三色魔女のハロウィン~水氷のトワル・ダレニェ

作者:柚烏

 ハロウィン――それは新たな季節の到来する日であり、死者の霊が還り精霊たちが騒ぐ日であるとも言われている。
 ――と、そんな由来はさておき。街のそこかしこでは魔物などの仮装をした人々が集い、年に一度のお祭り騒ぎを思いっきり楽しんでいた。
「すっかりハロウィンも、秋の風物詩と化したよねー」
「いやいや、そんなしみじみしないで、もっと闇の饗宴を楽しむのだー……みたいなね?」
 一般に広く開放されている野外庭園では、既に飾り付けも終わり、立食パーティーが行われている様子。シャンパングラスを手に乾杯をするのは、魔女とメイドに扮した女性たちだ。
「……ふふふ、夜の闇が我に力を与えてくれる」
「うんうん、そう言うノリで今日は楽しむよ!」
 その隣では、吸血鬼っぽく黒い外套を翻した男性が何やら意味深な言葉を呟いており――包帯を巻き付けた彼の友人は、陽気に相方の肩を叩きながら南瓜のパイを摘まんでいるようだ。
 しかし――そんな祭りの様子を眺め、不穏な動きを見せる者が居た。一見、仮装を楽しむ少女にしか見えないが、その腕は不可思議なモザイクに覆われた――そう、ドリームイーターだ。
「……ハロウィンの力を感知しました。おそらくあの集団を襲撃すれば、ハロウィンの魔力を持つ魔女と遭遇する可能性が高いと思われます」
 氷のように淡々と、魔女の姿をしたドリームイーターは言葉を紡いで、背後に控える配下の屍隷兵たちへと目配せをした。
「さあ、ならばこの時の為に量産された、あなた達……パンプキョンシーの力を見せてあげなさい」
 ハロウィンを楽しむ人々を指さす、三色の魔女のひとり――チオニーの瞳が昏い光を帯びて、他の者たちに後れを取る訳にはいかないと冷静に告げる。
「赤や緑では、超越の魔女になっても『ジグラットゼクス』の皆さまのお役にたてるか微妙です。だから……私こそが、超越の力を手に入れて超越の魔女にならなければならないのです」
 淀みない口調ですらすらと望みを口にするチオニーは、ハロウィンの醸し出す雰囲気にそっと目を細めたようだったが。直後、彼女は冷徹な魔女の顔となって命を下した。
「お行きなさい。そして暴れて、暴れて……ハロウィンの力を持つ魔女をおびき出すのです」

「大変だよ、ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女達が動き出したみたいなんだ……!」
 息せき切ってやって来たエリオット・ワーズワース(白翠のヘリオライダー・en0051)は、ハロウィンの日を狙って、ドリームイーターの有力な指揮官――『ジグラットゼクス』の一人である『王子様』が作戦を開始したことを告げる。
「僕から皆にお願いしたいのは、赤、青、緑の3人の魔女が起こしている事件になる。どうやら彼女たちは、この時の為に量産していた屍隷兵を使って、ハロウィンを楽しむひとびとを襲撃させるようだよ」
 彼女たちの目的は、ハロウィンの力を持つ魔女を探し出して、その力を奪うこととされる。その為にはハロウィンで盛り上がる人々を襲い、目的の魔女をおびき出そうと考えているらしい。
「……この、ハロウィンの力を持つ魔女と言うのが、どういう存在かは分からないけれど。ハロウィンを楽しんでいるひと達が、屍隷兵に襲われるのを放置する訳にはいかないよね」
 だから――エリオットはゆっくり一礼してから依頼を口にした。皆には襲撃場所である野外庭園に向かい屍隷兵を倒し、ハロウィンを楽しんでいる人達を助けてあげて欲しいのだと。
「敵の屍隷兵……パンプキョンシーの目的は『魔女を探し出す』ことのようなんだ。なら皆がハロウィンの魔女であるように見せかければ、敵は一般人を放置して此方を攻撃してくる筈だよ」
 この性質を利用すれば、一般人に被害を出さずに撃破を行えそうだとエリオットは言う。また、戦いの様子を見た三色の魔女が、此方をハロウィンの魔力を持つ魔女であると判断すれば、戦場に現れて力を奪おうとするかも知れない。
「そう思わせるには、かなり演出を工夫する必要があるだろうけど……もし戦場に三色の魔女が現れた場合は、可能ならばその撃破も行って欲しい」
 ――ともあれ、先ず相手をするのはパンプキョンシーとなる。数は4体で、屍隷兵と言うこともあり然程強くは無いが、トリッキーな体術を繰り出して襲い掛かって来るようだ。戦闘も勿論大事だが、自分たちが探している魔女であると思わせ、注意を引きつける工夫も重要になってくるだろう。
「ハロウィンの魔力は、ドリームイーターにとって重要な物であるのかも知れないね。……でも、不思議で楽しい一夜を、台無しになんかさせられないから」
 そう呟いたエリオットは、やがて期待に瞳を輝かせながらにっこり微笑んだ。
「――楽しいお祭りを、ばっちり守ってね。偉大なるハロウィンの魔女様……!」


参加者
八剱・爽(エレクトロサイダー・e01165)
羽丘・結衣菜(ステラテラーズマジシャン・e04954)
エーゼット・セルティエ(勇気の歌を紡ぐもの・e05244)
ラズリア・クレイン(天穹のラケシス・e19050)
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)
ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)
オーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928)
ノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)

■リプレイ

●夢幻夜の前奏曲
 今宵は愉快なハロウィン――死者が誘われ、魔物たちが騒ぎ出す不思議な一夜。すっかり秋の風物詩となったこのお祭りは、街の野外庭園でも大いに賑わいを見せていた。
 華やかに飾り付けられた庭園は紫と橙の鮮やかなハロウィンカラーに染まり、普段の瀟洒な雰囲気をがらりと変えて野外パーティーの会場となっている。
「やれやれ……こんな素敵な夜だと言うのに、祝祭は良からぬ存在をも呼び寄せてしまうようだな」
 彼方の夜を溶かしたような紺色の髪を揺らし、そっと吐息を零すのはヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)。その星を映した瞳は穏やかに、背中へ寄り添う黒水晶のボクスドラゴン――モリオンを見つめているようだ。
「これは明らかに、僕と縁が無い行事なんだけど」
 一方のノチユ・エテルニタ(夜に啼けども・e22615)は、星屑の如く煌めく黒髪をかき上げつつ、微妙に冷めた様子でぼやきを零していた。と言うのも彼は、このようなお祭り騒ぎが苦手な、根っからの引き籠もり気質だったりする。
「……まあ、これも仕事だ。やるからにはしっかりやるよ」
 そう己に言い聞かせたノチユの姿は、ハロウィンに合わせた悪魔風の衣装だ。見ればヴェルトゥも普段のローブに、悪魔っぽい角や羽をつけて仮装しており――その後ろでモリオンは、妖しい光を放つお化けランタンを持っていた。
(「三色の魔女、か。如何にもハロウィンらしい」)
 ――ハロウィンで賑わう場所を襲撃しようと動く、ドリームイーターの魔女たち。彼女らは屍隷兵をけしかけて『ハロウィンの魔女』なる存在を炙り出そうとしているらしい。
 この会場を標的に選んだのは、青の半人前魔女・チオニーであるようだが――彼女たちが魔女を探していると言うのなら、此方が『ハロウィンの魔女』に扮して逆に誘き出してやろう、と言うのが今回の作戦である。
「そう言えばドリームイーターって、去年もハロウィンに合わせて動いてたわね」
 去年は去年でひと騒動あったなあと、つい感傷に浸ってしまった羽丘・結衣菜(ステラテラーズマジシャン・e04954)であるが、そういう趣向ならこちらも乗ってあげようと気合を入れた。
「祭りを楽しむ、敵は倒す。両方をやってこそケルベロスよね」
 そんな彼女が扮するのは、魔女三姉妹の末っ子であり。とんがり帽子と魔女服に身を包んだ結衣菜は、元気一杯にポーズを決める。
「ラズさん、よろしくお願いするわね。それとも、ラズお姉さんって呼ぶべきかしら?」
「ふふ、妹が出来たみたいでくすぐったいですね」
 そう言って上品に微笑むラズリア・クレイン(天穹のラケシス・e19050)は、三姉妹の長女役として堂々と振る舞おうと心掛けている様子。ハロウィンの夜に相応しく、ラズリアのたおやかな手は魔女のロッドを操り――その先端に括りつけられた南瓜のランタンが、鬼火のようにゆらゆら揺れた。
「今宵は魔力の集う夜……皆、楽しみましょう?」
「ええ、ラズリアお姉さま。今日は愉快な夜になりそうだわ?」
 お揃いの南瓜ランタンに火を灯し、知的な光を宿す青紫色の瞳を輝かせたのは、レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)。抱えた青と金色の装丁の魔導書が物語るように、レイラは大人しい次女として振る舞っている。
 紫、水色、黒――色彩も個性も様々な三魔女が夜宴に集う中、男性陣は其々に手下へと扮して、彼女たちを恭しくサポートすることとなった。
「私めになんなりとお申し付け下さい……今宵は特別な夜ですから、ね?」
 普段は女装をしているエーゼット・セルティエ(勇気の歌を紡ぐもの・e05244)だが、今夜は控えめな魔法使いの少年と言ったところ。けれど彼の中性的な相貌は、愛らしさを感じずには居られないわけで――ついつい結衣菜は、魔女をやっても良かったのにと零してしまう。
「そうすると、四姉妹になって賑やかよね。お姉さんがもうひとり増えて楽しそうだわ」
「いや、ごめん……僕にはハードルが高いかな……」
 しどろもどろになって弁解をするエーゼットだが、結衣菜の方は大して気にしていないようだ。そんな賑やかな皆の様子を見ていると、オーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928)の心も自然と弾むというもの。
「えへへ、ボクはハロウィンの大魔女さまたちの手下、キッドだよお!」
 手作りの帽子とローブをふぁさぁと翻す、オーキッドの役は魔法使い見習いだ。隣で翼をぱたぱた動かしている、ウイングキャットのなるとは使い魔に扮し、エーゼットのボクスドラゴン――シンシアと一緒に魔女たちの周りを飛び回っている。
「お、準備万端と言った感じだな。まぁ事前に色々手が打てないのは、仕方無いと割り切るかね」
 一方で八剱・爽(エレクトロサイダー・e01165)は、事前にパーティーの主催元へ掛け合ってみようとしていたのだが、時間的な制約などもあって断念せざるを得なかった。
 自分たちの参加を告知し、盛り上げ演出を手伝ってくれたらと思ったのだが――オーキッドが考えていた避難誘導の協力共々、予め一般人に予知内容を伝えてしまうと、却って混乱を招く恐れもあったのだ。
「それに……このノリだと俺らが出てきても、何かの余興だと思って対応してくれそうだし」
 飛び入り参加も自由なパーティーの様子を見渡しながら、執事服に袖を通した爽は不敵な笑みを浮かべて。やがて、周囲に溶け込んで襲撃に備える一行の元へ、南瓜風の装束を纏った屍隷兵――パンプキョンシー達が姿を現した。
「さあ、パーティーの始まりよ! 魔女と使い魔たちのパレードをご覧あれ!」
 其処へ颯爽と立ちはだかるのは、ハロウィンの魔女とその配下を演じるケルベロス達。煌びやかなショーを披露するかの如く、結衣菜が奇術で可憐な花弁を降らせる中――一行はお祭り騒ぎを盛り上げつつ、悪霊退治と洒落込むことになったのだった。

●魔女たちの宴
「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ!」
 流れるようにすらすらと、芝居がかった口上を述べるのは、ちゃっかり司会の座に収まっていた爽である。彼が指し示したその先に佇む、魔女三姉妹――彼女らに箔をつけるべく、爽の声は尚も会場に響き渡っていった。
「麗しの長姉、清楚な次女、可憐な末っ子の魔女三姉妹の艶姿! その実力は、これこそハロウィンの魔女様ってモンだ!!」
「妹たちよ、ハロウィンの魔力は溜まりましたか? 血の晩餐が始まりますよ……ふふ」
 蒼玉色の軌跡を描く髪を靡かせて、長姉たる威厳に満ちたラズリアが唇を開くと、次女のレイラはうっとりとした表情で魔導書を抱きしめる。
「お姉さま、それはもう。こんな濃密な魔力、おぼれてしまいそうです」
「うんうん、素敵な夜にしましょう!」
 ノリノリで演技を合わせる二人に、末っ子の結衣菜も無邪気さをアピールして頷いて――彼女は使い魔役のシャーマンズゴースト、まんごうちゃんとハイタッチを決めた。
「さぁ、大魔女さまのお通りだ~! ハピハピハロウィ~ン!」
 と、其処でオーキッド達が、魔女三姉妹のお披露目を盛り上げようと一斉に飛び出していく。トリックオアトリートとばかりに、オーキッドの手から溢れるのは賑やかなハロウィン用のお菓子。南瓜のお化けシュークリームは、早く食べないとクリームが飛び出してしまう一品で、南瓜の栗饅頭は甘栗が入っていればラッキーだ。
「良い子にしてないと、こわぁいお化けがやってくるからねえ!」
 カラフル野菜のスナック菓子を配り歩くオーキッドやエーゼットの後では、ヴェルトゥがおもちゃの大砲からキャンディレインを降り注がせており――その間の彼はちょっぴり、甘いお菓子の誘惑に惹かれていたりした。
「あら、其方の悪魔さんもお菓子が欲しいのですか?」
「……ああ、これを機に悪戯を仕掛けるのも良いかもしれないな」
 そんな中で星砂糖の煌めきを宿す、ラズリアの瞳が楽しそうに覗き込んで来たものだから、ヴェルトゥも軽口を返してハロウィンの夜を楽しむことにする。
(「さて、屍隷兵は……無事に釣れたか」)
 ユーモラスな動きで会場に現れたパンプキョンシー達は、此方の派手なパフォーマンスに引き寄せられ、目的の『ハロウィンの魔女』だと目星をつけたようだ。真っ直ぐ向かってくる敵群を捉えたノチユは、念の為に一般人を戦場の外へ逃がそうと、溜息を吐きつつ重い腰を上げた。
(「エネルギー補給の為に時々やってるし、慣れてるけどさ……あーでもぶっちゃけ死にてえ」)
 内心でげんなりしつつも、覚悟を決めた彼は顔を覆っていたペストマスクをおもむろに外し――退廃的な雰囲気を宿す、憂いに満ちた素顔を露わにする。
「……此処からは、大魔女様達の織り成す舞台だ。魂を吸われたくなくば離れなさい」
 気怠げな物言いとは裏腹に、その口元に甘い笑みを浮かべたノチユの姿は、抗えぬ魅力を放ってひとびとを虜にしていった。それは正に、伝承の夢魔そのもののようで――熱に駆られた者たちは次々に、先を争うようにしてパーティー会場を後にする。
「ああ、それとも。もっと刺激が欲しいなら、私がお相手してあげよう。おいで」
 止めに色っぽいウインクもおまけしてから、ノチユは手が空いている者に協力を要請し、子供たちを怖がらせないよう落ち着かせることも忘れない。
 ――が、遠くからきゃあきゃあと、女性たちの萌え死にそうな歓声が聞こえてくる度に、軽く自己嫌悪に陥るノチユであった。
「こやつらは人の子の手には余る……相手は我らに」
 一方のラズリアは厳かにそう告げてから、スタイリッシュな魅力を振りまいて人々を勇気づけていく。手にしたロッドは使い魔が変じたもの――いちごちゃん、と名付けた白ウサギと共に、ラズリアは古代語による石化の呪を屍隷兵へと放った。
「折角の姉妹のハロウィン、邪魔されて機嫌が悪いの。塵芥にしてあげますわ」
 長姉の魔法が敵の一体を撃ち抜くや否や、次女レイラも魔導書を開いて魔法陣を展開――其処から噴出した氷柱が、瞬く間に屍隷兵を凍り付かせる。
「あなた達のような不届き者、お呼びじゃないわ。……散りなさい?」
 ――魔女たるもの、なるべく派手に目立つように、どっかんどっかん戦うべし。冷酷な声で襲撃者へ言い放ちながらも、レイラの相貌は何処か楽しそうと言うか、むしろノリノリだった。
(「さぁ、ステキなパーティーにしましょうね」)

●南瓜のワルツ
 魔女に扮した陽動が功を奏し、一般人が戦闘に巻き込まれる心配は無くなった。それでも念の為に、結衣菜が殺界を張り巡らせて人払いを行う。
「さて、それじゃ僕らは、魔女さまを援護するとしよう」
「さぁ――悪夢を喰らえ」
 直後、シンシアに皆を守るようお願いしてから、エーゼットが時空隔離の魔弾を放ち、屍隷兵を追い詰めていって。続くノチユはマスクを被り直しつつ、地獄と化した片翼が見せる悪夢の國へと、無慈悲に敵群を誘った。
「では此方は、魔女様の護衛と行くか」
 一方で前線に立つヴェルトゥは、モリオン共々盾となり――一気に距離を詰めてくるパンプキョンシーの暗器を受けながらも、皆に加護を与えようと黄金の果実を実らせる。その聖なる光は、仲間たちを蝕む異常に耐性を与えてくれる筈だったのだが――。
(「思った程、付与が行き渡らないか……?」)
 サーヴァントを従える代償に加えて、ヴェルトゥの取った手段は列全体に作用するもの。更に前衛は数も多い為、減衰まで生じていた。結果、元々五分の確率は更に下がることとなり――大して回復も見込めないだろう、と言う結論に達する。
「うーん……ボクらはもうちょっと、付与の確実さを考えた方がよかったのかなぁ?」
 初手で敵の足止めを狙っていたオーキッドも、前衛全てを薙ぎ払おうとした為に、満足な成果を上げられなかったようだ。それでも彼は後方に控えたなるとが、少しでも耐性を付与してくれるようにと願った。
「大丈夫、その分私が頑張るから!」
 一方で妨害能力に長けた結衣菜は、燃え盛る火炎を操り、パンプキョンシー達を纏めて呑み込んでいく。しかし相手の力量は然程で無いとは言え、攻撃を確実に当てるとなるとやや厳しいか。
(「威力を重視すれば、命中は五分か……難しいな」)
 瞬時に戦況を把握した爽は、確実性を優先し気咬弾で狙い撃つことに決めて――その間も癒し手であるレイラは、賦活の雷と呪医術を巧みに使い分け、仲間たちが倒れぬようその背を守っていた。
「少し危ないかもと思いましたが、守りがしっかりしていたのが幸いですね」
 そんなレイラの呟き通り、盾となる者がサーヴァントを含め多かった為、敵の攻撃も減衰の影響を受けつつ分散し、大した被害を出す事無く戦いを進められている。それに加えて向こうには回復手段も無く、このまま強引に押し切ることも可能だろう。
「……今宵の魔女姫様達は、ご機嫌が宜しい様だ。やはり我々が仕えるべき方々は、貴女達のみ」
 嬉々として時空凍結の弾丸を放ち、屍隷兵を仕留めたラズリアに合わせるようにして――ノチユも芝居がかった仕草で声を張り上げ、地獄の炎をもう一体へと叩きつけていた。そうして瞬く間に消し炭になった骸を乗り越えて、エーゼットの剛腕が残る屍隷兵へと迫る。
「魔法使いの格好してるし、魔法っぽい攻撃を多めにしたかったんだけど……!」
 ――見切られることを防ぐ為止む無しの筈が、どうやら当たり所が悪かったのか、あっけなく倒れる屍隷兵。唖然とするエーゼットを横目に、怒りで敵を引き付けたまんごうちゃんはと言えば、残る一体の蹴りをひらりと躱していた。
「さて、そろそろ終幕と致しましょうか……!」
 そして――攻めに転じたレイラが、無慈悲な氷の精霊による手向けの抱擁を屍隷兵へと贈る。瞬く間に氷像と化した魔物は、一呼吸の後に無数の氷の欠片となって、儚くもうつくしく砕け散ったのだった。

●祭りは続く
「……うう、ちょっとはずかしかった……でも、ちょっと楽しかったかも……」
 完全に敵を滅したことを確認すると、レイラは仄かに顔を赤らめて、天に掲げていた手を下ろす。一息ついたラズリアは、青の魔女が現れなかったことに神妙な顔をしていたが――きっと他の場所に向かった者たちが、上手く対処してくれただろうと頷き夜空を仰いだ。
「折角だし、パーティーを再開出来るように手伝っていこうか」
「そうだね、ハッピーハロウィン!」
 ――そう、今夜は素敵な舞踏会。ヴェルトゥとエーゼットが顔を見合わせてひとびとを呼び戻しに行く中、結衣菜はふわりとローブを翻してステップを踏む。
「さあ、みんなで踊り明かしましょう!」

作者:柚烏 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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