三色魔女のハロウィン~ハロウィン学園祭

作者:澤見夜行

●狙われた学園祭
 期待と高揚感。
 刻一刻と迫る、学園祭開始に向けて生徒達の気持ちは昂ぶっていた。
 生徒達は皆揃って仮装し、来校する一般人にも仮装が推奨されるその中高一貫の学園祭は、ハロウィン当日に行われることもあって、出し物にもハロウィンの要素がふんだんに盛り込まれていた。
 カボチャ色に染まる学園敷地内は朝八時にも関わらずすでに盛況だ。
 そんな学園の様子を眺める者がいた。
 緑を基調とした魔女然とした格好。その左腕と左足はモザイクに包まれている――ドリームイーター、緑の未熟魔女アネモス。
 アネモスは学園の敷地に広がる様子を見て、楽しげに笑う。
「やったー! やっと、ハロウィンの季節だー! ふふふ、『王子様』にもらった、このチャンス。絶対つかんでみせるよ!」
 パチリと指を鳴らすと、アネモスの周囲に五体の道士服を着る屍隷兵が現れる。
「パンプキョンシー達、あそこ、あの楽しげに賑わってる場所を襲撃してちょうだい!」
 アネモスは学園を指さすと屍隷兵に襲撃を指示する。
 そして空を見上げて目を閉じ、風をその身に受ける。
 今日の自分は絶好調だ。良い風も吹いている。
 アネモスは同じく魔女として高みを目指す赤と青の二人には絶対に負けないと意気込んだ。
「いい? ハロウィンの力を持つ魔女が現れたら、すぐに私が応援に行くから、絶対に逃がさないでね」
 ああ、それと――と、アネモスは付け加えるように口を開いた。
「手は抜かなくていいよ。あんた達が勝てるようなら、それは大した魔女じゃないんだからね」
 アネモスは楽しむようにそう言って、屍隷兵――パンプキョンシー達の行方を見守るのだった。
 ハロウィン学園祭に魔の手が迫る――。


「ハロウィンの力を求めてドリームイーターの魔女達が動き出したようなのです」
 ハロウィンかぼちゃのお面を頭に乗せたクーリャ・リリルノア(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0262)が、集まる番犬達に説明を始めた。
 番犬達への依頼は、赤、青、緑の三人の魔女が起こしている事件となる。
 魔女達は、この時の為に量産していた屍隷兵――パンプキョンシーを使って、ハロウィンを楽しむ人々を襲撃するそうだ。
「どうも彼女たちの目的は、ハロウィンの力を持つ魔女を探し出して、その力を奪うことのようなのです」
 ハロウィンで盛り上がる人々を屍隷兵が襲撃する事で、目的の魔女が誘い出されると考えているようだ。
「ハロウィンの力を持つ魔女がどういうものかは分からないのですが、けれどハロウィンを楽しんでる人達が屍隷兵に襲われるのを放置することはできないのです」
 今回番犬達が成すべき事は、屍隷兵が襲撃する場所に向かってこれを撃破し、ハロウィンを楽しんでる人達を助けることになる。
「パンプキョンシーの目的は『魔女を探し出す』事のようなので、皆さんがハロウィンの魔女であるように見せかければ、一般人を放置して、皆さんに攻撃が集中すると考えられるのです」
 これを利用することができれば一般人に被害を出さずに屍隷兵を撃破しやすいだろう。
「またですね、戦いの様子を見た三色の魔女が皆さんをハロウィンの魔力を持つ魔女であると判断すれば、戦場に現れて力を奪おうとするかもしれないのです。
 もし、三色の魔女が現れた場合は、可能ならばその撃破もお願いするのです」
 クーリャは資料をめくり、続けて現在分かっている情報を伝える。
「敵戦力はパンプキョンシー五体。屍隷兵なので強敵ではないのです」
 噛み付きで生命力を奪い、その爪で引き裂かれれば毒に見舞われるだろう。
 格下相手とはいえ注意は必要だ。
「戦闘地域は、中高一貫の学園なのです。ハロウィン当日に学園祭を行うようで、一面仮装とカボチャ色に染まっているのです」
 一般の来校者もいる。生徒と合わせてかなりの人数が敷地内にはいるはずだ。
「屍隷兵は人がもっとも多い正門前に現れるようなのです。校舎内を見て廻る余裕はないと思うのでこれは助かりますね」
 校舎内に避難誘導させるのも手かもしれないのです、とクーリャは顎に指を当て言った。
「あと、三色の魔女については現在のとこ情報がないので不明なのです」
 もし魔女を誘いだそうと考えるならば、ハロウィンの魔女が現れたと思わせるような動きや、屍隷兵との戦い方にも工夫が求められるだろう。
 資料を置くとクーリャは番犬達に向き直る。
 ハロウィンかぼちゃのお面を手に持ち「折角の楽しいハロウィンを台無しにしないために、頑張らないといけないですね!」と意気込む姿は幼気だ。
「もしかしたら、ハロウィンの魔力はドリームイーターにとって重要な物であるのかもしれないですね。
 何にしても屍隷兵を倒して、可能ならば、元凶の魔女も撃破しなくてはなりません。
 どうか、皆さんのお力を貸してくださいっ!」
 力強く一礼したクーリャはハロウィンかぼちゃのお面を再度被るのだった。


参加者
ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)
アラドファル・セタラ(微睡む影・e00884)
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)
風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)
ソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)
水神・翠玉(自己矛盾・e22726)
ミカエル・ヘルパー(ヴァルキュリアは友達・e40402)

■リプレイ

●学園祭開会!
 予知に従い現場に到着した番犬達は、襲撃に備えて準備を行う。
 それはハロウィンの魔女に扮し、屍隷兵を迎え撃つことだ。
「それでは、準備をしましょうか」
 光りに包まれ十八歳の姿に変身するのはミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)だ。
 少しばかり大人びたその姿。
 南瓜を模した魔女衣装に身を包み、橙色のウィッグを着用。橙色に染め上げられたパステルな魔女がそこに誕生する。
 手にしたミニチュアランタンの付いた杖をくるくる回し、偽翼がぴょこぴょこと動いて魔女を装った。
 突然のことに周りの学生達から歓声が上がる。
 風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)はピエロの半面で、表情を半分隠している。
 黒いドレスにボロマントという黒に統一された出で立ちで、背の地獄化された翼を器用に動かし、幽霊のように宙空をふわっと漂う。
 校舎の壁を歩き重力に縛られない雰囲気を持つ和奈に、周りの学生達が驚きの声をあげた。
 負けじと魔女に扮するのは水神・翠玉(自己矛盾・e22726)だ。
 黒いトンガリ帽子にこうもりさんのアクセサリー。
 外套を垂らし、ランタンのネックレスが首元で輝く。
 南瓜風の丸いスカートから伸びる足には黒と橙色の縞々タイツがハロウィンらしさを演出している。
 自信なさげではあるが、魔女っ子風の装いがピタリと嵌まって似合っていた。
 次々とハロウィンの魔女を演じる番犬達の中で、一際学生達の目を惹くのはミカエル・ヘルパー(ヴァルキュリアは友達・e40402)だ。
 瓔珞で着飾り、その身を捩るたびにサークレット装飾が艶やかに揺れる。
「ふふっ……私の体に何かついて?」
 微笑みを湛えながら流し目で男子学生を見るミカエル。
 水晶を手に持ち占い師然とした格好ではあるが、その露出は際どく、豊満なその胸を強調する嬌艶なその姿は、目を止める男子学生達にとっては毒に等しい。
 今もまた一人、興奮に鼻を押さえる者が現れた。
 面をつけ、黒い襤褸に身を包む怪しげな男がいる。
 アラドファル・セタラ(微睡む影・e00884)の役目はハロウィンの魔女を演出することだ。また、相談を重ねたミカエルの使い魔としての役目もある。
 南瓜色一色で染まる中、その異質な風体が逆に目を惹くようにも思えた。
「ギュバラ、ギュバラ」
 女性陣が魔女の衣装に変装していく中、それを盛り上げようとクラッカーを鳴らしたり、拍手したり、紙吹雪を撒くアラドファルの涙ぐましい努力が伺える。
 そのかいもあって、周囲で様子を伺っている学生達から盛大な拍手が送られた。
 胸元の開いたイブニングドレスを着こなし、魔女らしいトンガリ帽子を被るのはソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)だ。
 サーヴァントのヒガシバも同様の帽子に黒いマントを装着し楽しげだ。
 更にソフィアの周りにはハロウィンのランタンが浮遊しており、魔女らしい怪しさもふんだんに盛り込まれている。
「今日はハロウィン。不思議な事が起きても何もおかしくないのよ♪」
 還暦とは思えない若々しい魔女がそこにいた。
 コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)は様々なハロウィングッズに身を包んでいる。
「お菓子をくれなきゃ強奪するっす!」
 ミニスカートにトンガリ帽子の魔女っ娘然とした格好に、友人の雑貨屋で買ったTrick☆launcherを手にしてお菓子をねだる。
 この日一番元気の良いトリックオアトリートだ。
 さらには即興曲を演奏しながら学生達の間を練り歩く。
「イマドキの魔女は唄って踊れるんすよ!」
 題して『ワルプルギスのマーチ』。カラフルなロリポップをばらまいてホップステップスキップ行進。愉快に行進する様に周りの学生達も盛り上がる。
 少し毛色が違うのはソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)の魔女装いだ。
 コンスタンツァ同様にミニスカートの魔女っ娘風な装いだが、その色は青と白が基調となり爽やかで快活な印象を持たせる。
 健康的に伸びるしなやかな足は、青白のボーダーニーソックスで覆われ、目に眩しい。
「もう! 依頼って事ならしょうがない……」
 ダイナマイトモードでハロウィンらしいお化けや南瓜を演出しながらポーズを決めるソロだが、しょうがないと言いつつも、「今回は羽目を外して魔女っ娘ソロちゃんになっちゃうぞ♪」と、実にノリノリなのであった。
 こうして、実に様々な魔女が集まった。
 学生達も何かの余興かと、大いに盛り上がる。
 ――予知された敵がくるまで今しばらくの時があった。
 ソフィアは出店の料理に舌鼓を打ち、他の面々も思い思い、学園祭の催しを一時の間楽しむ。
「そのボーダーニーソいいっすね!」
「ふふん、いいでしょ。白青のボーダーニーソ、履いてみたかったのだ!」
 下着も縞々なんだけれど――と、少し気にしてスカートを押さえるソロ。
「アラドファル――使い魔様も準備は良いかしら?」
「ぎゅ……ギュバラギュバラ」
 ハロウィンの魔女とその使い魔に扮するミカエルとアラドファルが互いに準備を確認しあう。
 意味もわからず謎の呪文を繰り返すアラドファルは準備万端だ。
 ――そうして幾許かの時がすぎ、その時がやってきた。
 校門の外から、跳ねながら近づいてくる五体の異形。
 屍隷兵――パンプキョンシーだ。
「お菓子をくれなければ、悪戯するよ」
 現れた屍隷兵に告げるのは和奈だ。校舎の壁を歩きながら、屍隷兵達を見下ろす。
 屍隷兵達は和奈を訝しげに見上げながらも、跳ねながら校門を通り番犬達と対峙した。
「でも、ハロウィンを邪魔するのなら、悪戯もお菓子も全部もらっちゃうから」
 人差し指を口先に。悪戯っぽく言う和奈はクスりと笑うと、フワリと浮かぶように校舎から離れ、愛用のガトリングガンを構えながら大地へと降り立った。
 敵意を感じ取った屍隷兵達が殺気を広げる。
「私のハロウィン、汚させはしない。覚悟して」
 決意を込めた言葉が、和奈の口から告げられた。
 屍隷兵の姿を確認するとミカエルは隣に控える使い魔――アラドファルへと手を伸ばす。
「さあどうぞ、ご主人様……じゃない、ギュバラギュバラ」
 アラドファルが花の杖を恭しくミカエルに手渡す。
「ふふふっ、よくできた使い魔ですこと。さぁ往きますよ」
 和やかにアラドファルを褒めるミカエル。
「ハロウィンの為にも早く片付けたいですね……オープンコンバット」
 周囲の学園祭の様子に情緒を向けたミオリが静かに声をあげた。
 合図とともに重厚なアムドフォートがミオリを守護するように展開される。
 その言葉を合図に、番犬達も戦闘態勢をとる。
 学園祭を襲う屍隷兵達との戦いが始まった――。

●舞踏劇
 屍隷兵達との戦いが始まると同時に、アラドファルが殺界を形成する。
 合わせてソフィアが凛とした風を放ち、騒動が起きないように対策した。
 ただならぬ事態を感じ取った学生達が、静かに、だが確実にその場を去りだしていく。
「これだけ作るのに、どれだけ犠牲が出たかしら?」
 屍隷兵を確認しながら、ソフィアが一考する。
 考えながらも、その手は仲間達へ向けられ、紙兵を散布し耐性を強化していった。
「一年に一度のハッピーハロウィンは誰にも邪魔させねっす!」
 気合い十分。コンスタンツァが制圧射撃で、屍隷兵達の足を止める。
 だが、足を止められながらも屍隷兵達が番犬へと襲いかかる。
「ハロウィンは、お菓子をもらう人だけじゃなくて、くれる人も大切。だから、傷つけさせない」
 屍隷兵の毒爪をその身で受け止める和奈。
 仲間を庇えるのは和奈とソフィアのヒガシバだけだ。次々と襲いかかる屍隷兵達の攻撃をその身を盾に受け止めていく。
 切り裂かれた傷口から毒が侵入するも構わない。後ろには心強い仲間がいるのだから。
 屍隷兵をはじき飛ばし、次なる攻撃に備える。
「ハロウィンの…魔力で…強化…されている…魔女には……弱い…攻撃なんて…聞きませんよ……? 上の…方を…連れて……出直して…ください……」
 自信のなさを隠し、精一杯の虚勢を張る翠玉。
 屍隷兵達を操る、魔女を引き釣り出す。その思いが翠玉を大胆にし、そして強気な言葉を発する原動力となった。
「そうっす! 親玉を連れてくるっすよ!」
 翠玉の言葉に相槌を打つように、コンスタンツァが声を上げた。
「三色魔女に僵尸……ふふ、ふふふ。ふふふふ」
 美しい顔を歪めること無く笑うミカエルが杖を振るうと、屍隷兵の足下に蠱惑的な香りの花が咲く。
 眠りへと誘うそのグラビティの花が屍隷兵達の行動を阻害する。
「萌え魔法をくらえー!」
 萌え魔法とはソロが小さいころに考えた魔女っ娘になった時に使える魔法の事である――というナレーションが聞こえてきそうだが、その威力は驚異的だ。
 相手を追尾し、まとめて爆炎に包み込む。
 仲間達を回復しながら、的確に、かつ少し偉そうに指示を出すのはソフィアだ。
 その立ち居振る舞いは大物魔女然とした姿を演出しており、この番犬達のリーダー格のようにも見て取れる。
「和奈ちゃん、あいつ隙だらけ! チャンスよ!」
「――ランタンの炎になってみる? 暖かいよ」
 ソフィアの指示に瞬時に反応した和奈が、爆炎の魔力を込めた大量の弾丸を連射し放つ。
 炎に包まれていく屍隷兵から怨嗟の声が上がった。
「君は目を瞑るだけでいい」
 アラドファルの周囲に細やかな光が舞う。彗星を思わせる光の帯が、逃げ惑う屍隷兵の一体をなぞるように追尾し、貫いた。
 幽霊が空を舞うように、重力から解放された動きで舞うのは和奈だ。
 ドレスとボロマントが靡き、一体ずつ的確に傷を与え、倒していく。
「俯角、方位角インプット、ファイア」
 ミオリのアームドフォートの主砲が一斉に火を噴く。次々と打ち出される弾丸が、屍隷兵達を襲う。いくつかの弾丸は外れたが、弾丸を回避しようと飛び跳ねる屍隷兵の隙を翠玉が狙う。
 トンガリ帽を押さえながら側面へと駆ける翠玉。ひらひらとマントが靡き、敵の注意を引く。
「その隙は……逃しません……」
 目にも止まらぬ早さで礫を飛ばし、的確に傷を負わせていく翠玉。
 いつしか二人の撃つ弾丸が交差するように屍隷兵の一体を追い詰め、致命的な傷を与えた。
「良い……感じ……でした」
「的確な援護、感謝します」
 互いに称え合うミオリと翠玉は、口元に笑みを浮かべ頷き合った。
 番犬達の動きはさながら舞踏劇のようで、学園祭の演し物のようにも思えた。
 校舎に避難し、成り行きを見守る学生達からも歓声があがった。
 戦いは続く。魔女は――まだ現れない。

●魔女の行方
 ――戦いは佳境に突入していた。
 氷河期の精霊が生み出され、パンプキョンシー達が氷に閉ざされる。
 生み出したのはソロだ。
「魔女の火と氷は激しいんだぞっ」
 続けざまに、今度は杖から燃え盛る炎を生み出し、パンプキョンシー達を爆破する。
 衝撃に耐えきれず、また一体パンプキョンシーが倒れた。
「奪うものじゃない、ハロウィンは、貰うものなんだから。そのやり方はふさわしくない」
 最後まで気を抜かず、仲間を護り抜く和奈。
 噛み付き生命力を奪う屍隷兵を諭すように言葉を紡ぐ。
「まだまだいくっすよ――!」
 コンスタンツァは制圧射撃をしながら一気に接近すると、炎纏う激しい蹴りを見舞い屍隷兵達を炎に包み込んでいく。
「やり過ぎた悪戯には菓子ではなく、お仕置きだ」
 仲間が攻撃した屍隷兵が弱り始めているのを確認すると、アラドファルが即座に狙いを変え追い詰める。
 視認困難なその影の斬撃が、屍隷兵の傷口を広げ倒した。
「あと二体――」
 確実に屍隷兵を追い詰め倒していく番犬達。
「おばちゃんもやるからね♪」
 回復の手が空いたソフィアが聖なる光を放つ。
 傷口を広げられた屍隷兵達の一体が、耐えきれず事切れた。
 残りの一体ももはや虫の息だ。トドメとばかりに番犬達が襲いかかる。
「ソロ! やるっすよ!」
「えぇ!? 本当にやるの?」
 コンスタンツァが指を弾くと同時に光のポールが出現する。
 ポールを杖に見立て、髪をほどいたコンスタンツァが魅力的に踊り、ソロもその動きに合わせてダンスを盛り上げる。
「これで、とどめっす!」
「「らぶらぶまじかるふぁいやー!」」
 恥ずかしがるソロとノリノリなコンスタンツァの二人が、二人の手でハートを作り同時にグラビティを放つ。
 ハート型の弾丸、そしてハート型の爆炎があがる。
 コンスタンツァがトンガリ帽を脱いで投げるサービスを魅せると同時、ついに屍隷兵達は全て倒れるのだった。
「敵性存在なし、クローズコンバット、お疲れ様でした」
 ミオリの言葉に仲間達が一息つく。
 結局最後まで魔女は現れなかったが、学園祭を脅かす屍隷兵は排除できた。
 ――番犬達の勝利だ。

●ハロウィン学園祭
「魔女……来ません……でしたね」
「仕方ありませんね。別の所に行ったのかもしれません」
 戦い終わり、呟く翠玉にミオリが返す。
「ハロウィンの魔女っぽさは出せたと思うけど……、何か足りなかったかな?」
 和奈の言葉に、頭を捻る面々。
 ハロウィンの魔女に扮する所までは間違っていないと番犬達は思う。あと足りなかったとすれば、その格好で全員がどれだけハロウィンを満喫する行動をとれたかどうかだろうか。
 ハロウィンを目一杯楽しむという行動がもう一歩足らなかったのかもしれない。
「過ぎちゃったことは仕方ないっすね。後片付けして、あとは――」
 コンスタンツァが楽しげに校舎の方を振り返った。

「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞっ」
「するっすよ!」
 ソロとコンスタンツァの二人がきゃるるんと揃ってハートを作り、出店にお菓子を要求してみたりしている。
 戦い終わった番犬達は学園祭を楽しむことにした。
「ん……、このクッキー美味しいね」
 出店で貰ったクッキーを頬張り、感想を漏らす和奈。
 そんな和奈を呼ぶ声がする。
「和奈ちゃん、おばちゃんあっちに美味しそうな出店見つけたよ」
「いってみよう」
 ソフィアと和奈は揃って出店巡りを開始するようだ。
「ふふっ、学生は可愛いわね。お姉さんが可愛がってあげようかしら」
 学園祭を満喫するのはミカエルだ。
 身に纏う衣装のせいでもあるが、男子学生達の注目の的だ。
「あんまりからかうなよ。露出が過ぎて男子には目の毒だ。これでも羽織っておけ」
 悪戯半分、扇情的に学生を煽るミカエルを、諫めるように口を開くアラドファル。
 纏っていた襤褸を渡しながら、先へと歩いて行く。
「学園祭……楽しい……ですね」
「あっちも見てみましょう」
 緊張の面持ちの翠玉を連れて行くようにミオリが手を引いた。
 一時の休息。目的の魔女は現れなかったが、番犬達はこの学園祭の平和を守れたのだ。
 ハッピーハロウィン。その言葉を体現するように、今しばらく満喫するとしよう――。

作者:澤見夜行 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 1
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