ミッション破壊作戦～メカニカル・フロントライン

■リプレイ

　白い光が水面を貫く。閃光八条、海中へ流星めいてダイブした八人は高速潜航。マーク・ナイン（取り残された戦闘マシン・e21176）の背にしがみついたミリム・ウィアテスト（リベレーショントルーパー・e07815）は海の奥、浮遊する巨大な透明ドームとその中のゲートに目をつける。
「あれだなぁ……！」
「やはり海中ですか。戦艦竜を思い出します」
　競泳水着姿の幸・鳳琴（黄龍拳・e00039）の隣で、ソル・ログナー（鋼の執行者・e14612）が眉根を寄せる。バリアドームより海のさらに深い所にクジラめいた巨影。猛進しながらソルは号令は叫ぶ！
「敵影確認。総員、行くぞッ！」
「了解！　お先行くわね！」
　シィ・ブラントネール（絢爛たるゾハルコテヴ・e03575）が水中で加速！　バリアに突っ込む彼女の背後で、マークは機械翼のスクリューを回す。
「離すなよ！」
「わかったッ！」
　ミリムをくっつけたマークが加速しシィに追いつく。バリアドームを挟んで向かい、海の奥が星めいて瞬き大量の魚雷が飛翔。猛加速する二人、必死にしがみつくミリムは白く輝く小剣を逆手に構える。
「日本の海の安全を脅かすダモクレス、許すまじ！　というか……佐渡ヶ島グルメツアーに気楽に行けないのだッ！」
「そうね。それに、こんなところに陣取られたら島の人達も、海の生き物達も安心して暮らせないわ！　この国の海を守る人達に代わって叩き壊してあげる！」
「島国の海で好き勝手させる訳にはいかんのでな！　SYSTEM COMBAT MODE！」
　三本の剣が甲高い金属音を放ち、光を強める。三人は白雷の矢と化して突進！
「美味しいいごねりの為に……いや、島民の人々の為にッ！」
「砕けなさいッ！　魔空回廊ッ！」
「ENGAGE！」
　三人がバリアに激突し、光が爆発！　落雷じみた轟音が鳴り周囲へ白い炎と電光が拡散。近づく魚雷が爆裂し、白銀の雷がゲートを襲う。
「ふんぬあああああッ！」
「はあああああああッ！」
　水の中に木霊するシィとミリムの叫び声。鳴動に負けじと上がる気勢にバリアが軋み、ひび割れる。直後、爆発を突破した魚雷が三人に衝突して爆発！　三人はバリアからはがされ吹き飛んだ！
「うわあぁあぁあぁあぁ！　目がぁぁぁぁぁ！」
「ATTENTON」
　ミリムに機械音声を放ったマークはスクリューを使って機体を制動、同じく滅茶苦茶な回転を制したシィが首を振る。三人の目下、攻撃の余波で散る火花と雷光をまとった威容が斜めに突き出す。大型潜水艦、グリムリーパー。甲板の砲門を動かす巨体の横腹、飛び込んだソルが如意棒を突っ込む。
「ふんッ！」
　鈍い音を立て装甲版がわずかに凹む。ソルは舌打ちすると肩越しに叫んだ。
「篁、幸ッ！　行けッ！　……ぐぶッ！」
　グリムリーパー高速旋回！　ソルを海中で引き回し、周囲に巨大な渦を巻く。雪の結晶型ドローンをつかんだ氷霄・かぐら（地球人の鎧装騎兵・e05716）は右手をかかげ、ドローンを精製。
「防衛モードで展開！」
　命令を受けたドローンが激しく波打つ海中を飛び、渦に飲まれかけた鳳琴と篁・メノウ（紫天の華・e00903）をキャッチする。反転したグリムリーパーは両サイドからトゲ付き鉄球をまき散らしながら海中に潜航。デブリじみてばらまかれた機雷に向かって、追いついた神苑・紫姫（断章取義の吸血鬼伝説・e36718）は両手を突き出す。スク水ニーソにバックパックの出で立ちを、紫色の光が包む！
「道をお開けなさいな！」
　両手から紫の竜巻が放たれ大量の機雷を押しのけた。開いた道へ潜る二人の斜め下、潜航した潜水艦が再度反転！　小剣輝かせる二人に数発の魚雷を発射した。シィと紫姫が指令を下す。
「レトラ！　援護よ！」
「止めなさいステラッ！」
　魚雷に紳士服のシャーマンズゴーストと白いドレスのビハインドが突っ込む。二体が爪とナイフを弾頭に突き刺した瞬間起こる爆発を見、鳳琴は左手薬指の指輪を握る。
「メノウさん。私はダモクレスの脅威を砕き、日本海に平穏を齎したい。おいしい料理を心行く迄味わいたいし、海水浴も楽しみたい。そして何より……この近くで暮らす人々が、笑顔で平和な海を過ごすために戦いたい！」
　火花を散らす剣を手に、メノウは鳳琴を横目で見やる。決意の表情！
「必ず、この地は開放しますっ！」
「ん」
　うなずき、メノウは前に向き直る。砲撃を受けては爆風に弾かれる二体のサーヴァント、その奥に座する戦艦をにらんで剣を突き出す。
「よく聞けポンコツ潜水艦。ここはあんたたちの居場所じゃないんでね、さっさと帰りなよ！　さもなくば！」
　ほとばしる、白い稲妻！
「斬るッ！」
　激突点が再度発光！　爆発した閃光と白い爆炎が膨張し、周囲の機雷を爆発もろとも押し流す。真っ白な閃光はゆらめくゲートに直撃！
「はあああぁぁぁぁぁぁああッ！　砕けろ魔空回廊―――ッ！」
　押しつけられる破壊の剣。水底で砲塔を微調整する戦艦からやや離れた位置で、マークは銃剣じみてパイルをつけたライフルで戦艦を狙う。
「TARGET IN SIGHT」
「邪魔させるもんか！　行くぞっ！」
　ウィングにしがみついたまま、ミリムはモーニングスターを突き出した。鉄球部分が高速回転！
「ファイアッ！」
　鉄球射出！　同時にマークが光線を放ち戦艦側面に氷の横筋を描く。鉄球は砲塔側面を突き破って暴発せしめ、一本の砲が半ばから折り中央の砲を歪ませる。構わず撃たれる二発の砲弾と魚雷三発！　サーフボードのようにドローンに乗ったかぐらはジグザグ軌道を描いてそれらに刺突を繰り出しすり抜ける。背後からの爆風に背を焼かれながらも、かぐらはグリムリーパーを指さした。
「攻撃モードで展開！」
　彼女の周囲に出現した雪の結晶型ドローンがグリムリーパーに殺到し、艦体各部にへばりつく。接地面に霜を降ろすドローンに素早く目を走らせたシィは三日月型砲台に電光をチャージ。
「あなた達の好きにはさせないんだからっ！」
　電光が金色の矢となりドローンを撃つ！　高速スライドしながら光の矢が射かけられ、装甲板がドローン諸共砕け散る。砲塔を巡らせたグリムリーパーは両側面の装甲板を解放し無数の機雷を散布。漂う一団に砲撃し、連鎖爆発を引き起こす。広がる爆炎がシィとかぐらを飲み込んだ！
「きゃあっ!?」
「うっ！」
　戦艦を中心に描かれる爆炎の円が急いで後退するマークをも飲む。連鎖爆発の外、一回転した紫姫は勿忘草の幻影をまとったヒールで蹴りを繰り出す。噴出した花吹雪で爆炎を切り裂き、吹き飛ばしながら彼女は己が眷属を呼ぶ。
「ステラ！　バックアップを！」
　即座にナイフを手に飛び込むステラ。投げつけたナイフに紫姫の霧がまとわりついて噴煙、爆炎を斬りながらかぐらとシィを引っ張り上げる。大きな火傷を負った二人を見下ろす彼女の背後で破砕音！　思わず見返ればそこには半分近くひび割れたバリアドームと光を失った小剣を手に前線へ飛び込む鳳琴とメノウ！
「すみません、今攻撃終わりました！　これより前線に加わります！」
「承知したわ…………ぐっ！」
　返事をする紫姫に魚雷が命中！　さらに肉迫してくる数発を見止めたメノウは海中を蹴り飛ばし、刀を引き抜いて回転。紫苑に染まる漆黒の刀！
「清き風、吹き荒れろ！　篁流回復術、『青嵐』ッ！」
　振り回された刀身が紫色の風を解き放つ。突風が紫姫をベールめいて覆った瞬間魚雷が激突！　爆炎を振り払った彼女をすり抜け、鳳琴は輝く両拳を引き絞りながら深みへ潜る。
「折れることなき心を以って……さぁ潜水艦型ダモクレス！　その装甲、必ず砕いてみせましょう！」
　目を開き、正拳二つを強く打ち下ろす！　拳から現れた二匹の龍が左右に分かれ爆炎をかき分けて泳ぎ出す。直後彼女に飛ぶ砲撃の前にメノウが踊り出、刀を一閃！
「『三日月』ッ！」
　分かれた砲弾が明後日の方向へすっ飛び爆発。連鎖爆発の残滓を抜けたソルは口元の火傷をぬぐい金色のハンマーを構えて突撃！　ハンマーのジェット噴射を推進力に凍った装甲板にフルスイング！
「うおらッ！」
　張りついた氷が砕け、装甲に亀裂が走る。舌打ちしながらかざしたソルの手が光線を放ち、彼を後ろへ突き飛ばす。灰色に変色する装甲に構わずばらまかれていく大量の機雷。流麗に泳いだレトラはソルとすれ違い、一番近いひとつを押して機雷の群れへ泳ぎ込む。鉄球に爪を突き立て発破！　連鎖爆発から吐き出されたハットをよそに、マークは主砲とレーザードローンを展開！
「LOCK ON」
　集中砲火が誘爆を貫きすり抜け変色した装甲板に着弾。灰色の亀裂を深める戦艦が放つ反撃の一発をかぐらのドローンが防御する。翼で水を叩いたシィが砲塔の真上を横切りひび割れた装甲板へ飛び蹴りを繰り出した。炎の蹴りが亀裂の中央に炸裂！
「ソル、ここは任せて！　大丈夫、そう簡単にやられたりしないわ！」
　シィが叫びながら燃えるかかとをぐりぐり押し込む。嫌な音を立てる装甲板を遠目に見ながら、ソルはうなづいた。
「ああ、そうだな……ハナからそれが目的だったッ！」
　ハンマーのジェット機構を起動し垂直上昇！　道すがら、同じくドローンに乗って上昇したかぐらがグラディウスを両手で握る。白光の尾を引いて昇っていく彼らをめがけ、グリムリーパーは魚雷を三発連続で放った。それをを迎え撃つのは鳳琴！
「行かせませんッ！　破ッ！」
　鋭い飛び蹴りで一発目を半ばでひん曲げ裏拳で二発目の頭を歪める。遅れて来た三発目にかかと落としを入れた瞬間、魚雷が一斉に起爆した。鳳琴を圧する紅蓮の炎をメノウの剣風が吹き飛ばす。動きづらそうに舞う彼女にグラディウスを抜いた紫姫が声をかけた。
「しばし、お任せします」
「おっけー。決めて来なよ！　篁流回復術！」
　下段に構えた刀を紫色の烈風が包んだ。ソル、かぐらとすれ違うと同時、バリアへ向かっていく三人に一閃！
「『黄雀風』ッ！」
　放たれた紫紺の追い風が三人を叩く。海の中を加速しながら、紫姫はちらりと後ろを見やる。魚雷を迎撃する鳳琴とメノウ、機雷に翻弄されつつ攻撃を集中させるシィ、マーク、ミリムの三人。回復しつつも傷ついた仲間達。
「やれやれ……あんなものを量産されて海上封鎖でもされた日には、日本が干上がってしまいますわ。貴族として、領海侵犯を指を咥えて見ているつもりはありませんの」
「そうね。海の中は……ま、確かに地上に比べたら攻撃しづらいけど。だからと言って諦めるわけないでしょ！　一気に叩いてしまいましょう！」
「ああ。あの木偶の坊共にくれてやるもんなんぞ、砂粒一つありゃしねェ！」
　三人はまばゆく輝き小剣を目の前のバリアに突きつける。甲高い金属音と爆発寸前の白い火花！
「あのクソ共に思い知らせてやる……この地の人々の怒りと願いを！　この海で戦う奴らのために！」
「私達の、お手伝いしてくれる人たちのために」
「佐渡島の平穏の為、そして累が他の海に及ぶ前に……我が名に、吸血鬼シキの名にかけて！」
　遠くに浮かぶ魔空回廊。それを覆う、ボロボロになったドームのバリアが目と鼻の先まで近づき、そして。
『叩き潰すッ！』
　三本の剣がバリアを叩いた。純白の大爆轟！　ビッグバンめいた衝撃波が辺りを揺るがし、亀裂がバリアを埋めていく。動きだす、グリムリーパーの巨体。魚雷と機雷をまきながらゆっくり浮上し始める戦艦に、メノウは刀を真っ直ぐ構え爪先の紫光を蹴りつけた！
「今更焦ったって……もう遅いっ！　篁流剣術！」
　落雷じみて落下しながら迎撃に来る魚雷を紙一重で回避。緩く弧を描いて目指すは灰色にひび割れた装甲！
「『月光通し』ッ！」
　メノウの一撃がヒットし装甲板が砕け散る！　徐々に速度を上げていく戦艦に貫手を使って体を固定し、刀を掲げた。
「ミリムーッ！」
「おっけーメノウ！　カモン、オーライ！」
　ビームを連射するマークにしがみついたまま、ミリムはモーニングスターを頭上に振り上げ円を描く。そして、メノウを指し示す！
「ファイアッ！」
　直後海面を突き破ったレーザーが、跳躍したメノウの居た場所に激突！　爆炎と煙を噴き上げた戦艦は傾きつつも魚雷を発射。迎撃せんとする鳳琴を砲撃で退け、魔空回廊攻撃組に魚雷がけしかけた、その刹那。白い光がひと際強く輝き大爆発！　目を焼く閃光を見上げたマークが声を出す。
「……GATE DESTROYED」
「成功、ですね……あとはッ！」
　砲火を振り切り、鳳琴は戦艦をにらむ。艦首を外し、行先を変えるグリムリーパーに紫姫は両腕を広げた。背中に浮かぶは紫色の魔法陣！
「どこへ行くつもり？　……我が名は紫姫、吸血鬼シキ！　西の地の怪力乱神を束ねし幻想。その姿、我が威光、是非ともその身に刻んでからに行きなさいな！」
　魔法陣が一瞬輝き、紫光の弾が降り注ぐ。戦艦側面を打ちつける紫色の弾幕の中、やや焦げた翼を動かしシィが素早く戦艦破壊痕に接近。爆撃を受けた砲台各所が電光をこぼす。
「もう少し……もう少しなの！　頑張って！」
　汗を海水にぬぐわれる彼女の周囲に、雪の結晶めいたドローンが集まり青白い光を注ぎ込む。背負った武装に小剣をしまったかぐらは大量のドローンを展開。爆風にさらされ傷ついた仲間達に集らせる。
「全機、集中モードで展開。治療を最優先事項に設定」
　絶えまなく発進するドローンが、仲間達の傷を青白い光で塞ぎ武装を修復。二刀流で舞うメノウが放つ紫の桜吹雪に全員の火傷が洗われる。
「夜半の……嵐っ！」
　青い海を染め上げる紫苑の嵐。三日月から光の矢を槍めいた伸ばしたシィは大翼を広げた。
「ワタシ達の力、見せてあげましょう！」
「はいッ！」
　深呼吸した鳳琴は全身を燃やし、腕を引く。渾身の力を込めて撃ち出した正拳突きから光の龍が飛び出し戦艦の傷口に食いついた。龍に勢いよく引かれた鳳琴と羽ばたいたシィが破損部分に衝突し拳と光が突き刺さる！　海に響く龍の咆哮を聞きながらソルは手中に現れた槍を振り上げ、マークのアクアウィングが再起動！
「もう一回言ってやる。貴様らにくれてやるものなぞ、何一つない！　これこそは、我が魂に刻まれし叛逆の槍ッ！」
「MODE ASSAULT READY」
「うおおおおおーッ！　行っけえええええええええッ！」
　漆黒のジャベリンが飛び、マークがそれを追い越し飛翔。長距離を一度に詰めた彼は巨大ライフルに付いたパイルを破損部に叩きこみ零距離射撃！　モーニングスターで殴るミリムの隣に黒い槍が飛び込んだ。湧き上がる裂帛の気勢！
　分厚い船がひしゃげてへこみ、メキメキと耳障りな軋みを上げる。戦艦はどんどんひん曲がっていき、やがて一直線に貫通されて瞬時に膨らむ。反対側へ突き抜けたマークは小さくつぶやいた。
「ENEMY DESTROY」
　その直後、グリムリーパーは爆発四散した。

作者：鹿崎シーカー	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年11月9日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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