「こんなところに、お城……?」
敵の動向を探っていた古牧・玉穂(残雪・e19990)がなぜか気になったのは、隣市へと向かう道が続く、山の方であった。
そこに足を向けると、西洋風の尖塔を持った建物が目に入った。建物そのものは幹線道から100メートルほど離れたところにあって、途中の道は木々は好き勝手に枝を伸ばし、鬱蒼とした様子である。どう見ても廃屋に見えるが、なぜか派手な装飾をした1台のミニバンが駐まっていた。
「日本にも、こんなお城があったんですね……。領主のいなくなった古城、なのでしょうか?」
色あせているとはいえピンクで彩られた外壁や、薄汚れてろくに見えなくなった看板に「ご休憩」などと書かれているあたりはどう見ても……なのだが、玉穂はそれに気づかず、正門をくぐる。
それどころではなかったからだ。目の前の空間は、モザイクで覆われていた。
報告は聞いている。これが……!
意を決し、玉穂は手を伸ばしてそれに触れ、身体を中に滑り込ませた。
異様な空間だった。辺りはまとわりつくような粘り気のある液体で満たされていた。思わず息を止めたが、不思議なことに呼吸は出来る。はじめは戸惑ったが、すぐに動き方も悟った。水と違い、身体が浮かないのだ。
さらに奇怪なのは、建物の外壁や、屋内にあったはずの大きなベッド、あるいは装飾の施されたバスタブなどがバラバラに分解され、そしていい加減に組み合わされて周囲に積み上がっていた。
「あら……あなたの、その姿は。だから、このワイルドスペースを発見できたのでしょうか?」
「!」
玉穂が驚きに目を見張る。いつもの自分なら決して着ないような、妖しい美しさをもつ着物様の装束。それを纏って艶然と微笑むその顔は……。
「まさか、私……?」
ただ眼前の女は、胸元がモザイクに包まれていた。
「この場所の秘密は、明らかになってはいけないのです。あなたはここで……葬ってあげましょう!」
ワイルドハントは刀を抜き、躍りかかってきた。
「一大事。玉穂ちゃんがワイルドハントと遭遇しちゃったみたい」
緊迫した口調の崎須賀・凛(ハラヘリオライダー・en0205)だったが、目の前のテーブルには、なぜか大鍋が湯気を立てている。
「緊急事態よ? でも、お腹が空いてたらそれどころじゃないでしょう!
出発はたくさん食べて、元気出してから!」
大鍋の中身は、醤油仕立ての澄んだ汁。そこに里芋や鶏肉、人参、牛蒡、蒟蒻、それにゆで卵などが入っている。おでん?
「もぐもぐ……。ちがうってば、芋炊き! ん~、里芋がとろっとろ~」
と、凛は芋で頬を膨らませてご満悦。
ともあれ、事件である。
事件は、とある町の郊外にある廃墟となった建物で起きた。ワイルドハントを名乗るドリームイーターが、なにやら活動を行っていたのだ。
「もぐもぐ……。
活動の詳細はわかんないけど、とにかくこのままでは玉穂ちゃんが危ないわ。いくら玉穂ちゃんでも、1対1じゃ、勝ち目はないもの」
そう言って凛は、ゆで卵にかぶりついた。
幸い、こうして備えをしておいたおかげで早く駆けつけることができる。急げば、彼女が襲撃された直後くらいには到着できるだろう。
「もぐもぐ……。蒟蒻は手でちぎっちゃうのがいいのよね~」
あっという間に器を空にした凛は、すぐさま2杯目に取りかかった。
「すごく不思議な空間だからビックリするかもしれないけど、すぐに慣れると思うから大丈夫。
敵は玉穂ちゃんそっくりでも、まったく別人のドリームイーターだからね。遠慮無くやっちゃって。
でも、相手が持ってる刀は『心を抉る鍵』だから、その切れ味には十分に気をつけてね」
「敵の動向は気になるけど、それよりもまず玉穂ちゃんの救出が最優先よ。
みんな、頑張って!」
参加者 | |
---|---|
ラピス・ウィンディア(ビルシャナ絶対殺す権現・e02447) |
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784) |
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020) |
狼森・朔夜(迷い狗・e06190) |
アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108) |
古牧・玉穂(残雪・e19990) |
浜本・英世(ドクター風・e34862) |
レイス・アリディラ(プリン好きの幽霊少女・e40180) |
●陽の刃、陰の刃
まったく変わらぬ顔形をしたふたりの女が対峙する。ジャリ……と、足もとの石が鳴った。
「立ち居振る舞い、所作……自分そっくりって感じはしませんね」
腰の刀に手を置いた古牧・玉穂(残雪・e19990)は、わずかに唇を舐める。
そもそも自分からしてみれば、目の前で婉然と微笑む女が自分と似ているとは、とても思えないのである。
自分が、あんな顔をするとは。
フッと息を吐いた玉穂は穏やかに一礼し、
「とはいえ、これもなにかのご縁です。私の業と踊りましょうか」
と、刀を抜く。
それと同時に、相手の方から、声もなく仕掛けてきた!
胸元のモザイクが、巨大な口となって襲いかかる。その顎が捕らえた……のは、分身。
咄嗟に避けた玉穂は繰り出してくる刃を弾き、
「姿形を真似ることができても、この業は真似できません!」
返す刀でワイルドハントの胴を割る。鮮血が吹き出て、辺りの液体と混じって漂う。
しかし敵は笑みをおさめることなく、間合いを詰めてきた。
「くッ……!」
その刃こそ、『心を抉る鍵』。鋭い切っ先が、玉穂の胸を深々と貫く。
「ワイルドハント……またですか」
古城(?)を見上げ、アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)がため息をついた。
先日も、ワイルドハントとの戦いを繰り広げたところである。果たして敵は、なにを目論んでいるのか?
「いったい、この中にはなにがあるのかしらね?」
レイス・アリディラ(プリン好きの幽霊少女・e40180)が目の前のモザイクを、指でつつく。
傍らには1台のミニバンが駐まっている。世の中には廃墟好きという者もいるらしいから、もしかしたらそういう者の車なのだろう。逃げたのかどうしたのか、姿は見えないが。
「ま、考えても埒があかないわ。混沌の世界へ迷い込んだ少女を、助けに行きましょう」
「少女って……レイスさんこそって感じだけどね☆」
苦笑したシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)は、
「はやく古牧さんを見つけて、助けなきゃ!」
と、勢いよくモザイクの中へ飛び込んでいった。
「そうだな。時間がたつほど、危ない」
「玉穂くんには、以前世話になった。その危機とあらば、手助けしないわけにはいかないね」
狼森・朔夜(迷い狗・e06190)と浜本・英世(ドクター風・e34862)も頷いて、モザイクの中に身を踊らせる。
それにしても、奇妙な空間である。
その感想は、経験した者であろうとなかろうと変わらない。尖塔がいきなり地面から突き出て、その脇からはシャワーヘッドが生えている。大きなドレッサーが豆腐のように刻まれて、乱雑に融合していた。
「玉穂さ……玉穂ちゃんッ!」
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)が悲鳴を上げる。
その姿を見つけるのは容易かった。モザイクの内部で、彼女はワイルドハントとの戦いを繰り広げていたのだ。
しかし、劣勢は隠しようもない。分身で防いでいても、敵の攻撃は容赦なく心を抉る。トラウマが襲いかかり、彼女を苛んでいた。
「……お友達かしら?」
こちらの姿を認めた『その女』が、わずかに口の端を持ち上げた。
「ほんとう、顔はよく似てるわね。でも、借り物だわ。誰かの借り物でしか、存在できないのね?」
ラピス・ウィンディア(ビルシャナ絶対殺す権現・e02447)が放った無数の銃弾が、敵に襲いかかる。
だが、敵は薄く笑みを浮かべて跳躍した。
「なかなか素早いわね」
「でも、まだ終わりじゃないわよ」
かまわず、レイスが追撃する。
「喰らいなさい!」
その声に応じて、ブラックスライムが巨大な顎を広げる。ワイルドハントの肩にかぶりついた……かと見えたが、敵は紙一重のところでこれも避けていた。
だが、距離は開いた。
その間に、ミライが駆け寄る。
「うぅ……!」
しかし、あろうことか、玉穂はミライに向け、そして同じく駆け寄った英世に向け、斬りつけてきたではないか!
「あぶない!」
咄嗟にシルディが割って入った。肩を裂かれたが、渾身の力でその刃を押さえつけ、耐える。
「大丈夫だよ、これくらいぃ~ッ! 古牧さんは、これ以上に痛い思いをたくさんしてるんだろうから!」
「玉穂ちゃん!」
気を取り直したミライは大きく息を吸い込んで、歌う。ライブで出会ったのがきっかけで、もう1年半。彼女は今ではとても大切な……!
「どんなに願っても、涙は枯れはしない。ゼロを1に変える魔法が、生まれたときから 君に掛かってる……!」
「……あぁ、やっぱりミライさんの歌は最高ですね」
「玉穂ちゃん!」
「無事とはいかなかったかね、玉穂くん。だが、生きていたのは何よりだ」
笑った英世が、緊急手術で残った傷をふさいでいく。
「これでよし。意識ははっきりしているね?」
「あぁ……救援がくる前に殺せなかったのは残念です。でも……ここで全滅させれば、同じことですね」
「できるものなら、やってみてごらんなさい!」
アニマリアが大斧を振り上げて突進する。光り輝く呪力が弾ける。
「素敵な見た目ですね。居場所がないから、周りをモザイクにしているんでしょう!」
「いくぞ!」
朔夜が声を張り上げ、大槌から砲弾を発射した。敵はモザイクを広げてそれを受け止めたが、耐えきれずにガクリと膝が折れる。
アニマリアの大斧が襲いかかったのは、そこだ。
「ぐッ……!」
大斧が、ワイルドハントを深々と切り裂いた。紫の装束が裂け、血飛沫が舞う。白い肌の上を、夥しい血が流れていった。
●ひとりの戦いじゃない
「さぁ、踊りましょう。白刃の煌めく、舞を!」
地面に突き立てていた二刀を握り直し、ラピスが間合いを詰める。敵のモザイクが飛来してきたが、ラピスは斬霊刀でそれを弾き、さらに一歩踏み込んだ。
「太刀筋は気合いの限り……されど、心は澄ませ」
目にも捉えられぬほどの速さで、刃が空を割る。ワイルドハントの脇腹に深々と、傷跡が刻まれた。
「やったか」
「いえ……浅いわ」
感心する朔夜に向け、ラピスは口をへの字に曲げて答えた。わずかに、敵は身を反らしていたのだろう。まともに命中すれば、必殺となってもおかしくない一撃のはずだ。
「だったらもういっちょッ!」
今度はシルディの放った砲弾が、ワイルドハントを襲う。敵は建物の外壁にぶち当たり、それを発泡スチロールのように粉砕しつつ吹き飛ばされた。
「やったね!」
「……ふふ、こんなことで歓声を上げるなんて。お可愛いこと」
瓦礫の中に埋もれた敵は、あっさりと姿を現した。嘲笑するように、一同を見渡す。
「姿形は似ているが。剣呑な目をしているな。やはり偽物ということだね」
英世が杖を掲げ、雷の障壁を作り出す。そして、苦笑して肩をすくめた。彼女は、あんなふうには笑うまい。
「清楚な方が本物に決まってるじゃないですか!」
と、ミライが憤慨する。
「願望こそ、人の原動力。だから、なりたくない姿になんて、ならなくていいんです!」
「あはは!」
ワイルドハントが笑って地を蹴った。シルディは咄嗟に避けようと身をよじる。しかしその右手に握られた刃は予想以上に、ぐん、と伸びてきた。
切っ先が、肩を貫く。痛みに顔をしかめたが、それよりも。
「う、うわわわぁッ! 太い、太いッ!」
なにに襲いかかられたのか。シルディは青白い顔で悲鳴を上げ、逃げまどう。
「しっかり!」
位置を入れ替わったアニマリアが、大上段から大斧を叩きつけた。その一撃はワイルドハントの頭蓋骨をわずかにそれたが、鎖骨を深々と……と思われたが。
敵は決して砕けることのない『心を抉る鍵』を盾にして、それを受け止めていた。それでも無傷ではないが、致命傷には遠い。
「あはははは!」
その刃がアニマリアを傷つける。なによりも、彼女自身の過去が苦しめようと襲いかかってくる。
「……懐かしいじゃないですか、今さら」
それは師とかつての恋人の姿をして、容赦なくアニマリアを苛んでいく。それは単なるトラウマ。本人ではない。わかってはいるのだが……平静を装おうとする仮面にヒビが入る。
英世の護りがあってさえ、これか。いや、あるからこそ、これで済んでいるのか。
「とにかく、ポンちゃん! 相手の気を引いて、お願い!」
主の求めに応じ、ミライのボクスドラゴン『ポンちゃん』が突進した。敵は着物の裾を翻してそれを正面から受け止めた。ケルベロスたちへの追撃は諦めざるを得なかったようだが。
その腹いせのように、モザイクがボクスドラゴンを飲み込んだ。
「ポンちゃん!」
「少しだけ……本気で相手をしてあげる!」
小さく舌打ちしたレイスが、大鎌を投げつける。それは大きく回転しながら襲いかかって、ワイルドハントの膝を切り裂いた。
「刻みがいのある、白い肌だわ!」
しかし敵も相打ちを覚悟に、モザイクを放ってきた。
「う……」
目の前がくらくらする。酔っているかのようだ。レイスは眉間を押さえ、なんとかまっすぐに立とうとする。
「みなさん!」
傷が癒えた玉穂が、再び剣を杖にして立ち上がった。その傍らを、朔夜が駆け抜けていく。
「私が足止めをする。お前は、思う存分やってやれ!」
複雑に折り重なった無数のバスタブを蹴って跳躍し、ワイルドハントの傍らに着地した朔夜。敵がそちらを振り返るより速く、
「凍りつけ!」
足もとに、雪狼を召喚した。厳冬の山で荒れ狂う地吹雪を思わせる、純白の狼。
「グワウッ!」
それは一声鳴いて、青白い瞳で敵を睨みつけた。ワイルドハントの全身が凍てつき、氷は刃となって敵を切り裂いていく。
「実は……ひとりでは、ちょっぴり不安だったんですよ。でも、皆さんが来てくれて!」
刀は緩やかな弧を描いて、ワイルドハントの腰を深々と切り裂いた。
●崩壊するモザイク
「お、お、お、お!」
ワイルドハントが身を仰け反らせる。
敵は全身に無数の傷を負っていたが、いまだに戦意は衰えていない。いや、むしろそれは増したようでさえあった。目を血走らせ、モザイクを広げてケルベロスたちを押し包もうとする。
避けきれぬモザイクを浴び、顔をしかめる。敵を睨みつけようとするのだが、意識が朦朧とする。
「問題ない。幾度でも支援しよう」
そう言って英世は、再び雷の障壁を展開した。
「ボクだって、いくらでも防ぐからね!」
と、シルディが腰を落として身構える。ポン、という妙に可愛らしい音がしたかと思うと、その傍らに小さな火トカゲが現れた。
「その口より溢れる紅蓮の炎にて、彼のものを守り給え!」
小さいが、その力は絶大にして超高熱。シルディの前に立ちはだかって盾となり、いかなる攻撃をも跳ね返す気概をみせる。
そしてその通りに、敵の繰り出してきた刃を受け止め、弾き返した。
「お返しです! こちらからも浴びせちゃいましょう!」
ミライが九尾扇を振るうと、朔夜の周りに妖しく蠢く幻影がまとわりついた。
「おう。……てめぇ、いつまでも調子に乗るなよ!」
モザイクに腕をかじられ、得物を取り落としていた朔夜だったが。気を取り直し、敵を睨む。
「それにしてもこの剣、不格好ねぇ。持ち変えるのも面倒なのに」
同じく、レイスもチェーンソー剣を抜き放った。嘆息しつつも、それを構える所作に無駄はない。
ふたりは同時に地を蹴って、ワイルドハントに迫る。
モザイクが飛んできたが、それぞれ紙一重に避け、砕けたのはガラス張りのバスルームだけ。
鋸のような刃がワイルドハントに付けられていた傷をなぞり、出血を倍加させていく。
「ぐおおおおおお!」
「……ケルベロスの暴走した姿、か。そもそもどうして、ケルベロスに暴走という力があるのかな」
ラピスがひとりごちる。が、考えたところで詮無きことだ。
「考えてみるのは、おもしろいのだけれどね」
肩をすくめたラピスは表情を引き締め直し、
「もう一度! ワイルドハントの全身を切り裂くまで、踊るわ!」
「はい!」
その言葉に、玉穂も応じる。空の霊力を帯びた刃がさらに、ワイルドハントの傷口を抉っていく。
幾度も急所を抉られた敵は、手足の腱を断たれ、骨を砕かれ、その動きは精彩を失っていた。
それでもなお、血に塗れた手を伸ばして、ケルベロスを殺めんとするのである。
「本当の顔が、ようやくのぞいてきたか!」
ラピスの居合いが、ワイルドハントの腕を斬り飛ばした。それはゆらゆらと液体の中を飛んだのち、地に落ちる。
「たった一度の終焉……よく味わいなさい!」
レイスのブラックスライムが、敵を飲み込む。それなのに、なおも敵はモザイクを飛ばし、刀を振るい、進むではないか!
「む……!」
『心を抉る鍵』が、英世の脇腹を貫いた。
亡者たちが、自らが殺めた者たちが、呻き声を上げてしがみついてくる。
「……分かっているさ。これは、私が朽ちるまで背負わなければならない、記憶だ」
目を閉じた英世は苦悩の表情を浮かべながらも、
「だが君も、いつまでもこうしていられても、困る。あまり良い子に見せられる光景ではないが……こちらの手術を受けてもらおう」
マントを翻すと、その下からは無数の刃物が姿をのぞかせていた。魔術によって操られたそれらは敵を切り裂き、皮、肉、腱、そして骨へと分解していく。
「ギィィィィィィッ!」
「……元に戻せは、しないけれどね。
後始末は、アニマリアくんがやってくれるかい?」
「えぇ、いいでしょう。私もおもしろいモノ……記憶を、見せてもらいましたから」
赤い閃光が、敵に叩きつけられる。
「陽光浴びる高き峰よ、凍てつく山の影巫が命ず、我が前に立ち塞がる者を穿ち、砕け!」
「崩れる、私の、ワイルドスペースが……!」
ワイルドハントは体の内部から炸裂したかのように全身の傷口から血を噴出させ、そして、二度と動かなかった。
「たはは、皆さんには心配をおかけしちゃって」
玉穂が面はゆそうに頭を下げたが、意外なことに一番に反応したのは朔夜で、
「気にすることはない。いつでも助ける」
などといって、腕組みしたままそっぽを向いた。
「でも、この場所は一体なんなんでしょう? なにか、由緒のある場所とか?」
と、玉穂は小首をかしげる。
「……無事は確認できたのだし、早々に退散することにしよう。この場所は、な」
と、英世が苦笑いを浮かべる。
「さささ、思うところはあると思いますけど、まずはいっしょに帰りましょう!」
「?」
ぐいぐいと、ミライが笑ってその背を押した。
「災難だったけれど、収穫はあったというべきかしら?」
ワイルドスペースは崩壊し、空間は元のそれへと戻っていた。廃墟を見上げ、レイスは髪をいじる。
敵がこの空間を作り出し、よからぬ事を計画していたのは間違いない。しかし、皆の奮闘によってその思惑は瓦解したのだ。
敵の作戦は、思い通りに進みはしない。
作者:一条もえる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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