病魔根絶計画~その心、抱きしめて

作者:澤見夜行

●悪心
 ――憑魔病。
 異性を誘惑する魅力がある男女が掛かりやすく、この病気に掛かると、理性や良心といったものが弱まり、悪徳とされるような行為を行うことに喜びを覚えるようになる。

 天城心がその病院に収容されたのは先月のことだ。
 来年、大学を卒業と同時に幼なじみである倉木亮介との結婚が決まっていた心は、いつしか人が変わったように浮気を繰り返し、そのこと楽しげに笑うようになってしまった。
 様子がおかしいと気づいたときにはもう手遅れだった。
 急いで病院で検査してもらい、その病気――憑魔病であることが発覚したのだ。
 重症患者と認定された心はそのまま病院内の――独房ともいえる個別病棟へと隔離された。
「……どうして……ッ……」
 独房の中をウロウロと歩いては、髪を掻き乱し、血が滲むほどに強く爪を咬む心。
 病気による悪行への欲望が発散できずにいるために、ストレスが溜まっているのだ。
 亮介は悲しげに心を部屋の外から見続ける。
「アアァァ――ッ!」
 頭を掴んで声を荒げる心。
 病気になる前はいつも落ち着いていて、安らぐ、思慮深く優しい女性だった。声を荒げるなんてことはなかったのに。
「心……いつかきっと良くなるから、落ち着いて、な、ゆっくり休もう?」
「うるさい! 亮介にはわからない! あぁ……違う……違うの……うぅ――ッ」
 呻き、顔を歪ませる心は、また落ち着き無く独房の中を歩き始める。
 その姿を見た亮介は、誰かに救いを求めるように、顔を覆い伏せるのだった――。


「今回は、皆さんに病魔を倒してもらいたいのです」
 クーリャ・リリルノア(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0262)は真剣な面持ちで説明を続ける。
「というのもですね、病院の医師やウィッチドクターの努力で、『憑魔病』という病気を根絶する準備が整ったからなのです」
 現在、この病気の患者達が大病院に集められ、病魔との戦闘準備が進められているらしい。
 今回の依頼はその中でも特に強い、『重病患者の病魔』を撃破することとなる。
「今、重病患者の病魔を一体残らず倒すことができれば、この病気は根絶され、もう、新たな患者が現れる事も無くなるそうなのです。
 ――勿論、敗北すれば病気は根絶されず、今後も新たな患者が現れてしまうのです……。ですが、この病気に苦しむ人をなくすため、ぜひ作戦を成功させて欲しいのです!」
 デウスエクスとの戦いに比べれば、決して緊急の依頼という訳ではないようだ。
 だが、クーリャの言うように放っておく訳にはいかないだろう。
 人々の為に悪しき者を討つ。これも番犬の仕事だ。
 続けてクーリャは資料を読み進める。
「病魔は次のような攻撃をしてくるようなのです」
 悪行を囁き催眠状態にする攻撃や、その体を構成する骨爪で貫く攻撃、嘲り笑い自身を回復する力もあるようだ。
「今回は少し特殊なのですが、この病魔への『個別耐性』を得られると、戦闘を有利に運ぶことができるのです」
 クーリャが言うには、この個別耐性は、この病気の患者を看病したり、話し相手になってあげたり、慰問などで元気づける事で、一時的に得られるそうだ。
 この『個別耐性』を得ると「この病魔から受けるダメージが減少する」ので、戦闘を有利に進めることが出来るということだ。
 資料を置いたクーリャが番犬達に向き直る。
「近い人達との関係を壊してしまい、この病気で苦しんでる人が多くいるのです。
 どうか苦しんでる人達を助けてあげて欲しいのです。
 そして、病魔を根絶できるチャンスなのです。確実に撃破しちゃって欲しいのです。
 どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 一礼したクーリャは力強くそう言うと、番犬達を送り出したのだった。


参加者
八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)
鳳・ミコト(レプリカントのウィッチドクター・e00733)
アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)
アルテナ・レドフォード(先天性天然系女子・e19408)
御忌・禊(憂月・e33872)
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)

■リプレイ

 病魔根絶計画において担当することになった天城心と倉木亮介に面会を申し入れ、許可がおりた。番犬達は、計画日当日の午前に二人に出会う。
 まず、二人と一緒に話したのはアルテナ・レドフォード(先天性天然系女子・e19408)だ。
「私達はケルベロスです、そして心さんに巣くう病魔を退治するためにやってきました」
 アルテナの紹介に頭を下げる二人の間は、ぎこちない空気が漂っている。
「……お互い想い合っているのに病魔のせいで上手くいっていないという感じに見えますね。しかも自力で解決する事が出来ないから苦しいのでしょう。よければ今の想いをお話ください、私達で良ければ話を聞きますよ」
 そう言って親身に二人の話を聞くアルテナ。
 二人は少し言いづらそうにしながらも、特に亮介が病気が本当に治るのか心配げに聞いていた。
 心はどこか上の空で、落ち着きなく視線を彷徨わせる。なにか我慢できないという様子が見えるが、気に掛けてアルテナが声を掛けると涙を浮かべ心は訴えた。
「……もう、我慢ができないんです。悪いこと、しないと落ちつかなくて……ダメだって分かっているのに、でも、我慢ができないんです……!」
「辛いでしょうね……」
 亮介に肩を抱かれながらも震えるように縮こまる心は気の毒だとアルテナは思う。
 その後も、心の様子を伺いながら少しばかり言葉を交わすとアルテナは退出する。
 亮介には話があるとして、一緒にでてもらった。
 入れ替わるように外で控えていた五人の番犬達が中へと入っていく。
 外で待機することになる亮介に、二人――御忌・禊(憂月・e33872)と一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)が声をかけた。
「……気を落とさないでください、倉木さんが元気でなくては天城さんが悲しんでしまわれますよ」
「……心は、治るんでしょうか……」
 心配げに亮介は言う。今まで有効な手段もなく、果ては隔離病棟にいれられた事を考えると、今回も駄目なのではないかと疑心暗鬼に落ちる。
「信じて下さい。……病魔は必ず退治してみせます。倉木さんは治ったあとのことを考えてあげて下さい」
 治ったあと。その言葉に亮介はハッと顔をあげる。
 心の病が治ったあと、自分は今まで通り心と接することができるのだろうか? 亮介は自分の心に問いかける。
「倉木さんにしかわからないことだと思います。けれどどうか天城さんが幸せでいられるように考えてあげて下さい」
 憂いを帯びた禊の言葉を聞きながら、亮介は静かに何度も頷いた。
 言葉を繋げるようにアヤメも声を掛ける。
「心さんも、本当は貴方を大切に思ってる。だから余計に苦しいんだと思う」
「そう、かもしれません。いつも心は何かに我慢するように苦しがっていた……」
 思い当たる節があるのか、思案を重ねる亮介の肩をアヤメが軽く叩いた。
「任せといて、絶対に助けるから。だから貴方も心さんを想ってあげてね」
 力強い言葉に、亮介の背が後押しされる。
 自分が支えなければ、誰が心を支えられるというのか。
 犯した罪も、その後悔も、すべて心と共に――。
 亮介は決意を固めた。
 その顔を見た三人は、「絶対に病魔を倒す」と頷き合うのだった。
 ――一方、面会室の中では心と番犬達が会話を始めようとしていた。
 一人になり、更に落ち着きをなくした心が、五人を見る。
 アルテナ同様番犬であることを明かし、「少しお話をしましょう」と切り出した。
 所在なさげに頭をうつむかせ、爪を咬む心の病状は深刻だ。
 話をしながら鳳・ミコト(レプリカントのウィッチドクター・e00733)が持ってきたジェンガを積み上げていく。
「心さんは本が好きだそうですね」
 八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)は会話の弾みに、と心が好きだという本の話を持ち出した。
 ラノベや漫画は読まないと言う心だったが、東西南北の熱心な話に耳を傾ける。
 次第に打ち解けるように会話が広がっていく。心なしか表情に明るさがでてきたように思えた。
「ボクも思春期はサキュバスの体質に悩まされたので他人事じゃありません。心に想う人がいても衝動に抗えないのは辛いですよね」
 自身の体質に悩み苦しんでいた時のことを思い出す東西南北。
 他人事ではない悩み。でもだからこそ改善し克服できるのだと東西南北は言う。
「ありがとうございます……こんな親身になってくれて……あの、とても嬉しかったです。ねぇ、もっとお話聞かせて下さい」
 それは、突然の豹変。
 東西南北へとにじり寄る、病魔に憑かれた者の影。
 人目もはばからず、心は東西南北に迫る。
 いけないと、誰もが思った。すぐさま動いたのはミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)だ。
 東西南北へと伸ばす手を取り、引き寄せる。
「心さん、そんなに悪戯がしたいなら私とどうかな?」
「えっ……でも貴方は女の……」
「性別なんて関係ないさ、可愛い娘ならなおさらね。やりたいことをやる、何も悪いことなんてないさ」
 そういって心の頬から顎のラインを指でなぞる。
 ミスラのその凛とした口調に心の瞳が潤み頬が染まる。
「あぁ……でも駄目です。亮介だっているのに、あぁでもでも……うぅ」
 首をイヤイヤと振るい何かに我慢するように震える心。
 ミスラはそっと抱きしめ頭を撫でる。
「心さん、貴方はやっぱり亮介さんを愛しているんだね。それでも他者へと近づいていってしまうというのは、病魔もそうだけれど、きっと心の底に誰かに愛されたいという寂しさと、自分は本当に愛されているのかという不安があるんじゃないかと思う」
「寂しさと、不安……」
 ミスラの言葉を目を閉じて染み入るように聞く心。
「貴方が本当に愛されたい人は不特定多数の人間ではなく、貴方を傍で支えてきた身近な人物唯一人。そうじゃないかい」
「亮介……」
 ミスラの肩を掴んだままの心は、そっと離れ顔をうつむかせる。
「わかって、わかっているんです……でも、どうにもできない、駄目なんです! 我慢してると、何もかも壊したくなって、あぁ――! もう、いやぁぁ!!」
 頭を抱え、半狂乱になる心。目に付いたものをすべてを壊そうと衝動が突き上げる。
 そして破壊の対象に選ばれたのは、ミコトが積み上げていたジェンガだ。
 振り上げた拳が躊躇なく振り下ろされる。
 薙ぎ払うのではなく、直下に振り下ろされたのだ。
 ジェンガもろとも机に叩きつけられた心の手に血が滲む。
 それでも構わず拳を再度振り上げる心を、アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)が優しく抱き留め止める。
 荒い息が空気を乱すことしばし、心は徐々に落ち着きを取り戻していく。
「――ッ! ご、ごめんなさい……我慢できなくて」
「いいんですよ、ストレス発散にはちょうど良かったでしょう。でも手大丈夫?」
 ミコトが心配そうに訊ねると、その痛みに気づき「痛いです……」と涙を浮かばせる。
 すぐにシア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)が駆け寄って、手を見るとヒールを掛けた。
「今、お辛いですよね」
「……はい」
 ヒールを掛けながらシアが声を掛ける。
 柔らかな光が傷ついた手を癒やしていく。
 どれ程辛いかなんて勿論分かるわけがない。それは病魔に憑かれた者だけが言える言葉だ。
「――ですが、これだけは断言できます。良いですか、貴方の今の状態は病魔の所為なのです」
「病魔……本当に治るんでしょうか」
「ええ、今日、必ず治ります。――私達が治して見せますわ」
 この傷のようにね、と治癒された手を撫でる。
 心を抱き留めていたアイラノレが心の落ち着きを確認し、心から離れて優しく微笑んだ。
「私も婚約中なんです。ふふっ、格好いい人なんですよ」
 身につけたペンダントに触れるアイラノレの指に指輪が見える。
 アイラノレの顔は幸せに満ちていた。自分もそうであったはずなのだと、心は思った。
「心さんのお相手、亮介さんもきっと素敵な方なのでしょう。どんなところを好きになったんです?」
「私は、亮介とは小さい頃から一緒で……」
 幼なじみとして育ち、少しのすれ違いを経験しながらも、家族同然の付き合いの中で育まれた愛。結ばれたその日に一生を共に生きると誓いを立てた。
 亮介との思い出を話ながら、心は両の瞳から大粒の涙を零す。
「うぅ、亮介……」
「きっと愛しているから今が苦しいんですよね。亮介さんとの未来を手にしたいという想い、残っているのが伝わりました」
「心さん、今は辛いでしょうが……アナタは本当に大切なものをまだ失ってない」
 アイラノレと東西南北が言葉を重ねる。
「お互い思い合いすれ違うあなた達をバッドエンドにしちゃいけません」
 顔を覆う心の肩を叩き、顔を上げさせる。
 真っ赤に染まる瞳を、五人はしっかりと見据え決意を送る。
「――大丈夫、必ず我々が治します」
 その言葉がどれ程の支えになったかはわからない。
 けれど、心は涙を拭うと、自分の意思で頭を下げた。
「お願いします」
 その答えは、病魔と戦う心の決意だと番犬達は感じ取った。
 ――そして番犬達は戦いへと備える為にその場を後にした。

●心を侵す病魔
 憑魔病重病患者が集められた室内で、病魔の呼び出しが始まる。
 戦闘準備を整えた番犬達は、固唾を飲んで待機する。
 視線の先には、寝台に寝かされた心がいた。
 そして、緊張の中アイラノレを初めとしたウィッチドクター達が一斉に詠唱、グラビティを迸らせる。
 瞬間、その病魔は姿を現した。
「こ、これが」
「病魔なの――!」
 巨大な頭蓋に節足動物の足を想起させるあばら骨が卵を抱えるように蠢いている。否、卵ではない、あれはウイルスだ。
 現れた病魔に、即座に患者達が避難させられる。
 戦闘の準備は整った、番犬達は武器を構え戦いへと臨む。
 心を、亮介を、二人の未来を繋ぐために。
「いこう――!」
 番犬達が病魔へと飛びかかる。
 実体化した病魔は番犬達を嘲り笑いながら、呪言のように悪行を囁き惑わせる。
 しかし、心の想いに触れた番犬の内六名は薄絹のようなグラビティを纏い、呪言を振り払う。『個別耐性』だ。
 心を――憑魔病に病んでいる人達を救い出す。
 その思いを胸に、番犬達は病魔へと立ち向かう。
 戦いはすぐに番犬達の優勢へと傾いていく。所詮は病魔。実態化してしまえばその戦力は番犬達の比ではない。
 圧倒的優位を保ったまま、番犬達のペースで病魔との戦いは続いた――。
「お前のような悪魔が存在できる場所など、この世のどこにもないと知りなさい――!」
「容赦なんてしませんわっ!」
 アイラノレが『クロッククロス:オーアル』を展開する。守護の十字と共に、地面に浮かび上がる半透明の時計盤が時を刻むと、仲間達の傷を癒やしていく。
 癒やされたシアが一気に病魔へと駆け寄ると、緩やかな弧を描く斬撃で、相手の動きを止めていく。
「心結ぶ二人の未来をお前のようなものに潰えさせやしない!」
「二人の未来は必ず開かれています! いけっ東西南北天下! 病魔を滅却だ!」
 ミスラが『憐れみの賛歌』を紡ぎ、二本の槍を構え病魔へ無数の突きを見舞った。
 東西南北は合わせるように、二重螺旋のケルベロスチェインを放ち不死鳥の如き火柱を生み出すと、病魔に脅威を与えていく。
「……人の心を蝕む悪魔……病であるため怨むことはできません……ですが、ここでその根源を絶ちましょう……」
 禊もまた攻撃へと転ずる。やや戦闘経験の差から命中率に難があったものの、見切られないようにグラビティを駆使することで、足りないものを補っていく。
 様々な状態異常を付与することで、病魔を自由にさせない戦い方が功を奏していた。
 病魔の注意を引きつけ、仲間達を護りながら戦うのはミコトだ。
「リミッター四番を解放。偽装術式展開。虚数領域の呪束制御を開始。――キムラヌート・ラン!」
 呪力場の刃を生成すると、病魔を斬りつけた。その一撃は呪的加護へ干渉し、断ち切る。病魔から怨嗟の声が上がった。
「好きにはさせないよ!」
 アヤメもミコトと同じく仲間を護りながら、攻撃を繰り返していく。
 禊と同じく戦闘経験の差を多様なグラビティを使うことで埋めているアヤメだが、何よりもその笑顔が仲間達の士気を向上させる。
 ムードメーカーとして、この戦い最後まで笑顔で戦いきっていた。
 そして、戦いに終わりが訪れる。
「憑魔病――。ウィッチドクターとして野放しにはできません。これで消えなさい――!」
 疾駆し、病魔へと肉薄したアルテナが神速の突きを放つと、病魔のその巨大な頭蓋を破砕した。
 迸るグラビティの奔流が病魔を包み込むように流れると、一際大きな怨嗟の声を残し、病魔は消え去った。
「お、終わった?」
「ええ、これで憑魔病の退治は完了、ですね」
 その声を合図に、花が咲くような歓声があがる。
 事態を見守っていたウィッチドクター達もまた、喜びの声をあげた。
 憑魔病は、これによって根絶されたのである――。

●その心、抱きしめて
 無事に病魔を退治した番犬達は戦場のヒールを行い後片付けを終わらせる。
 すると、そこに亮介が駆け寄ってきた。
「こ、心は……、病気はもう大丈夫なんですか!?」
「いま確認中ですよ、もうすぐ目を覚ますと思います」
 そういった視線の先には寝台に横になっている心がいた。
 ウィッチドクター達が事後の確認のために忙しそうに計器を操作している。
「倒して終わり、じゃあ済まないのが難しい所だね」
「ええ、でもきっと大丈夫ですよ」
 少し離れた所で亮介と共に番犬達はその時を待った。
 そして、うっすらとその瞳が開いていく。
 気がついたように心は目を覚ますと、誰かを探すように周囲を見渡し、そして目があった。
 ウィッチドクターの制止を振り切り、駆け寄る心。その姿を見た亮介もまた、心へと駆け寄り肩を抱く。
「二人とも――」
「……二人を見守りましょう」
 シアが駆け寄ろうとしたところをアルテナが止める。
 これは二人の問題だ。二人で乗り越えるしかない。
 アルテナの意見に番犬達は暖かく見守ることを選択した。
「りょ……亮介、ごめんなさい、私、私……」
 心の瞳から涙がこぼれ落ちる。その涙を亮介はそっと拭った。
「心、いいんだ、もう病気は治ったんだから……、一杯話したいことがあるんだ、これまでの事、これから先の事、……いっぱい話そう」
 亮介の言葉に心の瞳は更に涙で溢れる。
 拭うことのできない罪を後悔し涙する心を亮介は優しく抱きしめた。
「亮介……亮介ぇ……」
「心……もう離れないでくれ、ずっと一緒にいてくれ」
 心の罪も後悔も消えることはないだろう。
 けれど、罪も後悔も、すべて二人でその心に抱きしめて、きっと二人は幸せになるはずだ。
 二人を見守る番犬達は、成し遂げた達成感と共に、暖かいものを感じながらその場を後にした――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月8日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
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