南瓜爆車大阪の陣~ホシの行方

作者:沙羅衝

 此処は大阪市旭区にある千林という地域。有名なのは長さ660メートル程の商店街だ。歴史は古く、今や有名なスーパーの1号店などもあった程だ。また、大阪の地方のテレビ番組のロケ地としても有名であり、大阪市民にとっては天神橋筋商店街と並んで馴染みの場所だ。
 いつもの商店街のテーマ曲と共に、商店街ではハロウィンイベントが催されており、いつもより活気が溢れていた。
 そんな雰囲気の中、突如大阪のおばちゃんの悲鳴と文句が聞こえてくる。
「ギャー!」
「ちょっと! なんやねんこんな所で! 危ないやんか!!」
 爆音と共に商店街を駆け抜ける一台の南瓜の馬車。とはいっても、馬は居ない。小さな人一人が乗れるくらいの大きさであろうか。
 そのおばちゃんの声を無視し、一目散に爆走する南瓜車。便宜上、爆車(ハロウィンキャレイジ)と呼んでおこう。
 商店街の中間地点辺りの丁字路は、その突き当たりを右に曲がると、直ぐに左へと折れ、次の直線へと続く。それはさながら、鈴鹿サーキットのシケインの如き短さだ。
 そのシケインに差し掛かった爆車は、スピードを緩める事無く、ドリフト走行で駆け抜ける。
 ギャリギャリギャリ!! バキッ! ドォン!
 そして、辺りに飾られた商品や飾り付けをなぎ倒しながら、構う事無く、あっという間に駆け抜けていったのだった。

「みんな、集まってくれて有難う。いよいよハロウィンって事やねんけど、どうやらハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女達が動き出したみたいなんよ」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が目の前にいるケルベロス達に、説明を開始していた。
「いろいろな事件が起こってきているんやけど、大阪市内で攻性植物の南瓜の爆車が大量発生して、被害がでてきた。幸いやねんけど、今のところ死亡者は出てへんねんけど、ハロウィンパーティの会場とかイベント会場とかで、爆走してるみたいや。
 どれくらいの量かってのは、実はまだはっきりしてへんねんけど、100体以上はおるんちゃうかって言われとる。
 そいつらが大阪市内を大爆走中や。一体一体はそんな強くないから、市内を警備しながら出来るだけ多くの数を撃破して欲しい。これが依頼内容や」
 成る程と頷くケルベロス。そのうちの一人が、裏で操っているヤツも、ひょっとすると……。と尋ねた。
「ビンゴやで。後で飴ちゃんあげるな。
 今回この爆車を放ったのは、パッチワークの魔女に新たに加わった、ヘスペリデス・アバターというドリームイーターらしい。
 コイツは、カンギ戦士団に加わった第11の魔女・ヘスペリデスの力を受け継いでいる可能性が高くてな、今回の事件もその力を使っているんちゃうかって言われとる。
 んで、この暴走事件は、ハロウィンの魔力を集める為に行われているみたいでな、南瓜の爆車達は10月31日の深夜12時に自爆して、集めた魔力をヘスペリデス・アバターに届けようと目論んでる。
 せやから、この魔力を受け取る為に、ヘスペリデス・アバターも、大阪市内に潜伏していると考えられてる。うまく見つけ出せたら、ヘスペリデス・アバターを撃破する事も出来るかもしれへんから、気合入れてな!」
 南瓜の爆車。その数は多数に及ぶ。そしてそれを操るドリームイーター。
 ケルベロス達は、作戦内容の詳細を求める。
「とりあえず爆車の現れる場所は、ハロウィンぽい雰囲気の場所が有力やけど、移動中に撃破していったりすることも出来る。
 市内やから携帯電話も通じるし、どっかのおばちゃんとかから情報が入ったりしたら、直ぐに近くにいるチームに連絡が行くように手配した。
 ただし、当然敵は大爆走しているわけやから、行った所でおらへんっちゅう事も多々あるやろ。そのまま現場に直行するとかよりも、その先を予測するっちゅうのが大事やろな。
 今のところ分かっている情報は、大阪城付近は攻性植物に制圧されてて、その周辺では南瓜の暴車は見られてへんらしいわ。
 ちなみに、このヘスペリデス・アバターの行方は今のところ不明や。何処にいるかっちゅう調査方法も大事やけど、ここや! っちゅう第六感的に具体的に当てにかかるっちゅうのも、意外と大事になってくるかもしれへんな」
 絹はそう言って、ケルベロス達を見る。どうやら作戦内容は大まかには伝わったようだった。
「あ、せや。ヘスペリデス・アバターを撃破できたら、当然魔力の受け取りてが無くなって、コイツらは四散してしまうと予想されてる。ただ、もしヘスペリデス・アバターを見つけれても、その戦闘力は爆車を遥かにしのぐで。気をつけて調査と撃破。頼むで! そんで、楽しいハロウィンにしような!」


参加者
カナネ・カナタ(やりたい砲台の固定放題・e01955)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)
長谷川・わかな(鋼鉄の鉄鍋使い・e31807)

■リプレイ

●9時:千林商店街
 どっどどどどっどどど……。
「おっと、やはりまだ近くに潜んでいたか……」
 神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)は警察から借用した白バイを操りながら、目の前の爆車を発見した。彼は自前のゴーグルを装着した吸血鬼の格好をしている。
「神崎、見える?」
「ああ、確認した。接触する」
 インカム越しに黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)の通信を聞いた晟は、裏地が赤の黒いマントをはためかせながら、爆車を追う。
 ケルベロス達は、まず絹の情報にあった千林商店街を出発地点とした。現場は既に爆車が通り過ぎた後であったが、路地裏を駆け回る爆車がまだ残っていたのだ。
「ガロンド、神崎が接敵してるわ」
「うん、僕たちも行こう」
 上空から翼を使って敵を探っていた舞彩とガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)は、晟が追っている現場の上で合流する。
 舞彩は魔女の仮装をして、ファミリアロッドに跨っている。どうやら箒に見立てているが、時折翼を動かさないと飛べないので、良く見ると翼で飛んでいることはバレるだろう。だが、一見魔女が飛んでいる風にも見えなくはない。
「皆にも連絡しないとね。南側かな……」
「じゃあ連絡頼んだわね。私は先に行ってるわ」
「僕もすぐにいくから、頼むねぇ」
 そのまま急降下する舞彩を見ながら、ガロンドは携帯電話のアプリを起動させた。

「あ、巫女さんや!」
「お嬢ちゃん、よう似合とるねえ」
「わあ、有難う! っと、ガロンドさんからだ……」
 長谷川・わかな(鋼鉄の鉄鍋使い・e31807)は膝丈の巫女服に狐耳と尻尾という姿だ。彼女は商店街の西側を周りながら、様子を確認していたのだ。
「やはり大阪の方は元気ですね。なんと言うか、逞しいです」
 鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)はわかなと一緒に商店街を歩いていた。姿はカボチャの国の兵隊風だ。
「ふふっ。どう?」
 すぐ近くで、カナネ・カナタ(やりたい砲台の固定放題・e01955)が、スタイリッシュモードで変身する。黒の三角帽子とマント、魔女の姿で現れた。
「ええぞー! 姉ちゃん!」
 近所のおっちゃんがその一芸に、喝采を浴びせる。カナネはそれにウィンクして応えると、商店街は一気に盛り上がっていく。
「長谷川さん。どうしました?」
 奏過はその盛り上がりの横で、携帯の画面を見ているわかなに尋ねた。少し困惑の表情をしていたからだ。
「ガロンドさんから『南の路地で接敵』って……。えっと、千林商店街は東西に伸びているんだよ?」
 それを聞き、奏過は少し思案する。
「成る程、路地という所がポイントですね。商店街を外れると、すぐに民家となりますから、その路地、という事でしょう」
「じゃあ、あの角の奥からいけるね! さぁ気張っていくよー!」
「じゃあね」
 わかなと奏過、そしてカナネはそう言って駆け出した。

「……どう? ハロウィンっぽいかな?」
「うむ、クローネもよく似合っているな! 皆に幸せの風を運んでくれそうだ」
 クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)とレッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)は商店街の東側、京阪の千林駅から商店街の中央に向かって歩いていた。彼らはお揃いの赤いジャックランタンも持っていた。
 クローネは風の妖精をイメージした、緑のワンピースに飾り羽根をつけ、お気に入りのレースアップブーツを合わせている。一方レッドレークはアラビアンナイト風の姿だ。精悍な顔立ちの彼には良く似合っており、クローネはいつもと違う雰囲気の彼に見惚れてしまう。
「ん? どうやら未だ此処に居たらしい」
 レッドレークは片目を瞑り、ガロンドからの通信を受ける。
「南? どっちだろう?」
「ちょっと待て。……成る程、あの辺りか。クローネ、中央に向って路地に入るぞ! 商店街は人が多いから、近道を使う。こっちだ!」
「分かった。頼りにしてるね」
「このまま祭りを楽しみたい所だが、先に南瓜どもを片付けるとするか!」

●正午:天神橋筋商店街
 ケルベロス達は千林商店街の爆車を破壊した後、天神橋筋商店街に来ていた。
「まさか、大阪が此処まで一方通行が多いとは……」
 晟は交通法規を無視して縦横無尽に駆け回る爆車に対し、流石の白バイでも逆走するわけにも行かず、結局徒歩を使うことにしたのだった。
 晟は爆車を怪力無双で正面から捕まえようとするが、そのスピードに追いつかず、チェーンソー剣を抜き、その突進を止める。そしてボクスドラゴンの『ラグナル』がブレスを浴びせる。
「晟くん。そのまま抑えておいてね」
 それを見たカナネが砲台を自分の周りに設置する。
『距離を詰めれば楽勝、ですって? 分かってないわね。こーいうときは……先生、出番よ!』
「え!? あ、ちょっとまっ……」
 ドゥン!
 カナネの砲台が爆車を破壊した時、晟は間一髪その爆撃から逃れた。
「危ない!」
「でも、大丈夫だったじゃない!?」
 カナネはそう言って無邪気にウィンクする。
 その時、南の方角からレッドレークとクローネが加わる。
「こっちでも一体倒してきたよ。これで何体かな?」
 クローネの問いに、奏過が計算する。
「これで4体ですね。まだまだいけそうです。あ、こっちはもう大丈夫です。お騒がせしました」
 奏過はそう言いながら、隠れていた商店街の人々に、避難の解除を呼びかける。
「お兄ちゃんたち、すごいなあ。おばちゃん惚れてしまうかもしれへんわ。あ、せや……」
 商店街の人々にまた、活気が戻っていく。
「ほら、おなか空いてるやろ? これ食って行き!」
 おばちゃんはそう言って出来立てのたこ焼きを、鉄板からひょいひょいと慣れた手つきで容器に乗せる。そしてソース……。
「やったあ! 遠慮なくー。私マヨネーズありね!」
「こらこら。我々は仕事中なのだぞ」
 喜んで容器を受け取るわかなに、晟が注意を呼びかける。だが、奏過が晟を諭した。
「神崎さん。皆さんに安心を届けるのも、我々の仕事だと思います。それに、私も少々おなかが空いてきました。あ、私はネギ多めでお願いします」
 とは言ってもだなあと、今だに釈然としない晟の眼に、見知った顔がたこ焼きを頬張っている姿が飛び込んできた。
「あつっ! はふはふ……。まあ、今度は抜け駆けじゃないから、良いわよね。なんて……」
「うん。熱いねぇ。美味いけど……」
 テーブルに座り、二人ではふはふしているドラゴニアンの姿。ミミックの『アドウィクス』の席も用意されていた。
「ああ、神崎。これ美味しいわよ!」
 頭を抱える晟。
「ねえレッド。ボク達も貰おうかな?」
「そうしよう。俺様は3つ頂こう」
 えへへと笑うクローネを見て、満足そうなレッドレーク。オルトロスの『お師匠』もまんざらではないらしく、クローネの隣に目を輝かせてちょこんと座っていた。
「そうよね、楽しまなくっちゃね」
 二人の後ろにカナネが並ぶ。
 そして、晟が叫んだ。
「ええい! 私は10人前は食うぞ!!」

●14時:梅田スカイビル
「よっ! 待ってましたー!」
「我らがケルベロス、ガンバレー!」
 梅田スカイビルに到着したケルベロス達は、一般市民の熱烈な歓迎を受けた。
「……どうやら、大阪中で頑張っている皆の噂が広まっているみたいだねぇ」
 ガロンドはそう言って上空を見る。遥か上の展望台までは距離があるが、ケルベロスの力を持ってしまえば、それも容易い。
 その時、歓声とは違う声が聞こえてきた。
「おーい、ケルベロスさん達ー。こっちに出たでー!」
「これは、なんと言ったら良いのかしら……」
 舞彩が呟くと、奏過が頷く。
「我々より頼りになるんじゃないですかね」
 そうは言ってもすぐに対処しなければならない。
「ほらほら、危ないから下がってて」
 クローネが現れた爆者を見て、マインドリング『rote sternschnuppe』から、春のような暖かいそよ風を呼び込んだ。
『春の訪れを告げる、豊穣の風。穏やかで優しい西風の王よ。我等に、花と虹の祝福を授けたまえ。』
 これだけの一般人が居るため、被害を出すわけには行かなかったからだ。
『…裁いてみせろ』
 それはガロンドも同じであったらしく、自分に注意を向けるべく、死霊を放つ。
 すると、爆車はガロンドに突っ込んでいく。
『そこで大人しくしているが良いぞ!』
 レッドレークが簒奪者の鎌『赤熊手』を地に強く打ち据え、その衝撃から爆車の足元に石巖の刃が突き出て行く。
『悪い子には、ちょっと痛い目にあってもらわなきゃね!』
 わかながくるくると舞いながら、惨殺ナイフで切りつけていくと、爆車は大人しくなり、消えていった。
「すげえ!」
「流石やー!」
 湧き上がる歓声。
「格好良い! こっち向いてー!」
 携帯カメラを構える大阪市民に、ピースサインでポーズを取るわかな。
 爆車が現れた箇所が少し壊れていた所を見て、カナネはささっとヒールを施す。当然またあがる歓声。
 カナネもそれに応え、ウィンクと共にラブフェロモンを撒き散らす。スカイビル周辺は、祭りのような雰囲気となっていった。
 すると、晟が上空から翼を使って降りてきた。
「展望台には、これ以上の敵は居なかった。さて、どうやらこの辺りに本体は居ないようだな」
「どうする? 更に南下するか?」
 レッドレークはそう言って、『赤熊手』の装備を解く。
「未だ北に敵が出てこないとも限りません。南は人が足りている様なので、此処は予定通り来た道を戻りましょう」
 奏過が携帯のアプリを確認しながらそう答えた。どうやら他のチームも駆け回っているようで、成果は上々だった。
 ケルベロス達は、人々の応援を背に、再び来た道に向かって走り出した。

●そして……
「敵はどうやら、通天閣だったようだねぇ」
 ガロンドは携帯のアプリを見て、他の班がヘスペリデス・アバターと通天閣で交戦したという情報を得た。
(「ヘスペリデスはカンギ戦士団になった上で死んだと思ったんだが……。代役や別人ならいざ知らず、ヘスペリデス・アバターとはひでぇや」)
 少し敵への情が沸いたのだろうか、彼はそう思った。
 ケルベロス達は、再び千林商店街に戻ってきていた。彼らが屠って来た爆車の数は14体を数えていた。それ程までに広大な敷地を行き交いした成果だった。
 目の前には、ケルベロス達の攻撃で、動きが鈍っている爆車の姿。
「敵も少なくなってきた様ですね。このまま爆車を倒しきる事にしましょう」
 奏過がガロンドの呟きに答え、雷に似たグラビティを練り上げる。
『封じさせてもらいます…その武器を!』
 最後まで手を抜かず、奏過がグラビティの鎖で、爆車を縛る。
『竜殺しの大剣。地獄の炎を、闘気の雷を纏い二刀で放つ!』
 そして、舞彩が『竜殺しの大剣』を召喚し、その勢いのまま、爆者を一刀両断したのだった。

「えっとね、千林はここが良いって聞いたかな」
 わかながそう言って立ち寄ったのは、絹の予知であった丁字路付近にある甘味処だった。
「いらっしゃい。あら、さっきのお嬢ちゃん達やね。ご苦労さんやったねえ。ほら、中入り!」
 お店のおばちゃんに言われながら一行は店に入っていく。
 時刻は16時を過ぎたところだった。
 ヘスペリデス・アバターは通天閣で討ち取られたとの情報と、大阪市内の爆車も全て撃破できたとの事から、ケルベロス達は一息つくことにしたのだった。
 店内はハロウィンの飾りつけで賑わっていて、そこにはメニューが飾られていた。
「ハロウィン特有のオレンジ色の南瓜はパンプキンだが、日本で一般的な皮が緑色の南瓜はスクワッシュと呼ばれるもので、海外でもKabochaとして販売されていてだな……カキ氷!? この季節に?」
 南瓜に対しての薀蓄を話し始めた晟は、ずらっと並ぶカキ氷の看板に驚く。
「10月から回転焼きと、ソフト最中を中心にやってるで。メニューは夏のまんまなだけや。ほら、焼きたて」
 おばちゃんはテーブルに座ったケルベロスにそう言って、回転焼きを山盛りで運んできた。
「回転焼き……?」
「ああ、大阪では今川焼きの事を回転焼きと言うのですよ。あちちち……」
 大阪の事に詳しい奏過が、レッドレークの問いに答えながら回転焼きを頬張る。中のあんこが熱いが、一日中駆け回ったケルベロス達には、その甘さが心地よかった。
「本当。美味しい!」
 クローネもにっこりと笑い、その製法をおばちゃんに聞きにいった。どうやら彼女は、その作り方に興味があるようだった。
「みんな、此処にいたのね。あら、美味しそう……」
 がらりと引き戸を開けて、カナネと舞彩が入ってくる。外の冷気が少し部屋に進入する。辺りは暗くなり始めていた。
「何か買ってきたのかい?」
 ガロンドが彼女等が何やら手土産を持っていることに気がついた。
「えっとね。絹ちゃん、明日誕生日なんだって。だからお土産、なんだけど……」
 カナネはそう言って舞彩が手に持ったTシャツを見る。
「……大丈夫。宮元は笑って受け取ってくれる、はずよ」
 舞彩は強気にそう言うが、心なしか手が震えているようだ。
「へえ。どんなの? ぼくにも見せてよ」
 クローネがそう言うと、舞彩はじゃんとそのTシャツを広げた。そこには、可愛らしい薄ピンクの生地に、『三十路』と大きく筆で書かれた文字が浮かび上がっていた。
「……チャレンジャー」
 余りの衝撃に、普段元気なわかなも絶句してそう言うしかなかった。

 ケルベロス達はその後、商店街を元気づけるべく、買って、食べて、騒いだ。
 秋が深まってきた季節だが、その寒さもまた心地よく感じるほどの熱気が戻っていた。
 大阪の人々のパワーは、攻性植物に襲われても、怯むことは無い。
 そう感じながら、ヘリオンへと戻っていった。
「ねえ折角だし、絹も含めて、みんなこの格好で記念撮影しない?」
 クローネの提案に、乗らないケルベロス達は居なかった。
 一人、震えているケルベロスはいたのだが。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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