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荒れ果てた町に、バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)はたどり着く。
目の前には、モザイクに覆われた空間……覗き込みつつ、バジルは独りごちる。
「やはり、外から中の様子は見えないようね」
思い切って中に飛び込むしかないようだ――覚悟を決め、バジルはモザイクの中へ入り込む。
――奇妙な粘液で満たされた景色は、切り混ぜたような奇怪な空間。
「呼吸は出来るし声も出る……でも、これは……」
「そこにいるのは――まさか、この姿に因縁があるモノか」
突如として飛び込んできた声は、獰猛な雰囲気を湛えている。
「今、ワイルドスペースの秘密を漏らすことは出来ぬ」
バジルは、その者と向き直る。
緑の長髪、尖った耳、髪に添えた羽飾りすら、バジルと同じに見える。
だが、その者の下半身は、蛇のものと等しく。
(「私の、暴走した時と――」)
同じだ、というのはほとんど直感。
瞳を煌々と輝かせ、その者は告げる。
「オマエは、ワタシの手によって死ぬべきだ」
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「『ワイルドハント』を名乗るドリームイーターの襲撃を受けた者がいる」
高田・冴(シャドウエルフのヘリオライダー・en0048)は、襲撃を受けたのがバジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)であることを手短に告げる。
「モザイクで覆った空間で何かの作戦を行っているワイルドハントは、訪れたケルベロスを殺害する気でいる……このままでは、彼女の命も危ないだろう」
幸いにも、急げば敵との戦闘開始の直前には駆けつけることが出来るだろう。
「モザイクに覆われた『ワイルドスペース』に入ればすぐに彼女たちに会うことが出来る。救援とドリームイーターの撃破を、みんなにはお願いしたい」
ワイルドハントはバジルの暴走時と同じ姿を取っているが、中身は異なる。
「攻撃方法などが彼女の暴走時と違う可能性が高い。先入観を持って接するのは危険かもしれない」
妨害能力に長けたワイルドハントは、一人ひとりに様々な効果をつけ、少しずつ不利な状況に陥れようとすることだろう。
戦う上で、このような点に注意する必要があるかもしれない。
「私の予知出来なかった事件を彼女が調査で発見出来たのは、敵の姿と関係があるのかもしれないね……」
ヘリオンに乗るケルベロスたちを見送りながら、冴はそんな風に呟くのだった。
参加者 | |
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ルーカス・リーバー(道化・e00384) |
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892) |
夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418) |
真夏月・牙羅(ネコゴニアン・e04910) |
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320) |
佐藤・非正規雇用(狩りの季節・e07700) |
村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239) |
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095) |
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(「姿形は、間違いなく暴走時の私」)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)は油断なく敵を見つめ、思う――その背後から、ケルベロスたちが駆けつけた。
「ちょっと野性味に溢れ過ぎる感じだが、なかなかのセクシーさだな」
ワイルドハントの姿を見て、開口一番佐藤・非正規雇用(狩りの季節・e07700)は言う。
バジルの暴走姿ということはさぞかしエッチに違いない、という期待は大当たりしたようだ。
「敵がこんなに色っぽいと、どちらを助けるか迷っちまうなァ?」
「いやぁ、俺も佐藤さんと敵どっちを撃てばいいか悩んじゃうなぁ!」
エアシューズを履いた脚で地面を叩きつつ、夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)は言う。
「いいからさっさと倒しましょう」
呆れたようにバジルは言って、ブラックスライムをワイルドハントへと向かわせる。
也太はワイルドハントに肉薄して鋭い蹴りを放つと、キザい感じにバジルへサムズアップ。
「貴女のイケメンが助けに来ましたよ!」
あわよくば据え膳、という思いもあってか、瞳がキラキラ輝いている。
非正規雇用のオウガメタルは味方へと届けられ、走り出すオルトロスの店長の背に向けて非正規雇用は言う。
「負けるな店長!」
店長の瞳が煌めいたかと思えば、ワイルドハントの全身が炎上――ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)はバジルとワイルドハントを見比べて、
「きれいなバジル」「エロいバジル」
そう呟いてから、オウガメタルを腕に纏って肉薄。
拳を振り上げて一撃、接近すればなお、ワイルドハントの扇情性が明らかだった。
「オウガメタル……意図、理解して」
暴走体は色々と違う、とは分かっていても、少々セクシーすぎる外見の彼女に願いを込めて殴りつける。
服破りの効果は実際に服を破るわけではない――そう知っていても、多少空気を読んでくれたら、あるいは。
期待を込めての打撃に胸を隠す鱗の一部が剥がれたが、肝心の部分は秘められたままだった。
ノーザンライトの呟きをかき消したのは村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)による爆煙。
「カッコいい登場にはカッコいい演出だろ?」
煙の中から姿を見せたのは、ルーカス・リーバー(道化・e00384)。
「痛いの痛いの、飛んでいけ。ほら、飛んでいったでしょう」
言葉に宿る力が、仲間の抵抗力をも高めた。
「バジルさん、頑張って取り返しましょうね」
微笑するミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)が作り出したのは、雷の壁。
高められた護りの力の中、真夏月・牙羅(ネコゴニアン・e04910)のシャーマンゴースト・アトラスは祈りを捧げ、牙羅は星座の輝きを浮かべる。
薄暗い空間の中に差し込む光――星々の煌めきの中を、ケルベロスたちは駆ける。
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幾度もの攻撃を潜り抜け、也太は魂すら喰らう拳を叩きこむ。
ひやりと冷たく、それでいて柔らかな膚――ほうほう、とワイルドハントの全身を眺めた也太は、大きく後退すると今度はバジルをじっくり見つめる。
舐めるように肢体を見る……ワイルドハントからすら睨まれているが、そんなことは問題ではない。
「なるほど」
「お前もガン見してんじゃねぇよ!」
非正規雇用はツッコミつつ助走をつけ、オーラを球状にして。
「くらえ! ドラゴンパス!!」
勢いよく蹴りつけた――オーラのボールを叩きつけられ、力いっぱい吹き飛ぶ也太。
「夜乃崎君吹っ飛ばされたー!」
豪快に跳びはしても、ヒールグラビティなのでむしろ元気になるのだった。
「行くぞ!」
牙羅は短く叫び、正体不明を召喚。
「夜に聞こえる、不気味な声よ、恐怖を与え、具現化せよ、正体不明の怪物よ!」
アトラスが炎を生み、店長が地獄の瘴気を広げた直後、獣を接ぎ合わせたような奇怪な存在が牙を剥く。
口から吐き出すのは雷。轟く雷鳴に撃たれたワイルドハントへと、ノーザンライトも近付いて。
「目覚めろ獣の血よ。宿れ月の魔力よ。唸れこの手足……ウェアライドアーツ」
魔女ではなく獣として、舞い踊るように続く攻撃。
流し込まれる魔力が苛むものを増幅させ、ワイルドハントは苦しげな呻きを上げる。
「姿はどうあれ敵は敵だ」
苦しむ表情にも、柚月は容赦はしない。
「蘇れ虚ろなる幻想! 顕現せよ! ゴーストトリック!」
オーラを纏わせたチェーンソー剣がワイルドハントの尾を引き裂けば、高い叫び声が上がった。
「暴走時とはいえ、仲間の姿をした敵と戦うのはいささかやりにくいですが……手を抜くのも失礼でしょう」
ルーカスも油断なく周囲に黒い弾丸を浮かべ、一気にワイルドハントへ叩きこむ。
ミリアがひらりと長い髪を揺らして薬液を注げば、仲間の受けた痛みは和らぐ。
「行きましょう、やっちゃってくださいね」
「ええ、任せて」
ミリアの言葉にバジルは頷き、流星の煌めきと共に蹴りを放つ。
輝きに魅せられたように動きを止めるワイルドハント――怒りを抱いている彼女へと、バジルは薄い笑みを向けた。
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「……それにしても、随分と寒そうな格好ですね」
ルーカスは、ワイルドハントへと言う。
衣服は一切纏わず、鱗に覆われているのみのワイルドハント。
「これからの季節、風邪をひかないよう、お気をつけください」
言いながらもルーカスが放つのは氷の螺旋。
凍てつく螺旋に続くように、ミリアは弾丸を飛ばす。
「患者さんの苦しみを、貴方も味わいなさい……」
弾丸を受けたワイルドハントが覚えたのは激烈な痛みではなく、鈍るような感覚。
まるで実際の病を受けたような感覚に息を荒げるワイルドハントへと、也太は告げる。
「見た目はそれなりだけどバジルさんの素敵さには全く及ばないぜ」
金色の瞳が、染まる。
「明けない夜はない。さぁ、闇を切り裂き今世界に燈を! ……そしてお前には赤き宿命を!」
暗く沈んだ空間へと放たれる弾丸。
――やがて闇が晴れた時、そこには赤いものが滴っていた。
店長はワイルドハントの眼を狙って睨みつけ、アトラスは長い爪で霊魂を裂く。
「くっそう、やりづらい」
牙羅は言いながらも、決して手は抜かない。
手の中で姿を変えるブラックスライム――不定形のそれが槍のように変形した瞬間、ワイルドハントへと投擲。
突き立てられた槍に続くように、非正規雇用はエクスカリバールを手に躍り出る。
「蛇は冬眠しちまいな!」
力いっぱい振り下ろしての一撃に、地面すらえぐれる。
柚月の手にはチェーンソー剣。
けたたましい音を響かせる刃を引くとワイルドハントは蛇の尾を痙攣させ、牙を剥いて声にならない声を上げた。
まるで鬼神のごとき形相――やはり中身はまったく違う、とバジルは幾度目かの確信を得て。
(「姿を似せるのが主で中身は重要じゃないのかしら」)
その理由は一体……思いながら、口を広げているからこそむき出しの舌へと注射器を刺す。
「甘露転じて毒となる、用法容量を守って正しく使ってね」
服薬量は過剰なほどに、だからこそ毒となる。
もがくワイルドハントは、それでもケルベロスへと飛びかかる。
狙われたのはノーザンライト――蛇身で絡み付いたワイルドハントは肩へと噛みつき、何らかの薬物を注ぎ込む。
「ひぐ……何か入って、くる」
ぴく、と身体を震わせるノーザンライト。
しかし、この距離ならこちらの攻撃も確実に当たる……熱く火照る身体を鼓舞し、ノーザンライトは古代語を詠唱。
「本当の石化を、その身に刻んでくれるぞな」
真正面から光線を受けてしまうワイルドハント。
その全身から、やがて力が失われた。
●
戦いの後、すぐさまワイルドハントは消滅し、ワイルドスペースも消える。
「残ってるものはない……ですね」
リトマス紙を手にワクワクしていたミリアは少々残念そう。
もっとも、どうやって採取するかはまだ曖昧だったから、残っていたところでうまく採取出来たかどうかは分からなかった。
残念だが仕方ない、とミリアは肩をすくめるのだった。
「ある意味戦いたくない相手だったな」
呟く牙羅の視線は、ワイルドハントがいた場所に置かれたままで、バジルに呼びかける。
「大丈夫でしたか」
「ええ。……みんな、本当にありがとうね」
感謝を述べるバジルからこっそり離れて、ノーザンライトは非正規雇用へ持ちかける。
「動画……○円で、どう? ドリームイーターだけに、モザイク……」
「言い値で買おう!」
大興奮のあまり非正規雇用がついつい大きな声を出したせいで、也太と共にバジルに怒られてしまう。
「動画? ふふっ、情報収集は大事よね」
口ではそう言いながらも威圧感のあるバジルであった。
幸いにも傷によーく効く新薬も持っている。もちろん実際に使うのは初めてとなるが、彼らで試してみるのもアリかもしれなかった。
……などと考えるバジルの正面、正座している也太を毛づくろいしようとするミリアへと、也太は言う。
「とりあえず毛繕いは大丈夫……で、何度も言うけど俺は虎だから」
猫耳をいじろうと狙うミリアへと、非正規雇用も。
「ミリアさんもワイルドハントに出会ったら俺を呼んでくれよ? 飛んで助けに来るからさ」
露出度の高い敵であれば、という希望が非正規雇用の目に宿っている。
「仕置き怖ひ」
「ま、自業自得というか、何というか……」
身体を縮めるノーザンライトに、怒られている面々を憐れむ柚月だった。
「それにしても、これだけの人数が助けに駆けつけるとは。これが人望、というものでしょうか」
微笑と共に独りごちるルーカスは、いじられ放題のバジルを見て。
「なるほど、これも人望……ですかねえ……」
そんな風に呟いた。
――大きな動きの続くドリームイーター、ワイルドハント。
どのような作戦だとしても、力を合わせて戦えば、きっと、勝利できるはず。
――微笑しながら、そうルーカスは思うのだった。
作者:遠藤にんし |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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