●ハロウィン古本市
10月30日の、日没後。とある街の公園で、古本市が開かれている。仮装して入場すればお店によってさまざまなサービスを受けられたり、値引きしてもらえたりといったこともあり、ハロウィンならではの盛り上がりを見せている。
「楽しかったねー!」
会場を後にしようとする女性は、魔女の衣装を身につけて満面の笑みを浮かべている。両手には、紐でくくってもらった10冊ほどの本。
「うん、また来年も開催されるといいよねえ」
「何言ってんの、ハロウィンは明日が本番でしょ」
「そ、そうだった……! あんまり楽しいから、今日がハロウィンだと思ってたよ……明日も来るぞー!」
全力で叫ぶ女性と、笑い声をあげる友人たち。
そんな人々を指差すのは、モザイクがかった手を持つ少女だ。
「あの集団から、ハロウィンの力を感知しました。彼女たちを襲撃すれば、ハロウィンの魔力を持つ魔女と遭遇できる可能性が高くなるでしょう」
あなたたちは、この時のために量産されたのです。と、少女は振り返った。視界の先には、南瓜のランタンを片手に提げた屍隷兵「パンプキョンシー」が5体。
「たくさん暴れて、ハロウィンの力を持つ魔女を誘き出すのです」
それに、と少女は付け足す。
「赤と緑では、超越の魔女になれたとしても『ジグラットゼクス』の皆様のお役に立てるかどうか。……私なら、役に立てる」
だから。
「超越の魔女になるのはこの私、青の半人前魔女・チオニーです」
少女は言い切り、パンプキョンシーに指示を出した。
●ヘリポートにて
10月に入れば、どこもかしこもハロウィンめいたイベントが開催されている。
そんな中、ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女たちが動き出したという。
「君たちに頼みたいのは、赤・青・緑の3人の魔女が起こしている事件の解決だ。彼女たちは、この時のために量産していた屍隷兵『パンプキョンシー』を使ってハロウィンを楽しむ人々を襲撃させるつもりでいるらしい」
ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が、ヘリポートに集まったケルベロスたちを見渡す。
「彼女たちの目的は『ハロウィンの力を持つ魔女を探し出し、その力を奪う』こと。ハロウィンで盛り上がる人々を屍隷兵に襲撃させれば、目的の魔女が現れると考えているようだ」
現時点では、ハロウィンの力を持つ魔女というのがどういうものかは不明だ。とはいえ、ハロウィンを楽しむ人々が屍隷兵に襲われるのをそのままにはできない。
「まずは人々が襲撃される場所に向かって屍隷兵を倒し、ハロウィンを楽しむ人々を助けてあげて欲しい。それに、パンプキョンシーの目的は『ハロウィンの力を持つ魔女を探し出す』ことのようだ。君たちケルベロスがハロウィンの力を持つ魔女であるように見せかければ、屍隷兵は一般人を放置して君たちに攻撃を仕掛けてくるだろう」
この性質を利用すれば、被害を出さずに屍隷兵を撃破することが容易くなる。
「加えて、この戦いの様子を見た3色の魔女――古本市のイベントを襲撃させた青の半人前魔女・チオニーが『ハロウィンの魔力を持つ魔女である』と判断すれば、戦場に現れて力を奪おうとするかもしれない」
もしチオニーが現れた場合は撃破を頼むと、ウィズは付け足した。
いずれにせよ、まずはパンプキョンシーの撃破をしなければならない。
「現れるパンプキョンシーは5体、攻撃力に優れる者、状態異常を付与する者、命中力の高い者がいる」
パンプキョンシーは屍隷兵のため、それほど戦闘能力は高くない。緑の炎を腕に纏わせて殴りつけ、加護を打ち消す攻撃、ランタンから炎を放つ攻撃、ランタンを振り回して当て、命中と回避を阻害する攻撃を仕掛けてくる。
「兎にも角にも屍隷兵の撃破、可能ならばチオニーを撃破、だな。人々のハロウィンを守るためにも、どうかよろしく頼む」
と、ウィズはケルベロスたちをヘリオンへ促した。
参加者 | |
---|---|
不知火・梓(酔虎・e00528) |
スプーキー・ドリズル(雨夜月・e01608) |
ロジオン・ジュラフスキー(ヘタレライオン・e03898) |
七星・さくら(日溜りのキルシェ・e04235) |
アルルカン・ハーレクイン(灰狐狼・e07000) |
深鷹・夜七(まだまだ新米ケルベロス・e08454) |
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046) |
ベラドンナ・ヤズトロモ(ガラクタ山のレルヒェ・e22544) |
●魔法の始まり
散歩道に沿って、古びた本が広げられている。それぞれの本を所有する店主たちは、どこか怪しい仮装で客を迎えている。
彼ら彼女らの顔を照らすのは、橙や黄色、紫の明かり。今宵の公園は、まるで魔女や魔物のための市場だ。
そこへ現れるのは本当の魔物、もといデウスエクス。ハロウィンの色をまとった5体の屍隷兵『パンプキョンシー』が現れるや否や、ケルベロスたちは人々の避難を優先する。
「そこの皆様、お逃げくださいませ!」
パニックテレパスを使用しながら逃げるように促すのは、ロジオン・ジュラフスキー(ヘタレライオン・e03898)。
深鷹・夜七(まだまだ新米ケルベロス・e08454)は隣人力を用いて、誘導役に尽力する。
スプーキー・ドリズル(雨夜月・e01608)と七星・さくら(日溜りのキルシェ・e04235)は屍隷兵と一般人の間に割り込むような位置に立ちはだかり、避難誘導の手伝いを。
「ここは魔女達の領域。魅入られたら最後、帰るのなら今のうちよ?」
とんがり帽子に銀枝の杖、南瓜おばけのランプを揺らし、さくらは悪戯めいた口調で告げた。いかにも魔女、といった出で立ちのさくらが凛とした風を使用すれば、それこそ魔法にかけらたように、人々は礼儀正しく去ってゆく。何処でチオニーが見ているかわかったものではない、終始気高い魔女として振る舞おうとする。
「さあ、べるちゃんも」
義姉に促され、ベラドンナ・ヤズトロモ(ガラクタ山のレルヒェ・e22544)も進み出る。演じるのは、さくらとは対照的に甘く笑う蠱惑的な魔女。
「甘いのはいかが?」
ラブフェロモンを使い、屍隷兵のいない出口へと微笑んでは誘う。纏う甘さはいっそ毒、あるいは砂糖、または狡猾な悪魔。
そんな義妹の様子にシスコン魂が荒ぶりそうになるさくらであったが、どうにか抑えて凛とした佇まいの魔女を演じるのだった。
また、時折自身に向けられるさくらの視線を知ってか知らずか、ベラドンナの胸中は凄まじい羞恥にさらされていた。
端的に言って、死ぬほど恥ずかしい。
この姿を知り合いに見られたらと思うものの既に姉なるものが傍らにいるため、とりあえず姉以外の誰かに見られたら舌を噛んで死ぬ。
一気に思考しながら、鉄の理性をもって魔女を貫くのであった。
さて、パンプキョンシーを前にヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)はプリンセスモードで変身する。軽快な音楽が聞こえそうな中、謎の光がヒマラヤンを包み込んだかと思えば、どことなくゴージャスな戦う少女っぽい衣装が彼女の体を包み込む。さらに金色の目でウインクをし、たのしいまどうしょ 6かんとファミリアロッド改で魔女らしさを演出すれば、変身は完了だ。
主の変身を見届けたウイングキャット「ヴィー・エフト」は、黒い翼を動かして清らかな風を送り込んだ。
加護を受けた不知火・梓(酔虎・e00528)は、煙草代わりの長楊枝を吐き捨てた。相手が何だろうがどんな意図があろうが、意識は確かに戦闘へ。
「こういっちゃぁ不謹慎だが、俺にとっちゃぁ楽しい喧嘩祭りの始まりだ」
言いつつ斬霊刀「Gelegenheit」を抜き、敵の一体へと峻烈な一撃を叩き込む。
続くのはアルルカン・ハーレクイン(灰狐狼・e07000)。5人が避難にあたる間、しっかりと屍隷兵の足止めをつとめる。
「形なき声だけが、其の花を露に濡らす」
零す言葉は、秘密めいた響き。姿の無い歌声に音なき剣舞が重なれば、白から黄へと変わる花弁の幻影がパンプキョンシーを襲う。
もちろん、パンプキョンシーも応戦を。
3人と1体は避難完了まで攻撃を受け、耐え、グラビティを繰り出すのだった。
●古書が呼ぶもの
やがて避難が完了すると、スプーキーはキープアウトテープを以て公園の出入り口を封鎖した。駆けつけたケルベロスの半数以上を人々の避難に割き、事後処理には念を入れて。ここまですれば、一般人が立ち入ることはないだろう。
あとは、剣戟のする方へ急ぐだけだ。
武器を簒奪者の鎌へと切り替え、梓はパンプキョンシーへと迫る。容赦のない斬撃は、同時に梓を癒す。
ヴィー・エフトは主の指示を受け、ひたすらに翼をはためかせては風を送り込む。
その癒しを向こうにせんとばかりに、パンプキョンシーたちは殴りつけ、加護を打ち消し、炎を放つ。
「Shoot the Meteor!」
パンプキョンシーたちが向かう3人とは異なる方向からの弾丸。金平糖を彷彿させる弾丸が、パンプキョンシーの1体を撃ち抜いた。煙の尾を引いて貫通する弾丸はさながら彗星、あるいは反撃の嚆矢。
「万聖節の魔力を得て今宵出でたるは禁書に封じられし魔女達。これより見せるは、三色の彩りも霞むほどの極彩色の魔法」
軍服のマントの内に古今東西の書物を封じ、スプーキーは魔女や使い魔を装う仲間を語ってゆく。
「七星・さくら。気高い彼女を魔女たらしめる矜持は、青の輝きよりもなお強い」
「今宵のわたしは『ハロウィンの魔女』。さぁ、お菓子が欲しい妖精達も、居場所が無くて彷徨う鬼火達もわたし達と一緒に楽しみましょ?」
さくらはライトニングロッド「Lightning Blossoms」を悠然と振るい、ヒマラヤンを癒す。
「深鷹・夜七。魔法の腕こそ未熟なれど、熱意は炎にも似て燦然と」
なるほど夜七は魔法使いの弟子を意識したぶかぶかの黒いローブを着て、古めかしい本を抱えている。肩に乗るのは、黒猫の姿をとるファミリアロッドだ。
「ハッピーハロウィンってね! 早速だけど、お相手願おうか!」
身の丈に合わない大仰な杖で敵軍を示せば、黒猫が気ままにあちこち飛び回っている。
「ぼくもお師匠様みたいな魔法を……っと、子猫さん! そっち行っちゃだめだよ!」
慌てながらも、ローブに隠した刀、その鍔鳴りの音で鬼火のような青い光を呼ぶ。瞬間、敵を見定めた抜刀が風を生み矢のように浴びせる。かと思えば、熱の生んだ火花が周囲に散り、敵の動きを制限する。
「そうだ彼方、機嫌悪そうだけど……?」
不意に傍らのオルトロス「彼方」を見遣れば、普段よりも細い目がぷいと横を見て、そのままパンプキョンシーへと斬撃を加えた。
語り部の言葉は続く。
「ロジオン・ジュラフスキー。古書の精霊は書物を愛し、確かな力を感じ取る」
普段のものより古びたローブを纏っているロジオンである。フードを目深に被り、魔導書の表紙を一撫で、本を開いては呟く。
「よいですね、数々の古本から感じる歴史、魔力……力が満ちるのが分かります――来るは権能、逸れや逸れ!」
自身へと活力を与えれば、続くベラドンナはアルルカンへと同じ魔法を。
「さぁ、ハロウィンだ。天使も悪魔も百鬼夜行も皆踊れ」
頭には魔女の帽子、肩にはファミリアロッド『月を追うもの』の小動物姿を顕現した、使い魔としての鴉。その身を包む衣装は背中の開いた黒のミニドレス。悪魔の羽としっぽが揺れれば、魅力的な目を細める。
「ベラドンナ・ヤズトロモ。ひたすらに甘い誘惑はご用心、魔女と悪魔は紙一重」
主に続くのは、ボクスドラゴン「キラニラックス」。共に前線でパンプキョンシーに立ち向かうスプーキーに、光と熱の加護を。
「ヒマラヤン・サイアミーゼス。黒猫と共に征くカオスウィザードは、華やかなる装いで華麗に魔法を使いこなす」
「トリックアンドトリート! 悪戯もするけどお菓子も貰うのですよ!」
たのしいまどうしょ 6かん片手に、ヒマラヤンは素早く古代語を詠唱する。魔法光線に包まれたパンプキョンシーに、アルルカンがオウガメタルを纏った拳を叩き込んだ。その衝撃で、パンプキョンシーの一体が黒化して崩れ、消える。
古書を司る魔王のように、そしてページを繰るように、スプーキーは魔女とその使い魔を言葉にしてゆく。
「アルルカン・ハーレクイン。魔女の現る夜だからこそ、銀の獣も荒ぶり牙を振るう」
元が何のウェアライダーはさておき、アルルカンの出で立ちは『狼男』。魔女の使い魔代わりとして獣の耳も尻尾も、何より夜に高揚する気分すらも、思うままに振るうのだ。
「同じく魔女の使い魔同士、仲良くしようではありませんか。まあ、我々の目的の邪魔立てはさせませんけれども」
と、残るパンプキョンシー4体に微笑みかけながら。
●悪夢か魔法か
硝煙と焦げた砂糖の馨、そしてエアシューズ「天泣」に星屑をも纏いながら、スプーキーはパンプキョンシーの攻撃手に蹴撃を加える。肩口へ与えた衝撃が全身へと広がり、パンプキョンシーの1体がまた消滅した。
「さて、癒しの魔女の手腕やいかに」
「魔女の魔法、とくとご覧あれ」
さくらは桜色の目を細め、スプーキーの言葉に微笑んだ。杖を掲げ、ロジオンに電撃の癒しを与える。
「さすがお師匠様! さあ、次は僕におまかせを!」
目を輝かせ、夜七は炎を纏って駆け出した。叩き込む脚から、パンプキョンシーに炎を移す。
「さぁ彼方、畳みかけて行こう! ……って、子猫さんはもういないってば! 張り合わなくていいから!」
前方の彼方が変わらず不機嫌そうな目で振り返るのを見て、夜七は杖を取り落としそうになる。彼方は疑うような目で夜七を一瞥したあと、パンプキョンシーへと炎を灯した。
「ハロウィンは『異世界の門が開く日』なのだとすれば、私こそがハロウィンの魔女。その力を持つもの」
どことなく色のある言葉で、ベラドンナは宣言する。
「装わずとも、私は魔法使いで悪夢を従えるものなのだから」
そうしてベラドンナは、妖しい色の霧でロジオンを包み込んだ。キラニラックスも、壁役を務めながらヒマラヤンに熱と光を与える。
「カオスウィザードの本領発揮なのです!」
パンプキョンシーの撃破状況から見て、もう間もなくさらに1体を撃破できるだろう。ヒマラヤンは自身の力とファミリアロッドの力を融合させる。
「ふははー、さあ、ハロウィンの邪魔をする奴らを焼き払うのですよ!」
現れた三つ首の猫は、とにかく巨大。口から吐き出すビームは、敵はもちろんのこと公園ごと焼き尽くしそうな勢いだ。
その射線から避けたロジオンは、自身も攻撃を加わろうとパンプキョンシーに肉薄する。が、うっかりローブの裾を踏んで転びそうになった。のを、なんとか踏み止まって精霊の威厳を保つのだった。
「血色に染まる黒鉄、啜れや啜れ!」
斬撃に重なる癒し。さらにヴィー・エフトが後衛を癒し、耐性をあたえてゆく。
踏み出した梓のコートには、血の色が滲んでいる。
痛み。血の熱。癒やし手が2人もいるこの状態で死ぬようなことはそうそう無い。しかし、わずかでも死に近づくのは確か。
それは、今己が生きているという実感。大鎌を振り下ろし、パンプキョンシーの1体を両断する。
「ハロウィンの魔女っつーのがイマイチ判んねぇが、祭りを邪魔する奴ぁ許しちゃぁおけねぇよなぁ」
血のつくコートを翻らせ、梓は不敵に笑う。
パンプキョンシーの呪いと火が迫る中アルルカンはその2つを回避し、真下からパンプキョンシーを斬り上げた。
●魔法の残り香
残るパンプキョンシーは2体。
ベラドンナは回復不要と判断し、おもむろに目を閉じる。そして銀鎚【ブレシンの災厄】に刻まれた記憶を詠唱し始めた。
「滅びの王国より、記憶を呼び起こす。火刑台の主。狂気の松明よ」
愉悦を含むような声色でベラドンナが呼び出すのは、封じられた狂気の竜の尾。強大な力を持て余すことなく使役し、黒煙混じりの悪夢をもって蹂躙する。
乗じて、ヒマラヤンもファミリアロッド改を猫の姿へと変え、魔力を籠めてパンプキョンシーへと撃ち出した。
キラニラックスがアルルカンへ属性をインストールすれば、ヴィー・エフトが風を送るは主のいる後衛だ。
アルルカンの手にする惨殺ナイフ「Skoll」は、今宵狼の牙。パンプキョンシーを刻みながら、身に返る血がアルルカンを癒す。
「ハロウィンの夜は夏の終わりにして冬の始まり、門が開いて死者の霊が訪れるというのなら幾らでも篝火を灯しましょう」
ハロウィンに合わせて夢喰いが襲撃してくるのも、今年で3度目。なんだか年間行事のようでもあると、梓はどこか可笑しく思う。
とはいえ、気を抜くわけにはいかない。ここはしっかり返り討ちにしようと、笑みを深めた。
「少しでも早ぇ内に終わらせたいからなぁ」
正中に構えた刃に、全剣気を貯める。慣れた動作で刀を振りかぶり、ゆるりと剣気を飛ばした。剣気はパンプキョンシーを素通りした、かのように見える。
「我が剣気の全て、その身で味わえ」
しかし、業の真髄は視認できないだけ。体内浸透した剣気が、パンプキョンシーの心臓部で一気に解放され、パンプキョンシーに強かなダメージを与える。
「斬り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆかば 後は極楽、ってなぁ」
うそぶき、梓はスプーキーへと場所を譲った。
スプーキーに日本刀「雨久花」でゆるやかに切りつけられたパンプキョンシーは、さらに夜七の日本刀「不知火」に打ち砕かれる。駆ける咆吼を切り替え、彼方は最後の1体に咥えた剣での傷を刻んだ。
「最後のお方。次の魔法は、あなたに贈るわ」
さくらが言葉を終えるが早いか、パンプキョンシーの小指に痛みが走る。それは気付いた時には既に遅く、パンプキョンシーをどこまでも苦しめる紅絆。
「それでは私も、精霊の魔法をお見せしましょう。――靡くは炎縄、焦がせや焦がせ!」
ロジオンが突き出した手の先で、炎の槍が生まれ出る。古代語魔術は槍を飛翔させ、その過程で分裂し、逃げ惑うパンプキョンシーを貫いた。
それが、パンプキョンシーたちの最後。
公園では木々のざわめきだけが聞こえる。
結局、この公園に青の半人前魔女・チオニーはは現れなかった。そうなれば、と梓がGelegenheitを収める。
「喧嘩祭りは終わりだなぁ」
やや表情を緩め、梓は普段のおっさん面した様相でひとつあくびを。
「それじゃ、古本位置が再開できるように公園内をヒールしようか。他人を癒やせるヒールグラビティを持っている者がいたら、頼むよ」
「それじゃ僕が! 古本位置が再開したら、彼方と一緒に参加しようと思ってたんだ!」
元気に告げ、夜七は駆け出す。
不思議な色の明かりが灯る市場の再開が待ちきれないとばかりに。
作者:雨音瑛 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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