病魔根絶計画~大和撫子の破壊衝動

作者:そらばる

●抑え得ぬ衝動
 ガリガリと、爪を歯で弄ぶ嫌な音が室内に響く。
 綾子は独房の隅に身を縮めて座り込んでいた。暗鬱と目を据わらせ苛立ちを隠さない表情と、神経質な仕草には、心因性の根深いストレスが感じられた。
「……綾子さん、そんなに噛んだら、血が……」
「ッさいわねババァ! 私が何をしようが勝手でしょ!?」
「あ、綾子さん……」
 心配してかけた言葉を、聞いたこともない暴言で跳ね除けられ、見舞いに来た母親はひどく動揺してしまう。
 良家の子女に生まれ付いた綾子は、生来の楚々とした容姿に劣らず、心根までも美しい娘だった。それが、病一つでここまで変貌してしまうものなのか……。
 その変貌ぶりに衝撃を受けながらも、婚約者である圭一は、意志を強くかぶりを振った。
「大丈夫。君のその苛立ちは、病気のせいなんだ。いつか必ず良くなるから、今は落ち着いて、ゆっくり休――」
「――うるさいって言ってるでしょ!? あなたに何がわかるのよ! 慰めるぐらいなら、鈍器の一つでも差し入れしなさいってのッ!!」
 衝動的に立ち上がり、独房の壁に向けて癇癪を爆発させる綾子。戦いや肉体労働と無縁に生きてきた女性の足では、堅牢な壁に罅一つ入れる事も叶わない。
 いつまでも壁を蹴り続ける女性を前に、母と婚約者は途方に暮れるしかなかった……。

●『憑魔病』根絶作戦
 戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)は、招集に応じたケルベロス達を前に、澄んだ笑みを浮かべて朗報を告げる。
「病院の医師、ウィッチドクターらの努力の結果、病魔の一つを根絶する準備が整いましてございます」
 病名を、『憑魔病』。主に異性を誘惑する魅力がある男女が罹患しやすい病である。患者は理性や良心といったものが弱まり、一般に悪徳とされる行為を行う事に喜びを覚えるようになるという。
 現在、この憑魔病の患者達が大病院に集められ、病魔との戦闘準備が進められている。
「集められた中でも特に強力な『重病患者の病魔』の撃退を、皆様にはお願い致します」
 軽症の患者は戦闘をせずとも治療できるが、重病患者はそうはいかない。今こそケルベロスの出番というわけだ。
 今、重病患者の病魔を一体残らず倒す事ができれば、憑魔病は根絶され、新たな患者が現れる事は二度となくなる。敗北すればもちろん根絶叶わず、今後も新たな患者が現れ続ける事になるだろう。
「デウスエクスとの戦いに比べれば、緊急性を欠く依頼となりましょうが……この病に苦しむ人々をなくす為、ぜひとも作戦を成功に導かれますよう、お願い致します」

 倒すべき『憑魔病』は一体。悪行を囁いて催眠に陥れ、骨爪で貫く攻撃で追撃し、嘲り嗤う事で自身をヒールし耐性を上げる、といった能力を持つ。
「こたびの場合、この病魔に対する『個別耐性』を得る事が可能にございます」
 個別耐性は、この病気の患者を看病したり、話し相手になってあげたり、慰問などによって元気づける事で、一時的に得られる。これを得る事によって「この病魔から受けるダメージが減少する」為、戦闘を有利に運ぶ事が出来るのだ。
「皆様に担当して頂く患者は、二十代の女性。名を綾子さんと仰います。良家の子女であり、家名に恥じぬ大和撫子でございましたが……『憑魔病』に罹患して以来、とりとめない破壊衝動に取りつかれているご様子」
 建物の壁やガラス、電信柱、自動車、店の看板や商品棚など、頑丈な機材や設備を鈍器でかち割るのが快感になってしまったらしい。無論、一般人のか弱い女性なので、扱えるのは工具用のハンマーが精々だ。
 現在は独房の中でその行為を禁止されており、かなりストレスが溜まっている状況にある。
「婚約も決まったばかりでございましょうに、あまりに不憫にございます……彼女の苦しみを取り除き、病魔の確実な根絶を、どうぞお願い致します」


参加者
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
烏羽・光咲(声と言葉のエトランジェント・e04614)
千種・望海(連理・e07542)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
ルベウス・アルマンド(紅卿・e27820)
妹口・琉華(お兄ちゃん属性の男の娘・e32808)
バラフィール・アルシク(闇と光を抱く・e32965)
東雲・清十郎(地球人の刀剣士・e33901)

■リプレイ

●変わり果てた令嬢
 『憑魔病』の根絶の為、綾子の治療の為の作戦が実行される事になった。その旨を、ケルベロス達は患者の親族に包み隠さず伝えた。
「なに、婚姻前の珠の肌にキズは付けんさ。うちらが壊すのはもっと、もっと内側の病そのもの。面会はちょっとした前準備でね、出来れば上手くいって欲しいんやけど……」
 ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)は、ひどく落ち着かなげな綾子の母と婚約者へ、不安を和らげるように声をかけてやった。
 ケルベロス達の口から作戦の詳細を説明された二人は、複雑な安堵の表情を見せ、深々と頭を下げた。
「私達にはもう、どうしてやればいいのやら……皆さんが協力してくださるのなら、願ってもない事でございます」
「……どうか、綾子のことをよろしくお願いします……」
 神妙に頭を下げる二人に見送られ、ケルベロス達は順次独房内へと足を踏み入れていく。
 妹口・琉華(お兄ちゃん属性の男の娘・e32808)だけは、ただ一人、独房の外に残って母親と婚約者に声をかけた。
「あのね、写真、用意してくれた?」
「え、ええ。取り急ぎ集められるだけ……」
「これを何に使うんです?」
 不思議がる二人に、琉華は柔らかく笑いかける。
「この後施術に入る綾子さんの為に、アルバムを作ろうと思って。だから、二人にも手伝って欲しいんだ。綾子さんの思い出話をしながらでも、ね?」
 思いもよらぬ提案を受けた二人は顔を見合わせたのち、小さく破顔し、是非、と快諾した。
 一方、独房内に入ったケルベロス達は、部屋の壁を蹴り続けている綾子の姿を見出していた。
「綾子さん」
 先頭に立って内部に足を踏み入れたバラフィール・アルシク(闇と光を抱く・e32965)が声をかけると、てしてしと不毛な蹴りを入れ続けていた綾子が、鋭く振り返った。
「――何。アンタ達……」
「医者を兼任しているケルベロスです。綾子さんの治療をしに来ました」
 嘘偽りなく答えるバラフィール。
「ケルベロスぅ!? ……な、なに?」
 胡乱に目を据わらせた綾子へ、ウイングキャットのカッツェがすり寄り甘え始めた。
 綾子が困惑している隙に、ルベウス・アルマンド(紅卿・e27820)は静かに独房の隅へと移動し、持ち込んだリュートを奏で始めた。リラックスを促す穏やかな曲調が、閉鎖空間の空気をやわらげていく。
 すり寄ってくる動物を邪険にもできず、若干締まらぬ雰囲気を漂わせながらも無視を決め込んで、綾子は再度ケルベロス達をねめまわした。破壊衝動を解消できそうな物品を、一行が所持していなさそうなのを認めると、その目には明らかな落胆が宿り、苛立たしげに親指を口元に運ぼうとする。
 綾子が爪に噛み付こうとした瞬間、千歳緑・豊(喜懼・e09097)が鷹揚に言葉を投げかけた。
「体は大事にした方がいい。腫れた手では槌も持てないし、痛めた足では踏ん張りもきかない」
 説得力のある言葉に、綾子ははっとして動きを止めた。
「私も、命を賭ける『戦い』を愉しむたちでね。好きなことをやるためにも、資本である体を痛めつけないように気を使っているものだ」
 破壊衝動を否定せずに、まるで同志であるかのように気さくに諭す豊。
 綾子は面白くもなさそうに、しかし自分自身から指を隠すようにして、むっつり腕を組んでそっぽを向いた。
「……わかってくれるんなら、ここから出して。じゃなきゃ、トンカチ一本でもいいから寄越しなさいよ」
 要求は頑なだが、言葉の棘は少し和らいだように聞こえた。
 隣人力を纏った千種・望海(連理・e07542)は、眼鏡や懐中時計など、ここぞとばかりに持ち込んだ物品を差し出した。
「こんな小物ばかりでごめんなさい、綾子さん。衰弱した今の貴方に、トンカチ振り回させるわけにはいかないんです」
 綾子は柳眉をひん曲げると、しばし沈黙したのち、差し出された物を引っ掴んで、そのまま勢いよく壁へと投げつけた。
 ガラスが砕け、時計が軋み弾けるその様に、ルベウスの奏でる音階が、微かに、胸が締め付けられるような悲しみの色を帯びた。

●衝動の奥に
「足りないッ!」
 綾子は一喝するように叫び、烏羽・光咲(声と言葉のエトランジェント・e04614)の持ち込んだミネラルウォーターや生活用品などの見舞いの品もひったくり、床や壁に叩き付けるなどして破壊しまくった。
「体を治して元気になったら、皆で車でも飛行機でもぶっ壊しにいきましょう!」
 追加とばかりに様々な小物を手渡し、いっそ焚き付けるように元気な言葉をかける望海。
 ケルベロス達は決してその行為を否定せず、むしろ自分に害が及ぶ事も覚悟の上で、綾子の様子を見守った。
 ガドに至っては、
「どれ、うちは頭がアレなんで、こういう方法しか思いつかんかったんでな、うちのことは辺りに散ったモノと同じと思ってええ。その気晴れるまで、殴りかかってきな」
 と気さくに自分自身の身柄を差し出すも、それは拒絶された。
「いらないッ! 物じゃなきゃ、意味ない!」
 綾子は物に対しては積極的に八つ当たりをするものの、生き物を傷つける事には興味を示さない。あっという間に壊せる物は尽きてしまった。
「彼女は、生き物を害する事と物を壊す事に、明確な線引きを持っているのだね……」
 いざとなれば抑止に回るつもりだった豊は、感嘆めいた呟きを漏らした。それは自身に欠けていて、なかなか矯正できないでいる感覚だった。
「……全ッ然ッ、足りない……ッ」
 見舞いの花束を振り回し、数多の花びらを宙に舞わせると、綾子は壁にもたれてずるずると床に座り込んでしまった。衝動を治める前に、どうやら体力の方が先に尽きてしまったようだ。
「ならば、貴女が抱いている不安や苛立ちをこの紙に書き出してみるのはどうだろう」
 若い女性に対する苦手意識を押し殺しながら、東雲・清十郎(地球人の刀剣士・e33901)が差し出したのは、何の変哲もない紙と鉛筆。
「文字という形にする事で少しは気持ちを整理できるかと思うのだが。上手く書き出せないなら、ただ紙を破るだけでもいいだろう」
 ゆっくりと、落ち着かせるような清十郎の声音に促され、綾子は紙の端を掴んだ。わずかな逡巡ののち、鉛筆をぎこちなく走らせ始める。
『壊したい』
 筆致は徐々に速度を上げ、白い紙が文字に埋め尽くされていく。『壊したい壊したいこわしたいコワしたいけいいちさんこわしたい壊したいおかあさんこわしたいこわしたいこわしたいたすけて』……。
 乱暴に書き連ねられる文字列の中に、破壊衝動とは異なる単語をいくつか汲み取り、清十郎は言葉を選びながらそっと語りかける。
「俺は無骨者ゆえ上手く言葉にできないが……貴女の悪夢は俺達がここで終わらせる。あと少しだけ待っていてくれ」
「う……っ」
 綾子が小さくしゃくりあげた。引きつるように鉛筆の動きが止まる。
 目の前でさめざめと女性が泣き始めた事実に、清十郎は狼狽し、女性陣に対処を託して、この場唯一の同性である豊の傍らに引っ込んだ。
「本来の貴方は、心穏やかに窓の景色を見つめていたりしたのかしら……」
 後を引き継いだ光咲は、泣きじゃくる綾子の手を取り、優しく語りかける。
「病は私たちが必ず治すわ、安心して」
 綾子は顔を伏せ、なされるがまま。その反応を見極め、バラフィールは血の滲んだもう片方の手を取り、ハンドクリームでケアしてやる。看護師御用達のクリームで、人気がありすぎて医者まで回ってこない、なんて他愛ない世間話を披露しながら。
「……この後、綾子さんの体から病魔を召喚し、私達の手で倒します。その際、綾子さんの体を一時的に拘束する事になりますが、病魔を倒すまではどうか耐えてください」
「……はい……っ」
 消え入るようでいて、しかししっかりと、綾子は頷いた。

●通じた想い
「病魔召喚は怖いかもしれないから……はい、これ」
 一連の慰問が終わり、ストレッチャーに横たえられた綾子に、琉華は完成したアルバムを差し出した。
「ボクと圭一さんとお母さんで作ったアルバムだよ。これがお守り代わりになりますように」
 泣き疲れてぼんやりとした顔つきで、それでも綾子はしっかりとアルバムを受け取った。もはや内容を確かめる気力もないが、ひどく大事そうに胸に抱きしめる。その頬に、サーヴァントのぴぃが励ますようにすりすりと身を寄せた。
「大丈夫。どんなあなたでも、大切な人達はずっと側に居てくれますよ」
「私たちが必ず病魔を倒します。……信じて、待っていてください」
 元気に励ます望海と穏やかに約束するバラフィールに、綾子はうっすらと笑み返し、力なく目を閉じた。
 綾子が眠りについたのを見届け、光咲はふと、感慨深く呟く。
「入院していたころを思い出すわね……」
 消毒液のにおいに刺激され、脳裏に浮かぶのは、翼を折られた時の事。故郷と母親を喪ったがゆえに目覚めた力を、護るべき人々のために役立てたいという想い。
 ベルトで拘束された綾子を、複雑に見下ろす望海。病気というのは、決して他人ゴトではない。いつ自分や、大切な人が病魔に憑かれるかわからない。
「けれど、その病気を過去のコトにできるのなら……頑張らないわけには、いきませんねぇ」
 病魔召喚が開始された。望海を主軸に、召喚経験のある琉華がフォローし、病魔が綾子の体内から引きずり出されていく。
(「人も物も区別無く、いずれは壊れて意味を成さなくなる。だからこそ、大切にしなくてはいけないのよ。でも……」)
 立ち昇るように姿を現す病魔を見据えるルベウス。心を壊しかけた経験のある彼女にとって、心を変貌させる病魔の存在は、決して容認できるものではない。
「ここには、壊さなきゃいけないものも、あるわ、ね」
 その手に嵌めたマインドリングが、仲間を守る為の輝きを放ち始める。
 ほどなくして引きずりだされた病魔は、毒々しい骸骨の姿をしていた。
 病魔『憑魔病』。
「ようやく姿を現したわね、奴さん!」
 面会の為にしまい込んでいた翼を広げ、氷結のグラビティを練り上げ始める光咲。
 バラフィールが即座にストレッチャーを外へと運び出す。それを追う病魔の視線を、立ちはだかった清十郎と豊が遮った。
 その背後で、綾子の身柄は待機していた看護師達に預けられ、扉が重々しい音を立てて閉ざされた。
「病魔の戻る場所はないと思ってもらおうか」
 余裕たっぷりに言い放つと共に、豊のリボルバー・ドラゴン改が火を噴き、戦いの火蓋は切って落とされた。
 間髪入れずルベウスがマインドシールドで攻撃に備え、ガドの気咬弾と光咲の時空凍結弾が敵を的確に撃ちすえる。琉華とバラフィールと望海は手分けして耐性を全体に行き渡らせ、清十郎は心眼覚醒により霊的防護を断ち切る力を得る。
 抜かりなく整っていくケルベロス陣営を、憑魔病は忌々しげにねめまわすと、泳ぐように突進を仕掛けてきた。鋭い骨爪が一直線に豊へと突き出され――、
「そう簡単に通すと思うなよ?」
 躍り出たのは清十郎。斬霊刀にいなされた骨爪は肩を掠めて通り過ぎる。ダメージは最少、運悪く引っかけられた眼鏡以外は大事ない。
 清十郎は素早くスペアにかけ替えながら、受けた衝撃の度合いを反芻する。
「……どうやら、『個別耐性』というのは確かに機能しているようだな」
「マジでか、そらええこと聞いたわ。ほなら遠慮なくぶちかましてくで!」
 ボクスドラゴンのギンカクと共に、敵へと元気一杯突進をかけるガド。体術の心得を活かした流星の飛び蹴りが、憑魔病を強烈に打ち据えた。

●雨降って地固まる
 ケルベロス達は皆それぞれ、憑魔病に対する『個別耐性』を得ているようだった。そう実感できるほどに、憑魔病の攻撃ダメージは浅く感じられた。
 そうとわかれば俄然、攻勢が充実してくる。催眠や耐性などの厄介な効果も、その都度誰かがフォローし即座に効果を消していった。もはやケルベロスに負けの目はない。
「この分なら、Sweet Pollenを使うまでもなさそうだね」
 回復の必要性がなくなったのを見越して、ケルベロスチェインで敵を縛り上げる琉華。
「この力、護る為に――」
 地獄化した翼を広げ、聖なる光を放つ光咲。
「位置よし、気合よし……せーのっ!!」
 ガドの直感が唸った。虚空に撃ち込まれた力が螺旋の渦を発生させ、衝撃の槍が遠く離れた敵を穿つ。
「水の力よ……ここに集いて、我が敵を貫く槍となれ!」
 バラフィールがロッドを掲げ詠唱すれば、どこからともなく雨雲が湧き出で、氷が雷の如き軌跡を描いて病魔を貫いた。
「フォロー」
 豊の短い呼びかけに応え、現れ出でたのは大柄な犬に似た、地獄の炎の獣。五つの目が光り、牙を剥いて敵に襲い掛かり、執拗にその進路を妨害する。
「昼でなく、夜でなく……生であり、死であり……石膏のように、雨露のように……気丈に羽ばたき、無邪気に爪を剥く……」
 詠唱に合わせ、ルベウスの胸に埋め込まれた魔術回路が淡く輝く。作り出された霊的生物は緑の輝き放つオーラの如く、猛禽に似た翼を広げて敵へと飛び立つ。
「毒も薬も、この草だって使いようというわけでして」
 望海の戦法には常に攻性植物が絡んだ。バイオコンピュータとして治癒の魔法陣を描いていたかと思えば、今度はツルクサの如く病魔に絡みつき締め上げる。
「貴様の命、ここで断ち切らせて貰う!」
 浄化の波動での治癒を終えた清十郎は、朱色の下げ緒も鮮やかな斬霊刀を構えた。
「東雲清十郎、参る!」
 空の霊力を帯びた刃が、傷つき切った病魔を斬り裂く。
 人ならざる悲鳴を上げながら、憑魔病は引き裂かれるように消滅していった。

 病から回復した綾子は、それこそ憑き物が落ちたかのように、穏やかな笑みを浮かべていた。
「ひどい暴言と面倒事に皆さんを付き合わせてしまって……本当に、申し訳ございませんでした」
「ええて、気にせんといて。皆もお疲れ、ありがとなー」
 綾子を介抱し、人なつこい笑顔で関係者一同に感謝を返すガド。
 光咲は双翼の幻想顕現で、疲労のぬぐいきれない綾子を介抱すると、淡い青バラのソープフラワーの花束を綾子に贈った。
「青いバラの花言葉は『奇跡』……綾子さんが圭一さんと巡り会えたこと。それと、二人幸せになれますように、の願いを込めて」
 嬉しそうに花束を受け取る綾子に、安堵と幸福を噛みしめる圭一が寄り添う。
「圭一さんに心配をかけた分、綾子さんは圭一さんを幸せにしてあげないとね?」
 琉華は微笑み、二人の幸せを祈った。
 それまでの陰鬱さが嘘のように、眩いばかりの幸せな光景を横目に、ルベウスはリュートを抱えて満足そうな笑みを浮かべながら、静かに退室していくのだった。

作者:そらばる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月8日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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