清らかなれど淀んだ旋律に

作者:なちゅい

●選定の炎
 とあるコンテスト会場。
 そこでは、優秀なバイオリニストの卵を選出する為のコンテストが開催されており、多数の人々がその演奏を聴きに来場していた。
 森野・晴幸も参加者の1人として演奏を行っていたのだが……、控え室に帰った彼はどうにも機嫌が悪い。
 ドン!
 そばのテーブルを強く叩きつける森野。すでに誰もいなくなっていた控え室に、大きな音が鳴り響く。
 演奏は完璧だった。審査員も彼の絶賛していたのは間違いない。だが、結果として、特別賞という中途半端な評価しか下されなかった。
 最優秀賞は、将来が有望という理由で自身よりも拙い演奏を行う少年が受賞していた。話によると、その少年はとあるバイオリニストの息子だという。
「なんで、あんな下手くそなガキより評価が下なんだ……」
 自身の演奏の方が素晴らしいものだったと、森野は疑わない。親の七光りなんどに負けたのが非常に腹立たしかったのだ。
 そんな彼の背後へ、タールの翼を生やした踊り子のような姿をした女性……シャイターン、紫のカリムが現れる。
「その演奏……。あなたには才能がある。人間にしておくのは勿体ない程の……」
 暗い瞳で女性は森野を見つめ、腕を突き出す。そこから紫色の炎が噴出し、彼の体を包み込む。
「だから、これからは、エインヘリアルとして……私たちの為に尽くしなさい」
 燃え上がる炎は、森野の体を作り変えていく。その体は大きくなっていき、3mほどまで膨れ上がる。それによって、やや手狭になった控え室で彼は大きく呻く。
「なんだこれは……異様に、乾く……」
「あなたはそのまま人間を襲って、グラビティ・チェインを奪いなさい」
 後で迎えに来ると言い残し、カリムはこの場から姿を消してしまう。
 一方で、力を得た森野もその力の渇きを埋めるため、そして、シャイターンの言葉を実行する為に控え室の壁を破壊してコンテスト会場を後にしていくのだった。

 活発化するシャイターンの動き。
 それを察したケルベロス達の中には、シャイターンに関する情報を集めるメンバーもいたようだ。
「シャイターンの魔の手が優秀なバイオリン奏者に及ぶと聞いたよ」
 ルベル・オムニア(至高の赤・e02724)の言葉に、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が頷く。
「うん、できるだけ早く止めないといけないね」
 彼女はそのまま、説明を始める。
 シャイターンの女性達は死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性をその場でエインヘリアルにすることができるようだ。
 出現したエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇した状態のようで、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出すらしい。
「取り急ぎ現場に向かうから、キミ達には暴れるエインヘリアルの撃破をお願いしたいんだ」
 エインヘリアルは、愛知県名古屋市某所で行われたバイオリンのコンテスト会場から飛び出し、街の人を襲い始める。
 場所は裏通りではあるが、繁華街の一角。時刻は夕方4時ごろと人も多い時間帯の為、ある程度の人払い対策は必要だろう。
「現れるエインヘリアルは1体だけだね。黒のタキシードを着用した男性は、バイオリンの演奏を主としたグラビティを使用してくるよ」
 相手の攻撃の手を止めるような清らかな演奏、逆に、相手に害を与える為の歪んだ旋律を奏でてくる。また、近づく外敵には、手にする弓で切りかかってくることもあるようだ。
「自身が優れた男だから導かれて勇者になったと、エインヘリアルは信じて疑わないようだね。自分の為に他の人間が糧となって当然だと考えてグラビティを発してくるよ」
 殺人すら厭わぬ彼を、放置するわけにはいかないだろう。
 また、倒した後はヒール作業を行いたい。夕方に多数の人が行き交う状況ならば、演奏などしてこの地の人々を勇気付けることもできるかもしれない。
 状況説明は以上とのことだが、リーゼリットは現地に向かうケルベロス達へと更に続ける。
「多数の人々が危険な状況だけれど……」
 彼女は、皆ならばエインヘリアルによる虐殺を止めてくれると疑わない。
「だって、キミ達はケルベロスなのだから。この事件も最良の形で解決してくれると、僕は信じているよ」
 彼女はにっこりと笑い、ケルベロス達を送り出すのだった。


参加者
ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)
クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)
クローチェ・ドール(愛迷スコルピオーネ・e01590)
ルベル・オムニア(至高の赤・e02724)
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)
アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)
シルヴィア・アストレイア(祝福の歌姫・e24410)
伊園・聡一朗(アタラクシア・e38054)

■リプレイ

●偽りの勇者
 愛知県名古屋市――。
 繁華街の裏通りを歩くケルベロスのチーム。メンバー達は様々な表情を浮かべて現場へと向かう。
「……才能ある若者が、シャイターンの手でエインヘリアル化させられるなんてな」
 陰鬱な表情を浮かべる、ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)は気だるげな声音を響かせる。別段、今回の相手に思うことがあるわけではなく、これが彼の地である。
「うぅ、負けたのが悔しいのはわかりますけど……。だけど、それって暴力で解決すべきだった問題なのでしょうか……」
 やや気弱な性格もあって、時折怯えた様子も見せるクロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)。ゴスロリ衣装の可愛らしいドラゴニアンの彼女は残念そうにさらに語る。
「それに……エインヘリアルになっちゃったら、二度と、バイオリンを弾くことなんてなくなってしまうかもしれないのに……」
「まぁ……、闘志は持ち続けるものだと思うがね」
 纏めた金の長髪を揺らす、クローチェ・ドール(愛迷スコルピオーネ・e01590)もまた陰鬱なる雰囲気を纏っていて。
「しかし、思い上がりも行き過ぎるとこうなるか。哀れ……というべきかな」
 手厳しい言葉であるが、それでもクローチェにとってはまだオブラートに包んだ物言いかもしれない。
「相変わらず嫌なところに漬け込むのね。まぁなってしまったものは仕方ないし、やることをやるだけよ」
「仕事は仕事だ、駆除してやろう」
 氷を纏ったような感情を抱かせるアイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)がクールに告げると、クローチェも眼光鋭く前方を見やる。
 そこにはすでに、エインヘリアルと成り果てた1人の男が立っていた。
「我々の手で、堕ちてしまった彼を救い出さなければ」
 相手に対して割り切りを見せるメンバー達の中、ディディエは相手を1人の地球人として、対していく。

 この場に現れたエインヘリアルはグラビティ・チェインの枯渇の影響からか、やや息を荒くしてこの周辺にいる人々へと告げる。
「喜べ。勇者となった私の演奏を聞き、私の糧となれることを」
 森野・晴幸はそれでも勇者として毅然と言い放ち、バイオリンに弓を当てる。響き渡る演奏は確かに清らかだが、グラビティとして力を持つ旋律はどこか淀みを覚えさせた。
「そこまでです……」
 最初に目の前の相手に呼びかけたのは、竜の翼で降り立ってきたクロコだ。
「これ以上、被害を増やさせないためにも、街の人達には手出しさせないよ」
 続いて、真紅の薔薇を後頭部に咲かせたルベル・オムニア(至高の赤・e02724)。相手に凛として立ち向かうルベルにも、人外と成り果てた森野は文字通り見下すような視線を向ける。
「あ、あの……、これ以上街に被害を出すわけにはいかないので……、大人しく退治されてくれませんか?」
 このような行為で人々を見返しても本意ではないだろうと、クロコは問うが、森野はそんな言葉を一蹴してしまう。
「うるさい、力づくでも解らせてやる……」
 再び、演奏を始める相手に、音楽にも楽器にも知識も興味も持たない嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)はまるで理解を示すこともなく。
「どうせ末路は決まってるんだ、せいぜい最後の演奏に魂を込めるんだな」
 挑発するタツマは、オウガメタルを纏って相手の抑えにかかり始めた。
 その一方で、数人が周囲の避難誘導に当たる。
「そっちはエインへリアルがいて危ないから、生きたければ反対の方へ行きなさい。慌てず騒がず素早くよ」
 バイオリンの淀んだ音色の中、アイオーニオンが割り込みヴォイスを使い、パニックを起こす人々を安全な方向へと誘導する。
 そのそばでは、ディディエが新たな混乱を起こさぬように声がけを行う。それもあって、少しずつこの場から人々が離れて行く。
 砂色の髪を靡かせる伊園・聡一朗(アタラクシア・e38054)は、月色の瞳でそれを確認しながらも、スタイリッシュモードになってから相手へと告げる。
「……言わせて貰うなら、ホントに勿体ないよ」
 シャイターンはきっと偽りなき評価をもってその姿を与えたのだろうと、聡一朗は推測を口にした。
 しかし、エインヘリアルは全く反応を見せず、曲を引き続ける。
「貴方の演奏は綺麗だよ……。でも、自分の為に他者を傷つけようとする貴方の演奏は既に歪んでる……」
 歌と踊りが大好きだからこそ、シルヴィア・アストレイア(祝福の歌姫・e24410)は声を荒げる。
「貴方は選ばれた人間なんかじゃない! 大切な音楽で自分の欲望を満たそうとする相手に私は絶対に負けない!」
 シルヴィアはすっと大きく息を吸い込んで。
「さぁ! ここからがわたし達のステージだよっ!」
 その叫びによってプレリュードが終わり、戦いにおけるシンフォニーが始まったのである。

●力ある音色に対して
 ある程度、人々が離れたことで、ディディエがキープアウトテープを張り巡らした区域が戦場へと変わる。
 バイオリンの演奏を行うエインヘリアル、森野。
 どこか淀んでいる音色なのに、聞き入りそうになってしまうのは、グラビティとしての力ゆえか、それとも森野自身の技量ゆえか。
 だが、クロコはそれに耐え、敵へと飛び込む。
「右腕を失えど、龍王と呼ばれし我が闘気に一片の衰え無きことを……」
 クロコは地獄で補った右腕を勢いよく燃え上がらせながらも、龍王として自身の闘気を渦のように纏わせて行く。
「その身で味わうがいい!」
 渦巻くその右手の闘気を、彼女は倍近い体躯の敵へと叩き込む。
 だが、デウスエクスに成り果てた森野はそれしきで崩れない。改めて、地球人ではなくなったと前線のルベルは実感する。
(「助けてあげられないのは、悔しいけど」)
 森野も被害者なのだと感じながらも、ルベルはドラゴニックハンマーの砲塔から竜砲弾を発射して、相手を足止めしようとする。
「おおぉっ!!」
 相手は地球に害なす敵。そう割り切りを見せるタツマは闘争心をむき出しにして、オウガメタルで覆った自らの拳を相手へと叩きつけて行く。
 バイオリンのコンテストの直後だったという森野。それもあって、礼装に身を包んでいた彼だが、それがタツマの打撃によって少しずつ破かれていった。
 クローチェもまた敵に対して攻め入るが、こちらは淡々とした態度で2本のナイフを操る。まるで息を吸うように振るうナイフ捌きに、淀みは一切見られない。
「Quando corpus morietur、fac、ut animae doneturparadisi gloria」
『自身が死す時、その魂は天へと召される』
 そんなフレーズを詠うクローチェは、命を刈り取る白い刃と宵闇を切り取ったような暗い切っ先に透明に近い銀の光を宿し、相手の全身へと抉りこむようにして連撃を浴びせかけて行く。
 幾度も斬りつけられた斬撃はすぐ消えてしまうが、森野の体には痺れを残し、若干動きにぎこちなさが交じり始めていた。
「私の歌を聴けーっ! ってね♪」
 シルヴィアもまた、バイオレンスギターを構えて口ずさむ。
「走れ! 振り返らずに 脇目も振らず逃げ続けろ……」
 彼女の弾き語りは、戦う仲間を奮起させる。いくら相手のバイオリンの音色が素晴らしいものであっても、立ち止まって聞き入るわけにはいかない。
 街に流れる2つの曲。聡一朗はその片方を支援し、もう片方にも耳を傾ける。
「その無念、受け止めさせてもらう――君の演奏は最後まで聞き届けよう」
 戦いが始まったばかりということもあり、聡一朗は撒いた紙兵に仲間の守護を任せながらも、森野へと言い放つ。
「ささやかで悪いけど。それで満足してくれよ?」
 だが、息荒く演奏する森野は満足する表情など微塵も見せず、今度はその弓で直接ケルベロス目掛けて斬りかかり始めていた。

 前線メンバーが敵を抑える中、周囲の避難は進む。
 警察が駆けつけてそれがさらに加速したことで、誘導に当たっていた2人がこの場へと駆けつける。
「エインへリアルにされた時点で、あなたの演奏は終わったのよ」
 アイオーニオンは突き刺すような冷たい視線を向けて言葉をかけると、森野は彼女へと弓を振るって斬りかかる。ルベルが代わりに受け止めてくれていたが、アイオーニオンは立ち位置を誤ったことに気づき、後方へと下がっていく。
「……失せろ」
 そのタイミング、ディディエが赤い魔法紋章を使い、腕からドラゴンの幻影を発してエインヘリアルの体を焦がす。
 忌々しげに睨みつける森野だが、ケルベロス達は彼をフリーにはしない。
 ルベルが発する地獄の炎。クローチェは降魔の拳を別方向から叩きこむ。
 歌うシルヴィアもゲシュタルトグレイブに稲妻を纏わせ、鋭い突きを繰り出していた。
 エインヘリアルの攻撃を見て、聡一朗は回復へと当たることになる。
「其は水にして天網恢恢、徒なす呪いを振り祓え――」
 彼は空中へと3枚の霊札へと呼びかけると、それらの札は水球へと変化する。
 さざなみとなった水は仲間達へと浴びせかけられるが、仲間達の体を濡らすことなくエインヘリアルの演奏が及ぼす不浄を洗い流していく。
「最早、どれだけ頑張っても不協和音にしか聞こえないわね。大人しくしてて」
 狙撃役として、アイオーニオンは石化光線を発射する。歪んだ旋律を周囲に響かせる敵の体を僅かに石へと近づけ、演奏の手を止めようとしていく。
 ディディエも同じく、古代語の詠唱の直後に魔法による一閃を相手に浴びせかけ、硬直をより強めていった。
 その衝撃は思った以上に強かったようで、森野が顔をしかめる。
「……火力には自信が有るのでな」
 高火力で圧倒するのがディディエの戦闘スタイル。森野は自身の奏でる旋律以上に表情を歪めてしまっていた。

 戦闘メンバーが揃ったことで、ケルベロス達は森野を圧倒する。
 相手はエインヘリアルになったばかり。その上、グラビティ・チェインを枯渇させている。それもあって、万全に近い状態で連携を取りながら戦う、歴戦のケルベロスの敵ではない。
 シルヴィアが補佐してはいたものの、ケルベロスの回復役は聡一朗のみ。
 敵の音色で徐々に体力を削られていたクロコは、簒奪者の鎌で斬りかかって敵の体力を奪っていく。
 相手に痺れを与えるメンバーが多いと判断し、ルベルは轟竜砲をメインに打ち込み、敵の動きを鈍らせる。時に、彼女は大きく叫び声を上げ、気合で傷を塞いでいたようだ。
 攻撃メインで立ち回るタツマも、叫びを交えて相手へとグラビティを繰り出す。
「釣りはいらねぇ、遠慮せずくたばれ!」
 自身のグラビティ・チェインを圧縮、結晶化した物を、タツマは敵へと叩き込んでいく。内部破壊を起こす敵へ、彼は言い放つ。
「俺のようなド素人の心を揺さぶれないようでは、大した実力ではないようだな」
「いくらケルベロスとはいえ、私の演奏で……」
 歯軋りする敵は痺れる体に鞭打つようにして、さらに激しく音色を響かせる。
「……中々に、血が逸る」
 ディディエはそう言いながらも冷静な態度で竜の幻影を放ち、エインヘリアルの体を焼く。
 時にナイフをくるくる回転させていたクローチェも森野へと降魔の拳を叩きこみ、体力回復と攻撃を両立させつつ戦う。
 それらの攻撃で、徐々に動きを鈍らせるエインヘリアル。ついに膝を突いたところで、ケルベロス達は攻撃を畳み掛ける。
 聡一朗も杖を振るって相手へと雷を撃ち出すと、森野は痺れの影響からか満足に弓を操れずに演奏が止まってしまう。
「派手に……いっけぇぇーっ!!!」
 即興曲をここぞと相手に向けて歌うシルヴィア。それは、仲間には癒しを与えるが、世界の破壊者には罰を与え、エインヘリアル内部に残った少ないグラビティ・チェインを暴走させる。
「ぐ、うううぅっ!」
 人として存在していたならば、あり得ない感覚。それを全身で感じながらも、森野は身体が朽ちて行くのに抗えず。
「弦ごと断ち切ってあげるわ。もう奏者じゃなくていいのよ」
 氷のメスを創造したアイオーニオンがエインヘリアルの体の急所を断ち切っていく。その際、彼女は宣言どおりに弓の弦を寸断するのを忘れない。
「そろそろ終幕としましょ」
 敵の喉元を切り裂いたアイオーニオン。次の瞬間、全身を崩すようにしてエインヘリアルはその命を終えた。
 かくして、シンフォニーは途絶える。やや虚しさすら覚えてしまうフィナーレだった。

●清らかなその旋律は
 戦いも終わり、ケルベロス達は事後処理を始める。
 戦場となった街は荒れていた為、クロコ、クローチェは早速気力を撃ち出し、周囲の建物に入ったヒビを幻想で埋めて行く。
 事件の解決を受け、タツマは早々に立ち去っていったが、メンバーの中にはこの場で新たなステージを始める者もいた。
「エインヘリアルが大音量で暴れたんだもんな。音に怖がる人が出ないよう、街の治療も必要か」
 聡一朗はアコースティックギターを取り出し、周囲の人々に呼びかける。
「いきなりお騒がせしたね。よければ一曲、聴いてってくれないか?」
 彼は演奏を始めると同時に、得意でないながらも軽くステップを踏むと、鳴らした足からは花が咲く。
 専門はピアノだが、聡一朗は人に認められようとは求めなかった。ただ、彼は敵として対した相手がバイオリンに……その音色にかけた努力も十分に理解している。
「まだ聞こえるかな? よければ、最後に聴いてってくれよ」
 まだこの場に残っていると思う彼の魂へと、聡一朗は鎮魂の聖歌を捧げる。
 それに合わせ、ルベルも歌う。残念ながら、シャウトで周囲を癒すことは叶わなかったが、その歌にこの地の人々は耳を傾ける。美しい旋律へと、クローチェもまた瞳を閉じて聞き入っていたようだ。
(「生きていさえすれば、いくらでもやり直せる。別のチャンスを掴んでたかもしれない」)
 未来を奪われてしまった彼にこの歌がせめて手向けとなればと、ルベルは歌う。
「……人間性は褒められたモノじゃなかったかもしれないけど、本来、罪は無いわけだしね……」
 シルヴィアもまたバイオレンスギターを手にし、「紅瞳覚醒」を精一杯歌う。アイドルとして、この地の人々を勇気付ける為。そして、バイオリニストとして認められなかった男性が安らかに眠れる様に。
 そんな仲間達や曲を耳にする人々から距離を取り、ディディエは煙管を吸って気持ちを落ち着ける。
(「澄んだ空に音楽はよく響く」)
 歪んだ音の後は、綺麗な音が聞きたくなる。
「Bene 実に」
 ケルベロスの清らかな歌や旋律が街に響く。澄み渡る空気の中、どこまでも。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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