南瓜爆車大阪の陣~クレイジーパンプキン

作者:飛翔優

●南瓜の爆車大暴走
 様々な彩りと装いが、大阪市を飾るハロウィンの日。
 道路も歩道も関係なく、時には家の庭さえも道として、その南瓜は爆走していた。
 四輪駆動のカートに身を委ね。大きな後輪を熱く輝かせ。掘られた瞳にほとばしる炎が導くまま、縦横無尽に傍若無人に。
 泣いている。
 凄まじい勢いで駆け抜けていく南瓜に驚き、転んでしまった男の子が。
 時間をかけて準備したハロウィン飾りを破壊された店の奥さんが。
 ハロウィンパーティーの会場を無茶苦茶にされてしまったオーナーが。
 けれどその南瓜は気にしない。
 様々なものをぶっちぎり大阪市内を爆走する……!

●南瓜爆車討伐作戦
 足を運んできたケルベロスたちと、挨拶を交わしていくセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)。
 メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「ハロウィンの力を求めて、ドリームイーターの魔女たちが動き出したようです」
 今現在、大阪市内では攻性植物の南瓜の爆車が大量発生し、市民に被害が出ている。
 幸い死者は出ていないものの、ハロウィンの飾り付けをした商店街やパーティー会場、コスプレをした人々の行列などに対する暴走を繰り返しているらしい。
 総数は不明。しかし、おおよそ100体以上はいると想定されており、非常に危険な状態だ。
「ただ、これまた幸いなことに、南瓜の爆車は単体で移動しています。その上、一体一体の強さはさほど高くはないので、各個撃破していく事が可能でしょう」
 そのため、大阪市内を警備をしつつできる限り多くの南瓜の爆車を撃破すること。それが今回の主な目的となる。
「この南瓜の爆車を市内に放ったのは、パッチワークの魔女に新たに加わったヘスペリデス・アバターというドリームイーターのようです」
 ヘスペリデス・アバターはカンギ戦士団に加わった第11の魔女・ヘスペリデスの力を受け継いでいる可能性が高く、今回の事件もそれを用いていると思われる。
 また、この暴走事件はハロウィンの魔力を集めるために行われているようで、南瓜の爆車たちは10月31日の深夜12時に自爆して、集めた魔力をヘスペリデス・アバターに届けようとするようだ。
「この魔力を受け取るため、ヘスペリデス・アバターも大阪市内に潜伏しているかと思われます。上手く見つけ出せば、撃破する事ができるかもしれませんね」
 続いて……と、セリカは具体的な説明へと移っていく。
「現場となっているのは大阪市内。南瓜の爆車が主に狙っているのはおそらく、ハロウィンぽい雰囲気の場所。先程の説明にあったような、飾り付けがされた商店街、ハロウィンのパーティー会場、あるいは仮装行列……といったところになるでしょう」
 もちろん、移動中の南瓜の爆車を発見すれば、攻撃を仕掛け倒してしまう事も可能だろう。
 また、今回は携帯電話での通話も可能となっている。そのため、市民からの目撃情報があれば、随時近い場所にいるチームに連絡が入るようになっている。
「もっとも、南瓜の爆車は常に移動しているため、連絡を受けてから駆けつけるのでは間に合わない可能性も高いです。そのため、基本的には皆さんで探し当てて撃破する……といった形になるかと思います」
 そして感じの戦闘能力だが……。
「個体差もありますし、グラビティに関しても確定的なことは言えません。ただ、先程説明した通り、一体一体の強さはさほどでもないため、正攻法で確実に戦っていく事が一番の近道になるかなと思います」
 基本的には南瓜の爆車の捜索に重点を置いて行動していく形になるだろう。
 以上で説明は終了と、セリカは締め括る。
「幸いといいますか、大阪市内の大阪城近辺は攻性植物に制圧されており、その辺りでは南瓜の爆車は活動していないみたいです。そのため、それ以外の場所を探索していくという形になるでしょう」
 そして、発見したのなら速やかなる撃破を。
 多くを撃破することで、大阪市の平和を保つことができるのだから……!


参加者
アリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220)
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
西院・玉緒(夢幻ノ獄・e15589)

■リプレイ

●暴走南瓜を探し出せ!
 魔女、ゾンビ、吸血鬼にフランケン、狼男に布お化け……温もりあふれるジャック・オー・ランタンに彩られ、人々がつかの間の非日常を楽しんでいくハロウィンの日。
 ミニスカナースの仮装に大きな大きな黒マント。大鎌には南瓜の飾りをつけた翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)は、仲間たちと共に大阪の街を歩いて行く。
 浮かれている街中で探しているのは……。
「かぼちゃのばくしゃ……ハロウィンキャレイジ、だっけ。めいわくな話、ね」
「そうだね」
 白い魔女、比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)が相槌を打つ。
 警戒は解かぬまま、ケルベロスたちは街の平和を乱す南瓜の爆車に対する会話を交わしていく。
 様々な思いを聞きながら、ロビンは空を翔ける仲間たちなどからもたらされる情報も加えて地図上に書き記していく。
 今のところ、南瓜の爆車がいた気配は……。
「いました。皆様のいる位置から見て、北東の方角になります」
 通信機器から、空を翔けていたロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)の声が聞こえてきた。
 一呼吸置き、ロビンは予想される遭遇位置にばつ印を刻みながら尋ねていく。
「いっしょに、行く?」
「いえ、今から互いに移動すれば遭遇位置で合流できるはずです。ですので、そちらで落ち合いましょう」
「わかった」
 契を交わし、ロビンは同道する仲間と共に北東へと進路を取る。
 一方、ロベリアもまた現地へと滑空しながら空を飛んでいた仲間たちとの合流を果たしていった。
「……現場近くに、一般人の方々がいないと良いのですが……」
 願いを胸に、ロベリアたちはデパートの前に到達。
 信号を2つ越えた先の道を走っている地上組を一瞥した後、東北の方角へと向き直った。
 視線の先、轟音を奏でながら向かってくる顔が彫られた南瓜が1つ。
 爆走する南瓜の爆車を前に、古風な魔女に扮するトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)は身構えた。
「騒がしいですね。曲がりなりにも車と言うなら、道交法くらいは守ってもらいたいものです」
 もっとも……と、トエルは地面を蹴る。
 背後で仲間たちが合流を果たしていくのを感じながら、向かい来る南瓜の爆車の前に立ち塞がった。
「まぁ、こういう方々にはこちらもルール無用で倒させてもらいますけど」
 急ブレーキに似た音が響く中、絡み合う茨の槍に炎を走らせ突き出していく。
 南瓜の頬と思しき辺りをかすめ火種を与える中、両者の体に影が差した。
 トエルごと南瓜の爆車を飛び越えた西院・玉緒(夢幻ノ獄・e15589)は、勢いを反転させ南瓜の後頭部に蹴りを放つ。
 捉えた後頭部にひびが入っていくさまが見えた。
「……そこまで強くないってのは、本当みたいね」
「油断はできないけれど、ね」
 アリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220)が微笑み、ビハインドのリトヴァに視線を送っていく。
「頼りにしているわ、わたしのいとし子」
 一呼吸おき、南瓜の爆車へと視線を移した。
 視線に誘われたか、南瓜の爆車はアリッサに向けて加速する。
 微笑み絶やさぬままステップを踏み、花をほころばせながら離脱。
 アリッサの横を駆け抜けた瞬間に、ロビンがオーラの塊を当て街灯へとふっ飛ばした。
「……」
「この調子で畳みかけよう」
 黄泉がベンチを足場に跳躍する。
 南瓜の爆車の額を捉え、大きなひびを走らせていく。
 早々に次の個体を探すため、ケルベロスたちは攻撃に集中し――。

●暴走南瓜をぶっ飛ばせ!
 ――一体目の南瓜の爆車は消滅した。
 新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)は安堵の息を吐き出しながら、攻撃の大半を受け持ってくれた前衛陣に電流に寄る治療を行っていく。
「無事終わったな。他の南瓜の爆車も、このような輩ばかりならばよいのだが」
「油断はできないけど……まあ、ひとまずお疲れ様、だね」
 労いながら、千歳緑・豊(喜懼・e09097)は手帳に先程止めを差した感覚を記していく。
 ケルベロスたちは治療や後片付けなどの傍らに短い休憩時間を挟んだ後、再び南瓜の爆車を求めて歩き始めた。
 もちろん、翼あるものは空へと向かう。
 ないものたちは地上から、翼あるものたちは他の情報提供者などと連絡を取り合いながら、異変がないかを探っていく。
 中心となるのは、予め定めておいた3つの重要拠点。ハロウィンで賑わうデパートに、ハロウィンキャンペーンが行われているカラオケボックス、同様にイベントが繰り広げられているレストラン。
 カラオケボックスに到達した時、恭平は市民からの連絡を受け取っていく。
「……わかった、すぐに行く。レストラン近く、だな」
 電話の向こう側に確認を取りながら、手の開いている仲間たちに発見場所を知らせていく。
 空を飛ぶ者たちへも伝われば、程なくしてレストラン方面へと駆けて行く南瓜の爆車が見つかった。
 互いの距離が近かったことから、道中空を飛んでいたものたちと合流し……レストランから離れた場所にある大通り。平時ならば沢山の車が行き交っていただろうY字路にて、新たな南瓜の爆車と遭遇する。
 玉緒は小さなため息を吐き出した。
「さっきも思ったけど、その感じじゃあ挑発も煽りも効果なさそうね。……ただのパシリ南瓜だし?」
 反応はない。
 かまわないと、銃口で眼鏡を押し上げていく。
「……ふふ。遊んであげるわ」
 次の刹那には跳躍し、速度を緩めず突撃してきた南瓜の爆車の額めがけて蹴りを放つ。
 したたかに打ち据えられたかみるみるうちに速度を落としていく南瓜の爆車を見つめつつ、玉緒は再び仕掛ける隙を伺っていく。
 仮想にも似た普段の姿。ジャケットをはためかせ、谷間もおへそも露わな女性らしい肉体美をこれでもかと見せ付けながら……。

 地獄の炎でできた獣が、南瓜の欠片を食い尽くした。
 担い手たる豊はメモにその様子を記しつつ、仲間たちへと向き直る。
「今ので七体目だね」
 うち、2体は豊が止めを刺した。
「情報通り、わりと楽な相手だったね。気を抜くわけには行かないけど」
 頷き合い、ケルベロスたちは再び空と地上に分かれて探索を始めていく。
 デパートからカラオケボックス、カラオケボックスからレストラン、レストランからデパート……最初に定めておいた三地点を地上組がめぐる中、南の空はアリッサが深い息を吐き出していた。
「見える場所にはいないみたいね。姿を消したりできる子がいるとは思わないし……もう、このあたりのは片付けてしまったのかしらね」
「そうかもしれません」
 東の空から探索していたトエルが、アリッサの正面にて降り立った。
 続いて、北側を探索していたロベリアが2人のもとへとやってくる。
 全員揃い、収穫なしという情報を共有した上で、トランシーバーの向こう側を交えての作戦会議が始まった。
 周囲の警戒は怠らぬまま、ロベリアが切り出していく。
「さて、どうしよう。この辺りにはもう、南瓜の爆車はいないらしいが」
「かと言って、わたしたちのいない間にこの辺りに来る南瓜の爆車がいるかもしれないのよね」
 ロベリアの言葉に、頷くトエル。
「そうだ、ね。だから、ちょっとだけ探すばしょをひろげて」
 言葉半ばで、トランシーバーの向こう側から制止がかかった。
 連絡が来た。
 一般の人々から。
 デパートから少し離れた場所……探索範囲外だった大通りで南瓜の爆車が暴走していると。
 アリッサは頷き、踵を返す。
「それでは、そちらで合流しましょう」
 現地へは飛んで行くと伝えながら、アリッサは空飛ぶ仲間たちと共に南瓜の爆車を目指していく……。

 慌てて避難を行ったのか、食べ物などがそのまま置かれているテラス席。変わらず世界を飾り続けている南瓜飾りが楽しい飲食店前の大通りを、南瓜の爆車が走っていた。
 逃さぬため、豊が進路上に割り込んでいく。
「それではやっていこうか。直ぐに彼女たちもやってくるだろう」
 地獄の炎でできた獣を出現させ、南瓜の爆車へと差し向けた。
 正面からぶつかりあえば、急ブレーキに似た音色が空高く響き渡る。
 直後、南瓜の爆車の頭上に帯電した幾本もの黒曜石の針が出現した。
「我呼ぶは黒の連針!」
 担い手たる恭平が告げると共に、黒曜石の針は南瓜の爆車に襲いかかる。
 さなかにはロビンが踏み込み、大鎌に虚ろなオーラを走らせ振り抜いた。
「……てごたえ、かわらない」
 先程までと同じように倒せるだろうと続ける中、南瓜の爆車は削り出された眼窩をロビンへと向けてきた。
 ロビンは飛び退く。
 南瓜の爆車は炎の獣を振り払い加速する。
 間にロベリアが降り立ち受け止めた!
「……やはり軽いですね」
 即座に南瓜の爆車を跳ね除けながら、ロベリアは地上組へと視線を送る。
 豊は頷き、改めて南瓜の爆車へと向き直った。
「それでは、早々に片付けよう。まだ、南瓜の爆車はいるはずだからね」
 言葉通り、南瓜の爆車は瞬く間にその形を失っていき……。

●トリック・オア・トリート!
 幾重にも絡み合う茨が貫いた時、累計10体目となる南瓜の爆車は砕け散った。
 担い手たるトエルは小さな息を吐きだして、仲間たちへと向き直る。
「終わったね。次はどうしようか」
 最初に定めた地点周辺の南瓜の爆車は全て討伐したらしく、人々からの救援要請を受けて少しだけ活動の範囲を広げ南瓜の爆車を討伐してきた。
 そのため、もう少し範囲を広げてみるか。
 それとも、万が一を考え範囲は据え置きにし救援要請メインで動くか。
 議論が交わされんとした時、通信機器の回線が開かれた。
 黄泉が近づき、回線の向こう側に語りかけていく。
「今度はどこにでたのかな……っと」
 返答の代わりに告げられたのは、南瓜の爆車の殲滅。
 街に平和が訪れたという吉報。
 その言葉が全員へと伝わった時、恭平が表情を和らげた。
「南瓜の爆車殲滅……良い結果を迎える事ができたな」
「それじゃ、改めて街をめぐりましょうか。戦場以外にも壊れた場所があるかもしれないし、それに……」
 ハロウィンも楽しまなきゃと微笑めば、頷いていくケルベロスたち。
 修復しなければならない場所を探しながらの仮装行列へと洒落込む中、ロビンはリトヴァへと向き直っていた。
「あらためてになっちゃうけど、リトヴァ、すごくかわいい。とても、似合ってる」
 心からの賛辞。
 受け取るリトヴァ、見守るイデア。
 暖かな雰囲気に抱かれながら、彼らはハロウィンの街を練り歩く。
 1つ、また1つと灯り始めた、温もりあふれる南瓜のランタンに照らされながら……。

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。