ミッション破壊作戦~触れば螺旋散る光の刃

作者:柊透胡

「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 ヘリポートに集まったケルベロス達を、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は静かに見回した。
「私からは8回目のアナウンスとなります。『グラディウス』が再び使用可能となりました」
 『グラディウス』は、長さ70cm程の『光る小剣型の兵器』だ。通常の武器として使えない代わりに、『強襲型魔空回廊』を破壊出来る。デウスエクスの地上侵攻に打ち込む、大きな楔と言えようか。
「グラディウスは一度使用すると、グラビティ・チェインを吸収して再使用可能となるまで、かなりの時間を要します。攻撃するミッションについては現状を踏まえ、皆さんで相談の上決定して下さい」
 今回の作戦に於いて、創が担当するのは『螺旋忍軍』のミッション地域となる。
「強襲型魔空回廊は、ミッション地域の中枢にあります。正攻法で辿り着くのは困難で、敵に貴重なグラディウスを奪われる危険さえあります」
 その為、ミッション破壊作戦では、『ヘリオンによる高空降下作戦』を行う。
「強襲型魔空回廊は、半径30m程のドーム型バリアで覆われています。このバリアにグラディウスを接触させる事が、『攻撃』となります」
 攻撃対象が巨大故に可能な作戦と言えよう。
「8名のケルベロスが、グラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用し、強襲型魔空回廊に攻撃を集中させれば……場合によっては、その一撃で破壊も可能です」
 1回の作戦で破壊出来ずとも、ダメージは蓄積する。最大10回程度、降下作戦を繰り返せば強襲型魔空回廊は確実に破壊出来るようだ。
「強襲型魔空回廊の周囲には強力な護衛が常駐していますが、流石に高高度からの降下攻撃は防げません。又、グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させます。グラディウスの所持者以外は無差別に害を被りますので、強襲型魔空回廊の防衛を担う精鋭部隊でも防ぐ手段はありません」
 ケルベロス達は、この雷光と爆炎によって発生するスモークに乗じて撤退する事になる。
「既に数本喪われていると聞きました。貴重なグラディウスを持ち帰る事も、本作戦の重要な目的です。けして無理はしないで下さい」
 魔空回廊の護衛部隊は、グラディウス攻撃の余波である程度無力化出来る。それでも、螺旋忍軍との交戦は避けられない。
「幸い、混乱する敵同士に連携はありません。素早く立ち塞がった敵を倒して撤退すれば、問題ないと考えます」
 だが、強い敵程、混乱状態からの回復も早い。撤退を阻む敵は1体でも油断ならない。
「万が一にも時間が掛かり過ぎて、脱出前に敵が態勢を整えてしまった場合は……降伏するか、暴走して撤退するか。そんな危機に陥る前に、速やかに撤収して下さい」
 螺旋忍軍のミッション地域は、それぞれ個性的だ。現在場所の選択の参考とするのも良いだろう。
「時勢慌しい現状は散発的ながら、デウスエクスの前線基地であるミッション地域の解放は、これからも継続する重要な作戦です。ミッション地域を増やし続けるデウスエクスの侵攻を食い止める為にも……ヘリオンより、皆さんの健闘を祈っています」


参加者
清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)
クーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)
ムジカ・レヴリス(花舞・e12997)
ユグゴト・ツァン(不変の怪・e23397)
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)

■リプレイ

●ミッション21-2 「甲賀忍者戦」
 滋賀県甲賀市――信楽焼や東海道五十三次の宿場が全国的に知られているが、最も有名なのは伊賀流と並ぶ忍術の一派「甲賀流」だろう。ちなみに「こうか」と読み、最後は濁らないらしい。
 その『受け継がれた記録』が狙われてまだ日も浅い。相変わらず、螺旋忍軍は活発だ。
「スパイラスのゲートを破壊されているにも拘らず、か。螺旋忍軍もしぶといな」
 呆れた面持ちのレッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)。
 主星へ帰還する路を断たれた今も、他のデウスエクスの下で謀を巡らせる螺旋忍軍――このミッション地域の敵はどの勢力に与しているのか?
「どの道、退ける以外にはないのだがな!」
 黒幕云々は、まず魔空回廊を破壊してから探れば良い。レッドレークはいつも明快だ。
「螺旋忍軍はちょーっと厄介やし、こういう機会にちょいちょいっと潰しておきたいところやね」
 軽口を返し、清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)は資料を確認する。ミッションを通してある程度情報があるのは有難い。
「いつも通りとはいかんやろうけどな」
「シャドウクラッカー、だっけ。手妻とやらのネタの為に人の魂を啜るとか、全くふざけた野郎だぜ!」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)は大いに気炎を上げている。
「これ以上やらせて堪るかよ。絶対、回廊をぶっ潰そうぜ」
「手妻は、確か日本独自の奇術の事でしたね。『人を楽しませる』伝統文化には敬意を払いたいですが」
 ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)の表情も些か険しい。連続殺人事件の犠牲者には哀悼を、手妻という伝統を貶めた螺旋忍軍には怒りを禁じ得ない。
「日本古来の手妻に倣い、連携と迅速な行動で早期撤退を目指しましょう」
「この1度で惨劇を止められるように、取り戻したい想いを込めて全力で振うわネ」
 決意を以て、両手でグラディウスを握るムジカ・レヴリス(花舞・e12997)。
(「グラディウス、紛失が増えているなんて」)
 この光剣が喪われれば、デウスエクスから大変な場所を取り戻す機会も又、失われてしまう。
「借り受けたものは、ちゃんと持って帰らないと」
 ムジカの真摯な言葉を、エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)は凜とした表情で聞いた。
 今回の標的、甲賀市のミッション地域は難易度も螺旋忍軍のテリトリーで高い方だ。連続して各地のミッション地域を見事破壊してきたエリシエルだが、それも先陣あってこそ。
(「博打は好みじゃないんだよね……でも」)
 初めて挑むミッション地域。それでもけして破壊の確率は零で無い。常の楽観を今日も信じたい。
「よし、選定終わり、と……ここで降ろしてくれ」
 ボクスドラゴンのシュバルツと、地図と上空の光景を見比べていたクーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)は、ヘリオライダーに声を掛ける。
「……」
 程なく、開かれるハッチ。ユグゴト・ツァン(不変の怪・e23397)は無言のまま、その際に立つ。
 かつて暴走したのは、ビルシャナのミッション破壊作戦――あれから、3ヶ月。
(「私の地獄は、何処に在る」)
 現状、彼女の冷たき炎は総て『家族』を補う。故に、今のユグゴトは暴走から救われた時と同じ人の姿だ。
「……」
 思考の程も面に出さず、グラディウスと『立ち去れ』と書かれた鉄塊剣を握るユグゴト。粛々と、飛び降りた。

●触れば螺旋散る光の刃
「殺害とは人類が避けられず、常々為された所業で在る」
 ヘリオンでの沈黙が一転、宙に身を躍らせたユグゴトは饒舌。
「されど。赦すべき理とは違い、罪は罰を受けねば成らぬ。故に我はお仕置きを始めるのだ。莫迦な仔には躾が必要。好いか。此処を破壊する事は『仔』を直す為に。糺す為に。正す為に!」
 ユグゴト曰く――全生命体は彼女の『仔』で在り、デウスエクスも『仔』だ。
「殺害の罪を『破壊』で正そう」
「この道を修羅道と知り推して参る」
 ユグゴトと対照的に、光は至極シンプルだ。
「所詮は暴力による解決やけど、終わらせたい気持ちに偽りはあらへんよ!」
 恨みや辛みで戦う事は良しとしない。だが、螺旋忍軍に虐げられる者がいる憤りは、確かに光の胸に燃えている。
「1人1人にそれぞれの人生があって、各々の夢や希望を持ってるんだ」
 ウタは吼える――皆が誰かの家族であったり、友達であったり。その希望や未来を奪い、人の絆を無残に引き裂く奴は許さない!
「地球と! 地球に息吹く命を! 未来を守るぜ! 俺度地獄の番犬の牙を喰らいやがれっ!」
「殺す事でその技を奪う。技の研鑽も、何の為の技なのかも関係なく、ただ、奪う……」
 剣士として、九重流双剣術の使い手として、クーゼにはどうしても看過出来ない事がある。
「それは連綿と受け継がれて来た想いへの冒涜であり、そして何より、その誇りへの侮辱に他ならない……許せる、訳がない。見過ごせる、訳がない!」
 長身のクーゼに比してちっぽけなグラディウスに、思いの丈を全て込めて。
「砕けろオォォッ!!」
(「……ああ、気に入らない。いけ好かない。全くもって気に食わない。技術技巧ってのは、自ら練磨し研鑽し消化し昇華してこそのもの……それを、人を殺めて横から掻っ攫おうって根性が気に入らない」)
 エリシエルも刀剣士だ。あちこちの武術を使い易いよう継ぎはぎした我流だがその分、流派や研鑽には最大限に敬意を払っている。
「あまつさえそれを手妻だぁ? 思い上がるな、強盗風情が! 人間舐めんのも大概にしろ!」
 だからこそ、シャドウクラッカーの言い草はけして許せない。
「大人しく十王の審判を受けて来い!」
 その行先など、考えるまでも無い――地獄の番犬が引導を渡す。
「本当に、手妻なんて失礼ネ。そも受け継がれ紡がれてきた血は、私利に用いて良いものなんかじゃない!」
 甲賀の里で、これ以上血を流させる訳にはいかない。ムジカはグラディウスを胸に決意を叫ぶ。
(「これ以上、誰も利用させやしない。返してもらうわヨ、甲賀の地をっ!」)
 だが、甲賀は今回が初攻撃。魔空回廊が一撃で破壊出来るのか――。
「無理と思ったらムリなんだから、甲賀市絶対返してもらうワ! 忍者戦なんて忍法帖争奪戦で大した事なかったんだから、負けないモノっ」
 強気の表情で、刃を構えるムジカ。勢いのまま魔空回廊へ突っ込んでいく。
 けしてグラディウスを離さぬよう握り締めるダリルは、先の3人と別の視点からシャドウクラッカー打倒を叫ぶ。
「古来より伝わる手妻。この国の伝統芸能を人を殺す技として使うなど度し難いにも程がある」
 脈々と受け継がれた文化、その中に込められる思いを穢す行為だけでも余りあるのに、その上、未だ貪欲にも取り込もうと言うのか。
「これはお前の技ではない。お前が使って良いものではない。分身諸共残らず打ち滅ぼし、全て返して貰う……!」
 『技』も様々ならば、思いを向ける所も様々だ。
「古くからの忍者の里に続く、血の中に眠る記録、か……」
 残るは1人。グラディウスの脱落防止のチェーンを最後に確認して、レッドレークは深呼吸1つ。仲間に負けぬ勢いで飛び降りる。
「喩え人々の記憶や技術としては失われてしまっているとしても、奪って良いものの筈がない」
 レッドレークは元ダモクレスだ。定命化した事で自らのルーツを失った、或いは外れてしまったとも思っている。それだけに、代々受け継がれてきたものや歴史の古いものに憧れ、護らなければという思いが強い。
(「俺様の血の中にも、眠っている記録はあるだろうか……?」)
 刹那の感傷を振り払う。今は唯、眼下の魔空回廊に光刃を突き立てるのみ。
「命諸共となれば尚更、それもまた脈々と託されてきた大切なものだ。これ以上、螺旋忍軍の手には掛けさせんぞ!」

●シャドウクラッカーの幻影分身
 間断ない光撃が8度、その度に閃光が走り爆炎が轟く。
 立ち込める白煙を透かすように、碧眼を眇めるエリシエル。その表情が不機嫌に曇る。
「さて、長居してられる状況でもなし、さっさと退散しましょうかね」
 魔空回廊破壊成らず――健在の様相に悔しげながらも、ケルベロス達は1箇所に集まった。グラディウスは各自でしっかり仕舞い、早速撤退を図る。
「あっち、かしらネ」
 スマートホンの方位磁石アプリ片手にムジカの指差す方角へ、足を向けるケルベロス達。だが、仲間を先導しようとしたクーゼは、顔を顰めて鞘にグラディウスを叩き込む。
「さぁて、やっぱり、タダじゃあ帰してくれないみたいだねぇ」
 ケルベロス達の前に立ち塞がっる痩せぎすの人影。異形の面は、仮面か素顔か。だが、何より目に付く異質は、肉厚の剣を握る右から生えた二腕だ。
 螺旋忍軍「シャドウクラッカー」――詳細が判然とせぬは、その幻影分身であるからだろう。
 ――――!
 咄嗟に下がろうとしたクーゼに追い縋り、二腕握る剣が呻りを上げる。
「っ!」
 問答無用の一撃に、血飛沫が散る。逸早く相棒へ、シュバルツが自らの影属性をインストールするが、辛うじて傷口が塞がった程度。
 ――――♪
 早速、ウタの歌声と旋律に乗り、地球の青き光がクーゼの前に守護の盾を象る。
「まずはてめぇをぶっ飛ばしてやるぜ。本体が慌てて出て来るくらいにな」
 不敵な宣言と共に、戦の火蓋が切って落とされる。
 ダリルが奏でる「寂寞の調べ」を背景に、軽やかに地を蹴ったエリシエルの脚が流星の軌跡を描く。
「ほな、ぼちぼちやらせてもらうんよ」
 気負う様子も無く光がブレイズクラッシュを繰り出せば、ムジカは鮮麗一蹴。花綻び鳥狙い穿つ、春の優雅な並びに運ばれ残る平和の種の名は、「花鳥(鬼貫)」。
 ユグゴトが「地獄」を注いで鉄塊剣を蹂躙形態に変じる間に、レッドレークは更に踏み込んで赤熊手を振るうが……初手から大器晩成を成すのは、流石に早過ぎたようだ。
 クーゼの刃が空を纏って奔れば、斬撃に身を震わせた螺旋忍軍は空の左手をゆうらりと返す。種も仕掛けもグラビティに仕込み、毒の手妻はユグゴトに爆ぜた。
 顔を顰めたユグゴトの鉄塊剣が、応酬に動く。腕力のみの挑発の一撃は、総ての攻撃を引き受けんとする最初の1歩。
「護り抜こうぜ、地球と地球に宿る沢山の命の輝きを!」
 誇らかに歌うウタは、回復の程をつぶさに観察する。眼力で体力は測れない。それを知ろうとするのは癒し手の『眼』だ。
 防具耐性の兼合いもあろうが、ディフェンダーであるユグゴトを、ウタのヒールは回復しきれていない。そう言えば、クーゼへの一撃も相当に深かった。となれば、敵のポジションは。
「クラッシャー、だな」
 短期決戦の為、クラッシャー3名の布陣だが、敵も負けていない前のめりだ。今回、武器封じの準備は皆無。一方で、ユグゴトは怒りの攻撃を重ねる算段だ。レッドレークも怒りのグラビティは用意しているが、生憎とユグゴトの命中精度とかなりの開きがある。下手すれば数合で1人沈みかねない危うさがある。
「この程度ならまだまだいけるんよ」
 それでも光の言う通り、寧ろ幸いであったかもしれない。スナイパーであるクーゼに足止めの準備はなく、サーヴァント伴う身は厄付けも不得手だ。唯1人、スターゲイザーを使うエリシエルは得意技ながら、敵がキャスターではそう簡単に命中しなかっただろう。
「そうヨ! 仲間全員で帰るんだから」
 ダリルがメタリックバーストを放出する中、ムジカの気咬弾が孤を描いて喰らい付いた。

●手妻は絶えず
「我等の脳髄は蜘蛛の糸。糸は意識を他に伝え、偉大なる想像『ヴィジョン』を此処に現す。観よ。古の存在が我等を従え、永い眠りから――!」
 ユグゴトの言葉が幻影分身をも冒し、強烈な憤慨を齎せば案の定、ニ腕斬りが襲う。中盤以降、専ら彼女が標的だった。
「天地の理、遡及せし」
 時にレッドレークが庇い、ウタとシュバルツがフル回転でヒールを続け、時にダリルがAlbus Alasを以て援護してもジリ貧は否めない。だが、1人潰える前に押し潰す! その一心で、ケルベロス達は攻撃を畳み込む。
「貴様の内に潜む『地獄』を見せてみろ!」
 地獄で赤熱する苛烈な一撃を放つレッドレーク。敵の注意をこちらに向けさせんと、その炎源たる激情も叩き込む。
「このぐらいの事はできるんよ」
 見切りを許さず、多彩な攻撃を浴びせる光。エリシエルはグラインドファイアから、シャドウリッパーを以て更なる痛手を深めんと。
「忍者みたいに器用じゃないけど、倒せれば正義よネ?」
 蹴撃が好みで得手なムジカだが、必要ならば降魔の力を以て、強かに殴りつけるというものだ。
「瞬き、穿てッ! 七の型、瞬華瞬刀ッ!」
 九重流双剣術七の型――神速の斬撃を、同時に魔力で複製、乱座標に配置する事で華の如き斬撃を重ねるクーゼの奥の手。
 もどかしい数合を経て――初めて、にたりと螺旋忍軍が嗤う。漸く敵が守勢に回り、すかさず、ムジカとクーゼの竜爪撃が敵の加護を砕く。
 ビキビキィッ!
 初撃は揮わなかったレッドレークの大器晩成撃が、痩身を捉える。傷口から罅割れ、侵蝕するように凍りつく。「鋼の鬼」と化したダリルが拳で敵の装甲を砕けば、凍気が更なる破壊を生んだ。
「散り乱れ、緋色の花を咲かせ!」
 揺るやかな動きから一転、光の刃が風に散る花びらのように激しく切り刻む。
(「私だけが『なくなれば』好い」)
 ユグゴトはあくまでも、怒りのグラビティを重ね続ける。
「あばよ、地球に抱かれ安らかにな」
 ウタの攻撃も又初めて。その想いを地球の青き光纏う刃に変え、身を捩らせる螺旋忍軍に叩き付ける。
「山辺が神宮石上、神武の御代に給はりし、武御雷の下したる、甕布都神と発したり」
 脱力の状態から一気に最高速までの加速は、軽戦士の真骨頂。
「万理断ち切れ、御霊布津主!」
 二代孫六兼元真打閃く。エリシエルの一撃に、シャドウクラッカーの幻影分身は声もなく掻き消えた。

「三十六計逃げるに如かずってね。さぁ、撤退するよ!」
「了解だな!」
 クーゼの言葉に否やはなく、レッドレークは即応じた。立ってはいるものの1番傷の深いユグゴトを気遣いながら、エリシエルも小走りに。
「命を弄ぶ者に、俺達が負ける訳がない!」
 意気軒昂なウタだが、流石に鎮魂曲を奏でる時間は無い。光も探索したかったが、周囲はまだ殺気立っている。撤退が最優先だ。
(「お前がこれからも殺し続けるというのなら、その前に貴様らを倒して防ぐのみ」)
 今日は駄目でも次こそは。全員に眼を配りながら、ダリルは静かに決意する。
「降下してすぐに帰るだなんてイヤだけど。取り戻せるまで、何度だって来るワ」
(「いつか必ず、その首を狩るよ。それは俺じゃあ無いかもしれないけれど。必ず、必ずだ」)
 ムジカの呟きに、最後に肩越しに投げたクーゼの眼差しは温度の無い酷く冷たいものだった。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。