ハロウィンで賑わう大阪市内。カボチャの馬車を想わせる様な全長1m半くらいの攻性植物、『南瓜の爆車(ハロウィンキャレイジ)』が、ハロウィンの飾りつけに彩られた商店街を駆ける。
南瓜の爆車は人々を襲うわけでもなく、ハロウィンパーティーの会場を突っ切り、ハロウィンの仮装行列を追い抜いて、ただひたすらに大阪市内を爆走するのであった。
「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女達が動き出したようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の声が会議室に響く。
「この事件に関連して大阪市内では、攻性植物の南瓜の爆車が大量発生して、市民に被害がでています」
幸い、死者はでていないが、ハロウィンの飾りつけをした商店街や、ハロウィンパーティーの会場、コスプレした人々の行列など目掛けて暴走を繰り返しているらしい。
「南瓜の爆車の総数は不明ですが、概算で100体以上の南瓜の爆車が大阪市内を駆けまわっていると想定されます」
「南瓜の爆車は単体で移動しており、一体一体の強さはそれほどでも無いので、大阪市内を警備しつつ出来るだけ多くの敵を撃破してください」
南瓜の爆車を市内に放ったのは、パッチワークの魔女に新たに加わった、『ヘスペリデス・アバター』というドリームイーターであるらしい。
ヘスペリデス・アバターは、カンギ戦士団に加わった第11の魔女・ヘスペリデスの力を受け継いでいる可能性が高く、今回の事件もその力を使っているのだろう。
「この暴走事件は、ハロウィンの魔力を集める為に行われているようで、南瓜の爆車達は、10月31日の深夜12時に自爆して、集めた魔力をヘスペリデス・アバターに届けようとします」
この魔力を受け取る為、ヘスペリデス・アバターも、大阪市内に潜伏していると思われる。うまく見つけ出せば、ヘスペリデス・アバターを撃破する事も可能かもしれない。
続いて南瓜の爆車の戦闘能力について、セリカが説明を始める。
「先程説明した通り、南瓜の爆車一体の強さはそれほどではありません」
「攻撃方法は口からの火炎弾、走っている勢いのままでの体当たり、それと戦闘が長引くとその場で自爆することもありそうです」
ハロウィンの魔力を集めることが目的であるため、体当たりのままケルベロスを無視して走り続ける可能性もある。
「南瓜の爆車の数を考えると、短期決戦を推奨します」
ハロウィンぽい雰囲気の場所が襲撃される可能性が高いが、移動中を見つけて撃破する事もできる。
「幸い、携帯電話での通話も可能であるので、市民からの目撃情報があれば、随時、近い場所にいるチームに連絡が入るようになっています」
ただ、敵は常に移動している為、通報を受けてから駆け付けるのでは間に合わない可能性も高いので、通報に頼りすぎないようにする必要はあるだろう。
「少人数で活動をつづけた場合、付近の南瓜の爆車が集まって少人数のケルベロスを戦闘不能に追い込もうと動く可能性がある為、作戦行動時は全員で固まって行動するのが良いでしょう」
「皆さんの力で、どうか事件を食い止めてください」
参加者 | |
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千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749) |
尾守・夜野(ライアー・e02885) |
円谷・円(デッドリバイバル・e07301) |
月宮・京華(ドラゴニアンの降魔拳士・e11429) |
カロリナ・スター(ドーントレス・e16815) |
コレ・アレソレ(自動迎撃機能付き冷蔵庫・e18190) |
一之瀬・白(八極龍拳・e31651) |
ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017) |
●
――午前9時。ハロウィンイベントを今か今かと待ちわびる、そわそわとした空気の中、8人のケルベロス達が一台の車の前に集まっていた。
今回の目標である、南瓜の形をした車の攻性植物、『南瓜の爆車(ハロウィンキャレイジ)』。その標的としておびき寄せる事が出来ないかと考え、ケルベロス達は皆、ハロウィン用の仮装をしている。もちろんハロウィンを楽しむためという意味合いもあるのだが。
「皆が楽しんでるハロウィンだ、南瓜どもに邪魔はさせねーぞ!」
海賊の船長を思わせる仮装をした、千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749)が叫ぶ。
去年着たハロウィン仮装に身を包む尾守・夜野(ライアー・e02885)、円谷・円(デッドリバイバル・e07301)、一之瀬・白(八極龍拳・e31651)の3名。
「折角だし、新しい衣装用意したかったよ」
「その仮装も円殿に良く似合ってるのじゃ」
「ありがと白君。白君も似合ってるの」
黒いとんがり帽子を被り、魔法使いの仮装をしているカロリナ・スター(ドーントレス・e16815)。同じように魔女の仮装の月宮・京華(ドラゴニアンの降魔拳士・e11429)。ただしセクシーな感じではなく、肌の露出はほとんどない。
そして、仮装と呼んでいいのか、冷蔵庫の仮装? をしているコレ・アレソレ(自動迎撃機能付き冷蔵庫・e18190)。
気になったカロリナがコレに話しかける。
「それ、いつもの格好だよね……?」
「冷蔵庫の仮装です」
「けど、会議の時……」
「冷蔵庫の仮装……です」
仮装だと言い張るコレに、それ以上何も言えなかった。
そんなやり取りをしている間、南瓜の爆車を見かけたという通報に、円が『スーパーGPS』を使い自分達の現在位置、通報のあった場所を地図で照らし合わせていく。
「ここからそんなに離れてないみたいだよ」
「今年は一段と賑やかなハロウィンになりそうだな!」
吸血鬼の仮装をしたラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)が叫ぶと、用意していた車へと乗り込むように促した。
「しかし全然進まんな……」
移動時間短縮にと用意した車だが、ハロウィンのイベントが所々で行われ、交通規制で迂回させられることも多く、思うように目的地へと進めないでいた。
これはダメだと即座に判断したラジュラムは、車を近くの駐車場へと駐める。
吏緒、京華、カロリナ、白の4名は上空から捜索するべく、飛び上がる。他のメンバーは、ハロウィンのイベント会場を突っ切る形で走り出す。
「南瓜の野郎はどこにいるかな? これから砕きに行きますよっと」
地図を片手に探す吏緒。
「見つけました」
京華の情報を基にケルベロス達は、南瓜の爆車が通るであろう道へと先回りした。
●
「白君、アレいくよっ」
「アレじゃな、了解じゃ!」
視線を遮るように立つ白。その間に円の詠唱が始まる。
「惑いの月竜よ、その力今ここに解放せよ!」
詠唱が終わり、三日月型の鱗が南瓜の爆車へと襲い掛かる。
「続くのじゃ、円殿! ハァァ……ォラァッ!」
円の攻撃に続いて目にも止まらぬ速さで、南瓜の爆車の懐まで突進する白。
「我流・猛虎硬爬山【屠龍】!」
超重力の掌打が放たれる。
最初から飛ばす2人。相手にするのはこの1体だけではない。時間が限られている以上目指すのは短期決戦。
「トリックアーーーンドトリーーーーーーート!! お菓子をおいていき、いたずらもさせろなのです!」
夜野の咆哮に南瓜の爆車が怯む。すかさずコレが轟竜砲を放つ。
その場から去ろうと、南瓜の爆車は体当たりをしながら速度を上げた。
「おっと逃がさないよっ、降魔真拳!」
「こいつもおまけだ、ゼログラビトン!」
カロリナとラジュラムの攻撃を受け、南瓜の爆車のバランスが崩れる。
「このチャンス逃しません」
京華の竜爪撃を受け、南瓜の爆車が横転する。
「さあ、南瓜割り大会だ!」
トドメと放った、吏緒のドラゴニックハンマーの一撃で、南瓜の爆車は砕け散った。
「次のハロウィンがおじさんを呼んでいるぞ!」
次の南瓜の爆車を探すべく、ラジュラムが走り出す。続くように他のメンバーも移動を開始した。
「3体目撃破です」
コレがバスターライフルで南瓜の爆車を撃ちぬく。
4体目の南瓜の爆車を倒し、次を探し商店街を走る。
「おや、このお店から鉄板で熱せられた、香ばしいソースの香りが……」
『ぶらり再発見』で見つけたお店に足が止まる夜野。町中を走り回って、小腹が空いてきていた所で美味しそうなソースの香りに、お腹がぐぅと鳴る。
「おーい、置いてくぞ」
「うぐぐぐぐ、我慢なのです……ぐすん」
呼ぶ仲間の声に、夜野は残念そうにその場を後にするのだった。
「時空凍結弾」
「花楽音流<宴楽>」
カロリナ、ラジュラムの攻撃が立て続けに南瓜の爆車を襲う。
「あちちちちっ」
南瓜の爆車の放った火炎弾を受け止める白。
「おかえしじゃ」
反撃に白が炎弾を放つと、南瓜の爆車へと直撃し爆ぜる。更に夜野の放った槍が無数の雨となって、南瓜の爆車を貫いた。
6体目の南瓜の爆車を撃破した頃には、12時を回っていた。
立て続けに戦闘をしていたケルベロス達。その顔にはかすかに疲労が見える。
このまま続けて効率が悪くなってはいけないと、ケルベロス達は午後に向けて昼食がてら休憩をすることにした。
●
「んー食後のみかんは最高なの」
昼食を食べ終え、用意してあったみかんを頬張る円はとても幸せそうにしている。
「そこのお嬢さん、おじさんとハロウィンナイトを楽しまないかい?」
ラジュラムがポケットから『かぼちゃのお化けシュークリーム』を取り出し、通行人の女性に声をかけている。もちろん情報収集の為だが、誤解を生みそうな台詞に周囲の仲間の視線が刺さる……。
「はてさて……ここが道具の頑張りどこです」
コレが用意してあった複数の端末を駆使して、情報をまとめている。自身を道具扱いするが、卑下しているつもりは一切なく、道具なりの誇りを持って行動している。
『Trick or Treat!』
休憩している最中、近くのイベントに参加していた子供達がケルベロス達の元へと集まってくる。
「はい、Happy Halloween!!」
「お、いらっしゃい。君達には飴ちゃんをあげよう」
寄ってきた子供達一人一人に、用意してあったお菓子をあげる、京華とカロリナ。
『ありがとうっ!』
子供達はお礼を言って嬉しそうに走っていった。
「大人になると貰う側じゃなくって、あげる側なんだよね」
去っていく子供達を見つめながら、少し悔しそうにしているカロリナ。
「あの笑顔を守るためにも、もうひと頑張りしないといけませんね」
「よし、この悔しさは南瓜の爆車にぶつけるとしよう!」
休憩を始めて30分ほどした頃、情報を整理し終わったコレが声をあげる。
「いくつかの南瓜の爆車の情報を掴んだです」
「よっしゃ、先に上空に上がってるぜ!」
吏緒が翼を広げ、飛び立つ。京華、カロリナ、白も一足遅れて上空へと上がる。
休憩を終え、南瓜の爆車を殲滅するべく、捜索を再開した。
「鉄拳制裁!」
京華の全力の一撃が南瓜の爆車を砕く。これで9体目。
情報の中から一番近い場所を選択し走り回る。そのおかげで人の多い場所に辿り着く前に撃破することが出来ていた。
被害がないのを確認すると、次の現場へとすぐさま走り出す。
――そして、11体目。徐々に太陽も傾いてきている。
円のウイングキャット、蓬莱が南瓜の爆車の放った火炎弾を受け止める。
「惑いの月竜よ、その力今ここに解放せよ! 月鱗の欠片!」
詠唱を終え、円が放った三日月型の鱗が、南瓜の爆車目掛け飛んでいく。追うようにカロリナが距離を詰める。そして拳から放たれるのは、魂を喰らう降魔の一撃。
「今宵、花韻の調べが告げるのは和の調停」
ラジュラムが日本刀『黒塗』を構え、一閃。
「くらえっ竜の一撃」
京華の拳骨が南瓜の爆車へとめり込む。
「自爆するつもりだよ!」
南瓜の爆車が輝きだしたのを見て京華が叫ぶ。
白が急加速――南瓜の爆車の懐へと潜り込む。
「我流・猛虎硬爬山【屠龍】!」
臨界ギリギリまでグラビティを集中させた、超重力の掌打を南瓜の爆車へと叩き込む。
「零姫顕正・獣鉄疾駆」
夜野の突撃に南瓜の爆車が空中へと浮き上がる。そこへ吏緒が跳び上がり、上からドラゴニックハンマーを振り下ろすと、南瓜の爆車が地面へと叩きつけられる。
「さぁさぁ一曲聞いてくです」
コレの奏でる旋律がトドメとなり、南瓜の爆車は自爆することなく消滅した。
●
時間は16時。11体目の南瓜の爆車を倒してから、目撃情報は寄せられていない。
ケルベロス達は、ひとまず車を駐めておいた駐車場へと戻ってきていた。
上空から四方の確認をしていた吏緒、京華、カロリナ、白の4名が戻ってくる。
「この近辺にはそれらしいのは、見当たらなかったぜ」
「私の方も見つかりませんでした」
「ボクの方も居ないね」
「全部倒せたのじゃろうか?」
遠くから子供の笑い声が聞こえる辺り、平和そのものに感じる。
ひとまず殲滅完了と判断する。どっちにしても現状対処することはない。
それならばといつでも動けるようにしながら、ハロウィンを少しでも楽しもう。
「会場はあっちか? トリックオアトリート」
我先にと吏緒が走り出す。
「あのお店まだやってるかな……?」
お昼ごろに見つけたお店を思い出す夜野。覗いてみて開いているようなら入ってみるのもいいかもしれない。
「白君一緒にまわろっ。蓬莱もいくよっ」
「円殿、待ってなのじゃ」
円を先頭に蓬莱、白が慌てて追いかけていく。
「残ったお菓子、配りに行きますか」
「それならボクにも少し分けて欲しいかな?」
お菓子の交換をしながら歩き出す京華とカロリナ。
「車に積み終わったら俺達もハロウィンを楽しもうか」
コレの使った端末を一緒に片付けながら、ラジュラムが話しかける。
「そうしますです」
ケルベロス達は思い思いにハロウィンを楽しんだ。
作者:神無月シュン |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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