、次々に意識を失ってぶっ倒れた。匂いは平気だったようだが、味の面で一般人にとって耐えられる代物ではなかったようで、彼らは人として大事なものを失う代わりに、ビルシャナの支配から解放された。

●匂いの代償
 蒼汁の効果で信者の数を減らすことに成功したケルベロス達だったが、その後の説得は難航を極めていた。
「味が良い、臭いが良い……それを否定するつもりはありませんが、限度というものがあります。今はスメルハラスメントなんて言葉もあるそうですからね。自分が良くても身内や周りの人達は良いとは限りません」
「うるせー! だから、こっちだって民家のねーとこで焼いてんじゃねーか! 誰もいないキャンプ場くらい、勝手に使ったって構わねーだろ!」
 夜江の説得にも、信者達は気遣いをしていると反論し。
「ん~……皆さんにとっては好きなものであり、実際に美味しいのかもしれませんね~。でも、この匂いは気を付けた方が良いですよ~? なぜなら、子供が嫌がる匂いだからですっ!」
 匂いの強いものばかり食べていたら、今に身内でさえ近づかなくなり、家庭内不和へと繋がってしまう。そんなセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)の言葉にも、彼らは耳を貸さなかった。
「子どもがグレるだぁ? 生まれたときから飯をくさやにしときゃ、そんな心配最初からねーぜ!」
「それに、くさやを嫌う女なんざ、こっちから願い下げだぜ! 匂いが気になるってんなら、離婚だ! 離婚!」
 今の彼らにとっては、くさやこそが最優先すべきもの。ビルシャナの影響力によって頭のネジが吹っ飛んだ彼らには、家族愛よりもくさやへの愛の方が強かった。
「中には食べ物と思えない、酷い臭いのものでも食べられるものがあるのも事実です。その昔は、敢えて腐らせることで保存食として活用してきたんでしょう。しかし、今は現代。一家に一台は冷蔵庫のある時代。保存食に頼らなくてもいいんですよ?」
 ついでに言うなら、くさやは匂いが危険度マックスな劇物でもある。公共の交通機関の中で開放しようものなら、それだけでテロ行為に匹敵するとロザリア・レノワール(黒き稲妻・e11689)が切々と語って聞かせたが。
「じゃっかましいわ! くさやが毒物だと? ならば、この新島に生きる漁師達は、全員テロリストだとでも言うのか? ふざけんな!」
 案の定、ビルシャナの力で脳みそが麻痺した人間には、正論や否定での説得は難しかった。その上、ドリアンの臭気にさえ動じないところから考えると、彼らの匂い耐性は相当なもの。
 ちなみに、臭さの度合いを示す数値として、アラバスター値というものが存在する。その値は納豆でも400弱、3日間履き古したオッサンの靴下で600~800程度なのに対し、焼いたくさやは1200という値を誇るという。
 こんな凄まじい臭気の食べ物を平気で大量に摂取でき、果ては正論も通じないとなれば、残された手段は極僅か。
「そうっすか、分かってくれないんっすね……。ならば実践をもっと知らしめてみましょう」
 ここに来て、今まで事態を静観していた馬鈴・サツマ(取り敢えず芋煮・e08178)が、とうとう動いた。その両腕に抱えられているのは、なにやらグロテスクな黒い塊であり。
「ところで……『キビヤック』ってご存知っすか? 腹を割いて皮下脂肪だけを残したアザラシにアパアリスなどの海雀類を60~70羽ほど、『そのまま』詰めて腹を縫いあわせて地面に埋めた食品っす」
 そう言って、サツマは徐に信者達の前で食べ方を実践して見せた。が、その光景は、とにかくグロイ! 液状に発酵した中身をすすり、脳みそまで残さず食さんとする姿は、まさに異界の食事風景!
 癖のある食品を他者に勧めるとは、こういうことだ。自ら実演して見せたサツマだったが、その心意気に感心したのだろうか。
「ぬぅっ……! この臭気! この刺激! 我らが愛するくさや以上だ!」
「なんということだ! この世界に、こんな食品があったなんて!」
 何故か、感銘の涙を流しながら、キビヤックに齧り付く信者達。なお、キビヤックのアラバスター値は1300以上。辛うじてくさやを越える刺激によって、何人かの信者の目を覚ますことに成功し。
「しかし、凄まじい匂いだな。……む、これは何だ?」
「ああ、それか? 世界一臭いとされる、発酵鰊の缶詰だが……」
 ふと、横に積まれている缶詰の山を発見し、ミーシャがラギアに尋ねたのが運のつき。
 もしかすると、これなら信者達の目を覚ますことが可能かもしれない。興味本位で開けてみたが……この場合、迂闊な行動は周囲の死を意味する。
「ま、待て、貴様達! それは……うぎゃぁぁぁっ!!」
 缶詰を開けた瞬間、凄まじい勢いで噴射される汁。それは運悪く、止めようと翼を伸ばしたビルシャナの顔面を直撃し。
「ぐぁぁぁっ! な、なんじゃ、この臭いはぁぁぁっ!」
「ガハッ! く、くさやとは、レベルが違いすぎ……」
 残る信者達も臭気にやられ、次々と倒れて気を失った。
 恐るべきは、発酵鰊。ちなみに、こいつのアラバスター値は8000以上。くさやの、実に6倍半以上の臭気を誇る、紛うことなき最『臭』兵器だった。

●最『臭』決戦!
 発酵鰊の缶詰が止めとなって、ビルシャナが全ての信者を失ってしまうと、そこから先は早かった。
「くそっ! 何故だ! 何故、貴様達には我がくさや愛が解らない!」
 凄まじい臭気を誇るくさや技の数々を駆使して戦うビルシャナだったが、残念ながら多勢に無勢。どれだけ匂いを撒き散らして戦おうとも、それらは全て、ウイングキャットのタロイモやみるにゃ達によって除去されてしまい。
「どうした? 貴様の技とは、匂いネタだけの一芸特化か?」
「鍛え方足りねーな。やっぱ、くさやだけ食ってるから駄目なんじゃね?」
 ここぞとばかりに辛辣な言葉を浴びせながら、ミーシャや理央がビルシャナを殴る蹴る!
「あがっ! 痛っ! ちょっ……ま、待って……」
「寄るな触るな近寄るな。臭いが移るじゃないか!」
 思わず伸ばされた翼の先端を振り払い、代わりにロザリアが掌に集めたプラズマを雷球として叩き付けた。
 拒絶。徹底的な拒絶。くさやが美味いのは解るが、全てをくさや臭で染めようとするのはやり過ぎだ。その行いが、そのままくさやを貶めることに繋がっていると、ケルベロス達は問答無用の肉体言語でビルシャナの身体に刻み込んで行く。
「Trick with Treat! 毛根から抜いた、貴様はもうハゲている」
「なぁぁぁっ! わ、我の毛がぁぁぁっ!!」
 ドサクサに紛れ、アイリスがビルシャナの頭頂部から毛を引っこ抜いていたが、それはそれ。
「皆さん、頑張って下さい。もう少しですよ~」
 残る臭気は、セレネテアルが味方に幻影を纏わせることで緩和した。それを好機と判断し、ラギアと夜江が一気に距離を詰めて仕掛けた。
「臭くて臭すぎて、まるで、世界の時間が止まっているように思えたぞ……。だが、貴様の催したイベントも、貴様の命運も、ここで終わりだっ!!」
 剛拳がビルシャナの顔面に炸裂し、続け様に浴びせかけられる炎の吐息。思わず顔を押さえて仰け反ったビルシャナを、最後は夜江が無情の一太刀で斬り捨てた。
「我が刃、火の如く……」
「や、止めろ! 焼いていいのは、くさやだけ……ぎゃぁぁぁっ!!」
 哀れ、正面から両断され、ビルシャナの身体は真っ二つに裂けたまま燃えて行く。炎を纏った太刀による斬撃にて捌かれた様は、まさしく三枚に降ろされたくさやの如く。
「ふぅ……終わったっすね。……あ、皆さん口直しっすよ」
 最後に、特殊な空間を形成しつつ、サツマが口直しを込めて秘伝の芋煮をふるまっていた。
 新島伝統のくさやパワーを駆るビルシャナ。確かに凄まじい相手だったが、世界には、まだまだその上を行く食品が存在する。今回の戦いを通して、そんなことを学んだケルベロス達であった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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