女子会にはオーク自慢の触手サービスを?!

作者:ハル


「カンパーイ!」
 モクモクと沸き上がる温泉の湯気の中、カチンと、傾けられたグラスが軽く打ち付けられる。そして、女性達は並々と注がれたビールをゴクゴクと、喉を鳴らしながら一気に飲み干した。
「あ゛ぁ゛~~、最高ッッ!」
 下品に、女性達は口元の泡を指先で拭う。
「お酒が美味しいのは勿論だけど、このシチュエーションが最高よね!」
 温泉に浸かるのは、10名の女性であった。年の頃は、25歳。元は同じ良家子女の集まる女子校出身のメンバーである。……最も、二十代も中盤に差し掛かると、良家子女のお嬢様であろうとも、世間慣れして多少スレてしまったようだが。
「まさか、温泉宿を貸し切るなんてね。一体いくらしたのやら?」
 長い黒髪を纏めた女性が、ボディーソープで身体を洗う女性に視線を向ける。向けられた視線に、身体を洗う女性は曖昧な笑顔を浮かべ、「内緒」とばかりに唇の前で指を一本立てる。そんな仕草に、仲間内から「相変わらずあんたは女相手でもあざといわね……」そんな呆れ混じりの嘆息が漏れた。
「でも、女の子にしか興味ないって噂が立ってたあんたが、まさか結婚して子供までいるなんて……」
 時の流れは恐ろしい。女性の一人が、身震いした。
 そうして、程よくアルコールが回った所で、話題がより直接的な男関係に及びだした時――。
「女子会に触手の出張サービスだブヒィ!!」
 突如、オークが出現し、温泉は混乱に満たされた。
「な、ななななっ! ちょっと、これぇっ、洒落になんなっ……ああっ!?」
 荒れ狂う数え切れない触手。中でも、微細な針のついた触手で一突きされた女性は、焦点の定まらない虚ろな視点で身体をクネクネと身悶えさせている。
「……あ゛、……あ゛! なに、これぇ、とびそうなのにっ……、とべにゃいぃ……!?」
「分かるブヒよぉ? 身体は燃えるように熱いのに、決して一線は越えられないブヒよねぇ? 毒を中和するか、こっちの特殊な液体を纏った触手で嬲られるまで、ずっとそのままブヒ」
 背中に三種の触手を掲げ、ニヤニヤとオークが笑う。永遠に高ぶり続ける身体を持て余し、我慢の限界に達した女性達自らが求めるまで、その笑みは消えることはなかった。


「最近、急に肌寒くなってきましたね。つい先日までは、私もシャワーで済ませていたのですが、肩まで浸かるお湯が恋しい季節になりました。同じ事を思ったのか、とある女子校出身の仲の良い女性達が温泉宿で女子会を開き、オークに襲われるという事件が予知されました」
 お馴染みのオーク、温泉という鉄板の組み合わせに、山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)の口から乾いた笑みが漏れた。
「ちなみに、この事件発生を懸念して報告してくださったのは、綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)さんです」
 その当のぽてとも、「またなの!」そう言いたげに肩を竦めていた。
「オークが襲撃した温泉宿は、女性達に貸し切られていて、女性達以外には宿の従業員の方しかおられないようです。ですので、皆さんに助け出して頂きたい女性達は、きっちり10名となっております」
 年齢は25歳。職業はOLから、家事手伝い、専業主婦まで様々だ。
「早急に助けたい所ですが、事前避難をしてしまうと、オークの標的が別に移ってしまう懸念があるんです。予知が変わってしまうと、事件を防げなくなってしまいますので、避難はオーク達が現れた後……という事になってしまいます」
 避難が完了できないと、戦闘中にも女性達がオークに弄ばれてしまう懸念がある。できるだけ避難させてあげて欲しい。
「オークの数は12体。3本の触手を持っていて、それぞれ違う能力を宿しているようです。たとえば、毒針のついた触手と、その効果を増幅させる触手などですね。現場の広さは十分ですが、サウナなどの逃げ場のない空間が中にはあるので、そこへ追い込まれる事態には注意してください」
 特殊な個体や、飛び抜けて強い個体は確認されていない。至って平均的なオークと考えて大丈夫だろう。
「他のお客さんがいないという事ですので、避難時にタオルや着替えを渡すのは最小限で大丈夫でしょう。温泉の外で待機する女将さんなどの、女性従業員の手を借りることも可能です」
 ただ、オークの攻撃には、ある程度の正確性がある。
「引きつけは、しっかりと行ってください。私の元へと入っている情報によりますと……うなじを隠すのは厳禁! との事です。また、ゲスな性格をしているようで、男性の方との恋仲を演じたりするのも、効果があるようです」
 そこまで説明を終えた桔梗は、疲れたように深く溜息をつく。
「説明をする私がこれだけの疲労感を覚えるのですから、ケルベロスの皆様の心情は察するに余り有りますね。ですが、狙われた女性達に非はありません。助けてあげてください」


参加者
癒伽・ゆゆこ(湯治杜の人形巫女・e00730)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)
エレノア・エリュトゥラー(渡り鳥・e15414)
キーア・フラム(黒炎竜・e27514)
ピクシー・ガリトラップ(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e41032)
エリナ・バーンシュタイン(内気な元事務員・e41066)
雪白・黒那(彷徨える紫焔の刃狼・e41072)

■リプレイ


「キープアウトテープ、きっちり張り終わりましたですっ!」
 脱衣所のドアが開かれ、顔を見せたのはエレノア・エリュトゥラー(渡り鳥・e15414)。
「お疲れ様です」
 逃走の進路確保を終え敬礼するエレノアを、濡れたハンドタオルを扇情的に巻き付けた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が労う。
「慣れない着物で行動するのは大変ね」
 続いて脱衣所に、艶やかな漆黒の長髪をアップにしたキーア・フラム(黒炎竜・e27514)が入ってくる。
「それでは、私はシャンプーの補充に行ってきますね?」
 その隣には、エリナ・バーンシュタイン(内気な元事務員・e41066)の姿もあった。詳しくは事情は知らされていないものの、事前に女将さんや女性従業員の手を借りられるという話しもあったように、潜入は容易であったし、無論キーアのプラチナチケットも一役買っている。
(温泉というのは、ゆっくり浸かって楽しむものであって、でうすえくすの為のものではないのじゃ!)
 着々と進む準備を、狼に変身した雪白・黒那(彷徨える紫焔の刃狼・e41072)が、着替え籠の中で丸まって見守る。温泉旅行を趣味とする黒那にとって、それを穢すオークは許せない存在なのだ。

「サウナ故障中なんだ、残念だね」
「ごめんね~、サービスの舟盛で我慢して欲しいな。なんなら、背中も流しちゃうよ?」
 綺羅星・ぽてと(耳が弱い・e13821)の準備したビールをグラスに注ぎながら、仲居の着物を借りたピクシー・ガリトラップ(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e41032)が手を合わせる。他ならぬ彼女こそが、サウナに『故障中』との張り紙を貼った張本人。
「入浴時の泥酔は危険ですので、飲み過ぎには注意してくださいね?」
「「「は~い!」」」
 ぽてとはそう注意するが、女性達は聞く耳持たぬとビールを呷った。ぽてとは苦笑を浮かべると、隠密気流で隠れている癒伽・ゆゆこ(湯治杜の人形巫女・e00730)の方へ視線をやる。
(サ、サウナへ誘導……でいいんですよね?)
 アイコンタクトで、ゆゆこは最終確認をピクシーとぽてとに取った。すると、二人は頷き、ゆゆこは身体に纏うバスタオルの裾をぎゅっと握る。
 ――その時!
「女子会に触手の出張サービスだブヒィ!!」
 繋がった回廊から、12体ものオークが出現した。
「ど、どういう事!?」
 混乱する女性達。
「私達はケルベロスよ、ここは任せて逃げて!」
 そんな彼女達を守るため、ぽてとが早速襲いかかろうとしていたオークに、飛び蹴りで先制を加える。
「……え、ええ……?」
 だが、酔いが回っている女性達は、突然の事態にすぐには対応できない。
「脱衣所の方へ逃げて下さい! そちらに着替えを用意してありますので」
 そのため、「ソデノシタ」から武器を取り出したエリナが、重ねて告げる。邪魔を寄せ付けないその声は、混乱状態にある女性達の耳にも、エリナの声を届けた。
「まずはお着替えしてからですよっ! こっちこっちです! お怪我はございませんかっ? オリーヴも、皆さんを助けてあげて!」
 そして、ようやく慌てて避難を始めた女性達。ハート光線を放つオリーヴに指示を出しながら、エレノアが協力を仰いだ女性従業員と共に、着替えやタオルを渡していく。
「あ゛ぃ……なにぃ、これ゛っ……っぅ!?」
 だが、酔いの影響か、避難は迅速には進まない。何人かの女性が、オークの毒の影響を受け、身悶えている。
「入り口付近はわしが確保するのじゃ! エレノア……お主には、毒の影響を受けた者らを任せるのじゃ!」
 オークが固まっていることをいい事に、黒那が居合いの構えを取る。
「儂の刃は軌跡すら残さん! 瞬刃……無跡ッ!」
 放たれた斬撃は、抜刀の瞬間すら捉えること能わず。オーク達は、いつ斬られたかすら理解できぬままに後退を余儀なくされた。
「皆さん大丈夫ですっ!? エリナさん!」
「ええ!」
 その隙に、女性達にエレノアは手を貸し、エリナが急いで薬液の雨を込めた回復弾を放って回る。
「し、触手いっぱい……なのです! で、でも私がやらないと! こっちなのですよ!」
 これ以上の被害を抑えるため、オークの前に身を晒したゆゆこが、オークをサウナへ誘導しようと試みる。
「ああっ!? に、逃げ道がないのです……!? ――って、着いてきてないんだよ!?」
 だが、追い詰められた演技をしたはいいものの、ゆゆこの幼さゆえか、肝心のオークの反応が薄い。
「お客様に触るな!」
「あら、私には興味はないのかしら?」
 しかし、誘導を試みたのが、ゆゆこだけではなかったのが幸い。桶や石鹸を投げつけるピクシーと、着物の胸元を開けさせたキーアの後を、半数のオークがホイホイとついてくる。
「黒髪……着物……白い肌……うなじ! まさに最高の組み合わせブヒィ!」
 特にキーアはモテモテだ。そして、紆余曲折あったものの、雷の壁と聖なる光に包まれたサウナ内で、なんとかオークの包囲に成功したのであった。


「……オークも色んな趣向を凝らしてきますね――っっ゛~~!!」
 温泉側で、女性達の庇いに入った無抵抗な真理の身体。プライド・ワンも炎を纏った突撃でオークを牽制してくれるも、それでもオークは数も多く、薄手のハンドタオルの上から舐めるように触手が這う。チクリとした軽い痛みの後、猛烈な熱が真理の身体を支配した。
「本当よね。趣向っていうなら、ちくわぶとかにしときなさいよ! でも――」
 ぽてとの、強い視線と言葉が、オークを貫く。
「私が相手よ、触手なんかに負けたりはしないっ!」

「ひゃっ、や、あぁ……ふあぁんっ……こ、こらぁ……カイト君だって、まだ……なんだからっ!」
「カイト……そのカイトというのは、もしかして彼氏ブヒかぁ?」
 強く出たはいいものの、ぽてとはいいように翻弄されていた。熱く滾る体内から溢れる欲望が、触手の微細な動きで刺激される。
「くっ!」
 特に谷間から侵入した触手に敏感になった乳房を弄られると、思わず嬌声が喉元まで出かかって、ぽてとは慌てて歯を噛みしめる。恋人らしき名前がぽてとの口から漏れると、自由なる者のオーラでは庇いきれない程、オークの興奮度が急上昇。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「そろそろ、お願いしたらどうブヒ? ヒヒヒッ!」
 オークを喜ばせるという意味では、オークの攻撃という名の愛撫から仲間を庇い、自身に向けられたソレもほぼ無抵抗に受け続けた真理は、反応が顕著。さんざん焦らされ、甘い吐息が漏れる。
(……頭が、蕩けそうです。っ、私は何をしているのでしょうか……っ)
 無意識の内に、真理の手が下腹部に伸びかける。そんな自分の状況を冷静に自制しようとするが。
「鏡を見てみるブヒよ?」
「……こんな、ありえないです……」
 オークに言われ、真理は浴室内のある鏡を見た。そこに映った真理は、頰を赤らめ、発情しきった雌の顔で、物欲しそうにオークの触手を見つめている。
「お主達、しっかりするのじゃ! ――瞬刃・空伝!」
 黒那の空の霊力を帯びた鞘刀・黒重が、ぽてとの攻撃で弱っていたオークを肉塊に変える。しかし、いくらオークの興味をそそらぬ年齢、見た目だとしても、積極的に攻撃を仕掛ける黒那が無視されるはずもない。
「避難さえ終われば、確りと殲滅してくれるのじゃ! し、しかし、この高ぶりは……! んっくぅ……!」
 燃え盛る髪と尻尾が、黒那の身震いと共に小さく揺れた。
「エレノアさんが戻ってくるまでの辛抱です――っ、私に触らないでください!」
 真理に、エリナが緊急手術を施した。その際も、触手はエリナの下着の上から肢体を飽きることなく弄っている。
「っ……あっ、んん! ふぁっ……いぁっ! だめぇ、です、ひっ! なんで、ですかぁ!?」
 しかし、いくら高ぶっても、エリナの身体は満たされることはない。何故なら、ぽてと、真理、黒那によって、快楽の解放を誘発する触手が止められているからだ。そのため、エリナはいつまで経っても満足に至ることができず、ひたすらに高められ続けていた。

 一方、サウナルームでは。
「そんな粗末な触手……私には効かな――ああっ!」
 予想通り、オークにとっての酒池肉林が完成していた。
「気持ちいいなら、気持ちいいといえばいいブヒ。そうすれば、もっとヨくしてあげるブヒ!」
「私は絶対、気持ち良いのに、負けたり……なんてぇ、毒に、なんてぇ……しない……のよぉ……あっ、あ゛っっ……そこはぁ!」
「バッチリ効いてるし、負けてるブヒ!」
 キキョウが仲間のオークを締め上げて絶命に至らしめた事など知ったことかとばかりに、キーアのうなじにオークの触手針が張り付く。一瞬で高ぶったキーアの身体に、別のオークが悦楽を送り込むと、彼女の身体は面白いように跳ね回った。
「あっちの女と違って、ツルペタブヒねぇ!」
 事ある毎に、キーアと比較してくるオークに、ピクシーは口を窄めて言い返す。
「でも彼は『それがいい』って言ってくれるもん!」
 そして、告げた一言。それに対する反応は、やはりぽてとの時と同じく劇的。
「彼……今、彼と言ったブヒかぁ?」
 ピクシーに彼氏持ち疑惑が持ち上がり、俄に盛り上がるオーク達。それを境に、比較的キーアに集中していた触手が、ピクシーにも群がり出す。
(久しぶりに楽しめそうだねっ!)
 怯えた風に彼氏に助けを求めるフリをしながら、ピクシーは内心舌なめずり。着物をはだけさせると……。
「さ、さっきから、ボクの身体変だよ……お願い、ボクもキーアみたいにサービスして?」
 上目遣いでオークを見上げ、触手を受け入れた。
「ああっ! すごっいよぉ! ボクの身体が、いっぱいになってるの!」
 そして、サウナ内が甘い嬌声に満たされる。
「ふやぁ……やめぇっ、そこいぢったら、あたまくらくらひれ……らめになっちゃいましゅ!」
 ゆゆこは、全身をビクビクと痙攣させながら、その実複雑な気持ちだった。
(な、なにか私だけ扱いが適当ですっ! もちろん、オークなんかに丁寧に扱われたい訳ではありませんが!)
 キーアやピクシーに比べ、オークに片手間のように扱われているからだ。無論、その分気力を溜めて仲間の毒や催眠をいち早く打ち消し、ピクシーに神の力を分け与え、時折エネルギー光線で応戦するだけの余裕が生まれているのだが。
「ちょくちょく反撃してきやがるな、この餓鬼!」
「ほれ、相手してやるブヒ!」
「らめぇっ……ほんろにらめぇぇぇ!! えあ!? らめなのに、イケないのぉ!? あっ、あっ、あああっ! イけないぃぃぃ!!」
 それでも、たとえ片手間であったとしても、こうして嬲られると高ぶってどうしようもなくなる身体が、ゆゆこは悔しかった!

「皆さん! 避難は無事に終わりました――」
 ――よっ! そう続けたかったエレノアは、サウナルームの惨状に思わず絶句した。
「だ、だだだ、大丈夫ですか、皆さん!」
 カァーと、純粋なエレノアは全身を紅潮させる。風呂場側は、まだオークの対象が分散されていた分、良かった。しかし、キーアとピクシーにあらゆる触手が殺到していたサウナルームでは、ゆゆこの活躍で戦線こそ維持できていたものの、サウナの熱気も相まってあらゆる体液が噴き出す魔境と化していた。
「しょ、触手には触手で戦いますっ! うおー覚悟ーっ!」
 この状況に一石を投じようと、エレノアのチェインアンカーが変容し、まるでイカの触手のようにオークに絡まりつく。
「あれ、死んじゃった? ボクの腰使いやお口はどうだったか聞きたかったのに」
 そして、サバトの経験を生かし本領を発揮したピクシーによって弱らされていたオークを死に至らしめる。
「よくも散々弄んでくれたものね……覚悟はできてるわよね?」
 もう遠慮が無用になった事を知り、幽鬼の如くキーアは立ち上がると。
「燃え尽きなさい……塵も残さず!」
 掌の上で生み出された黒炎が、オークを燃やし尽くすのだった。


「お、お願いします……どうか……股間に熱いのを……」
「そんな風にオネダリするなんて、カイトくんが可哀想ブヒねぇ?」
 打って変わって従順なぽてとに、オークがニタニタと笑いながら近づいてくる。そして、ぽてとの間合いに入った瞬間!
「ぶち込ませろやゴラァッ!!」
「ギャアア!!」
 キッ! と表情を尖らせたぽてとの、本気パワーが注入された蹴りがオークの股間を穿ち、付随した溶岩と共に溶け出す。
「ど、どういう事ブヒか!?」
 突然の攻勢に、慌てるオーク。不安になり、自身の触手が絡め取って雌顔を浮かべさせていたはずの真理を確認すると。
「な、なな! いないブヒぃ!?」
「残念ですが、真理さんの毒はすでに中和済みですよ」
 嫌悪を浮かべたエリナによって、真理は動ける状態にされていた。
「そういう事です」
 オークの背後から、真理の声。だが、再び触手が真理を捉えるより早く、オークの下腹部が唸るプライド・ワンに挽き潰される。
「よくもやってくれたのう、覚悟するのじゃ!」
 前方からは、黒那の歪に変形した閃刀・白瞬。後方から真理の弱点への一撃に挟まれたオークは、瞬く間に毒を増殖され、断末魔の悲鳴を上げるのであった。

「エレノアちゃん、大丈夫!?」
「ぽてとさん達!? うわぁあ!? そっちに行っちゃ!?」
 ぽてと達が加勢にサウナを訪れると、エレノアが涙目であった。戦闘はもう佳境のようだが、それまでの間、エレノアのような少女にとっては大変だったに違いない。破れた軍服と、乱れたピンクの髪、震える足腰がそれを証明していた。それでも、エリナの元へ向かう魅了を帯びた触手を、オリーヴが必至に止める。
「……こっちも、すごい事になっていますね」
 最も、ほぼ全裸の自分が言えた事ではないが……エリナが苦笑しながら、音速の弾丸を放ってオークを打ち抜く。
 動きの止まった所に、エレノアの影の弾丸が炸裂し、またオークの数を減らした。
 そうして全員合流したケルベロス達は、猛烈に怒る黒那、キーアの活躍もあり、すべてのオークを絶命させる事に成功したのであった。

「ここって貸し切りなのよね。早く帰ってシャワーでも――と思ったら」
 キーアは、無事戻ってきた女性達に気を遣おうとするも、温泉にはすでに黒那が何食わぬ顔で入って、マッタリとしていた。
「皆さんご無事でなによりです。それでは――」
「……ぁ、だめ、女同士なんて、ひ、久しぶりで……あんっ」
 黒那だけでなく、エリナも温泉に。まして、エリナは毒が抜けきっていないのか、女性客に手まで出そうとしている。
「え、えっと、エ、エリナさん!?」
 そこに、真理も巻き込まれてしまう。
「ふぅ……お腹一杯になっちゃった!」
 そんな眼前で起こる異常事態にも、ピクシーは動じた様子もなく、一件落着とばかりにお腹をポンッと叩くのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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