三色魔女のハロウィン~私こそ超越の魔女に

作者:なちゅい

●水氷使いチオニーとバンプキョンシー達
 今年も、ハロウィンの季節がやってきた。
 関東某所の街では沢山の人々が仮装を行い、行列を行っている。
 外国では子供が仮装して、お菓子を求めて近所を歩く比較的ささやかなイベントだが、日本のハロウィンは、皆で仮装を行う一大イベントとして楽しまれることが増えた。
 その街でも定番の南瓜や魔女といったモチーフの仮装はもちろんのこと、童話、アニメ、ゲームなどのキャラになりきって街路を歩く人々の姿がある。
 そんな楽しげな街の風景を、物陰から眺めるデウスエクスの姿が……。
「ハロウィンの力……あの集団を襲撃することで、ハロウィンの魔力を持つ魔女と出くわす可能性が高くなるはずです」
 そう語るのは、青い髪の少女、水氷使いチオニーだ。
 一見すれば、街を歩く集団に紛れても違和感のない魔女の格好をいているが、彼女は半人前とはいえ、本当の魔女。そして、その右腕がモザイクに包まれているところから見ても、ドリームイーターであるのは間違いない。
「この時の為に量産された、あなた達、パンプキョンシーの力を見せてみるのです」
「「イイィィィーー!!」」
 甲高い声で応える女性のような姿の屍隷兵達。彼女達へ、チオニーは暴れてくるように指示を出す。
 ハロウィンの魔力を持つ魔女から力を奪うことができれば……。チオニーはさらに呟く。
 赤や緑では超越の魔女になったとしても、『ジグラットゼクス』の皆様のお役に立てるかどうかは微妙だと。
「……私こそが、超越の力を手に入れて超越の魔女にならなければならないのです」
「「イイィィィーー!!」」
 再び高い声で返事したバンプキョンシー達は早速、チオニーの指示通り、ハロウィンで行列を行う街中へと飛び込んでいったのだった。

 ハロウィンが近づく中、ヘリポートには南瓜行列をどうしようかと考えるケルベロス達の姿もあるが、このタイミングに乗じて動き出すデウスエクスの姿も……。
「ハロウィンの力を求めて、ドリームイーターの魔女達が動き出したみたいなんだ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が、集まるケルベロス達へとそう話を切り出す。
 色々と事件が起こるようだが、彼女は赤、青、緑の3人の魔女が起こしている事件について話す。
 彼女達はこの時の為に量産していた屍隷兵……パンプキョンシーを使い、ハロウィンを楽しむ人々を襲撃させるようだ。
「目的は、ハロウィンの力を持つ魔女を探し出して、その力を奪う事だと見られているよ」
 ハロウィンで盛り上がる人々を屍隷兵が襲撃する事で、目的の魔女が現れると考えているようだ。
 ハロウィンの力を持つ魔女がどういうものかは分らない。ただ、ハロウィンを楽しんでいる人達が屍隷兵に襲われるのを放置する事はできない。
「皆には屍隷兵が襲撃する場所に向かって、屍隷兵を倒してハロウィンを楽しんでいる人達を助けてあげて欲しいんだ」
 屍隷兵、パンプキョンシーの目的は『魔女を探し出す』事のようなので、自分達がハロウィンの魔女であるように見せかければ、一般人を放置して、ケルベロスを攻撃してくるだろう。
 これを利用すれば、一般人に被害を出さずに屍隷兵を撃破しやすくなるはずだ。
「闘いの様子を見た3色の魔女が、ハロウィンの魔力を持つ魔女であると判断すれば、戦場に現れて力を奪おうとしてくるかもしれないね」
 もし、3色の魔女が現れた場合、可能ならばその撃破も行ってほしい。
 リーゼリットの視た事件においては、昼間、青の半人前魔女・チオニーが率いるバンプキョンシー4体が関東某所のハロウィンイベントで行列を行う街へと飛び込んでくる。
 街はかなりの数の人々がイベントに参加している。すぐに大混乱となってしまうので、その対処を手早く行う必要があるだろう。
「幸い、バンプキョンシーは屍隷兵……人造デウスエクスだから、それほど強くない相手だね」
 とはいえ、敵は近距離で拳での殴打や蹴り、手にするランタンから放つ炎で攻め立ててくる。油断をすると痛い目を見るので、注意して立ち回る必要はある。
 また、残念ながら、青の半人前魔女・チオニーについて細かい情報はないが、現れた場合を想定しておく必要は少なからずあるだろう。
 一通り説明を終えたリーゼリットはさらに、ケルベロス達へとこう話す。
「魔女が語るハロウィンの魔力……少し気になるね」
 これは、ドリームイーターにとって重要な物かもしれない。そんな推論も立てることができるが、今は楽しいハロウィンの仮装行列をぶち壊しにする屍隷兵の撃破が先だ。
「できるなら、元凶となる魔女の撃破を。よろしく頼んだよ」
 彼女は最後にそうケルベロス達に告げ、微笑んで見せたのだった。


参加者
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130)
音無・凪(片端のキツツキ・e16182)
八神・鎮紅(紫閃月華・e22875)
明星・舞鈴(神装銃士ディオスガンナー・e33789)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)
園城寺・藍励(鬩ぎ合う光と闇を纏いし白猫・e39538)

■リプレイ

●仮装パーティーに乱入する影
 関東某所のハロウィンイベント会場。
 ここで行われる仮装行列では、定番の魔女、西洋風のモンスターから、どこかで見たようなキャラクターまで、たくさんのコスプレイヤー達で賑わっている。
 そして、ここにも魔女の一行を名乗る一団が。
「トリック・オア・トリート! ハロウィンの魔女様のお通りよ!」
 トリート役として一団の先頭に立っていたのは、プリンセスモードで南瓜をイメージした魔女の衣装を纏う明星・舞鈴(神装銃士ディオスガンナー・e33789)だ。
「ありったけのお菓子を置いてきな!」
 ランタンを腰に下げた舞鈴の腕には、南瓜風味に彩る攻性植物も見える。彼女は用意してきたハロウィンスイーツを、周囲の人々に食べさせようとしていた。
 その隣には、同じく魔女に扮した葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)の姿。黒いとんがり帽子にローブ、そして森で拾ってきたお手製の杖を手に歩く。
「トリック・オア・トリート!」
 また、唯奈は予め南瓜からジャック・オー・ランタンを制作していた。それもあって、かなりハロウィン色を強く出して街を歩く。
「トリック・オア・トリート! ……ニャ」
 その後ろでは、八神・鎮紅(紫閃月華・e22875)が元々持っていた黒い衣装に猫耳を装着していた。魔女に付き従う黒猫の仮装をした彼女もまた、ジャック・オー・ランタンを携帯している。
「にゃー」
 こちらは本当に大人サイズの猫に変身した、園城寺・藍励(鬩ぎ合う光と闇を纏いし白猫・e39538)。全身の毛を黒く染め、黒猫らしく振る舞う藍励は魔女の使い魔を演出し、魔女となるメンバーのそばにつき従い、甘えるような態度をとっていた。
 また、男性2人は一風変わった格好で、行列に参加している。
「やれやれ。うちのマスター達は魔法の勉強だと元気がないのに、祭りの時は元気なのだな」
 雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)は魔女の手下として、狩人の姿をしている。マントを羽織った真也は帽子を被り、狩人の衣装とそれに合った武具を所持して仮装していた。
(「ハロウィンの祭りが最高潮になった時、その歓喜や喧騒を惨劇にて刈り取るのがハロウィンの魔女……だと思うのですが」)
 もう1人の男性、霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)は古びた風のフードつき黒マントを羽織り、魔女の邪魔者を始末する怪人ナイトストーカーに扮する。
 所々にハロウィン風のランタンや装飾をつけることで、和希は仮装らしく見せ付けてはいたが、これも任務の為と割り切っていたらしい。
「こんだけ人がいりゃ、儀式でも何でもやりたい放題だろうねぇ」
 そう呟く音無・凪(片端のキツツキ・e16182)は簒奪者の鎌を構え、目深にフードを被った質素な農婦を演じる。
 この場の空気を楽しもうとする仲間達に対し、彼女達に付き従う従者の役を演じる凪は祭りの邪魔をする存在にも苛立っている。
「仕事がなけりゃ、ゆっくり楽しめたのかねぇ……」
 役柄としてもそうだが、こんな格好をせねばならぬ状況なのが彼女はかなり癪に障っていたらしく、和希以上に仕事への割りきりを見せていた。
 リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130)は、魔女達の使い魔となるキメラの格好で歩き回る。
 元々持っている武装の業拳がゲテモノで怪物然としていること、そして、時々、他の武装をチラつかせたり、眼光を光らせたりすることで、リヴィはハロウィンらしさを演出していた。
「ハロウィンの力に超越の魔女……」
 それがどのようなものかわからない。ただ、人に仇なす存在である以上、リヴィは討ち取る所存だ。その為にも、敵をこの場におびき寄せられればよいのだが……。
 そんな一行に近寄ってくる怪しい人影が4つ。
「にゃにゃー!」
 それに気づいて叫ぶ藍励は即座に黒猫の獣人の姿をとり、猫耳をぴこぴこと動かしつつ向かい来る影に対した。
「「イイィィィーー!!」」
 こちらへ近づいてくるのは、笑いを浮かべて迫る屍隷兵、バンプキョンシーだ。害意を持って近づく敵へ、リヴィもまた即座に迎撃態勢を取る。
「チオニーは……この場にはいないようだな」
 残念ながら、周辺に魔女らしき気配は確認できない。真也は仲間へとクールに呼びかけてから身構えた。
「実に不届きな……」
 ほとんど喋らぬ和希は一言呟き、冷たい視線で敵を見据えて惨殺ナイフを構える。相手は、祭りに乱入した不届きな者達だ。すぐさま掃討せねばなるまい。
「「イイィィィーー!!」」
「まだ、場が熟したとは言い難いね……」
 見た目、魔女らしき一団と判断したキョンシーどもが襲い来るのを見て、凪は仲間達を庇うようにして身を張った。
「一年にたった一度だ、何処の馬の骨とも知らんヒヨッコ魔女に機を乱されるわけにはいかないよ」
「ディオスガンナー・ハロウィンフォームってね!」
 地獄となった右腕を構える凪。その背後で、変身した舞鈴がリボルバー銃を抜いて。
「そんじゃ、フルスコアでゲームクリアと行きましょうか……。ゲームスタート!」
 愛銃をくるくると回しながらポーズを決めた舞鈴もまた、仲間と共に現れた敵の掃討にかかり始めたのだった。

●屍隷兵、バンプキョンシー
 ハロウィンのイベント会場に現れた4体のバンプキョンシー。
「「イイィィィーー!!」」
 そいつらは甲高い声で叫び、一般人に構うことなくケルベロスへと襲い掛かってくる。
「連携はきちんとせねばな」
 仲間のカバーの為に、リヴィは拳、蹴りと格闘戦を仕掛けて来る敵を引き付けながらも、カウンターとして電光石火の蹴りを敵の顔面へと叩きこんだ。
 ただ、死を恐れぬバンプキョンシーどもは、多少攻撃されたところで怯みはしない。
「行くぜ、覚悟しやがれ!」
 前面で敵を狙う唯奈。彼女はローブの下からリボルバー銃を抜いて射撃を行い、周囲の建物などを利用して跳弾を敵の死角から撃ち込んで行く。さながらその様子は、西部劇風のアクションを思わせる。
 後方から仲間達を見ていた和希は縛霊手を振るうことで、紙兵を周囲に散布した。力持つ紙兵の守護はその数でもって、メンバー達を包む防壁となる。
「ウチの魔女サマ達は楽しむのに御執心中だ、邪魔者にゃ退いてもらうぜ」
 自身の役割を果たす凪は変わらず、苛立ちを隠さない。
 敵が手にする南瓜のランタンから放つ炎をその身で受け止めつつ、彼女は右腕から黒の地獄炎を放つ。
「ちょいと邪魔させてもらうぜ?」
 その炎は広範囲に広がり、敵の視界を妨害する。発生する高熱による揺らぎは、錯視を相手に引き起こす。しばらくは凪自身を含め、前衛メンバーの盾として機能するはずだ。
 それに護られる形となる鎮紅。地獄の炎による一撃を考えていたが、仲間達の攻撃を見てグラビティを変更する。
 彼女が手にしたのは、愛用のダガーナイフ。ユーフォリアと銘打つその短剣の刀身は真紅に煌いていた。
「其の歪み、断ち切ります」
 魔力を流し込んだ刃から淡い光を発しながら、鎮紅は目の前の屍隷兵へと連撃を浴びせかける。
 その剣閃は舞い散る花びらの如く。斬撃を浴びせかけられた敵は暗く深き紅をその身に受け、その身を蝕まれるように戦闘意欲を削がれていたようだ。
 メンバーが優先して叩くは、阻害役となる少し後ろの敵2体。
 真也は達人の一撃を素早く見舞い、敵の体を僅かに凍りつかせる。彼は次なる攻撃をと武器を持ち替えつつ、腰に差している刀「誠義兼定」に手を掛けていた。
「戦目、壱之型『執爆』」
 続くは、ケルベロスサイドの阻害役、藍励だ。彼女は複雑に絡み合う形で、グラビティを練り上げる。
「――――エクスキューション・デトネイト」
 次の瞬間、彼女は手にする刃「ビブロストバスター」で高速の斬撃を相手に浴びせかけていく。
 刹那の後、強烈な爆風と共に大気が超振動する。
 周囲を駆け巡った電撃のような衝撃をまともに浴びたバンプキョンシー達は、その身をわずかに痺れさせていたようだ。
 さらに、舞鈴が同じ敵へとリボルバー銃を突きつける。彼女は弾丸をばら撒くように発射し、バンプキョンシーの体を撃ち貫いていく。
「ふん、アタシの敵じゃないわね!」
 銃弾の嵐によって怯む屍隷兵達。だが、敵は活動を止めたわけではない。
「「イイィィィーー!!」」
 再び高く飛び上がる敵は連携しながらも、再度肉弾戦を仕掛けてくるのだった。

 周囲からは、蜘蛛の子を散らすようにイベント参加者達が離れていた。
 とはいえ、屍隷兵、バンプキョンシーの狙いはケルベロスのみ。それもあってか、遠巻きにこちらへと声援を送る人々も少ないながらいたようだ。
 戦場を自在に動き、攻めくる屍隷兵達。仲間が抑えてくれている間に、藍励は敵の体に痺れを走らせようと、アームドフォート型に変形させた「Unknown」から主砲を発射させ、敵へと砲弾を浴びせかけて行く。
 敵の攻撃を前面で受け止めていたリヴィ。相手の攻撃は打撃がメインで、服が破れることはなかった。
 その分、痺れと燃え上がる炎に苛まれることになるのだが、彼女は自身の服装などに頓着することもなく、オーラの弾丸を発する。
 敵の蹴撃に対するカウンターを狙った一撃。再び顔面に叩き込まれた屍隷兵は卒倒してしまい、再び起き上がってはこなかった。
 1体を倒したケルベロス達。メンバー達は思った以上にバンプキョンシーに対して手応えを感じてはいない。人造デウスエクスである屍隷兵だということで、敵の能力はさほど高くはならないのだろう。
 だからと言って、弱いとも限らない。実際、敵の打撃やランタンから発する炎は、ケルベロス達にとって手痛いダメージになっている。
 壁役メンバーが率先して盾になってくれはしているが、他のメンバーに攻撃が及ばないわけではない。
 体力を奪われる拳での打撃を受けた唯奈は口元を吊り上げ、くわえていた飴を噛み砕いて棒を吐き捨てる。
「変幻自在の『魔法の弾丸』。……避けるのはちーっと骨だぜ?」
 そして、彼女はリボルバー銃から弾丸を発射する。ただ、それは真っ直ぐには飛ばず、まるで見えざる何者かが操作しているが如く、幾度も曲がりながらバンプキョンシーの体を的確に貫いた。
 傷つく仲間は、和希が援護する。オウガ粒子を飛ばして広範囲の仲間の傷を塞いでいたが、さすがにそれだけではカバーができない。
「――――、展開」
 深く傷つくメンバーへ、彼は独自に編み出した治癒の術を組み上げることで、仲間の傷を癒していく。
 時に、自身に気力を撃ち込んでいた鎮紅。だが、相手もこちらの体力を奪いはするが、さほど耐久力が高いわけではない。
 ユーフォニアを再び握り、鎮紅はジグザグに変形させた刃で敵の体を切り刻む。そいつは甲高い声で一声叫び、崩れ落ちていった。
 後は前面に立って、強引な力攻めを行う2体。
 藍励が改めて、ビブロストバスターで斬撃を浴びせかける中、凪は感情を昂ぶらせる。
「折角の祭りなんだ、仕事増やすんじゃねーよ」
 メンバーが互いの傷を気に掛けていることもあり、皆の生命に危険はなさそうだ。
「あたしだって、気兼ねなく楽しみたい時間があるんだ」
 しばらく会っていない相棒の姿が脳裏に浮かび、凪は斬霊刀「天華」でウサ晴らしをするように目の前の敵に切りかかっていく。
 後詰めに回るのは、全力で敵を叩いていた真也だ。
「黒光の暗黒螺旋剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ」
 彼は異空間より召喚した弓を右手に、同じく召喚した黒く光る螺旋剣を左手に持ち、剣を細くさせて弓を引く。
「黒光の暗黒螺旋剣(フラガラッハ)!」
 その一振りは音速をも軽く超え、魔力のオーラを纏って飛び、敵の胸を抉るように貫く。そいつは表情を固まらせて力尽き、倒れていった。
「ディオス・フィニッシュ! カウント・レディ!」
 残る1体には、舞鈴が仕掛けていた。
「スリー、ツー、ワン。カウント・ゼロ!!」
 彼女はウェスタンドライバーのスイッチを操作し、強力なエネルギーを銃身に収束して。
「クリティカルシューティング!!」
 叫びと共に発射されるエネルギー弾は、的確に敵の肩口を貫く。
 だが、バンプキョンシーはそれほど意に介した様子もなく、手にするランタンから炎を発する。
 それを受け止めるリヴィ。さすがに残り1体ともなれば、仲間の回復が間に合うようで、余裕を持っていたようだ。
 限に和希が動く前にカバーできていた。彼はレイヴンエッジを手にし、肩口に開いた傷口を抉るように切り込んでいく。
「Trick or treat smell my feet give me something good to eat!」
 そこへ、唯奈がそんな言葉と共に、敵へと目にも留まらぬ速さで弾丸を撃ち放つ。
「イイィィィーー!!」
 発射された弾丸の一発が相手の脳天を貫き、最後のバンプキョンシーがどさりと土埃を上げて倒れていく。
 メンバー達は続いて警戒を緩めることなく周囲を見回すのだが……、この場に3色の魔女が姿を現すことはないようだった。

●再び賑わう会場で
 屍隷兵が消え去ったハロウィンイベント会場にて。
「あんなのザコザコ!」
 先ほどの一戦を、ゲーム感覚のように感じていた舞鈴。
 とはいえ、彼女は現実もしっかりと見ており、破壊された会場へと黄金の果実を輝かせて修復に当たっていたようだ。
「皆、お疲れ様……」
「お疲れ様です。あの……すみませんでした」
 藍励が労わりの言葉を掛けると、和希は素に戻って陳謝する。演技と戦闘の最中、彼は魔女役以外の仲間を呼び捨てにしていたことを気にしていたらしい。
「気にしないで大丈夫ですよ」
 応じる鎮紅は自身や仲間の傷を確認し、気力を撃ち出して回復を始める。
 そうしている間に参加者が会場へと戻ってきており、街はケルベロス達の勝利を喜び、更なるお祭りモードになっていた。
「折角だから、私達もまた参加しよう」
 それもあって、唯奈が仲間へと呼びかけると、幾人かは乗り気になっていて、舞鈴はまた、どこからか配布する為のハロウィンのお菓子を補充していた。
 そんな中、祭りから距離を置くメンバーの姿も。真也もその1人だ。
「無事に再開できたな。さて、俺は狩人らしくマスター達の安全を守ろうかね」
 真也は微笑ましげに、活気付く仮装行列を見守っていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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