創世濁流撃破作戦~夢喰の飛竜を討て

作者:秋津透

 岐阜県飛騨市神岡町。古来、神岡鉱山として栄えた地だが、現在はほとんどの鉱山が廃鉱となり、人口も激減している。その一角に、陶・流石(撃鉄歯・e00001)の暴走形態である翼持つ竜の姿を模したワイルドハントが、密かにワイルドスペースを営んでいるという事実は、今まで誰にも知られることはなかった。
 しかし、今。このワイルドスペースとワイルドハントには、強力な魔力が注がれている。全身を黄金に輝かせ、ワイルドハントは満足げに唸る。
「くくく……これが、ハロウィンの魔力かい。この力がありゃ、アタシのワイルドスペースは怒涛の濁流となって、世界を覆い尽くす事すら可能だろうさ」
 魁偉で重厚な姿に似合わぬ蓮っ葉な口調で呟くと、ワイルドハントはばさりと翼を鳴らす。
「用意が整う前に、ケルベロスどもが嗅ぎつけて乗り込んで来やしないかと、少々懸念していたけどさ。もう、心配ないってもんだね。なんせ、あの『オネイロス』を『王子様』自らが増援として派遣してくださったんだ。これなら勝てる。絶対に勝てる。くくく……『創世濁流』作戦は大成功間違いなしってわけさ。くくく……はははははは……はーっはっはっはっはっは!」
 楽しくてたまらない、という様子で、ワイルドハントは黄金に輝く竜体をのけぞらせて大笑する。
 ……誰か突っ込んでくれないか。「これで負けたらお前は無能だ」と。

「皆さん、ハロウィンのイベントが終わったばかりで恐縮ですが、即時対応しないと日本が、いや地球が滅亡しかねない緊急事態が予知されました」
 ヘリオライダーの高御倉・康が、緊張で蒼ざめた顔で告げる。
「ドリームイーター最高戦力であるジグラットゼクスの『王子様』が、六本木で回収したハロウィンの魔力を使って、日本全土をワイルドスペースで覆い尽くす『創世濁流』という、恐るべき作戦を開始しました。現在、日本中に点在するワイルドスペースに、ハロウィンの魔力が注ぎ込まれており、急激に膨張を始めています。このまま膨張が続けば、近隣のワイルドスペースと衝突して爆発、合体して更に急膨張し、最終的には日本全土が一つのワイルドスペースで覆い尽くされてしまうでしょう」
 そう言って康は、固唾を飲む一同を見回す。
「幸い皆さんの活躍で、隠されていた多くのワイルドスペースを消滅させているので、ハロウィンの魔力といえど、すぐさま日本全土をワイルドスペース化するほどの膨張力はないようです。急膨張を開始したワイルドスペースに向かい、内部に居るワイルドハントを撃破しすれば、ワイルドスペースは消滅します。すみやかにワイルドハントを撃破し、ワイルドスペースの膨張を阻止してください」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「現場はここ、岐阜県飛騨市神岡町にある、神岡鉱山廃鉱の一つです。例によって、ワイルドスペースはモザイクに覆われ、内部の景色はモザイクでつぎはぎになり、不思議な粘体で満たされていますが、戦闘に支障はありません。このワイルドスペースにいるワイルドハントは陶・流石さんの暴走形態を模しており、細長い竜体に翼を備えた、ええと、ワイバーンというのですか、そういう姿をしています。使うグラビティは、尻尾を使った薙ぎ払いと、鋭い爪による攻撃で、ブレスは吐かないようですが、いずれも巨体に見合った一撃必殺の威力があります。また、モザイクを飛ばして自分や他者を癒し、状態異常を解消することができるようです」
 そう言いながら、康は画像を切り替える。
「これに加えて、ワイルドスペースには『オネイロス』という組織からの援軍が派遣されているという予知が得られています。オネイロスの援軍はワイルドスペース一つに付き一体。『トランプの兵士のようなドリームイーター』と思われますが、詳しい戦闘力などの詳細は不明です。また、特に重要と思われるワイルドスペースには、オネイロスの幹部と思われる強力なドリームイーターが護衛として現れる可能性もあります」
 そう言うと、康は難しい表情で続ける。
「ワイルドハントさえ倒せば、ワイルドスペースは消滅し、その場での敵の作戦は失敗となります。その場合、オネイロスの援軍はワイルドスペースから撤退し、追うことはおそらくできません。オネイロスの援軍を先に倒す意味はあまりないと思いますが、相手が幹部の場合は、撃破する事ができれば今後の作戦が有利に運べるかもしれません。とはいえ、幹部は強力ですから、ワイルドハントを残したまま幹部を倒すというのは、かなりの難事になります。よほどしっかりと作戦を立てておかなければ、どちらも撃破できずに敗退し、『創世濁流』の発動を許してしまう危険性があることを忘れないでください」
 あくまで私の意見ですが、全力で迅速にワイルドハントを潰し、援軍には尻尾を巻いて撤退してもらうのが、作戦としては妥当なのではないかと思います、と、康は告げる。
「何よりも『創世濁流』を発動させないよう、攻撃したワイルドスペースをすべて潰す。それが最優先の課題となります。日本を、そして地球を守るため、皆さんの健闘に期待します」
 そう言って、康は深々と頭を下げた。


参加者
陶・流石(撃鉄歯・e00001)
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
不知火・梓(酔虎・e00528)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)

■リプレイ

●突入! いきなり大激戦!
「とっつげっきいっちばぁん! いっきっまーすっ!」
 岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山廃鉱の一つに巣くった、ドリームイーターの拠点ワイルドスペース。
 ハロウィンの魔力を受けて急激に膨張する魔空間を潰すべく赴いた八人のケルベロスと二体のサーヴァントのうち、高らかな宣言とともに真っ先に飛び込んだのは、元気印のウェアライダー少女、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)だった。
「おう、元気一番、気合充分だな。年を感じるおぢさんとしちゃ羨ましい限りだぜ」
 軽口を叩きながら続くのは、四十一歳熟年剣士、不知火・梓(酔虎・e00528)である。前しか見てないチェリーと違い、その視線は左右を油断なく見回す。もっとも、チェリーはウサギのウェアライダーなので、視線は前しか見てなくても、音はすべて鋭敏な耳に入っている。……だから、突発事態にも問題なく対応できるかというと、それはまた別問題なのだが。
「わぁお! 飛竜の姿って、かっこいいねっ! 暴走なんて、普段は見られない姿だしお得かもっ!」
「な、なんだ、てめぇは?」
 能天気な歓声とともにぴょんぴょん跳ねて突撃してくるチェリーに、細長い竜体と翼を備えた黄金に輝く飛竜ワイバーン……陶・流石(撃鉄歯・e00001)の暴走態を模したドリームイーター、ワイルドハントが面喰った声を出す。
 するとチェリーはぴたりと足を止め、幻影の竜を呼び出し火炎を放つ。
「目には目を、歯には歯を、竜には竜だねっ!」
「て、てめぇ、ケルベロスかっ!」
 他に誰が来るはずもないのに、ワイルドハントは狼狽した声を出して炎を躱そうとする。だが、一瞬早く、ワイルドハントの前に巨大なカードというか、厚さの薄い妖怪ぬりかべのようなものが飛び出し、炎を受け止める。
「オネイロス参上……汝は、我が護る」
「おおっ、ありがてぇ! くらいやがれっ、ケルベロス!」
 怒声とともに、ワイルドハントはチェリーに竜爪を叩きつけようとする。だが、こちらも一瞬早く、月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)のサーヴァント、オルトロスの『リキ』が飛び出し、竜爪の一撃を受け止める。
「てめぇ、犬ころ、邪魔しやがって!」
「喚くんじゃねぇよ。お互い様だ」
 銜えた長楊枝をぷっと吹き捨て、梓がワイルドハントへと斬霊刀『Gelegenheit』を振るう。しかし、再びオネイロスの援軍が立ちはだかり、攻撃を肩代わりする。
「やらせはせん……オネイロスの誇りに懸けて」
「……ならば、てめぇを先に潰すか」
 援軍がここまでガチガチのディフェンダーとは予想外だったが、と、梓は二体の敵を等分に見据えながら呟く。幹部でもなさそうだし、まとめて潰すか。
 一方、橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)のサーヴァント、テレビウムの『九十九』が『リキ』に応援動画を送って治癒を行う。
 そしてリーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)が、いきなりワイルドハントの至近距離に姿を現して斬りつける。
「その姿は他者が軽々しく真似して良いモノじゃない……偽者は……狩る……あっ?!」
 暗殺者として過酷な訓練を受けさせられたため、滅多に感情を表さないリーナの目が、珍しくもというべきか、驚きで見開かれる。
 絶対に、何かが割り込める間合ではなかったにもかかわらず、極限まで身体を薄くしたオネイロスの援軍がするりと入り込み、彼女の斬撃を身を以て阻んだのだ。
「……オネイロスの護りを舐めるな」
「くっ……」
 ほんのわずか眉を寄せ、リーナは後方へ跳びのく。続いて朔耶と芍薬が、傷ついた『リキ』を中心に、前衛に治癒と状態異常耐性、命中力上昇を付与する。
 するとオネイロスの援軍が全身を発光させ、何か攻撃が来るかとケルベロスたちは身構えたが、板状の全身にモザイクが浮き出て傷や欠損を癒す。
(「自己治癒ね……厄介といえば厄介だけど、ここまでの傷をものともせずに攻撃してくるほどの化物じゃないってことね」)
 治癒しあっての持久戦になれば、人数の多いこっちが有利よ、と、芍薬は言葉には出さずに呟く。
 そして流石が、ワイルドハントを見据えて告げる。
「あたしの暴走姿ねぇ。経験ねぇからわかんねぇが、感覚ではわからねぇこともねぇ。ガラ悪いのは仕方ねぇけど、オネイロス頼り、王子様頼りっつうのが何ともなさけねぇ。あたしの皮被るつもりなら、せめて中身がそれなりに真っ当になってからきやがれっての」
「へっ、お優しいお仲間さんを九人も連れないと、あたしのワイルドスペースに踏み込むこともできなかった奴に言われたかないねぇ。それとも、感知そのものができなかったのかい? だったら、自分の鈍感さを恨みながら、ここで死にな」
 少なくとも口だけは五分に、ワイルドハントが言い返す。流石は口の端を歪め、苦笑とも嘲笑ともつかない笑みを浮かべたが、次の瞬間、刃のような回し蹴りをワイルドハントへと放つ。
「……やらせはせん、と言っておる」
「ああ、想定済みさ」
 かばいに入ったオネイロスの援軍の身体が歪むほどの蹴りを打ち込み、流石は今度はにやりと笑う。
「どう見てもあんたの方が強そうなんで、護りに徹してるうちに潰させてもらう」
「我を? ……そう簡単に潰せるかな?」
 オネイロスの援軍は、挑発に乗るというよりは本気で不思議そうな声を出す。
 それに対して、流石は鋭く言い放つ。
「簡単にとはいかねぇかもしれねぇが、潰せねぇとも思えねぇ。いいか、ケルベロスを舐めんなよ」
「まったくだ」
 うなずいて、ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)がワイルドハントめがけて重力蹴りを放つ。オネイロスの援軍が割り込んで受けるが、もちろん想定済みだ。
「あんたは確かに堅い。だけどな、あんたが二人いるならともかく、相棒は使えねぇキンキラキンのMr偽者野郎だ。命じられた任務たぁいえ、組んだ相手が悪かったな」
「おい! 誰が使えねぇ偽者野郎だ!」
 憤然として、ワイルドハントが喚く。
「それにな、てめぇらの節穴目じゃわかんねぇかもしれねぇが、あたしは女だ! Mr偽者野郎たぁ、とんでもないお門違いだね!」
「……いや、普通わかんねぇと思うぞ」
 普段の姿でもしゃべると性別間違われることあるのに、まして飛竜の姿じゃな、と、流石が少々憮然として呟く。
 そして流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)が、舌戦などどこ吹く風と、悠然とヒールドローンを飛ばして『リキ』を治癒、自分を含む味方前衛の防御力をあげる。
(「まあ、敵の所在はわかってる。確実に、じっくり攻めるとしよう。時間がかかっても、更なる増援が来ることはないんだ。たぶん」)
 万一来ちゃったら、その時はその時だけどね、と清和は言葉には出さずに呟いた。

●盾壁は砕け、偽竜は霧散する
「てめぇ、今度こそぶっ潰す!」
 ワイルドハントが喚き、竜爪を振り上げたが、そこへオネイロスの援軍が告げる。
「……要請する。ここは、治癒を頼む」
「へ?」
 目を丸くして、ワイルドハントはオネイロスの援軍を見やる。ここまでケルベロスの攻撃はすべて援軍が受け止め、ワイルドハントは無傷なのだが、当然ながら、援軍には莫大なダメージが蓄積している。さすがにまだ、治癒が効かない域には達していないようだが、自己治癒だけでは間に合わない、と援軍は判断したのだろう。
「よ、よっしゃ、治癒する! モザイクヒーリング!」
 姿かたちはまるで違うが、もともとはワイルドハントもオネイロスの援軍もドリームイーター。モザイクを使った治癒は基本技能だ。
「よし、これで……」
「甘いねっ! キミは追い詰められてるってことを、自分で白状しちゃったんだよっ!」
 ほっと息をついたオネイロスの援軍に、チェリーがドヤ顔で宣告する。
「つまり、ここが無二の攻め時ってことさ! いくよ最高奥義! 破邪拳聖の気功指弾(ハジャケンセイノオーラブリット)!」
 オリジナルグラビティ名を自ら高らかに言い放ち、チェリーは必殺のホーミング技を飛ばす。
「一発必中! 掠っただけでも痛いよっ!」
 いや、必中の攻撃は掠らないで直撃しないと、という突っ込みはともかく、チェリーは握った拳にオーラを溜めて親指でコインを弾くように飛ばす。ポーズは似ている(本人曰く、指の曲げ方が違う)が、某超電磁砲(レールガン)ではない。
「ぐはっ!」
 ワイルドハントを狙った攻撃をオネイロスの援軍が庇い、まともに直撃される。しかし、さすがに治癒を受けた直後であり、一撃で潰れはしない。
「ならば、行くか……我が剣気の全て、その身で味わえ」
 梓がオリジナルグラビティ『試製・桜霞一閃(シセイ・オウカイッセン)』をワイルドハントに向けて放つ。威力は大きいが、斬撃を飛ばす速度が遅い遠距離攻撃なので避けられ易い……が、ディフェンダーが庇った場合は「庇いながら避ける」ことはできない。
 そして目論み通り、オネイロスの援軍はワイルドハントを庇い、梓の剣気のすべてを籠めた剣撃をまともに食らった。
「ぐ……がっ……」
 苦しげに呻くオネイロスを、流石がぎろりと睨む。
「おう、目ぇ逸らしてんじゃねぇよ。ケルベロスを舐めんなと言った意味が、わかったか?」
 鋼のように冷たく鋭い視線の直撃は、単なるガン付けにあらず。相手の精神を砕き、怖れとダメージを与えるオリジナルグラビティ『鉄視心揺(テッシシンヨウ)』だ。
「ぐ……ぐぐ……ぐぐぐ……」
 続けざまに高威力のオリジナルグラビティを決められ、オネイロスの援軍の全身に無数の亀裂が走り、ぽろぽろと切片が落ちる。ワイルドハントから受けた治癒分などはとうの昔に消し飛び、まさに瀕死の状態だが、自己治癒の手番が来る前に、次のケルベロス、リーナがオリジナルグラビティ『ラスト・エクリプス』を発動させる。
「集え力……わたしの全てを以て討ち滅ぼす……! 討ち滅ぼせ……黒滅の刃!!」
 リーナ自身のグラビティに加え、戦場に飛び散る余剰グラビティ、あるいはオネイロス自身の切片がリーナに吸収され、黒く輝く一振りの魔力刃に変換される。そしてリーナは、全ての限界を超えた神速の速さと圧倒的な破壊力を以て、魔力刃を敵に叩きつける。
「ぐ……あーっ!」
 黒滅の刃を構えて突撃してきたリーナにぶち抜かれ、オネイロスの援軍の身体に大穴が開く。それでも、瞬間に身を転じて、自分をぶち抜いたリーナがそのままワイルドハントに激突しないよう方向を変えたのは、見事としか言いようがない。
「我……散じるとも……オネイロスは……不滅なり!」
 凄まじい断末魔の咆哮とともに、オネイロスの援軍の全身が砕け散る。
「ば、バカな……そんな……ぐわっ!」
 一瞬呆然となって立ちすくんだワイルドハントを『リキ』が神器の刃で斬り裂き、『九十九』がバールのようなもの……ではない、ソムリエナイフか? そんなようなもので突き刺す。
 そして朔耶が、冷たい声で訊ねる。
「オネイロスとやらには聞きそびれたが……聞かせてくれよ。てめぇらは、俺らと入れ替わる気か?」
「はっ! ケルベロスに教えてやることなんざ、ないね!」
 口調は強気だが、ワイルドハントは落ち着かない様子で周囲を見やる。逃げる隙を探しているのか、あるいは何か救いの手が来ないか期待しているのか。
 そこへ朔耶が、ファミリアロッド『Porte』を梟に戻して放ち、攻撃を仕掛ける。続いて芍薬が、オリジナルグラビティ『火葬(インシネレイト)』を発動させる。
「創世濁流とか言っちゃって、随分と派手にやってくれたわね、ドリームイーター。でも、私達に見つかったのが運の尽き、頼みの援軍ももういない。あとは、私達に潰されるだけよ」
 宣告すると、芍薬は熱エネルギーを手に集中させる。
「エネルギー充填率……100%! いくわよ、インシネレイト!」
「ぎゃあっ!」
 ワイルドハントは必死に身を躱そうとするが、こうなると巨体が仇となる。護ってくれる者も既に無く、芍薬の手刀が鱗を破って体内に突き込まれ。集中したエネルギーが放出される。
「がはっ!」
 がばっと開いたワイルドハントの口から、黒煙があがる。一見、火炎ブレスを吐く前触れのようだが、単に芍薬の攻撃で体内を焼かれているだけだ。
 そしてランドルフが、ぺっと唾を吐いて告げる。
「援軍は骨があったが、このSpaceといいそのキンキラBodyといい、テメエの趣味には付き合いきれねえ。俺は、笑えねえJokeと似てねえモノマネは嫌いでね、とっとと終いにさせてもらう!」
 言い放つと、ランドルフはオリジナルグラビティ『ストライクハウリング』を放つ。
「この白銀の拳を見よ! 畏れよ!! そして砕け散れえッ!!」
 咆哮とともに、ランドルフはワイルドハントの巨体に白銀に輝く拳を打ち込む。本来は遠距離銃撃技で、咆哮(ハウリング)に乗せて威力を高めるのだそうだが、減衰を防ぐため近距離拳撃技に変更した今も名残として咆哮を放っているという。
 いずれにしても、続けざまに強力なグラビティエネルギー拳を直接打ち込まれ、ワイルドハントは砕けこそしなかったが、体内をずたずたにされたようで、苦しげに大きくのたうつ。
「くそう、こんな、こんなバカな……なぜだ、なぜなんだ!」
「なぜも何も……オネイロスの援軍はまだしも、キミはとうていケルベロス八人と闘える強さじゃないよ。流石君に謝りなさい」
 諭すように言いながらも、清和は一片の情け容赦もなく、オリジナルグラビティ『超合金DX要塞斬(チョウゴウキンデラックスフォートレススラッシュ)』を発動させる。
「全パーツ射出っ 超合金合体! いくぞ必殺、フォートレススラーッシュ!」
 ケルベロスに侵入された時点で、もはや結界としては用を為さなくなっているのだろう。ワイルドスペースの中だというのに、グラビティで形成された巨大ロボットのパーツがどこからともなく飛んできて清和に接合、巨大ロボットに超合金合体する。
「な、なんだそりゃ、反則じゃねーか!」
 ワイルドハントが悲鳴のような声をあげたが、清和は瞬時に言い返す。
「正義の行使に反則なし! くらえ、斬魔剣ドリームイータースレイヤー(適当)!」
 ローラーダッシュで突進し、巨大ロボット清和は手にした巨大剣でワイルドハントを一撃両断。真っ二つにされたワイルドハントは、そのまま無数のモザイクと化して宙に消えた。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月15日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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