ハロウィンで賑わう六本木の一角に、その魔女は立っていた。
「まさか、ジグラットゼクスが直接乗り込んでくるとは……。これは、わたくし達パッチワークの魔女の作戦が滞っているのが原因なのでしょうね」
モザイクのある獅子と顔を並べ、薄手のドレスに身を包んだ――第一の魔女・ネメア。
「こうなれば、ハロウィンの中心たる六本木の街を制圧し、パッチワークの魔女の力をジグラットゼクスに見せつけねばなりませんわ」
そう言ってネメアが肩越しに後ろを振り返る。街角にいるのはネメアだけではなかった。そこにはキメラ、スフィンクス、ピッポグリフ、マンティコア、ペガコーン。幻想魔獣達の軍団が控えていたのだ。
「お進みなさい、その蹄で牙で爪で、勝利を勝ち取るのです」
ネメアの号令とともに、幻想魔獣の大軍勢が六本木の町に雪崩れ込んだ。
「ハロウィンの力を求め、ドリームイーターの魔女達が動き出したようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の説明によると、ドリームイーターの主力を率いるのはパッチワークの魔女の『第一の魔女・ネメア』。
「彼女は幻想魔獣型屍隷兵の軍勢を率いて、ハロウィンの中心地である六本木を制圧し、ハロウィンの魔力を奪い取ろうとしています」
既に六本木の中心地が6ヶ所、ネメアと幻想魔獣の軍団によって制圧されており、そこからそれぞれ光の柱が空に立ち上っている。
「この光が恐らく、ハロウィンの魔力なのでしょう」
ハロウィンの魔力がどの様な性質のものなのかは不明だが、このままドリームイーターに奪われるわけにはいかない。
「幻想魔獣の軍勢を撃退し、光の柱の破壊をお願いします」
とはいえ敵の戦力は強大。全ての光の柱を破壊するのは難しいかもしれない。
そのため、必要に応じて戦力を集中するなどし、できるだけ多くの光の柱の破壊を目指すことになる。
「制圧された6つの地点はこのようになっています」
マンティコアの群れが守る1本目の柱は六本木中学校に。
ピッポグリフの群れが守る2本目の柱は六本木グランドタワーに。
ペガコーンの群れが守る3本目の柱は東京都立青山公園南地区に。
スフィンクスの群れが守る4本目の柱は国立新美術館に。
キメラの群れが守る5本目の柱は東京ミッドタウンに。
全種類の屍隷兵と第一の魔女・ネメアが守る6本目の柱は六本木ヒルズに。
数字が増えるに従って、敵の戦力は高くなる。つまり1本目の敵の戦力が最も低く、6本目の戦力が最も高い。
「それぞれの地域から完全に敵を撃退するには、数チーム以上が協力して戦う必要があります」
できるだけ多くの地域で撃退を狙うならば、戦力が低い場所を優先するとよいだろう。もし十分に戦力を揃えられない場合には、敵の完全撃破ではなく、光の柱を破壊して撤退する作戦も考慮する必要がある。
「光の柱は高い耐久力を持ち、近接攻撃でしかダメージを与えることができません。光の柱を破壊し、撤退を目指す場合には、破壊が完了するまで敵を食い止めなければなりません」
その際敵に揺さぶりをかけ、光の柱から引き離すことができれば、有利に戦えるに違いない。だが、
「第一の魔女・ネメアに対して搖動は効果が低いと思われます。ですから、彼女の護る6本目の柱を破壊する為には、敵の完全撃退が必要な可能性が高いでしょう」
また、制圧された地域の一般人の生存者の避難は既に完了している。
「いつも以上に皆さんの協力が必要な依頼です。どうぞ、よろしくお願いします」
参加者 | |
---|---|
泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386) |
藤守・つかさ(闇視者・e00546) |
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795) |
天津・総一郎(クリップラー・e03243) |
高辻・玲(狂咲・e13363) |
城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302) |
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414) |
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920) |
●
(「これ以上の被害は食い止めないと……」)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)の様子と辺りのウイングキャットのねーさんも何時もの戦いとは違う雰囲気を感じている様だ。
毎年毎年懲りないなと藤守・つかさ(闇視者・e00546)は漆黒に染め上げられた『白衣 』の袖をたくし上げ黒手袋の端を引く。レプリカに付け替えたブレスレット。吹く風が結わえた襟足の髪を舞い上げる。
「彼方此方で随分と好勝手に始めてくれやがったよな」
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)が言えば、
「また今年は一段と賑やかで参るね」
答えた高辻・玲(狂咲・e13363)が黒髪に冠の様に咲かせた薔薇の色と同じ深紅の瞳の上、眉を一瞬寄せたのも無理はない。魔獣達は屍隷兵だと言うのだから。
銀髪に銀の瞳のエルフも玲の表情の裏にあるものを見逃さなかった。だが口に出す間柄でもない。ただ雅貴はへらりと笑い、
「先ずはここを確り片付けよーか」
「そうだね」
(「全部潰せねーのは癪だケド、この一手で少しでも変わるんなら」)
(「全ては叶わずとも、せめて手が届くものだけは」)
――必ず。
「だいたい魔獣と会えるのは動物園だけでいいわよね 」
(「まあ、ピッポグリフに興味はあるけれど」)
1城間星・橙乃(雅客のうぬぼれ・e16302)。興味は 光の柱にも。勝利の折には写真を撮って帰るつもりだ。好奇心旺盛、誇り高き白髪碧眼の彼女は、記憶を失った事さえ悲観しなかった。毒を食らえど、この身は朽ちず。水仙を象った髪飾りに自身も水仙と見紛う姿で今日は癒し手を担う。
「とにかくさっさとお帰り願いましょ……と……いるいる……」
橙乃がロビーを覗くと、ピッポグリフ達が徘徊しているのが見えた。此方に気づいていない事から奇襲も可能に思える。しかし。
信号弾が打ち上げられた。途端気配に気づいた魔獣達が一斉に上階へ散っていく。
「突入しよう!」
真っ先に天津・総一郎(クリップラー・e03243) が言った。
(「正面突破は強引かもしれない。だが、」)
総一郎は革の黒手袋の手でミリタリーキャップの鍔をぐっと引きおろす。
「戦力は十分揃ってる! ハロウィンの祭りに混ざりたいって素直に言えねえなら、こっちから引き摺り出してやろうぜ!」
弱音を吐くくらいなら減らず口を叩く。明けを連れてくるブーツで迷わず進め。堅個にして不滅の『盾』となれ。反骨精神豊かな青年が編み上げの靴の踵で地面を蹴る。と、
「行きましょうっ!」
垂れ耳とすんなりのびた尻尾はスコティッシュフォールドのそれ。朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)も金色の大きな瞳を輝かせ、早速ビルの中へ飛び込んだ。
「そうだな、待つ手はないだろう」
今日も二段の腕章を連れ、眼鏡の下の黒い瞳は穏やかにも見える。がエントランスへ身を躍らせた姿は勇猛とも言えた。泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)。
「この辺りにはもういなそうかな、ねーさん?」
辺りを飛び、涼香の元に戻ってきたねーさんがこくり頷く。戦闘らしき音もしてはいるが、
「闇雲に探すのも得策じゃないよな」
つかさが言った。
「とすると……」
玲が言い、
「行くしかねーか」
雅貴が上を指す。
「やっつけながら屋上を目指せばいいのね。上等よ」
橙乃はロッドをくるりと回してみせた。
「みなさーん!」
探索して回っていた環が皆を呼ぶ。エレベーターを見つけたのだ。
「シャフトを登るには準備不足だが、非常階段が近くにありそうだ」
壬蔭が言った。涼香は、
「そうだね。高辻さんやねーさんは飛べるけど……って、猫と一緒にしちゃってごめんなさい!」
「いやいや」
美しいロシアンブルーに玲はにっこり微笑み、雅貴は、
「それむしろ此奴にはご褒美……お、非常階段めっけー」
「とにかく上がろう。 天津、先導を頼めるか?」
体力とポジション、彼の頼もしさも踏まえてつかさが尋ねる。
「任せてくれ!」
総一郎は快諾、皆後に続いた。
●
(「 1匹じゃなさそうだ」)
10階を過ぎた辺り、上階の足音に雅貴の表情が厳しくなった。待ち構えている場所に出向く以上、罠にかかりに行く様な物でもある。それでも進むしかないのだが。
階を上がったフロアデスクとチェアが瓦礫の様に散乱していた。
と、その時。
「来るぞ!」
総一郎が叫んだ。
無我夢中で庇いに飛び込んだ涼香は自分の肌が服が、飛び来る羽に斬り裂かれるのを感じる。同時に庇いに入った環も羽の攻撃に耐え、総一郎は真空の竜巻の中に閉じ込められた。
「怪我は深いか?」
自分を庇った涼香を壬蔭が気遣う。
「いえっ!」
涼香はそう言って、攻撃準備に外周へ駆け出た。
「3体だわ。 1体は飛行よ」
後方、橙乃が電気音の鳴るロッドを掲げながら言う。
「了解」
つかさは漆黒の縛霊手の掌から 巨大な光線を発射した。猛烈な眩しさと威力がピッポグリフ達を雷に打たれた様にその場に留める。
「流石! いい仕事だ……」
射程内の1体を素早く特定し滑り込み、 その胴体へ壬蔭が鋭い蹴りを見舞った。同時橙乃のロッドからは白く火花を散らす碧雷が迸り、水仙が花開く様に防御の雷壁を作り上げる。
そして納刀したまま頭を垂れた玲。応え召喚された無数の刀剣が解き放たれ、ピッポグリフ達の身体を羽を容赦なく貫いた。そこへ響く環の声。
「悪質すぎる悪だくみには天誅ですっ!」
庇いからさすがの素早さで場所を変え、手近なデスクの上にひらり飛び乗り片膝を立て、弓を引き絞る。
「トリック・オア・トリートなんて言うけれど、命にかかわるいたずらは求めてません!」
放たれた矢は夢の様な軌跡を描いて雅貴に破壊の呪を与え、環は嗎き嘴で脅しにかかるピッポグリフを引きつけて駆け出しながら、
「攻撃力はそこまでじゃないですっ!」
「そうだな! ガンガン守るから安心してくれ!」
口元の血を軽く拭い、総一郎も笑顔で言うと、グラビティ・チェインを凝縮させた光の輪を作り出した。
「『誰かが倒れないように手立てをほどこすのも……【盾】の役目だよな!』」
途端光の輪は分裂、小さな光輪の盾となって仲間達の守りにつく。涼香は精霊を喚び出す呪文を唱えていたが、そこへピッポグリフが邪魔をする様に突進してきた。しかしその鳥顔を、ねーさんが長く伸ばした爪で思い切り引っ掻き、
「ありがと、ねーさん! さあ、」
詠唱を完成させた涼香の頰を冷たい風がヒュウと撫でる。
「凍えても知らないから!」
召喚された精霊達が吹雪となって席巻。さらに完成した詠唱はもう1つ。父母が遺した物は指輪だけではなく、才に甘えも溺れもせず。微かに残る面影と雅貴が自身で磨き上げた技。
「『――――オヤスミ』」
手にした魔導書、抜かずとも生まれる刀。囁く様な詠唱、刹那狙いの 1体の翼を、後脚を、首筋を、鋭い刃が断ち落とした。ピッポグリフがぐるりと惑い回ったのは傷のせいだけではなく、暗む視界のせいでもあったろう。
次々と高く嘶く魔獣達。その効果か傷が癒え力を増した事は窺えたが、状態の異常は変わらない。
「いけるわ」
余裕のある笑みは負け惜しみではない。 番犬の鎖を舞う様に軽く取り回し、橙乃が守護陣を描き出す。
●
信頼関係がなければ屍隷兵とはいえ乱戦を制するには手間取ったかもしれない。だが判断も不要な程の連携に声の掛け合いと番犬達は果敢に魔獣を追い詰める。
「同じ手に乗るかよ」
総一郎はピッポグリフが生み出した竜巻にわざと背中を向けて立った。
「行ってくれ!」
「失礼する」
竜巻を背で抑えながら総一郎が組んだ両手を足場に壬蔭が飛び、
「『vermiculus flamma』」
大気と摩擦を起こした拳を紅炎が包む。
「『我が手に来たれ、黒き雷光』」
つかさの握った拳に溜められた漆黒のオーラからバチバチと黒雷が散った。
「本命がお前らの相手をするのは後だ。今はイイ子にしてな」
壬蔭に横から攻撃をしかけようとした 1体が、つかさの鼻先のフェイントに嘴を怒らせた瞬間、足を払われ、雷が激しく放たれる拳に殴り飛ばされた。そして壬蔭の拳は狙いの個体を貫き、胴体に空いた穴から燃え尽きていく。
残り 2体。回復と共に魔獣達が身に宿す強化は雅貴と玲が示し合せるでもなく順に破壊。そして羽の猛攻撃の中へ玲は自ら飛び込み斬り開き、全ての羽が床に落ちたその時、磨き抜かれた刀身でのもう、一閃。
「『全てを――』」
魔獣が動きを止める。屍隷兵にどれだけの事が理解できたかはわからない。だが太刀影、玲の双眸に宿る意志、そして自分が静かに斬り伏せられた事は分かったに違いなかった。
残る1体は飛び回り、最後の抵抗を試みる。
「負けませんっ!」
上空からバルカン砲の様に撃ち込まれた羽は攻撃は耐えきるつもり、環はその場動かず喰らった魂を周囲に忍ばせた。だが、
「 ここは私が!」
ひらり駆け入った涼香が両手を広げて立ちはだかる。
「ありがとうございます!」
そして猫は思い切り飛んだ。殆ど逆さまになりながらの蹴り、だが環の足はピッポグリフに届き、
「『猛吹雪にご注意ください、なんてね?』」
首を傾げてみせれば『地雷』から、青い光を薄く纏った魂が竜巻状に撃ち出される。
ピッポグリフは甲高い絶命の叫びを上げた。刻まれた傷は熱く冷たい凍傷でもあり。魔獣は翼を畳む力も無く落下。無残な最期を迎えた。
無事にこのフロアでの戦いを終えたものの、誰も表情を緩め様とはしない。なぜなら皆、漂う腐臭に気づいていたからだ。
「……あったぞ」
雅貴がオフィスの隅にそれを発見した。涼香は思わず両手で口元を覆い、
「ひどい……六本木にいた人たちはただハロウィンを楽しみに来ただけなのに……!」
そこにはピッポグリフに喰い散らかされた人々の死体が集められた、巣の様なものがあった。
「信号弾で奇襲に気づいて、巣を守ろうとしたのかもね」
冷静に橙乃が分析する。 他の班の様子も気にはかかるがいずれにしてもビル内で信号弾を打ち上げるなど現実的ではない。
「先を急ごう」
総一郎が戦いの最中に落ちた帽子を拾い上げ、深くかぶり直しながら言った。各々の思いを胸に、さらに上階を目指す。
●
「貴方の悪夢はどんな色?」
涼香が撃ち出した黒色の魔弾が炸裂し、ピッポグリフを闇に包んだ。 20階を過ぎたあたり、今はオフィスの外廊下で 2体を相手取っている。
魔導書を宙に浮かべたまま日本刀をすなりと抜き放ち、雅貴が身体の正面で切っ先を真上に向けた。その刃の背にもう片方の手を添えると紫電が鳴り始める。
「そうだ、もっと寄れ」
雅貴は刃越し、 瞳を細めた。ピッポグリフは首を下げ、警戒しながらも近づいてくる。そして強く床を蹴った瞬間、一歩早く間合いを詰めていた雅貴が正面から首を突き刺し、
「捉えたぜ!」
纏う薄墨色の闘気は気合によって既に濃く。総一郎が降魔の体当たりを食らわせ、全身で魔獣の生命力を奪うとともに、階段の下へ突き落とした。踊り場で動かなくなったピッポグリフを一瞥、納刀した雅貴の狙いも無論ここまで。 と、もう1体が強烈に羽を掃射したかと思うと上階へ走り出す。
(「……?」)
羽によって受けた傷はつかさにしては多い。まるで全く防御しなかったかの様に。そして『逃すか』という呟きを涼香は聞いた。小さな違和感。階段を駆け上がりながら壬蔭と視線が合う。
「怪我はあたしがすぐに回復するわ。それは安心して」
察した橙乃が声をかけた。ねーさんも羽ばたきを強めて一足先に追いかける。橙乃は胸に片手を当て、
「『白銀に零れ落ちるは神秘の雫』」
つかさの頭上に、水仙の花がふわりと現れた。その冠は黄金の盃、花弁は白銀の台。
「いい香り……」
甘やかな香りを伴って漂い、副花冠を満たす透明な雫はぽたりぽたりとつかさを癒す様子に涼香は安堵する。回復を終え、泡の様に水仙が消えた頃には、この階には3体の敵がいる事が判明していた。
「質より量の敵とはいえ、受け持ち分はこれで最後だと有難いが」
慎重に敵の包囲にかかりながら壬蔭が言う。
「まだまだいけますっ!」
環がひとっ飛びに竜巻の前へ自ら飛び込む。赤茶の毛先が風に翻弄され、身軽さが本領の四肢が真空の枷にはめられた。元気に振る舞う盾役達だが癒しきれない傷は溜まっている筈だった。
(「できる限り早く済ませようか」)
攻撃役の玲は速攻を第一に刀技を畳み掛ける。そして玲の三日月の様に弧を描く斬撃がピッポグリフの足を捕らえた瞬間、雅貴の織り成した閃影が至る場所を貫き破り、 魔獣は一度痺れに身を戦慄かせると、倒れた。
「大丈夫か?」
総一郎は親指にはめた指輪へ意識を注ぎ込みながら、環へ声をかける。
「はいっ!」
環は竜巻を抜け出た勢いを利用、空中で後転から着地すると、間髪いれずにダッシュ。総一郎から送られた光盾に守られてのストレートパンチで敵の体勢を崩しながら、確実に生命力を喰らい返した。そして、
――。
瀕死の 1体を前につかさの唇が動く。魔獣が怯んだ様にも見えた。迸る黒雷は足に集い、首を正確に狙い蹴り落とす。
噴き出した血をまともに浴びたままさらに残る 1体へ突っ込むつかさに、相手も羽を飛ばしながら突っ込んできた。しかし、
「くっ!」
その間に臆せず総一郎が割り込む。そして壬蔭は飛びくる羽をかいくぐる様に接近、鋭い突きを加えてピッポグリフの動きを止めた。
羽に貫かれた総一郎の身体に血が浸み出す。しかし倒れるつもりはない。
(「『役目』も果たせないんじゃ師匠にどやされちまうからな」 )
今の自分の役目は守る事。全員の無事の帰還をも『守る』事。
そこへ不思議と心地良い雫の感触が降りてきた。舌に触れても味はなく、鼻をくすぐる香りは――水仙。総一郎は目を開ける。
「サンキュ!」
「どういたしまして」
橙乃らしい素っ気なさがこんな時には頼もしい。
「これで、さよなら」
ねーさんが尻尾を振るい、飛ばしたリングが翼を縛り付けたのを見て、涼香は指輪を介し光剣を出現させた。涼香は迫る竜巻を躱し、袈裟懸けに魔獣を斬り裂く。血溜まりにピッポグリフが倒れた。
この階にも、巣はあった。
●
各班が異なる道を戦ってきた。ロビーや屋上での戦いに挑んだ班もあった様だ。けれども最終目標は同じ。今全員が光の柱を前に揃った。
(「弄ばれ利用された命に、眠りを。人の暮らしを乱す柱に、崩壊を」)
雅貴は光の柱を前に刀を抜き、
「遠慮なく殴らせてもらいますよー!」
環は拳を握る。柱がいくら頑丈でも時間がいくらかかっても気にする必要はなかった。既に全てのピッポグリフを掃討済。全班揃っての攻撃に、光の柱も遂にはその姿を消すしかなく。
六本木グランドタワーでの戦いは、番犬達の完全勝利となった。
作者:森下映 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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