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「……サトル……どうして、こんな事に……」
隔離病棟……その独房のような閉ざされた部屋を覗き込みながら、大学生くらいの女性が深々と溜息をつく。
「ウーッッ! グゥッッーー!!」
彼女の瞳に映るのは、ベッドの上で目を血走らせながら、絶えず獣の如き呻きを上げる恋人……サトルの姿であった。
カツカツと、涙を浮かべた女性の耳に、足音。女性が振り返ると、サトルの両親の姿があった。女性とサトルは、隣家に暮らす幼馴染みでもある。両親とも当然面識があり、良好な関係を築いていた。
「チサちゃんは?」
女性が問いかけると、両親が俯き首を振る。女性も、深く肩を落とした。
その落胆は、サトルが病棟へ収容される原因となった行動に起因していた。サトルは、両親や女性の目の前で、実の妹であるチサに襲い掛かったのである。……興奮も露わに。それ以来、チサはショックで寝込んでしまっていた。
「……あなたはチサちゃんの事を本当に大事に思ってた。毎年誕生日もクリスマスもプレゼントをあげてたよね? でも、その感情は純粋な家族愛だって、私は知ってるよ? だから、あれも全部病気のせいなんだよね?」
「そ、そうだぞ! すぐには上手くいかないかもしれないが、チサとも元通りになれるよう、一緒に頑張ろう!」
女性と父親が、病室の中へと呼びかける。呼びかける度に、サトルは耐えるように頭を掻きむしった。だが、強いストレスを抱えて、今にも爆発しそうなサトルは――。
「うるせぇ! 黙ってろ!!」
そんな、普段の穏やかな様子からは想像もできない程言葉を荒げ、女性と両親を黙らせるのであった。
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「皆さんにお願いがあります。病魔を駆逐する作戦に、手を貸して頂けませんか?」
山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が、忙しい中集まってくれた有志のケルベロス達にそう切り出す。
「実は、病院のお医者様、ならびにウィッチドクター様の努力の結果、『憑魔病』という病魔根絶の準備が整ったのです。現在、『憑魔病』の影響下にある患者さん達が、とある大病院に集められ、治療の時を待っています」
集められた患者には、軽傷な者もいれば、重病人もいる。皆には、その中でも重病患者の救済にあたってもらい、病魔を倒してもらいたい。
「重病患者に巣くう病魔を一体残らず撃破することができれば、この病気は根絶される見通しです。もう、新たな患者が出ることはなくなるのです」
だが、勿論敗北……根絶に失敗すれば、今後も新たな患者が出てきてしまう。
「普段皆さんが行っている戦いに比べれば、緊急度という点では、確かに劣ります。ですが、病魔が原因で発生した様々な人の心の傷を思えば、決して看過できる問題ではないと思うのです。よろしければ、病気に苦しむ人、その身近な人のためにも、ぜひ作戦を成功させたいのです」
桔梗は次いで、病魔の戦闘力について話し始める。
「病魔は、被害に合った患者さんたちにそうしているように、皆さんに取り付いては真偽を問わない内容を……それも、決して気分のよくはないならない事をブツブツと耳元で永遠と囁いてきたり、嘲り笑ってきたりと、皆さんを不快な気持ちにさせる事にかけては天下一品です」
イメージとしては、悪魔的な性質を宿すと考えてもいいだろう。
「ただ、戦闘を有利に運べるかもしれない手段があります。それは、病魔への『個別耐性』といって、患者さんの看病をしたり、根気よく話し相手になって元気づけることで、一時的に得られます。これを得ると、「この病魔から受けるダメージが減少する」ので、試してみてください」
桔梗は資料を仕舞い、ケルベロス達に頭を下げた。
「この機会を逃せば、次に憑魔病を根絶するチャンスがいつ訪れるか分かりません。苦しんでいる方々のためにも、根絶にお力をお貸し下さい!」
参加者 | |
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久遠・翔(銀の輪舞・e00222) |
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484) |
エルボレアス・ベアルカーティス(死地の蒼華・e01268) |
ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294) |
結束・晶那(真宵星・e10804) |
テトラ・カルテット(碧い小鬼・e17772) |
ファルシア・フェムト(ヤングアットハート・e19903) |
アデルハイト・マイレン(お前のようなアリスが居るか・e39700) |
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「病魔というのは、本当に碌でもないな」
「……人の心をこうも歪めてしまって……本当に許せないっすよね」
大病院の廊下を、エルボレアス・ベアルカーティス(死地の蒼華・e01268)と久遠・翔(銀の輪舞・e00222)が、怒りも露わに歩いていた。
「うちにも妹がおるから、気持ちは分かる。妹との関係はともかく、うちにも碌に笑えん時期があったし」
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)が、苦々しく言った。
「ここね。皆、準備はいいかしら?」
やがて独房のような隔離区画に到着する。その寒々しい雰囲気に眉根を寄せながら、ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)が『サトル』と書かれたプレートを見上げる。
そして――。
「サトルさんのご両親と恋人さんですよね? 出来れば、いろいろと話しを聞きたいのですが、いいですか?」
「え、ええ! それはもちろん」
「息子が元に戻るのなら、何でもお答えします」
結束・晶那(真宵星・e10804)が、病室の前で沈痛な面持ちを浮かべる関係者に声をかける。恋人が頷き、父親が何度も頷く。その隣で、母親は幾度も涙を拭っていた。
(禁断の愛……その響きは嫌いじゃないが。やっぱりこの雰囲気を体感すると、断じて『愛』なんて呼べたものじゃないみたいだな)
病棟全体に漂う悲惨な空気に触れ、アデルハイト・マイレン(お前のようなアリスが居るか・e39700)が、サトルを励まそうと気持ちを新たにする。
「サトルくんも、憑魔病なんかとは早くサヨナラしたいはずだよ」
そして、ファルシア・フェムト(ヤングアットハート・e19903)が、厳重に施錠された病室のドアを開けようと、受付で受け取った鍵で解錠を。
「待った! ほらほら、皆表情硬いって! ネガティブにはポジティブが最高のお薬だよー! 特に、エルボレアスくん! 笑って笑って♪」
だが、完全に解錠される数瞬前に、テトラ・カルテット(碧い小鬼・e17772)の明るい声が場を照らす。名前を挙げられたエルボレアスが、「表情が硬いのはいつも通りだ」と返しつつ、僅かに雰囲気を柔らかく。
それを確認したテトラは、
「あたしの笑顔を分けに来たよ、やはー☆」
満面の笑みと共に病室の中へと踏み込むのだった。
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「邪魔するでー?」
「っ!? 誰だ、入ってくるなよ!」
病室に、テトラを先頭に瀬理達ケルベロスが踏み込むと、頭を抱えて唸っていたサトルが目を見開いて動揺を示した。
「……俺が何をしたか聞いているだろう? 俺は実の妹を……チサを襲おうとした最低で死んだ方がいい屑なんだ……。今だって、目の前にチサがいれば、何をするか分からない男なんだぞ?」
そして、自虐的に笑う。そうすれば、ケルベロス達が嫌悪を浮かべ、病室から出て行くと思ったのだろう。
「確かにチサちゃんはあなたを夢中にさせた。それは、普段のあなたからすれば、想像もできない程に忌むべきことなんでしょうね?」
だが、ケルベロス達にサトルに対する負の感情など欠片もない。その証拠に、ズミネがサトルの二の腕に手を添え、語りかける。
「後悔と自己嫌悪に病んでいるのでしょう? でもね、あなたがそう思うのは、その感情の出所が、『あなた自身の願望ではない』という証なの。セクシャルな欲求は誰にでもあるものだけれど、あなたの欲求はそれらとはまったくの無関係なのよ?」
その原因こそが、『憑魔病』という魔病だと、ズミネが丁寧に説明する。
「そうなんだ。そこが重要なんだ。サトル君の感情は、病魔に歪まされた結果なんだよ。我々ケルベロスなら、大体のモノは直せるし治せるし守れるんだ」
重ねて、アデルハイトもそう告げた。
「そうっすよ! サトルさんが自分を卑下するのは、妹を大事にしているからっすよね? 自分を許せない……許してはいけないという強迫観念に囚われているんっすよ! 病魔さえ追い出せれば、チサさんへの想いだって――」
次いで、翔が優しく語りかけた。しかし――。
「そんなはずがないだろ!? もう遅いんだよ! チサを……チサをあんなに泣かせてしまって!!」
興奮したサトルは、抱えたストレスのままに翔の首根っこを掴んだ。翔は抵抗しない。
(恋人さんとご家族に聞いた通り、優しい人なんだね。暴力を振るう姿なんて、今までに見た事もないって……)
だが、この状況に至っても、サトルは暴力を振るわなかった。サトルの本質は、晶夜と同じ素敵な紳士なのだろうと、晶那は思う。
「チサさんは生きているし、心も壊れていないじゃないっすか。時間はかかるかもしれないっすけど……俺のように取り返しのつかない訳じゃないっす……」
解放された翔が、掴まれた部位の皺を伸ばしながら笑う。
「……っ!」
その表情があまりにも寂しくて、サトルは二の句が告げなくなる。
「さぁ、サトルくんは横になって。シーツも交換しておいたから、きっと気持ちがいいよ」
ファルシアは、サトルの肩を叩くと、清潔なベットに座らせる。サトルも、一度激昂して少し落ち着いていた。
「ご両親方にはダメだけど、あたしになら何してもいいよん? あたしたちは強いからねんっ♪ それから、何度も言うけど、サトルくんは悪くない、全部意地の悪い病気の仕業! 彼女さんもご両親もそれは分かってる。……もちろん、妹さんも心の奥では……ね?」
「落ち着いて、サトル君は一人じゃないんだ」
テトラとアデルハイトが、両側からサトルを落ち着かせようと抱擁する。恋人の前での抱擁に、瀬理が「ほんまごめんな!」と、手を合わせてフォロー。苦笑する彼女へ、アデルハイトは悪びれる様子もなく、口の動きだけで「薄着ですまない。だけど、サトル君の事は任せろ」と伝え、ウインクする。
「自慢の妹さんなんですね?」
サトルの苦悩している様からも、それは明か。サトルの語る言葉に集中し、相づちをうっていた晶那が口を開く。
「貴方の愛情が純粋なものだったという事……それは、彼女さんやご両親から聞いた話からも、誰の目にも分かります。今年の妹さんへの誕生日プレゼント……彼女さんと一緒に2時間近く悩んで買ったものだって聞きましたよ?」
晶那の言葉に、死んだ魚のようだったサトルの瞳が潤んだ。だが――。
「っっ!? 違う! そんなつもりじゃ! ああ、ごめっ……ごめんっチサ!」
唐突にサトルは、頭を抱えて呻き出す。病魔が、サトルに悪魔の囁きを行っているのだ!
「ほら、うちの目見い! ほんで、妹の顔を……笑顔を思い浮かべるんや!」
暴れるサトルの身体を押さえ、瀬理が真正面から瞳を覗き込む。
「妹へのプレゼントを買った時の気持ち! 笑顔を見守っていた時の自分の心の有り様を思い出すんや! 忘れたなんて言わせへんで!?」
「だけど、だけどだけどっ! チサに、またあの時の表情を浮かべられたら、俺は!!」
サトルの脳裏に蘇る、チサの恐怖の表情。それでも、瀬理は、
「だからこそ、あんたが普段通りにまず戻るんや! 守りは捨てろ、怯えは噛みちぎれ! 妹を家族として愛してるんやろ?」
瀬理が笑う。覚悟を込めて。それは、まさしく愛。仮に瀬理が妹に拒絶されたとして、瀬理が妹を嫌いになる事などないと断言できた。
「何にせよ、病魔を滅ぼそう。それから、ゆっくりと家族達と話し合ってみるといい。話しを聞いていても、君は家族との仲を直したくないなんて、思っていないはずだ。安心しろ、この場にいる者すべてが君の味方で、君を信じている」
「…………」
エルボレアスの言葉に、サトルはベッドに横たわった。それでも、未だ迷うように視線を彷徨わせると、穏やかなファルシアと目が合う。
「私には推し測る事しかできないけど……今の君は言葉も態度も荒くて、とても苦しそうだよ」
「そう……だろうな」
サトルとしても、今の自分は信じられない。そして、死にたくなる程苦しくて、誰かに助けて欲しかった。
「そんな時は、誰かに助けを求めると良いんだ。今までの君とこれからの君のために、私達で頑張ってみるから」
サトルの心情を察し、ファルシアが言うと、
「助かるのか?」
藁にも縋るように、サトルが問いかけた。
「無論だ」
エルボレアスが力強く頷く。
「何も憂う必要はない、任せてくれ」
アデルハイトが、ソッとサトルの涙を拭った。
「大丈夫大丈夫っ、おばあちゃんに任せなさいな☆」
テトラの物言いには、若干の疑問を感じたようだが、サトルが安堵したように目を瞑る。
「心を委ねなさい……良い?」
ズミネが、サトルの胸の前に手を掲げる。
「病魔――心に巣くう黒い感情に身を任せる理由なんて、サトルさん、あなたにはないでしょう?」
サトルの額を大粒の汗が流れた。最後の抵抗を試みる病魔と、必至に戦っているのだ。ズミネは、病魔と戦う今日限り、9人目の番犬に歓迎を示すように頬笑むと、口を開いた。
――病魔召喚!
●
降魔の力を纏ったエルボレアスの、苛立ちのすべてを込めた渾身の拳と共に開幕した戦闘は、終始ケルベロス優勢で進んでいた。
(にぃさまのためにも、ボクが頑張らないとっ!)
序盤で晶那を庇って倒れた晶夜を思い、唇を噛みながらも晶那はオーラの弾丸を放つ。オーラは、邪悪な微笑を浮かべた憑魔病へと喰らいついた。守りは、サトルから授かった『個別耐性』がある。
「晶那さん、改めてありがとうねぇ。ストレッチャーでサトルくんを避難させる準備もしてくれてたんだねぇ」
ファルシアの言うように、戦闘以外の部分での貢献も大きかった。
「疾走れ逃走れはしれ、妹愛を舐めとったらあかんでー!?」
瀬理が、本能のままに憑魔病へ拳を突き立てる。
(いずれお前の元から、愛する妹が奪われるやも知れんぞ? その時、お前はどうする? ジワジワと、憎しみが沸き上がってくるだろう?)
その際、触れ合った拳を通じて、憑魔病の悪魔の囁きが瀬理を包む。だが……。
「なんやそれ、相手にならんな。今更、その程度の事で悩むとでも?」
瀬理は心に浸食してくる囁きを、笑みを浮かべて噛み殺した。
「そしたら、そいつもうちの弟になるだけや。家族が増えてええやろ、羨ましいんか? ――お姉ちゃんの愛を舐めんな!」
そして、勝ち誇るように獲物を掲げた。
「所詮あなたにできる事なんて、そうやって黒い感情を撒き散らす程度の事。でもね、私達に簡単にそれが通用するとは思わない事ね?」
(ギャヒ!)
ズミネの音速の拳が、憑魔病の守護を破壊する。それにより、憑魔病の不快な囀りが止む。
「そういう事だ。サトル君が家族と話しをする邪魔になる、早々に消えてもらおう」
とはいえ、エルボレアスは初撃で腹立たしさの大半は晴らしている。後は仲間に任せ、メディックとしての役割を果たすたけだ。エルボレアスは、晶夜に変わって晶那を庇うテトラへ、幻影を付与させる。
「援護するっす!」
飛び出した翔は、血染めの刃に雷を纏わせ、憑魔病を叩き斬る。破剣を帯びた彼と、ジャマーであるズミネ、ファルシアの攻撃により、憑魔病の耐性はほぼ完全に無効化されている。
(ガアアァ!)
憑魔病が、巨大な爪で襲い掛かってくる。
「出でよ美少女親衛隊! 守って散って、名誉を誇ってね☆」
それを、散布されたテトラの紙兵が阻んだ。さらに、耐性を十分に付与したと判断したエチルが、逆に爪で憑魔病を引っ掻くと、揃ってドヤ顔で「どう?!」と仲間を振り返る。
「「「おーすごいすごい、可愛い」」」
戦闘中に何度か繰り返された行動に、仲間達の反応も棒読みでだんだんと適当なものに。それでも、テトラとエチルは「可愛さは強さ!」と、満足そうであった。
(……何故だ、何故囁きに耳を傾けん!)
憑魔病は、懲りずにエルボレアスに取り付く。エルボレアスは不快そうに眉根を寄せるが、ジャマーの耐性によって影響は少ないし、エルボレアス自身でも容易に処理が可能だ。
「醜悪だね。心を食い物にする病の具現化なら是非もないか」
だが、最後まで醜悪な有様に、ファルシアが冷たく目を細めると、ウイルスカプセルを投射。憑魔病の嘲りをあらかじめ牽制し、逃げ道を塞いだ。
「安全地帯から好き勝手苛み自滅を誘うのは、私の好みの攻め手だが」
充分な回復量が得られない憑魔病に、アデルハイトが告げる。
「それは『力ある敵に対して』という条件付きだ。無辜の少年を傷つけるお前のやり方を私は好かないし、ゆえそのような強者に対する戦術はお前には不釣り合いだ」
――だから、堂々と、逃げも隠れもせずにそっくりそのまま返してやる。……心の底から侮る事を憑魔病に相応しい手向けとして、アデルハイトの銀の地獄という名の祝福が降りかかる。絶え間なく憑魔病を襲う幻覚は、
「親切ね、ヒールしてくれるなんて?」
ズミネに癒やしが降りかかるという皮肉な結末をもたらした。
「さて、俺もいろいろと嫌な事を思い出したっすからね。その清算をしてもらうっすよ?」
翔の脳裏に、姉と最後の瞬間の手触りが蘇る。全身に纏わり付く業を、家族で苦しむサトルを救う事で少しでもそそぐために!
「砕け、全てを!」
すべてをかなぐり捨てるように放たれた翔の全力の一撃は、憑魔病を跡形もなく葬りさるのであった。
●
「サトル君、キミは確かにデウスエクスに並ぶ脅威と戦い、打ち勝ったんだ」
「本物の愛は、必ず妹さんに伝わります。どうか妹さんと、真っ直ぐに向き合ってあげてください」
「……皆さん、本当にありがとう!」
サトルは、憑きものが落ちたかのように穏やかな表情で、アデルハイト、晶那達ケルベロスに感謝を告げていた。
「君には家族も恋人もまだ近くに居るんだから、どんなに辛くても、その事を忘れちゃいけないよ?」
「そうそう! 家族の絆は、決して消えないものなのよ! でも、もし挫けそうになったら、この美少女なおばあちゃんに甘えに来てもいいのよん☆」
ファルシアがホッと胸を撫で下ろすと、テトラが胸をドンッ! と叩いてみせる。
「……家族って、いいものっすね」
翔の目の前で、サトル、両親、恋人が、それぞれ喜びの涙を浮かべて、山を乗り越える事を誓っている。その姿に、翔はしみじみとそう思い、拳を強く強く握る。
「さぁて!」
と、瀬理が立ち上がり、手をひらひらさせながら病室を出て行こうとする。
「どうした? ――などと、聞くまでもなかったな」
「そうね、妹さんの扱いという意味では、瀬理さんの右に出る者はいないものね?」
エルボレアスとズミネが、フッと微笑。不思議そうなサトルに、瀬理は……。
「チサちゃんに会ってくるわ。お兄ちゃんは正気に戻ったで! ってな。妹愛と取り扱いはあんたに負けるつもりないから、大船に乗ったつもりで待っとき!」
ニカッと瀬理が笑う。
「……信じます」
その後ろ姿と、病室で温かい声をかけてくれるケルベロスに、サトルは心の底からの感謝と信頼を。
作者:ハル |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月8日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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