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「御詠歌こそ日本の心である!」
廃寺でビルシャナが喚いている。
御詠歌とは寺々を巡拝する人が、そこの仏をたたえてうたう歌であるから、シチュエーションとしては正しいのであろうか。
「御詠歌、和讃こそ日本の心であり母なる歌。しかし現在では後継者も乏しく、歌っている人間の平均年齢は80歳以上。こんなことではよくない、日本は滅びてしまう!」
危機感を持ったビルシャナに対して老人や寺の関係者である信者10名が念仏を唱えて讃え始めた。
「ならば、御詠歌と和讃以外の音楽は全て滅ぼしてしまえ!」
いきなり極端に飛ぶビルシャナ。
「テレビも御詠歌! ラジオも御詠歌! ネットも御詠歌! 紅白も御詠歌合戦! ありとあらゆる音楽の場面は全て御詠歌と和讃! そうすれば必然的に御詠歌と和讃は復活するであろう! それこそが音楽の真理、日本を復活させる方法なのであーる!」
そこでやはり念仏やお経を唱えて賛同を始める10名の信者。
廃寺というシチュだけは正解なのだが、やはり何もかもが狂っているビルシャナであった……。
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「御詠歌と和讃こそ日本の心であるからそれ以外の音楽を廃止せよという悟りを開いたビルシャナが発生しました。問題を解決して下さい」
セリカ・リュミエールが集めたケルベロス達に説明を開始した。
みんなどういうことだと思った。
「悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が、今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、配下を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、ほうっておくと一般人は配下になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば元に戻るので、救出は可能ですが、配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
それからセリカは資料を開いた。
「今回現れたビルシャナは、クロエディーヴァという『音楽による救済』を教義とするビルシャナの信者からビルシャナ化したらしい……ですね」
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「ビルシャナの能力は?」
誰かの質問に対して、セリカはすぐに資料を広げてくれた。
ビルシャナ閃光……敵を退ける、破壊の光を放ちます。
八寒氷輪……氷の輪を飛ばし、敵を凍りつけさせます。
浄罪の鐘……鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させます。
これらの力で戦うらしい。
「今回のビルシャナはさる仏教の関係者で御詠歌の存亡の危機を憂いていた青年が、御詠歌を聞きながらどうやったら布教出来るかと思い詰め、最終的に悟りを開いたというものです」
セリカは首を傾げている。
「その布教の方法というのが、御詠歌以外の音楽を全て滅ぼすというものであって……。仏教関係者がそんな悟りを開いていいのでしょうか……??」
周囲のケルベロス達も「?」という表情。若者の中にはそもそも御詠歌ってなんだという顔をしている者もいる。
「信者の10名達もお寺の関係者とか御詠歌を愛する老人とかです。皆ビルシャナに賛同して廃寺を乗っ取り、御詠歌以外滅ぼすという教義を広めています。御詠歌や和讃の歴史や伝統が貴重なのは分かりますが、方法が何もかも間違っているでしょう。このままトラブルや犯罪などに発展する前に、信者達には大きなインパクトを与えて正気に返し、ビルシャナは退治してください」
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最後にセリカはこう締めくくった。
「ビルシャナの洗脳は固いのでインパクトが大事です。また、他の音楽を滅ぼさなくても御詠歌や和讃を生き延びさせる方法があることを見つければ、信者達は納得するかもしれませんね」
参加者 | |
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御籠・菊狸(水鏡・e00402) |
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432) |
笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049) |
ミーシャ・クライバーン(トリガーブレード・e24765) |
レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787) |
如月・環(プライドバウト・e29408) |
加藤・光廣(人生ベテランの新米ケルベロス・e34936) |
秦野・清嗣(白金之翼・e41590) |
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ケルベロス達は現場の廃寺に到着した。
すると本堂の方から山門まで、老人達の歌う御詠歌が響いてきた。
オンボロの廃寺に朗々と響き渡るお経のような歌。こりゃ、人が近寄って来ないのは当たり前だ。
「御詠歌こそ至高! 他の音楽は滅ぶべき!」
その後、ビルシャナの主張が鳴り響き、ケルベロス達は思わず顔を見合わせた。
「ごえいか……御詠歌って書くんだなぁ。へぇぇーはじめて知った」
御籠・菊狸(水鏡・e00402)は純粋な目で呟いた。今時、御詠歌の名も知らない若者はザラにいる。後継者不足は深刻だ。
「自分の好きなもの以外は認めないタイプのビルシャナか。いつにも増して出現頻度が上がっているが、大きな災いの予兆でなければいいが……とにかく今は目の前の災いを処理するとしよう」
ミーシャ・クライバーン(トリガーブレード・e24765)は、自分の予想に顔を曇らせている。
「過激だがこのまま張り倒すわけにもいかねーッスからね! 出来る限り説得をしてから戦闘に臨むッスよ!」
如月・環(プライドバウト・e29408)はやる気が漲っている。
「世も末だ……根本を知らずして表面ばかりを見てるから本末転倒な結論に辿り着くんだろうなぁ。何か成すなら広い心と目を持って周りを見ねばねぇ」
秦野・清嗣(白金之翼・e41590)はビルシャナの喚く主張を聞きながらそうぼやいたのだった。
その間にも御詠歌は響き渡り、ビルシャナは一人でキレて喚いている。
そうしている訳にもいかないので、アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)、笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049)、レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)、加藤・光廣(人生ベテランの新米ケルベロス・e34936)もともに、ケルベロス達は全員で本堂へと向かった。
本堂ではビルシャナが鈴を鳴らしながら御詠歌を詠うターンに入っている。
その周辺で信者達がビルシャナにひれ伏し拝みながら念仏を唱えていた。
正にあやしい宗教である。
菊狸は見ていられずに本堂の引き戸を思い切り開けた。
ズッパーンン!
凄い音を立てながら本堂に一斉に侵入していくケルベロス達。
「な、なんだきさまら! 邪魔をするな!!」
我に返ったビルシャナが喚き、信者達も驚いている様子。
「僕達はケルベロスだ。お前達を説得しに来た!」
菊狸は信者達を指差しながら言った。
「御詠歌以外の音楽を滅ぼすなんて許されない。そっちがその気ならこっちにも考えがある! ……歌で対抗だーーーー!!!! 御詠歌だけなんて、こころの余裕足りてないぞ!!」
持って来たタンバリンを叩いて叫ぶ菊狸。
「な、な、なんだ貴様! 御詠歌は詠っていれば心が綺麗になるんだぞ!」
ビルシャナも負けずに叫ぶ。
「えぇっと、なんだっけ。御詠歌って仏さま? のための歌って聞いたんだが……僕の知ってるかみさまとはちょっと違うが、あんまり余裕のない信者はきらいだなぁ。こわいじゃん、うん。というわけで僕は僕の好きな歌をうたうーーーーー!!!! いえーい!!」
セルフドンドンパフパフしながら、菊狸は本当に自前の歌をうんにゃららほんにゃららと節をつけて歌い出した。
突然のケルベロス来訪に度肝を抜かれた老人達は、呆気に取られていたが、途端にそれぞれ自分の好きな御詠歌を歌って対抗し始めた。
「歌え歌え! こんな軟弱な歌、滅ぼしてしまえ!」
それをさらにけしかけるビルシャナ。80代老人の御詠歌vs菊狸のオリジナルソング。あっという間に膠着状態。
「へーたくそっ、へーたくそっ」
そしてビルシャナが菊狸の歌をけなす。その大人げなさにミーシャが動いた。
「御詠歌と和讃以外の音楽を滅ぼそうとするのは自分の歌に自信が持てない決定的な証拠になるぞ」
客観的に考えてそうなので、ミーシャは思うとkろを述べた。
「御詠歌と和讃に自信があれば他がどうであれ関係ないはずだ。本当は御詠歌と和讃が一番だと思ってないからそういう行動にでるのではないか?」
「御詠歌こそ真の日本の歌だ! 母なる心だ! それなのに名も知られず後継者不足なのは許しがたい。若者達は何故か讃美歌や聖歌の方を知っている始末。その現状を変えるために我々の教義は必要なのだ!」
ビルシャナ力説。ありがたやありがたやと拝む老人達。
「好きなもん好きっていうのは何も言うつもりはねーけど、自分の好きなもん以外は滅べだなんて今時ロックでも流行んねーぜじーさん達!」
そこで環がつっこんだ。
「解ってる、みなまで言うな! 後継者がいないっつーのは確かに一大事ッスし、滅びる危機すら感じるのは分かる! 分かるが、ここであんたらが歴史に泥を塗るっつーことは御詠歌にも一緒に罪を被って、畏怖の対象にしかなんねーッスよ! それでいいのか、じーさん達は?」
環にそう言われて、老人達ははっと気がついた顔になった。
「そ、そうか、仏様に申し訳ない事はしてはならぬ……」
「そうッスよ!」
環が畳みかけようとするがビルシャナが物凄い目で睨み付けてくる。
しかしそこでアリシアが動いた。
「他を排せば最後に残るは望んだものだけ。ええ、真理でしょうや、しかしそれはなんとも空虚。歌とは感情を旋律とするもの。幾度排そうと、幾度上塗ろうと、必ず生まれるもの。ならば、御詠歌もそうであると、信じてはいただけませんか? 弛まぬ研鑽こそが、遠い道にして、きっと最も近き道でしょうから。だからどうか、あなた方の見地を以て私にその良さを教えてくださいまし?」
「ええとね、御詠歌っていうのは、歌いやすいようでいて奥が深いのよ。楽譜じゃなくてこういうのがあるんだけどね」
すると老人達は勤行集を取り出してアリシアに手取り足取り御詠歌を歌い始めた。御詠歌に興味を持って貰えるだけでも嬉しいのに、相手が若い綺麗な娘だったためもう大喜びである。アリシアもそこは素直に聞く。
「私に教えてくださったように、少しずつ導いてあげてください。押し付けるのでなく、共存の道を探しましょう? そうすれば、きっとつながっていきますよ」
御詠歌を一曲教わったアリシアが礼を言いながらそういうと、老人達はもうみなニッコニコ。
「え~そうかな~」
何か照れてる。
「何をデレデレしているかー! その女は敵だぞ! たぶらかされているんじゃない!」
そこでビルシャナが怒鳴った。
えっ? という顔になる信者達。御詠歌を布教しているつもりだったのに、何で怒られているんだ?
しかしビルシャナが怖い顔で怒鳴っているのですごすごと元の場所に戻る。
「御詠歌か。確かに良いものだ。伝統と技術に裏打ちされた確かな芸術…。だが! 愛故に道を見失ったな!」
それを見て鐐が負けずに怒鳴った。共存の道を自ら絶つとは馬鹿げている。
「御詠歌とか御仏の教えを歌うもの。慈悲と慈愛を詠うべきものが排斥を掲げるだと? 恥を知れ! そもそも『御詠歌が最高』とは何と比べているのかね? 他の楽曲であろう! 他のものがあってこそ映えるというのに、無くなれば最高から比較するものの無い『最低』に落ちるだろうが!」
鐐に怒鳴られて老人達はシュンとしている。
「最低であり同時に最高だろうが! それ一つしかないんだから正にオンリーワンでナンバーワンだー!」
ビルシャナはいきり立って叫んでいる。
「御詠歌は仏教の教えを和歌の節に乗せたものだよな。他を全部滅ぼすって事は声明も読経も滅ぼすって事だな」
そこでおもむろに清嗣が登場。
インド辺りの正式の袈裟をつけ、四対の羽を後光みたいにして現れた。その後光効果に老人達は皆びびってひれ伏し拝む。ビルシャナが慌てている。
「仏教徒なら分かるだろう。仏の教えにそう言う事しろって言うのがあったか? 有ったなら教えて欲しいね。さぁ、言ってご覧なさいな」
ゆっくりとした口調で痛いところを突く清嗣であった。
ビルシャナもぐぬぬという顔で黙っている。
「こんな行為を行ったものの行く末は……地獄じゃないのかな。音楽は人の喜び幸せ悲しみや怒りを伝えるもの。それを御詠歌の興隆のために滅ぼして良いなど心得違いも甚だしい。恥を知りなさい」
重く優しく、しかし締めるところは締める清嗣。
苦しそうな顔をしていたビルシャナだったが懲りずに言う。
「み、御仏の音楽である御詠歌が廃れた現代こそ正に地獄だろーが! 我らは地獄を極楽に変えようと……」
しかしあまりに苦し紛れのため鐐が失笑してしまった。
「地獄とか言われても、知らなかったし……」
そこでレテが突っ込んだ。
「ぶっちゃけ御詠歌って、この一件で初めて知った感じでしてめっちゃマイナーですねの一言しかないのですけれども……マイナーですねしか感想が出ないくらい知らないな…御詠歌…」
絶望的な表情になる老人達。
「や、やっぱり御詠歌は滅びるしかないのか……」
メソメソ泣き出す者もいる始末。
「まあ、他の音楽を滅した所で、知名度が上がる訳ではないでしょう。メジャーが消えれば音楽の媒体自体から人が離れますよ。例えば保育園とか小学校で、小さいお子さん相手に御詠歌の文化に触れて貰ってみては? メジャーな音楽を知る前なら、案外すんなり馴染んでくれるかも」
しかし御詠歌も知らなかったレテが真剣な表情で考えてくれたので、老人達は泣き止んで顔を上げた。
「ぶっちゃけ、なんていうか。後継者が欲しいなら青田買いしかないのでは。生えてる他の草を刈り取るんじゃなくて、自分のとこの種を撒くあたりから始めましょうよ」
レテがぐっと拳を握り締めながら言ったので、老人達の顔に希望が戻る。
「綺麗事を言うなっ! もうこうなったら他の音楽を滅ぼすしか……」
しかしビルシャナだけが喚いている。
「恩徳讃ぐらいなら俺は知ってるぞ」
そこで光廣が出て来た。
そして調子っ外れな音程で大声で御詠歌を歌い始めた。
「如来大悲の恩徳は~ 身を粉にしても報ずべし~ 師主知識の恩徳も 骨をくだきても謝~すべし~♪」
酷い。本当に酷いとしか言いようのない御詠歌であった。
これには味方もフォロー出来ず呆然とする。
「ひ、酷いよ。そんなの恩徳讃じゃない!」
御詠歌を愛する老人達は口々に抗議。
「バカにしてるのか御詠歌を! 冗談じゃない!!」
ビルシャナはまた怒っている。
「歌は世につれ、世は歌につれと言うだろう?流行を取り入れろ、とまでは言わんが現代風にアレンジしてみたらどうだ?例えば、ジャジーにしてみるとか、ロック調にしてみるとか。耳慣れた曲調に乗せることで、受け入れやすくはならないか? あとは御詠歌や和讃をテーマに扱ったアニメを制作してみては? タイトルは『ごえいか!』とか」
しかし光廣は負けずにそう切り返した。
「仏法をなんだと思っているんだ、貴様はー!!」
ビルシャナが仁王のような顔で怒鳴るが光廣はけろりとしていた。
「文句ばっかり言っとらんで、努力ぐらいせんか!そういう手間暇を惜しんだから、今の有り様だろうが!」
仲間も耳を塞ぐような大声で大喝する光廣。
老人達は両手で両耳を塞ぎ、うずくまったが、やがて顔を上げた。
「そ、そうだな。こんな若い人が恩徳讃を知っていたし、僕ちゃんも励ましてくれたんだから、御詠歌にはまだ未来があるかも……」
80代の老人にしてみれば光廣は若い人でレテは僕ちゃんであった。呆気に取られる二人。
「ビルシャナさん。我々は地道に行くよ。若い人に励ましてもらったからね。乱暴な事はやめて、仏様の言う通りに平和に御詠歌を広めていくよ」
そう言って老人達はのたのたしながらケルベロスの後ろに回り込んでしまった。
「な、何を言うか貴様らー! そんな甘っちょろい事で、本当に御詠歌が復活すると思っているのかー!!」
仰天してビルシャナが喚くが、か弱い老人達はケルベロスの後ろから彼らを応援し始めた。もう完全に寝返り完了。
後はビルシャナ退治のみである。
●
アリシアがブレイブマインを行い戦闘が開始された。
鐐がアイスエイジインパクトでビルシャナを凍らせる。
ミーシャが惨劇の鏡像を送り込む。
レテと環がブレイブマインで味方の力を高める。
菊狸がチェーンソー斬りでバッドステータスを増す。
光廣の旋刃脚が炸裂。
そして清嗣が御霊殲滅砲をぶっ放した。
「御詠歌の理解せぬ罰当たりが!!」
ビルシャナは大声で喚くとビルシャナ閃光で前衛を吹き飛ばした。
そこに追撃するように八寒氷輪を入れ、さらにビルシャナ閃光を炸裂させる。
間髪入れずにレテのせんせいと環のシハンが清浄の翼を広げて主人とその仲間を守った。
アリシアのシグフレドと清嗣の響銅も回復の追いつかないケルベロスに属性インストールを入れて回る。
アリシアはメタリックバーストを行い味方を回復して力を高めた。
レテがグラインドファイアでビルシャナを燃やす。
環は催眠魔眼を行う。
菊狸の熾炎業炎砲。
光廣が達人の一撃を居えっ琉。
鐐がジグザグスラッシュ。
ミーシャがジグザグスラッシュ。
そして清嗣の【暴走する殺戮機械】。
度重なるジグザグに動けなくなるビルシャナ。そこに鐐がジャズを流してくるくる周りながら近づいて来る。
「ねーどんな気持ち? 気分はどうだい? 潰そうとした曲に潰される心持ちは?」
「むきーっ!!」
『わたしがこれを使うという事は貴様が必ず倒れると言う事だ』
ミーシャがダインスレイブ--伝説の魔剣と同じ名のグラビティで重力の奔流でビルシャナを包み込みバラバラにしていく。
『せめて優しき眠りの中で落ち逝くがいい…』
優しき微睡みへの誘いで鐐はビルシャナを自分の毛皮に抱き留めた。その威力は厳冬の朝のお布団、蜜柑完備の炬燵に匹敵する誘惑。
「排斥と侮蔑の苦しみは充分思い知ったかね? もう人には戻れないのだったな…。せめて御詠歌に溢れる夢に落ち逝くがいい」
ビルシャナはトドメを刺された。
●
戦闘後。
「これにて一件落着! かな? ハッハッハッ」
大笑いする光廣がいた。
そして彼は、改心した老人たちに、恩徳讃の正しい音程を一生懸命教わっていた。
清嗣もまた、信者さん方に準備しておいたお茶とお菓子を振る舞った後に楽しそうに御詠歌を唱えていた。
「そうですね、気味悪いお寺もヒールで修理して何れはお坊さんをお迎え出来る様に手配するのも或いは我々の勤めかなぁ。それにしても笹ヶ根さん策士ですな~」
そういう訳で、ケルベロス達は廃寺もヒールし、老人達も笑顔にして、また一つ徳を積んで帰ったのだった。めでたしめでたし。
作者:柊暮葉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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