狐耳魔法少女こそが至高

作者:八幡

●狐耳は良いものだ
 廃工場に数人の男たちが集まっている。
 大分過ごしやすくなったこの時期だが、一か所に何人もの男たちが集まれば暑苦しい。
「女子たるもの魔法少女服を着るのが正義である!」
 そんな暑苦しい男たちの中心で、ビルシャナが魔法少女への愛を叫んでいた……が、これだけではよくある主張と言えるだろう。
「しかしである、さらに狐耳の女子が魔法少女の服を着れば……想像してみろ、まさに至高と呼べるだろう!」
 だが……そのビルシャナは何と、魔法少女に狐耳と言う暴挙に出たのだ!
 想像してみると言い。狐耳である。ふわふわで少し尖ったあの狐耳だ。何なら少し先の方の色が違っても良い、とにかく狐耳だ!
 それが魔法少女のふわふわした服や、ぴっちりした服、またはブルマなどとセットになるのだ! 清楚華憐な狐耳、少し大人の狐耳、純粋無垢な狐耳!
「「「ぴぎゃああああああああああああ!」」」
 己の中の想像に耐えきれなくなった信者の一部が奇声を上げる。だがそれも致し方の無いこと、それほどまでに狐耳と魔法少女の組み合わせは極悪と言えるだろう!
 熱狂する信者たちを前に、ビルシャナは翼を広げて、
「よし! じゃぁお前ら、いっちょ狐耳の少女に法少女の服を着せに行くぞ!」
 人狩りいっとこうぜと、器用にくちばしを歪ませてニヒルに笑う。
「その後はもちろん……?」
 だが……だがである。もちろん着せるだけで終わる訳では無いだろう。それだけで満足するのであれば、信者たちが手に手に持つ自家製のフィギアやらイラストで十分なのだから。
「ぺろぺろだ!」
 ビルシャナの答えも当然、是である。フッと小さく笑った後にぺろぺろだと言い切った!
「「「ぺーろぺろ! ぺーろぺろ!」」」
 そんなビルシャナの答えに熱狂する信者たちは、鳴りやまぬぺろぺろコールを続けるのだった。

●魔法少女も捨てがたい
「調査の結果、狐耳の魔法少女が最高と主張するビルシャナが発見された」
 月見里・一太(咬殺・e02692)が自分が調査を行ったビルシャナについての報告を簡潔に述べる。
「また変なビルシャナだね!」
 ビルシャナは平常運転だなぁなんてケルベロスたちが考えているのを他所に、一太の後ろからひょこっと顔を出した、小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)が、だね! と逝ったの顔を覗き込んだ。
 ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が後を絶たない。この狐耳魔法少女萌えビルシャナも、そんなビルシャナの一体だろう。
 ビルシャナ化した人間が厄介なのは、周囲に自分の考えを布教して信者を形成しサーヴァントのような配下にしてしまうところだ。そのサーヴァント自体は強くはないが、一般人であるため倒してしまうのは好ましくない。
 信者をサーヴァントにさせないためには、サーヴァント化する前にインパクトのある説得によりビルシャナの布教を覆す必要がある。
 もしサーヴァント化してしまっても、ビルシャナ自体を撃破すればサーヴァントは元に戻る。
「今回現れるビルシャナは、廃工場に10人の信者たちと一緒にいるんだよ!」
 ケルベロスたちがビルシャナについての基礎知識を思い起こしていると、一太の後に続いて透子が説明を始める。
「信者は全員男の人で、それぞれの手に理想の猫耳魔法少女のお人形やら絵やらをもっているんだよ!」
 それぞれの理想……そう、魔法少女と言っても、色々と格好があり統一されているものではない。また狐耳にもディテイルの違いがある。その組合せたるや無限大と言っても過言では無いのだ。
 となると、魔法少女やら狐耳の部分を外して説得するだけでは物足りないかもしれない。
「ビルシャナの主張をくつがえすなら、緩急が必要かもしれないよ!」
 透子が言う様に緩急をつけたり、斜め上から錐揉みしながら抉りこむような剛速球があれば心強いだろう。
 一通りの説明を終えた透子が、再び一太の顔を見上げて締めの言葉を要求すると、
「こんなビルシャナは噛んだ上で潰してやろう」
「ぺろぺろした後にな」
 一太は真面目にビルシャナを倒すのだと檄を飛ばし、藤守・大樹(ウェアライダーの降魔拳士・en0071)が何故かしたり顔で続けた。
 そしてケルベロスたちは「しねーよ!?」と言う叫びを後に、現場に向かった。


参加者
岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)
カリーナ・ストレリツォーヴァ(デスパレートデスパレード・e00642)
月見里・一太(咬殺・e02692)
進藤・隆治(黒竜之書・e04573)
橘・相(気怠い藍・e23255)
オルファリア・ゲシュペンスト(ウェアライダーの巫術士・e23492)
守部・海晴(空我・e30383)
神永・百合(黒き迅雷・e37338)

■リプレイ

「「「ぺーろぺぁ!?」」」
「ぺろぺろは紳士協定違反だぞごるぁ!!」
 鳴りやまぬぺろぺろコールの中、唐突に床が割れたかと思うとそこから拳を突き上げながら、月見里・一太(咬殺・e02692)が現れた。それから一太は唐突に後ろを振り返ると、
「逝かねぇよ!! 何の話って? 俺も解らん!」
 何て言いだした。きっと「だね!」と言いながら下から見上げてきた少女のことを思い出したのだろう。何でかは分からないけれど。
「どうした? 何か悩みでもあるのか? ぷでぃんぐでも食べるか?」
 何やら情緒が不安定に見える一太に、信者がどこからともなく取り出したプディングを差し出した。心配そうな顔で。
「まったきゅ、騒がしいのぅ」
 なんでぷでぃんぐだよ! と言いつつ受け取る一太を他所に、いつの間にか廃工場の中に入ってきていたらしい、オルファリア・ゲシュペンスト(ウェアライダーの巫術士・e23492)がやれやれと息を吐き、
「あれはきっと女の子を釣るためのものだね」
 岬守・響(シトゥンペカムイ・e00012)が姑息な手口を……何て、プディングを常備している狡い信者を冷たい視線で見つめる。イルカ印のかき氷を5つ装備していなければ自分も危なかったかもしれないのだ。
 オルファリアと響は、言うまでも無くどちらも美少女である。しかもオルファリアは着物を着崩して着るお姫様スタイル。響は軍服ワンピースなクールビューティスタイルである。
「「「おきつねさまじゃあああああ!」」」
 そらもう鳥たちのテンションも上がり切ると言うものである。両手のを天に掲げ、今この場に2人もの狐耳美少女が現れたことに歓喜する。サンキューガンダーラである。
 後は、あの服を脱がし、魔法少女の服装をさせれば完璧である……否、今の恰好を魔法少女と言い切ることも……なんて考えながら信者たちが、オルファリアと響ににじり寄って――耳をピンと立てて警戒する響たちと信者の間に割って入るように、炎が立ちはだかった。
「うわっ……うっわ……」
 行き成り出て来た炎に鳥たちが驚くと、その炎の中からフリルがフリフリした黒いドレスに身を包んだ、進藤・隆治(黒竜之書・e04573)が現れた。
 強面のドラゴニアンの青年が魔法少女の恰好をして、『魔法少女惨状DEATH』と言う看板を掲げる姿は中々のものである……隆治の姿を見た鳥たちが何か見てはいけないものを見てしまったような気がして、視線を逸らすように横を向けば、
「あと10年若ければ魔法少女になれたんだがなぁ」
「流石に30にもなって魔法少女はなぁ?」
 何処からともなく持ち出した椅子に座る、カリーナ・ストレリツォーヴァ(デスパレートデスパレード・e00642)と、神永・百合(黒き迅雷・e37338)の2人と目が合った。
 火をつけていないドライシガーを咥え、どことなくやさぐれた魔法少女のような恰好をするカリーナと、正統派魔女の服装に身を包む百合が、若い子とそれに群れる男共を肴に談話している様は……、
「キャバク……」
 季節的なものもあってそうとしか見えないが、途中まで言いかけたところでカリーナの鋭い眼光と百合の微笑みにより、信者たちは言葉を飲み込んだ。
「……はっ、いつの間にかまたこの格好だ! おのれ藤守大樹」
 そしてよくよく見ればその椅子にはジャージの上に魔法少女の服と言う何とも奇抜な恰好をした、橘・相(気怠い藍・e23255)も腰かけており。さらには、その手に狼の姿になった藤守・大樹(ウェアライダーの降魔拳士・en0071)の首を掴んでいた。
 さらにその後ろには、全身を覆うほどの白いシーツに視界確保の覗き穴を開け、そこにそれっぽく目を描いた何となくお化けっぽい恰好をした、守部・海晴(空我・e30383)が無言で立っていた。
 海晴曰く、魔法少女に憑き物のマスコット的ポジションらしい。
「まって。待って。なんか少女以前の問題が何人かこっちにいる!!」
 一太は食べ終わったプディングの容器をそっと信者に返してから、仲間たちの姿を確認する。この場に出揃ったのは、2人の狐娘、4人の頑張って魔法少女に寄せて来た人、1人の自称マスコット、死にかけの犬……自分の仲間たちとは言え、なかなかにイカレタパーリィの様相を呈している。
「ハロウィン会場はここですか?」
 そんなケルベロスたちに、鳥がどや顔で訊ね、
「上手いこと言ったつもりか!?」
 一太は思わず声を上げたのだった。

 今回の作戦に参加したメンバーの中で最も純真な海晴は思う。
 勢いで作戦に参加しちゃったけど、こういう連中ってこっちの話聞かないんだよなぁと。
 そして、狐耳とか魔法少女とかうわべはどーでも良くて、要はかわいい女の子にコスプレさせてぺろぺろしたいだけでしょ? と。
「一口に魔法少女衣装といっても定型がありゅわけではなかろう。作品によって全く違う衣装をしておりゅ。これはちゅまり魔法少女衣装でなくとも魔法少女的な可愛さがでりゅこともありえりゅということ、別の衣装の可能性を論ずりゅべきではないのかの」
 実際狐耳で舌足らずなしゃべり方をする可愛いオルファリアの周りに集まった信者たちを見れば、オルファリアの話はそっちのけで、「そうだねぇ、この服着てみよ?」とハイレグのような服を手に、にじり寄っているし、
「それにじゃ、魔法少女とは変身する前も含めて魔法少女なのではないのか。変身前の姿も重要ではないかの」
 そんなの着ないのじゃと手を叩いて落とすも、信者たちは叩かれて幸せそうである。変身する前も重要ならお嬢ちゃんは完璧だねぇなんて言われる始末である。
「ガールズバーか?! ……と言うかお前ら魔法少女のイメージの統一ぐらい計れよ!」
 可愛い子が可愛い主張をしているのを見守るオッサンたちの会になっている状況に一太は突っ込みつつ、崇拝対象の統一性の無さについて問いただす。
「魔法少女って言えばブルマだろうがスクミズだろうがパイロットスーツだろうが何でもいいのかよ! そうじゃねぇだろ!! 魔法少女ってーのはこう、もっと少女に夢を与えるもので! ひらひらした服装で御姫様みたいでありながら決して折れない女の子だろ!?」
 そう、たまに幼女を本気で泣かしにかかる映画もあったりするが大抵の魔法少女は少女とオッサンに夢を与えるものなのだ。
「大体、お前らのそのままなら『狐耳』で『魔法少女』ってラベルがあれば他の要素はどうでもよくなっちまうだろうが!」
 魔法少女に必要なもの。それは、容姿のみに在らず。ひたむきな努力だったり、折れない心だったり、お姫様のような純真さなのだと一太は主張するも、
「え? 狐耳と魔法少女以外のラベルって要る?」
「びゅれないのぅ」
 信者たちは真顔で聞き返し、そんな信者たちにオルファリアは呆れていたが、一太はウェイウェイウェイと手をパタパタさせて、
「あれらを魔法少女って認める気かよ!!」
 魔法少女の姿をした隆治と相を示した。魔法少女のラベル……それはつまり魔法少女の恰好をしていればそのラベルを付けているも同義ということ。隆治と相も魔法少女たり得ると言うこと!
『あなた達は魔法少女をぺろぺろしたいみたいですが。魔法少女にはあなた達は必要ありません』
 なん……だと?! と驚愕する信者たちに隆治が看板を掲げて追い打ちをかける。
『だって、魔法少女は人間を守るのだから、あなた達は犯罪を犯そうとしている。犯罪者に人権は無い。つまり、あなた達は人間ではない』
 そして更に抉りこんでいく。かなり辛辣な言葉な上に、魔法少女の恰好をした強面の男に言われている事実は、かなり精神的に来る。
「幼女拉致ってぺろぺろを企むどエロどもに粛清を……そも魔法少女崇める前にサブキャラにして重要ポジションにいる不思議生物を敬えよ?」
 隆治に心を折られてがっくりと膝をついた信者たちの前に、海晴が進み出るとマスコット的ポジションをないがしろにするんじゃないと。
「こいつらのなんやかんやな不思議なパゥワーのお陰で幼女が魔法少女足り得ているんだろうがー、そんなにぺろぺろしたけりゃテメーでコスプレして鏡でぺろぺろしてろおー?」
 そしてマスコットが居るからこそ魔法少女が成り立つのだと。
「俺たちは人ではない……マスコットを大切にする……鏡をぺろぺろ……はっ!?」
 何やらスイーっと左右に移動しながら説教する海晴と、先の隆治の言葉を反芻した信者たちは一つの真理へ辿り着く。
「「「つまり、俺たちがマスコットになれば、狐耳の魔法少女を作り放題ぺろぺろし放題ということか!」」」
 それはつまり、マスコットになれば少女だろうが少年だろうがオッサンだろうが、狐耳の魔法少女に出来てしまうと言うことだ!
「いい加減に、目をさましゅのじゃー」
 あらぬ方向にぶっ飛んだ信者を正気に戻すべく、オルファリアが扇で頭を叩き、
『……というか、ぴぎゃーって何? 人の言葉なの? 馬鹿なの?』
 隆治が魔法少女の恰好のままに膝を折っていた信者の頭をハリセンでパーンし、
「もー腹パンで黙らせればいいんじゃね? 死なない程度に?」
 海晴が信者の腹に一発入れると、3人の信者が正気に戻った。

「そう、これが魔法少女の自由……狐耳に捉われるでないわ!」
 魔法少女ビルドモスキュラーと名乗るムキムキの褌マッチョじじいに誘導されて信者たちが出ていく。魔法少女に踏まれる自由。マスコットの腹パンを食らう自由。狐耳の少女に叩かれる自由。そう、魔法少女とは常に自由なのだ。
 そんなわけで、相が魔法少女の新たな道として徐にジャージを脱ぐと……なんと下からブルマが現れたのだ!
 ブルマと言えばオッサンたちの郷愁を呼び起こすマジックアイテムの1つだが、とても残念なことに下だけで上はそのままジャージの上に魔法少女の服だった。そんな相の姿に鳥たちはそっと視線を逸らし、
「……ほらああ、みんなドン引いてるじゃないのー!」
 どうやら大樹に何か吹き込まれてこんな格好になったらしい相は狼姿の大樹をチョークしたままぶんぶん振り回している。
「はーいそこまでだよファッキン限界野郎共が。っつうかよォ、魔法少女ってお前、着る側も見る側も選ぶんだぞああいうの」
 恥ずかしさのあまりにむきゃーしている相は置いておき、カリーナは椅子に座ったままアンニュイに語り掛ける。
「ほら見ろ俺に至っては魔女じゃねえか、皆が皆少女じゃいらんねえからな。もう『うわキツ』って思うしかねえだろ?」
 魔女は魔女で魅力的ではあるが、魔法少女と言い張るのには無理があるとカリーナは考えるようだ。
「世の中にこんなん溢れるんだぞ? あと狐耳なら体型良いってセットにしてやがるかもしれねぇが、信楽焼のタヌキと見間違えるような奴当たり前にいるからな。そいつらが着だしたら地獄だろ」
 カリーナが言うように世の中、可愛い恰好が必ずしも似合うとは限らない……皆が皆、己を知り、己に見合った格好に行き着く。
「だからやめとけって、な? ってーワケで白旗上げるなら今のうちだぜ、さもなきゃ餌を求めて人里に降りた獣と同じ末路にご案内さ。狐も狩られるものだしな!」
 お前たちも良い大人なんだから、そこらへん分かった上で身の丈ってやつを知りなよと、カリーナは信者たちに目を細めると、
「「もう、やめてあげてよぅ」」
 何人かの信者たちが目を覆っていた……そして何故か相が俯せに倒れていて、駄犬がその横で首を横に振っていた。何かが色々刺さったのだろう。

 あれー? と首を傾げるカリーナを横目に見つつ、響は信者たちに向き合うと、
「好みを押し付けて、ぺろぺろだなんて連呼する姿は、少なくとも私には素敵には見えないな……厳罰ものだね」
 ふふふ、と悪戯っぽい笑みをこぼしつつ、威圧的に信者たちへ迫る。
「私たちにだってしたい恰好、したくない格好くらいあるよ。それを無理に押し付けて、好いてもらえるなんて思ってないよね?」
 それから腕を組みながら嫌われるよ? なんて信者たちに見下して、
「……そ。これは、オシオキが必要かな?」
 自分の人差し指を唇にあてながら、くすりと笑いつつ冷たい視線を信者たちへ向ける……これだ。狐娘に求めるもの。嗜虐的な美女だとか、支配されたい欲求だったりとか、策謀を巡らせて陥れてくる感じ! 軍服ワンピースを着た響の姿とそれらが見事にマッチし、
「「おしおきしてくださあああい!」」
 辛抱堪らなくなった信者たちが鼻血を垂らしながら響へ向かってダイブした。
「わわっ」
 一斉に飛びかかって来た信者たちだが響は華麗と避けて……信者たちは避けた先に居た白いふわふわしたドレスに身を包んだ玉榮・陣内の耳にしゃぶりつく形になった。
「お前ら毛並の上からペロペロされたところで大して何も感じないぞ。いやくすぐったいけど」
 美少女の耳に飛びついたらオッサンの耳だった信者たちがうげぇと離れ、耳についたよだれと鼻血をそっと拭いながら陣内はそんなことを言う。
 信者たちが何か口直し……と横を見ればそこには比嘉・アガサが居た。一緒に遊ぶ? 何て手招きする黒いタイトなミニドレスに身を包んだその姿は相変わらず魅力的である、主張が猫耳だったら間違いなく飛びついていたことだろう。
「耳を舐めるなら毛皮の無い種族が一番だ。反応がいい。断言しようペロペロするなら、エルフ耳だ」
 そして一緒に遊ぶとは何をして遊ぶと言うのだろうか、エルフの耳をペロペロしたことがあるらしい陣内の会話内容を録音して然るべきところに突き出す遊びだろうか。
「きついのを御見舞いしてアゲルね」
 昔の話です。俺を信じろなんて微塵も信じられないことを言っている陣内の後ろで、響は信者たちをロープで拘束しつつ耳元でそんなことを囁いてやる。
「魔法少女と言えば、猫耳やろ。元祖にして最強である、あの子かて猫耳装備や。それを差し置いて狐耳魔法少女が至高ってのは見立てが甘いんとちゃうか?」
 お願いするであります! なんて歓喜の表情を見せる信者たちに悪戯っ子のような笑みを見せてから、響は信者たちを百合の前に引き摺って行くと、百合がにこにことした笑顔を崩すことなく信者たちに語り始めた。
「あと少女をペロペロするんはアカン。紳士協定にも書かれてるやろ? 『YESロリータ! NOタッチ!』て」
 YESロリータNOタッチ。それは絶対の紳士協定……一斉に視線が黒豹に突き刺さるが、本人は俺を信じろと繰り返すのみである。
「成人してたらセーフて訳でもないけどな、少女は見て愛でるもんや。手ぇ出すんはただの人でなしよ」
 紳士協定が何故存在するのか。それは花を愛でる全ての紳士が、花を愛で続けるために必要なものだからだ。それ故の鉄の掟、己への戒め、絶対の不文律。
「紳士として正しく魔法少女を愛でるならよし、人でなしに堕ちるんやったら……」
 それを守れないのであれば、人でなしと言っても過言では無いだろう。だから、もしもそんな人でなしになってしまうのなら……百合は一度ここで言葉を切り。
 顔を覚えるように鳥を、そして信者たちの顔を1人1人じっと見まわす。
 百合の顔は相変わらずの笑顔だ。張り付いた笑顔でもなく、ただ優しい母のような笑顔……だが、それ故に、異様なまでの緊張感がそこにはあった。
 ゴクリと生唾を飲む信者たちを前に、たっぷり10秒以上間を置いてから百合は口を開き、
「――握りつぶすしかあらへんね」
 そうするしかないね。と、笑顔のままに告げた。
「「「ひぎゃあああ!」」」
 何を握りつぶすのか……聞くまでも無くナニをだろう。そして百合はやるだろう。あの笑顔はヤル笑顔、絶対ヤル笑顔だ。響に拘束されたままだった信者だが、我先にと廃工場の出口へ向かって転がって行った。
「分かってくれたんやね」
 信者たちの他に2人ほど逃げて行った気がしなくもないが、自分の言葉が届いたようで良かったと百合は頷いた。

 そして最後に残った鳥を囲むように、一行は集結する。
「いったくんがペロペロするって聞いたのに!」
「何をだよ! どっちみちしねぇよ!」
 ブルマ姿の相は悲しみに満ちた表情でバスターライフルを構える。
『普通の魔法少女の変わりに……調教してあげる?』
 もう何もかもふっとばしてやるぅ! そんなやけくそさを滲ませる相にえー?! と言う顔でツッコミを入れる一太を横目に見つつ、隆治が看板を掲げ、
「そもそも、おぬしに舐められりゅのかのぅ?」
 オルファリアがふとそんなことを口にするが、鳥は余裕の微笑みを見せるのみだ。
「うわキツな魔法少女の一撃をお見舞いしてやんよ」
 オルファリアは鳥の様子に小首を傾げるが、鳥の思考など考えるだけ無駄だろうと、カリーナはルーンアックスを持つ手に力を籠め、
「たーっぷり後悔させてあげるね?」
 響は自分の唇を舐めて、小悪魔的な笑顔を見せる。
「ずいぶん余裕だな?」
 それから、特に気になる訳でもないが、最後にかける言葉も特になかったので海晴が一応鳥に聞いてみると、
「ふっ、この俺をあんな軟弱者どもと一緒にしないで頂きたい! それはそれで、ありがとうございますだ!」
「それで良いのかよ!?」
「ほな」
 予想通りな答えに、百合が微笑みつつオウガメタルをその身に纏い……なんやかんやで鳥は握りつぶされたのだった。

作者:八幡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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