轟と燃え盛る蒼炎に包まれ、人の影が倒れ伏す。火の粉を飛ばしながら膝を突いた男は痙攣しながら悲鳴を上げた。
「う、うああああああああああああああッ!」
男の手を離れ、床を滑っていく携帯。靴の爪先にぶつかったそれを拾うのは、桃髪をツインテールにインド風の服装が特徴的な女である。斜め下に向かって生えたコールタールの双翼を動かし、女性は携帯に耳を当てる。響く切羽詰まった女の声。
『シンジ? ちょっとシンジ!? どうしたの!? ねえってば!』
「…………」
無言で携帯から耳を話し、周囲を見回す。狭いホテルの部屋の中、壁中にべたべた張られた女性の写真やスケジュール表。隅に置かれた黒いゴミ袋の口からも同じものが大量にのぞく。そして、デスクの上には大量の札束。
女は妖しく微笑むと、携帯を床に投げ落として踏み割った。
「やっぱり、人間達も貴方みたいな人が好きなんだ。顔のいい男のヒトが」
蒼炎の中、男の影が徐々に大きくなっていく。
「でも、それでお金せびるだけなんて勿体ないわ。だから……私がもーっと強い力をあげる。見掛け倒しになんてならない、すごい力を。貴方にふさわしい、とっておきの力を」
女が指を弾くと同時、炎が破裂。部屋中に散った青い火の粉が壁の紙切れにかかり焼き焦がす。焼失の音が響く中、女は爆発の中央、立ち上がった巨躯の影を見上げた。純白の鎧を着込んだ精悍な顔立ちの騎士。手には棍棒めいて巨大な柄付きのベルを持ち、胸に拳を当てて軽く頭を下げている。女の笑みがますます深まる。
「いいわ……とっても良くなった。でもまだダメ。まだ足りないの。わかるでしょう?」
「ハイ。実に……飢えております」
巨体の騎士が真摯に答えた。女はさらに問いを重ねる。
「じゃあ、次やることもわかるわね?」
「ええ、承知していますともレディ。……ご命令を」
頭を一段深く下げる騎士。女の指が、白い鎧の胸を指さす。
「人間共を狩りなさい。貴方自身が満たされるまで。貴方の力が満ちた時、迎えに来るわ」
「ハイ。ご期待に、応えましょう……!」
「ふふっ。楽しみにしてるわ」
最後に微笑みひとつを残し、女は蒼炎に包まれ消えた。
●
「……して、穫殿。青のホスフィンが動いたと聞いたのでござるが」
「そうそう。はいこれ資料」
険しい顔の岩櫃・風太郎(閃光螺旋のガンカタ猿忍・e29164)に紙束を手渡し、跳鹿・穫は解説を始めた。
東京都・浅草の雷門通りにて、エインヘリアルの攻勢が確認された。
事は炎彩使いのシャイターンが一人、青のホスフィンによる勇者選定に端を発する。死者の泉の力を操る彼女は自分好みな端麗な容姿の男を焼き尽くし、その場でエインヘリアルに転生させることが可能。なのだが、このエインヘリアルはグラビティ・チェイン枯渇状態にあるらしく、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと画策している。
現在、雷門通りは女性達が男性達に襲いかかり騒ぎになっている。十中八九、ここに陣取ったエインヘリアルの仕業と見て間違いない。皆には急いで現場に向かい、このエインヘリアルの排除を依頼したいのだ。
敵エインヘリアルの名はゼラニウム。純白の鎧を着込んだ容姿端麗な騎士の姿をしており、長柄のついた巨大な鐘を棍棒のように扱い戦う男で、なんらかの方法により女性をゾンビのように操る能力を持つ。これこそ雷門通りの女性達がゼラニウムそっちのけで男性を襲う原因なのだが、詳しくは不明。この能力で操った女性達に攻撃をさせ、自分は高見の見物をするのが彼の基本スタイルだ。
また、この能力は女性ならばケルベロスにも作用する。一般人と違って操られることこそ無かろうが、戦闘に支障が出るのは想像に難くない。さらに、女性達は挙動こそゾンビのようだがただの人。ケルベロスが本気で攻撃すれば死んでしまう。能力の解明、あるいは何らかの対処が必要になるだろう。
ちなみに、ゼラニウムの素体となったのはベテランの結婚詐欺師。元より容姿端麗だったのが青のホスフィンの目に留まったものと思われる。
「女性を操って殺させ、自分は高見の見物すると? ……なんたる邪悪! このような悪は討たねばならぬ!」
「うん! みんななら犠牲者ゼロでやれるはず! 頑張ってきて!」
参加者 | |
---|---|
相良・鳴海(アンダードッグ・e00465) |
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737) |
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196) |
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108) |
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414) |
岩櫃・風太郎(閃光螺旋のガンカタ猿忍・e29164) |
伊織・遥(滴るは黒染めるは赤・e29729) |
神苑・紫姫(断章取義の吸血鬼伝説・e36718) |
「はッ!」
怒涛めいて押し寄せる女性達へ、旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)は赤い鎖を振り回す。ノックアウトされた前列を踏み付け向かってくる第二陣! 鎖をかい潜る彼女らを割り込んだ伊織・遥(滴るは黒染めるは赤・e29729)が交叉した二刀の腹で人の波を受けとめた。圧し掛かる人波と両脇を突破する人々を見る目が光る。
「……ちょっと、失礼しますよ」
突風じみて殺気が吹き荒出し、一瞬怯む女性達。足を止めかけた彼女達を竜華は素早く打ち据える! だが直後に鐘の音が響き、倒れた女性達が跳ね起きた。復活した女達につかまれた竜華がバランスを崩した竜華を女性達がすり抜ける。噛まれ、爪を立てられながら竜華は振り向く。
「くっ……!」
すぐさま手を上げハンドサイン。逃げる男達へ手を伸ばした女の肩に、ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)は峰打ちが撃たれた。一人、また一人のうなじを打っては手早く謝罪。思わず振り返る男性達に雷門を指し示す!
「動ける方はあちらへ! この場は私たちが預かります!」
「は、はいぃぃッ!」
我先にと逃げる彼らを見送ったソラネは振り向きざまに別の女性を打ち倒す。地に伏す女達を黒鎖で縛る相良・鳴海(アンダードッグ・e00465)の隣で、ソラネは人海の向こう側を厳しい表情で睨む。
「一般人を傷つけるだけでなく、利用して傀儡とするエインヘリアル。元である男性の人となりが伺えますね」
「……まぁ、なんだ。元になった男も善人ってわけじゃなかったらしいがな。おっと」
掲げた鳴海の腕に女性の引っかきが命中! 白目をむき獣じみてうなる彼女を黒い鎖で素早く縛った鳴海は人波の奥を見据えて息を吸った。鐘が鳴るのにに合わせて咆哮を上げる。人波の後方、鐘の音を打ち消す声にゼラニウムが歯軋り!
「何してるんだ! そいつらは放っといていい! 逃げた連中を追うんだよ! ああもうッ!」
焦れたゼラニウムは走り、最後尾の女性の首根っこを引っつかむ。そのままハンマー投げめいて回転し、女性を天高く放り投げた! 次は一度に二人をつかんで投擲!
「早く! 行けって言ってるんだッ!」
次々と投げられた女性達が四人を飛び越え、雷門へ走る男性達へ降り注ぐ。女性の攻撃をすんでで防いだ鳴海は咆哮を止め雷門に声を飛ばした。
「ライゼルッ!」
突如、通りにエンジン音が轟いた。門の奥より響いた音は徐々に音量を増していき、最大まで高まった瞬間雷門の屋根から飛び出した! 一輪バイクに乗ったライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)と神苑・紫姫(断章取義の吸血鬼伝説・e36718)は落ちてくる女性達を見据えて跳躍。ベルトに鍵を差したライゼルが虹の光に包まれる!
「この手の炎を勝利に繋ぐ……変・身ッ!」
「ステラ! 出来る限り受けとめなさい!」
紫姫の命を受けたビハインドが飛翔し、降ってくる女性を抱きとめる。さらに二人、三人、四人五人六人! そこで重みに負けてふらつくステラ!
「ステラ……!」
「よし、ボクに任せるといい」
言うが早いか銀のコートにプリズムアーマーを着けたライゼルが赤鎖の球を投げつけた。ステラを横切った鎖玉は弾けて巨大な蜘蛛の巣状に展開、残る女性をまとめて捕らえて一気にくるむ。ライゼルは自由落下する鎖網の真下に飛び込み片手でキャッチ! 雷門を背に名乗りを上げる。
「ゼラニウムッ! これ以上、お前の好きにできると思うな! 仮面ライダー・チェイン、参上だッ!」
舌打ちし、勢いよく鐘を振り上げるゼラニウム。鐘がシェイクされる寸前、女性の間から飛び出した赤い子ザルとグレーの子猫が彼の顔と腕に食いついた!
「ぐぁッ……なんだックソ!」
顔面に噛みつく子ザルをつかみ、振りほどかんとするゼラニウムにソラネが短銃をドロウする。放たれた光弾が女性達をすり抜け鐘に激突して爆発! 猿の下でゼラニウムは憎々しげに顔を歪めた。
「推測に過ぎませんが、試してみる価値はあります。その武装、もらい受けます!」
「クッソ……! もういい全員殺せッ! あああああああああッ!」
咆哮し、ゼラニウムは顔の猿を力付くで引きはがす。頬を食い千切った猿を地面にぶつけ蹴とばした!
「グワーッ!」
吹っ飛んだ子ザルが光に包まれて膨張、岩櫃・風太郎(閃光螺旋のガンカタ猿忍・e29164)に姿を変える。空中で回転した風太郎は着地ダッシュ。一方のゼラニウムは腕の子猫を外して軽く投げ、鐘をフルスイングする!
「ゼアッ!」
「ヌゥッ!?」
ピッチャー返しめいて猫が飛来! 急制動し猫を抱きとめた風太郎にゼラニウムが素早く距離を詰める中、猫は朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)に姿を変える。風太郎は環の両脇をつかんで一回転して投擲、勢いに乗った環の飛び蹴りが騎士鎧の胸を打った。のけ反るゼラニウム!
「っつぉッ……!」
たたらを踏む彼の頭上、反動で跳び上がった環が前方回転かかと落としを、懐に飛び込んだ風太郎が正拳突きを叩き込む!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
体をくの字に折ったゼラニウムは連続バク宙で距離を取りつつ、拡声器型銃の吐く光線を回避。着地と同時に素早く鐘をかき鳴らした。騒音がストリートを振動させる!
「女共、ボクを守れッ!」
命令に反応した女性達が一斉に前後反転! さらされたうなじに遥は手刀を打って流れるように数人を昏倒させる。ゼラニウムに走る軍勢へ振り返る風太郎に背を預け、環が突進! 鐘を鳴らしながら愕然とするゼラニウム!
「なッ……君女だろう!? なんで効かない!?」
なおも鐘を鳴らす彼の前で環は跳んだ。空の彼方から飛んできたランチャーを空中でつかんで狙いを定め、砲撃! 満月めいた砲弾は散弾のように分裂し、とっさに防御姿勢を取るゼラニウムに降り注いだ。
「クッ、ぐうううおおおおおおおおおッ!」
白い雨が鎧や鐘に裂傷を生む。その場にぬいつけられた彼の鐘持つ腕に巻きつくライゼルの赤鎖。鎖を手繰るライゼルは光の粒をまきながら建物の壁をライドキャリバーと高速疾走。ハンドルをひねって壁からジャンプ!
「お前を……鎖で繋ぐ! いくぞクラヴィク!」
弾幕が止むに合わせ、クラヴィクがガトリングガンを連射する。歯をむき出したゼラニウムは鎖に巻かれた腕を引き、逆の手で拳を固める。拳に巻きつく虹色の鎖を巻いたライゼルが真正面から一直線!
「ライダァー……ッ!」
シートを蹴ってライゼルが飛ぶ。鎖を手繰り虹のアーチを描く彼に対し、白鎧の騎士は腕を限界まで振りかぶった。そして!
「パァァァンチッ!」
「邪魔なんだよッ!」
虹の拳と滞空ストレートが正面衝突! 同心円状の衝撃波が周囲に広がり、駆け寄る女性達を吹っ飛ばす。彼女達を黒鎖で縛って紫姫に投げ渡した鳴海は銃を抜く。
「今の内だ。紫姫、こいつらも頼む」
「任せなさいな。ステラ、そっちの子達を安全圏までお連れなさい! あれの鐘が聞こえない場所まで!」
縛れらた女達に照射する紫姫の背後でステラが飛翔。一方遥とソラネは女の間をジグザグに走りながら峰打ちで意識を刈っていく。人波を見回し、遥は残党に向かって方向転換。
「さて、ラストスパートと参りましょう。そっち三人お願いします」
「スミマセン! イヤーッ!」
風太郎が女性達を昏倒させたその瞬間、爆発音! 弾かれたライゼルは後方回転しながら跳躍したクラヴィクに乗り、わずかに下がったゼラニウムは倒れた女性達を怒りに燃える目でにらむ。
「何寝てるんだ! 早く起きてボクを守れッ!」
激昂し鐘を振り上げた彼の顔に火の粉がかかる。ゼラニウム足元に踏み込んだ竜華は業火に包まれた大剣を鐘めがけて斬り上げた。不協和音を上げて鐘が弾かれ、ゼラニウムの胴が開く。騎士を射抜く竜華の瞳。
「元がどれだけ良かったのかは存じませんが、貴方の様に自ら手を下そうともしない情けない殿方には一切の魅力も感じませんね。女性を操り、道具として利用したその罪! この炎の華で焼き尽くしてあげます……!」
「ふざッ……けるなァァァッ!」
跳ね上がる鐘を両手でつかみ、ゼラニウムは鐘をフルスイング! 竜華を吹き飛ばし、地団太めいて一歩踏み込む。
「クソッ……クソッ! ボクを虚仮にしやがって……ただ黙って従ってりゃいいものをッ! クソがぁッ!」
怒りのままに振り下ろされた鐘が地面を砕く。地を震動させる大音声が放射状に放たれ乱暴な鐘の音が通りに響いた。即座に吠える鳴海の声が覆い被さる。
「起きろ! ボクに従えッ! ボクの為に死ねぇぇぇッ!」
闇雲に鐘を振り回すゼラニウムの首筋に紫のナイフが突き立つ。背後に回ったステラがナイフを引き抜いた瞬間、戦場を青紫の光が照らす。空中で後光を背負った紫姫は両手と翼を大きく広げた。
「がッ……!?」
「貴方の味方はいませんの。既に避難は終えましたので」
紫姫の背後で後光が膨張、見上げるゼラニウムめがけ青紫の流星群が降り注ぐ! 目を見開いたゼラニウムは流星群の中をジグザグに疾走。数度の直撃と紙一重の回避を繰り返す彼の両サイドに並走した遥と鳴海はそれぞれ燃える二刀と黒炎の人差し指を突き込んだ。白い鎧に穴が開く。
「自分の為に死ねですか。いよいよ以って救えませんね」
冷淡に告げる遥をゼラニウムは血走った目でにらみ、その場で刀と指が刺さったまま回転。開いている手で鳴海の頭をつかんで遠心力を乗せて地面にぶつけ、刀を抜いて跳躍した遥に投げつける。空中でぶつかった二人を追って大ジャンプしたゼラニウムに鳴海は銃撃! ガードに掲げられたゼラニウムの腕に命中した弾丸は純白の鎖となって巻きつき、赤錆色に変色していく。流星を背に浴びながらゼラニウムはその鎖を食い千切り、二人まとめて鐘で全力の殴打! 濁った鐘の音が二人に振動を叩き込む!
「ぐおッ……」
鳴海がうめき遥の笑顔がわずかに引きつる。ゼラニウムはそのまま鐘を振り下ろし、二人を地面に撃ち落とした。衝突により陥没した地面に巨躯の影が覆い被さる。再度大上段に鐘を構え二人に振り下ろさんとするゼラニウムの正面下方、クラヴィクのドリフトで滑り込んだライゼルが跳躍し、虹色の拳を突き出す!
「やらせるかッ!」
「邪魔をするなぁぁぁッ!」
虹の矢めいて飛来するライゼルに狙いを変えた鐘が激突! 両者衝撃で跳ね返りつつ、ライゼルは胸部装甲をモールス信号じみて点滅させる。着地したゼラニウム背後、轟と巻き起こる炎の八岐大蛇! 振り返る騎士の胴や四肢に食いついたそれらの隙間を竜華が走る。太陽の如く紅蓮に燃える大剣を振りかざし、竜華は跳んだ。
「華と散りなさい!」
「ぐうううううううッ!」
炎蛇に噛まれた腕を無理矢理動かし、ゼラニウムは水平にした鐘を掲げる。爆炎の大剣が迷わず柄に打ち込まれ、大爆轟を引き起こした! 爆心地から後方回転して飛び出す竜華。片膝立ちで着地した彼女に、爆炎を切り裂いて現れたゼラニウムが飛びかかる! 大火傷した顔面を憤怒に歪め、殴りかかった。
「ボクのッ! 顔をよくもッ! うがあああああああああああああッ!」
「っ!」
反応が遅れた竜華に迫る打撃の大鐘。それが脳天に直撃する寸前、機械のティラノサウルスめいた子竜がタックルで竜華を押しのけ押し潰された。直後、地に着いた鐘の柄にソラネが大太刀を振り下ろす! つんざくチェーンソーの駆動音!
「貴方の業はここで必ず断ち切ります……!」
屹然と見据えるソラネの前で鐘が火花を噴出させる。徐々に埋まっていく刃を見たゼラニウムは両手で鐘の柄をつかんで振り上げソラネを振り払った。足を踏ん張り無理矢理スイング、ソラネの腹に鐘をぶち込む! 地面をバウンドして転がる彼女をさらに蹴る!
「ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなッ! なんでボクに従わない!? 神に選ばれた、このボクにぃぃぃッ!」
踏み込みと共に放たれる咆哮と殴打! そこへランチャーを構えて疾駆する環!
「ソ―――ラ―――ネ―――さぁぁぁぁぁぁんッ!」
叫びながらの撃ち出された砲弾が破裂し横殴りの雨じみてゼラニウムの側面を打ち据えた。バランスを崩したたらを踏む彼の無防備になった手、揺らぐ鐘めがけて風太郎が前方回転跳躍! ソラネが作った切れ込みへ鋭いチョップを繰り出した!
「イヤーッ!」
柄の半ばまで埋まる手刀。気づいて振り返るゼラニウムの目の前で、風太郎は再びチョップする!
「イィィィィヤアアアアアアアアアアアアアアッ!」
腕が縦一文字に振り抜かれ、外れた鐘が宙を舞う。呆然と目を見開くゼラニウムの唇がわなないた。
「な、ぁ……!」
「っとぉぉぉりやあああああああッ!」
硬直した騎士の横っ面に環の飛び蹴りが命中! さらに焦げ付いた鎧の足を紫姫が放った紫光の矢に射抜かれ、踏ん張り切れずに飛ばされる。軽く浮いた彼の胴に漆黒の鎖が巻きつきワイヤーアクションめいて鳴海を引っ張り寄せた。無防備な胴に銃弾が浴びせかけられ、純白の鎖となってゼラニウムを戒める。彼の元まで飛翔した鳴海は鎖に巻かれた胸を蹴って飛び、小さくつぶやく。
「元の人間がどうかは知らねえが、やっぱデウスエクスのクソ共の玩具にされる程じゃなかったとは思うんだ。出来りゃあ刑務所で反省させてやりたかったが……是非も無しだな。こんなでいいか?」
そうして見下ろす鳴海の真下を低姿勢の遥とソラネが駆け抜け、ゼラニウムに肉迫して居合いを放つ! X字の斬撃が赤錆びた鎖ごと鎧を断ち切り血を噴出させた。仰向けに倒れながら騎士はうわ言を口にする。
「なんでだ……ボクは……選ばれたのにッ……」
「答えるまでもありませんね」
背を向けながら刀を収め、遥は冷たく言い放った。素早く左右に分かれる彼とソラネの間を二丁拳銃を合体させた風太郎が突き抜け、銃口から光のパイルを現出させてドリルめいて回転し、X字傷の中央に狙いを澄ませて特攻!
「答えはひとつ! 貴様が白きゼラニウム、愛を信じぬ花だと名乗ったからに相違なし! 愛を愚弄し、遍く女性を道具と断じたその罪を、地獄で悔いて来るが良いッ! ギャラクシィーブライトォッ! ニンジャッ! スパイラルドライバァァーッ!」
ゼラニウムに光パイルを突き刺し、引き金を引いて射出。反動で吹っ飛んだ風太郎と入れ違ったライゼルと竜華は、極光を収束した拳と爆炎の蛇を束ねた炎の剣をパイルの柄尻にぶち込んだ! パイルの中に流れ込む、虹色の鎖状光と紅蓮の炎!
「うおおおおおおおおおおおッ!」
「はあああああああああああッ!」
パイルが極彩色に染め上がり、ゼラニウムの全身から光と炎が噴き出す。ほとばしる断末魔!
「あぐぁぁあぁぁあああああああああああッ!」
そして騎士の巨体は一瞬膨張。ビッグバンめいた光を放ち、ゼラニウムは爆発四散した。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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