南瓜爆車大阪の陣~浪花狂走夜

作者:そうすけ

●ハロウィン当日、大阪市内某所
 大阪のシンボルである大阪城をデウスエクスたちに盗られて数か月。
 大阪市民は意外とめげてなかった。
「ちょっと貸したってるだけや。そのうち利子つけて返してもらうで」
「クリスマスまで待ったろ。モミの木代わりにして爆弾の電飾、いーっぱい飾ったるわ」
 倒した(もちろんケルベロスが倒すことになっている)デウスエクスも飾りにしたれ、と思い思いの仮装姿で気勢をあげる人々。
 そこへ――。
 パラパラパラパラ。ちょっぴりコミカルな爆音を響かせながら、南瓜の爆車(ハロウィンキャレイジ)が歩行者天国の交差点に突っ込んだ。
 仮装行列を蹴散らし進む南瓜の爆車だったが、カッと頭に血の登ったパンプキンヘッド――もとい、大阪市民によって蹴り転がされる事態に発展。
 当然、怒り狂う南瓜の爆車。
 あわや大惨事か、と思われたが、なんとか起き上がった南瓜爆車はまわりを取り囲む大阪市民を振り切り、バナナのたたき売り屋台に突撃して派手に蹴散らし、夜の深まる大阪の街へ逃げていった。

●ヘリポートにて
「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女達が動き出したよ。大阪市内で大量発生した攻性植物の南瓜の爆車が、あちらこちらを暴走し、市民に迷惑をかけてるんだ」
 ゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)の説明では、幸い、死者はでていないようだ。今のところは。
「南瓜の爆車はハロウィンの飾りつけをした商店街や、ハロウィンパーティーの会場、コスプレした人々の行列など目掛けて暴走を繰り返しているよ。一体一体の強さはそれほどでも無いので、大阪市内を警備しつつ出来るだけ多くの敵を撃破してほしい」
 南瓜の爆車の総数は不明だが、概算で100体以上の南瓜の爆車が大阪市内を駆けまわっていると想定される。
「南瓜の爆車は単体で移動していて、一体一体の強さはそれほどでも無いよ。全長1m半だから、車より小さいね。見た目はおばけカボチャの馬車って感じ」
 南瓜の爆車を市内に放ったのは、パッチワークの魔女に新たに加わった、ヘスペリデス・アバターというドリームイーターであるらしい。
 ヘスペリデス・アバターは、カンギ戦士団に加わった第11の魔女・ヘスペリデスの力を受け継いでいる可能性が高く、今回の事件もその力を使っているのだろう。
「この暴走事件は、ハロウィンの魔力を集める為に行われているみたいなんだ。南瓜の爆車たちは、10月31日の深夜12時に『自爆』して、集めた魔力をヘスペリデス・アバターに届けようとするよ。ヘスペリデス・アバターも、大阪市内に潜伏しているんじゃないかな?」
 うまく見つけ出せば、ヘスペリデス・アバターを撃破する事も可能かもしれない。
「で、出現場所なんだけれど……」
 レジャー施設やコンサート会場、デパート前の通り等々。ハロウィンぽい雰囲気の場所が襲撃される可能性が高いが、移動中を見つけて撃破する事もできる、とゼノは言った。
 幸い、携帯電話での通話が可能だ。市民からの目撃情報があれば、随時、近い場所にいるチームに連絡が入るように手筈は整っている。
「ただ、南瓜の爆車たちは常に動き回っているから、通報を受けてから駆けつけても間に合わないと思う。出現ポイントをいくつか推測しておいて、通報があったらスムーズにポイント間を移動できるようにしておくといいんじゃないかな。もちろん、推測が当たって南京の爆車が現れたら速攻で倒しちゃってよ」
 それから、とヘリオン搭乗前にゼノは表情を引き締めた。
「少人数で動くと、付近の南瓜の爆車が集まって襲われる可能性があるから注意してね。一人やペアで動くと危ないよ。大阪城付近は南瓜の暴車は活動していないみたいだから、そのあたりでは大丈夫だと思うけど……」
 そんなところでウロウロするなんて意味ないよね、とセルフツッコミで苦笑い。
「爆発の被害を防ぐ為には、全ての南瓜の爆車を撃破するのが理想的、だけど、それが難しいならヘスペリデス・アバターの撃破を優先するのもアリかもね。現地到着までの時間を使って、他のチームと相談しつつ、作戦を立ててね」


参加者
ミシェル・マールブランシュ(きみのいばしょ・e00865)
古海・公子(化学の高校教師・e03253)
風鈴・響(ウェアライダールーヴ・e07931)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
ハル・エーヴィヒカイト(ブレードライザー・e11231)
ホルン・ミースィア(ヘイムダルの担い手・e26914)
モモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)

■リプレイ


 ヘリオンのドアから下界を望む。赤レンガの色彩と正面の半円アーチがひときわ目を引く、ネオ・ルネサンス様式の建物が見えてきた。降下予定地点の大阪市中央公会堂だ。
「では、行ってまいります」
 ミシェル・マールブランシュ(きみのいばしょ・e00865)は医者に扮するために着ていた白衣の襟から目に見えぬ塵を手で払いのけると、パイロットシートから離れた。
 待機していた仲間たちに、降下開始を告げる。
「よし、じゃあ行こう!」
「ニャン♪」
 ホルン・ミースィア(ヘイムダルの担い手・e26914)とその相棒のウイングキャット『ルナ』が翼を広げてヘリオンから飛び出すと、みな次々と後に続いてハロウィンで賑わう浪花の街へとダイブしていった。
 ケルベロスたちは、道路を挟んだ中央公会堂の斜め前にある広場に降りたった。
「わはははははははっ! わはははははははは!」
 腰に拳を当てて胸を反らす服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)の笑い声が、秋風が抜き抜ける中の島に響く。
 降下中、ケルベロスたちは堺筋を左に折れ、中之島通りを東から西へ、中央公会堂に向かって爆走する一台の南瓜爆車を見つけていた。まもなくここへやってくるはずだ。
「わざわざやられにくるとはのう。どれ、ひとつ派手に出迎えてやろうではないか」
 カラス天狗に扮した無明丸は、籠に手を入れて黄金色の金貨――中身はミルクチョコを掴んだ。
 そぉれ、と空に放って派手に御菓子の金貨をばら撒けば、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)の相棒、ミミック『相箱のザラキ』も競うようにして御菓子を吐き出す。
 福々しい笑い声とチャリンチャリンと硬貨の落ちる景気の良い音、近くにいた子供たちの笑顔に惹かれ、南瓜爆車が車輪を軋ませながら公会堂の前を曲がって広場に突っ込んできた。
 包帯を全身に巻きつけたシャーマンゴーストの『カエサル』が、御菓子を目にして駆け寄ってきた親子ずれをガード。
 南京爆車はカエサルの前を掠め過ぎ、ミシェルが相棒の横から放った注射器型の弓を避けて、メイド姿のシャドウエルフへ向かっていく。
「馬鹿め」
 グラビティで作られた結界の内をなぞるように落ち葉が舞い飛ぶ、スノードームならぬ落ち葉のドームの境界を、注射器の矢が刺さった南京爆車が突き破った。
 葉の陰に隠れていた無数の刃が南瓜爆車に切りかかる。
『我が内なる刃は集う。無明を断ち切る刹那の閃き、絶望を切り裂く終わりの剣……! 久遠の刹那(ブレードライズ・エーヴィヒカイト)ッ!!』
 ハル・エーヴィヒカイト(ブレードライザー・e11231)の抜刀時のひと薙ぎで、南瓜のボディーと木と蔓草でできた車輪が外れ、壊れた。
 後ろへ飛んだ後輪の一つをホルンが撃ち落とし、前に飛んだ前輪の二つを魔法使いの黒いローブを羽織ったイッパイアッテナが腕を振るって弾き飛ばした。
 ルナが翼を羽ばたかせて風を起こし、逞しいドワーフの腕についた傷を癒す。
 ボチャン、ボチャンと車輪が川に落ちる音をBGMに、秋桜の散る振袖をたすき掛けにしたモモコ・キッドマン(グラビティ兵器技術研究所・e27476)が、雷を纏わせた刀を突き振るって南瓜の皮をむいていく。
「これって、煮たら食べられるでしょうか?」
「まだ気を緩めるのは早い!」
 風鈴・響(ウェアライダールーヴ・e07931)はライドキャリバーの『ヘルトブリーゼ』を駆って、地面から突き出て来た蔓触手を踏み潰した。タイヤを軋ませながら止まる。
「全滅が目標だ、ガンガン気を尖らせて行こう!」
 手のひらにエネルギー光球を呼び出すと、攻撃担当の仲間たちへ投げた。
 直後、きれいに皮をむかれた南京爆車が自爆した。
 普段着のまま白衣の古海・公子(化学の高校教師・e03253)が、キラキラ光る雷の幕を広げて仲間たちを包み、傷を癒した。
 メガネをクイッ、と指で持ち上げ、ほっこり焼きあがった南瓜の破片を上からしげしげと観察する。
「食べられないことはないと思いますが、元がデウスエクスですから……」
「やめておきましょう。せっかく食い倒れの街にいるのです。そんなゲテモノより、美味しいものをいっぱい食べようではありませんか」
 それもそうだ、とケルベロスたちは辺りに飛び散った南瓜を片づけにかかった。


 幸先の良いスタートを切ったケルベロスたちは、二手に分かれて南京爆車を掃討することにした。
「B班は私と相棒、ミシェルさんとカエサル、無名丸さん、公子さんで。ここから御堂筋を南下して行きます」
 歩きながら、イッパイアッテナはヘッドセット・ワイヤレス・インカムの位置情報共有アプリを立ちあげた。情報の妖精さんが作成した『大阪市内ハロウィンマップ』と照らし合わせる。
「御堂筋から外れますが……南堀江で合流しましょう。夕方から大規模な仮装ライブパーティーが開かれるそうです。その後は、一緒に天王寺まで行きますか」
「うん、それでいいんじゃない」
 ホルンもまた、情報の妖精さんから南京爆車の最新目撃情報をSNSなどから拾いだしていた。インカムをセットして通話を確認する。
 他の者たちもそれぞれ通信機器をオンにして通話状態を確かめた。
「A班はボクとルナ、ハル、モモコ、響、ヘルトブリーゼでいいね? まず、西にあるテーマパークに向かうよ。他のチームや市民からの通報があれば臨機応変に対応……で、B班と合流する」
「では、またあとで」

 橋のたもとで二手に別れ、A班メンバーは中之島を西へ進む。四ツ橋筋を北に上がり、北の繁華街梅田に出た。
「聞く話によるとウメダにはダンジョンがあるそうだな。ここがその入口の一つではないか?」
 ハルがハロウィンの装飾がされた地下街への入口を指さしながら言った。南京爆車が一台ならギリギリ入っていけそうな幅はある。階段で車輪がガタガタになりそうではあるが。
「いかにもデウスエクスが出そうな感じはしますね。潜りますか?」
 モモコの提案に全員一致で賛成すると、まず、ヘルトブリーゼに乗ったままで響が地下へ降りた。
「ビンゴ! 向こうの方から悲鳴が聞こえてくる。急いで助けに向かおう!」
 二つの地下鉄駅が重なる交差点でまず一台倒したのを皮切りに、立体的で広いウメダ地下街を縦横無尽に駆け巡り、合計四台の南京爆車を片づけた。
「いまどこ? 上がったり下がったり……分からなくなったんだけど」
 地下をぐるりと回って西の端にいる、とホルンが響に答える。
「北だけでずいぶん走り回ったのう。この調子ではテーマパークにたどり着けんぞ」
 とりあえず、当初の目的地を目指して地上にあがる。
 ラーメン激戦区の福島でもう一台、いい匂いをかぎながら南京爆車を壊した。
「腹が減ってはなんとやら、じゃ。昼にしよう」
 ハルの提案で、ちょうど目の前にあったラーメン屋に入った。ハロウィン特別メニューのラーメンで昼食を済ませ、膨れた腹をさすりながら迷惑なデウスエクスの姿を探して西へ、西へ。北港通りを進む。
 高速道路を降りて正面から向かってくる南京爆車を迎え撃った。
「ふう、さっきので何体目でしょうか……12時までになんとかしないと――!?」
 モモコが指さす先、テーマパークの正面ゲート付近で警備員たちと南瓜爆車が小競り合っていた。
 ケルベロスたちが駆けだした矢先、園内から別の南瓜爆車が飛び出して警備員たちを背後からはね飛ばし、南へ走って行く。警備員たちと争っていた南瓜爆車はケルベロスたちの到着を待って自爆した。
 ルナが負傷した警備員たちを癒す。
「ひどい事をする!」
「早く逃げたもう一台を追いかけないと!」
 だが、追いかける足がない。
 ヘルトブリーゼに乗れるのは相棒の響だけだ。
 歯ぎしりするケルベロスたちの横に一台のデコトラがタイヤを軋ませて止まった。
 大阪のおばちゃんが窓から太い腕を出して親指を立てる。
「はよ、乗り! とばすで!」
 ハロウィン電飾をギラギラ光らせながら、ケルベロスたちを上に乗せたデコトラが南瓜爆車を追って激走する。お祭りムード一色のテーマパークをぐるりと一周し、高速道路へ入った。
 西日射す橋の上で南瓜爆車に追いつく。
 相棒を乗せたままヘルトブリーゼが南瓜爆車の側面に体当たりしてのスピードを殺ぐ。
『プリズムダート展開、具現化安定確認』
 デコトラの上からホルンがケルベロスチェインを投げて車体を捉えた。
「いっけぇぇっ!」
 追い抜きざまに、ハルとモモコが南瓜爆車の上から刃の雨を南瓜の屋根に降らせる。
「さよならだ」
 デウスエクスは大観覧車が回る前で爆発した。
「さすがケルベロスや! おばちゃん、めちゃくちゃシビレたわ! ハンドル握る手が震えてもうたで」
 デコトラを運転していたおばちゃんに、全員のケルベロスカードとサインをシッカリねだられたのち、一行はおばちゃんと別れ、合流ポイントである南堀江を目指して歩きだした。


 時はさかのぼる。
 A班と別れたB班は淀屋橋を渡り、ビジネス街の北浜を南へ歩いていた。
「バナナのたたき売り、が似合いそうな建物は……この辺りにはありませんね」
 公子がぼやく。バナナのたたき売り以前に、ビジネス街だけあってハロウィン色が薄い。
「うーん、中央区までは御堂筋より隣の四ツ橋筋を歩く方がいいかもしれませんね。あるいは堺筋か」
 イッパイアッテナが、四ツ橋筋なら広い靭(うつぼ)公園あります、というので、とりあえず一行は筋を変えることにした。
 四っ辻で何気なく右を見たとき、ミシェルはビルとビルの間を駆けて行く南瓜爆車を見た。
「おや、さっそく見つけましたよ。ひとつ北の筋を東へ――」
 カエサルが相棒の白衣を引いた。後ろ、後ろと指さす。
 一旦はすれ違った南瓜爆車が、角を曲がってケルベロスたちがいる道に入ってきた。
「さてはわしらを見てハロウィンの行列と勘違いしたか。よかろう! ではそれなりの歓迎をしてやろうではないか!」
 黒い翼を広げる無明丸の下に、ディフェンダーたちがずらりと並んで即席のバリケードを築いた。
 そこへ南瓜爆車が突っ込んでくる。
「ドワーフの鎧装騎兵、いや、ハロウィンの魔術師として、何があってもここは通しません!」
 相箱のザラキが飴玉を大量に吐き出して車輪の下に撒き、空回りさせて衝突の威力を殺いだ。
 カエサルと一緒に車体を真正面で止める。
「どぅりゃあ!!」
 ロープをまくり上げながら、地の底から突き上げるような強烈なひと蹴りを放ち、南瓜爆車を空へ飛ばした。
 空中での不利を悟ったデウスエクスが、狂ったように地面に向けて蔓草を伸ばす。
「おやおや、往生際が悪い。完治のためにお薬を出しましょう!」
 ミシェルは白衣の前をはだけると、発射口からエネルギー光線を放って地を掴もうとする蔓草を焼き切った。
 空中で南瓜爆車が静止する。
「「いよ~ぉおっ!」」
 全員そろっての掛け声に、褐色の肌が武者震いする。
「ぬぅあああああああーーーッッ!!」
 南瓜の車体を巨大な太鼓に見立てて、カラス天狗の拳乱れ撃ち無明伝説。
 上から下へ、凄まじい勢いで地面に敵を叩きつける。
 デウスエクスは体の大部分を粉々にされ、地面で激しくバウンドした際に前後輪を失った。それでもなお、グラビティを奪い取ろうと醜く足掻く。車輪の代わりに蔓草を伸ばし――。
『出直ししなさい!!』
 それも駄目、これも駄目。ハロウィンに相応しくない、と容赦なく残った体に赤バツがつけられていく。
 公子のダメ出しを食らって精神的に凹まされ、反撃の気力を失った南瓜爆車はグスグズと崩れながらアスファルトに消えた。
 冷たい風にのって、遠くからパラパラ、パラパラという怪音が流れて来た。
「ふむ。あっちの……公園から聞こえてくるの。あれが靭公園か?」
「そうです。行きましょう!」
 逃げてくる怪物、いや、人の波をかき分けて公園に入った。すぐ、ぐちゃぐちゃに潰れたチョコバナナの店が目についた。ほかにも粉々になった植木やお面が道に散乱している。
 上空から公園内全体を偵察していた無明丸が降りて来た。
「四台が公園内の屋台をぶち壊しながら、レース気分で走り回っておる。一台ずつ相手にするのも面倒じゃ。せっかくまとまっておるのじゃから、ここへおびき寄せて、一気に片づけてしまおう」
 全員が賛成すると、無明丸は翼を広げて空へ上がった。籠に手を入れて、金貨のお菓子を派手にばら撒く。
「そぉ~れ! 祭りじゃ、祭りじゃ~!!」
 カラス天狗の威勢の良い掛け声と、太陽の日差しを弾いてキラキラ輝きながら落ちる金貨。そしてその下で楽しそうに踊る魔法使いとミイラとマッドドクターたち。
 果たしてデウスエクスたちはまんまと引き寄せられた。
 トップを走って向かってくる南瓜爆車を、マッドドクターの注射器型の矢が連続で射抜く。
 二番手を魔法使いとその弟子の箱が凶月の弧を描く渾身の蹴りで粉砕。
 三番手をシャーマンズゴーストのミイラにガードされながら、女医に扮した公子が山吹色の火を吐くドラゴンを召喚して焼き払った。
 次々とやられていく仲間たちの最後を見て、最後の一台が急ブレーキをかけて止まる。すぐに車輪を逆回転させて猛スピードで下がり始めた。
「さあ! いざと覚悟し往生せい!」
 空を飛んで追い越した無明丸が、下がってきた南瓜爆車の尻に拳の連打を見舞った。
 ドドン、ドーン、と太鼓に似た低い爆発音が公園を囲む木々を震わせ、赤や黄に色づいた葉を落とした。
 公園に戻ってきた一般市民から感謝の言葉と、タコ焼きだの焼きソバだの、屋台の食べ物を振舞われた一行は、食べ歩きながら東へ。心斎橋筋に入って商店街の中を南下した。


 どこもかしこもハロウィン、ハロウィン。困ったのは、そこかしこに南瓜の飾りがぶら下がっていることだった。中には南瓜の馬車を飾る店まである始末。
 真偽をたしかめつつ、B班は左右から商店街に入ってくる南瓜爆車を撃破していった。
 若者でにぎわう三角公園で一台倒した後、南堀江目指して宵闇の街を歩く。
 ヘッドセット・ワイヤレス・インカムの位置を直しながら、イッパイアッテナが言った。
「ここまで結構な台数を倒しましたが……みなさん、気づいておられましたか? 南瓜爆車のほとんどが最終的には『南』を目指していたことに」
「……ということは、もしかして?」
「ええ、アバターは――あ、A班から連絡……他のケルベロスたちからも連絡が次々と入ってきています!」
 全員、通信機器に入ってくる情報に耳を傾けた。
「天王寺……通天閣でアバターを発見、交戦中………。残念と言えば残念ですが、これで改めて観光できます~!」
 晴れやかな声で公子が宣言する。
 まずはライブ演奏を聞きながら、川べりのおしゃれな店で夕食としゃれ込もう。
 目の前に手を振るA班のメンバーが見えた。

作者:そうすけ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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