●パッチワークのハロウィン・ナイト
「まさか、ジグラットゼクスが直接乗り込んでくるとは……」
ビルの屋上で、魔女は呟いた。
眼下に広がる、ハロウィンパレード。
それを冷たい瞳で眺めながら、魔女――第一の魔女・ネメアは続ける。
「これは、わたくしたちパッチワークの魔女の作戦が滞っているのが原因なのでしょうね」
ああ、忌まわしきは邪魔者たち。忌まわしきケルベロス。
我々魔女の矜持に疵をつけた、この星の番犬共。
ネメアは手にした鍵を、かつん、と地面に突きつけた。
闇に紛れ、その背後に控えるは、様々な動物をパッチワークした異形の怪物。屍隷兵の幻想魔獣。
「こうなれば、ハロウィンの中心たる六本木の街を制圧し、我々パッチワークの魔女の力を、ジグラットゼクスに見せつける必要があるでしょう。お進みなさい、我が配下、我が幻想の魔獣たち。その蹄で牙で爪で、勝利を勝ち取るのです」
ごうごうと――。
魔獣たちが声をあげた。ネメアが鍵を、眼下の街へ差し向けると、魔獣たちは一斉に、ハロウィンの街へとなだれ込んだのだ。
●六本木奪還作戦
「ドリームイーター、パッチワークの魔女たちが動き出した! 首謀者はパッチワーク第一の魔女、ネメア! 奴は六本木を占拠。ハロウィンの魔力とやらを奪い取ろうとしているらしい!」
ケルベロス達が集まっていたブリーフィング・ルームへ、慌てて入ってきたアーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、一息にまくしたてると、頭をふった。こほん、と咳払い一つ、
「す、すまない、取り乱した。ああ、兎に角緊急事態、という事なんだ。ネメアが配下の屍隷兵の幻想魔獣を引き連れて、六本木の六か所のスポットを占拠したんだ。占拠した場所からは、光の柱が上空に向けて立ち上っている。どうやら、この光がハロウィンの魔力、という物のようだ。ネメアの目的は、この魔力の収奪、という事だな」
アーサーが言うには、この『ハロウィンの魔力』と言うものがどういった性質のものなのかはわからないらしい。だが、たとえどんなものであろうとも、ドリームイーターに奪われるのを、黙ってみているわけにはいかない。
そこで、ケルベロス達には、屍隷兵の幻想魔獣、そしてネメアを撃退し、光の柱を破壊してもらいたいのだ。
ただし、敵の戦力は多い。全ての光の柱を破壊するのは難しいかもしれない。
必要に応じて、他のチームと連携、戦力を集中し、出来るだけ多くの光の柱を破壊することが目標となる。
「占拠された場所と、そこに存在する敵戦力について説明する。攻撃する場所を決める参考にしてほしい」
まず、第一の柱、『六本木中学校』。
ここではマンティコアの群れが柱を守っている。
第二の柱は、『六本木グランドタワー』。
敵の戦力はピッポグリフの群れだ。
ペガコーンの群れが守るのが第三の柱、『東京都立青山公園南地区』。
第四の柱は『国立新美術館』にあり、ここはスフィンクスの群れが守っている。
『東京ミッドタウン』には第五の柱があり、キメラの群れが柱の周囲を守っている。
「そして、第六の柱が『六本木ヒルズ』。ここにはネメアが指揮するすべての幻想魔獣の群れ、そして第一の魔女・ネメアがいる。魔女が直々に守っている場所だ、恐らく、今回の作戦で最も攻略が難しい場所となるだろう。逆に、マンティコアが守る第一の柱は、それほど敵戦力が多くなく、制圧も比較的簡単な分類だ」
どうやら、第一から第六、番号が増えるにつれて、敵の戦力も多くなっているようだ。番号=攻略難易度、と思ってもらっても構わない。
そのため、出来るだけ多くの光の柱を撃破するならば、戦力の少ない場所を優先して攻撃する方が良いかもしれない。
また、十分な戦力をそろえられない場合は、敵の全滅ではなく、光の柱の破壊を最優先に考え、光の柱を破壊して撤退する、という作戦も有用だろう。
「ただ、光の柱は高い耐久力を持っているうえ、近接攻撃でしかダメージを与えられない。柱を破壊し、撤退する作戦をとる場合には、光の柱の破壊完了まで、敵を食い止める必要があるだろうな。陽動作戦などが有効かもしれん……」
アーサーは口元に手をやりながら、言った。
「占拠された場所には、一般人は残っていないようだ。光の柱の攻略に集中してくれ。難しい作戦だが……皆の無事と、作戦の成功を祈っている」
そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225) |
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547) |
筒路・茜(赤から黒へ・e00679) |
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768) |
キルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850) |
アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488) |
コマキ・シュヴァルツデーン(呪歌謳い・e09233) |
レム・ベルニカ(睡魔・e40126) |
●10月30日:突入前
六本木中学校に到着したケルベロス達が見たものは、校庭を我が物顔で闊歩するマンティコアの群れである。
「……ざっと、12匹、と言った所ね」
上空から、静かに舞い降りたのは、コマキ・シュヴァルツデーン(呪歌謳い・e09233)は、敵に気取られぬよう、細心の注意を払い、上空から戦場、そして目標である『光の柱』の場所を確認していた。
「光の柱は屋上にあるみたいね」
コマキの言葉に、
「という事は、校庭にいるあいつらを始末して、校舎に入らなきゃいけないわけだ」
ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225)が返した。
飛行できるメンバーで、残りのメンバーを運搬する、等という悠長なことをやっている暇はないだろう。それに、校庭にいるマンティコア、それが敵戦力の全てというわけではあるまい。
となれば、やる事は単純。
「――――、元々予定通りだよ。アイツらは全滅させて、確実に光の柱を破壊する、だよね」
筒路・茜(赤から黒へ・e00679)の言葉に、
「そうだね……頼りにしているよ、茜」
ノアが言った。その口調には、全幅の信頼を寄せているのはもちろんではあるが、何処か、自身のペットが健闘する姿を愛でる様な……そのような雰囲気があった。
「う、うん! 頑張るんだよ」
嬉し気に、茜が答えた。
「そろそろ攻撃がみたいだね」
アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488)が言った。
「ここが大一番。いい結果を残していこうじゃんか」
アルケミアが、笑いながら言う。
コマキは銀の小鳥のネックレスを、そっと、握りしめた。
これから始まる戦い。その無事を祈るように。
連携して動く、他班の準備も整ったようである。
そして。
3チーム、総勢24名のケルベロス達は、一斉に攻撃を開始した。
●10月30日:校庭の戦い
「悪いけど、本命はお前たちじゃない。まずは大きく、始まりの銃声を鳴らそうか!」
狐面をかぶり、アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488)が無数の銃弾をばら撒いた。狙うは、チーム近辺の4匹のマンティコアだ。
突然の襲撃に戸惑うマンティコア達の身体を、銃弾が貫いていく。
「ふうん、やるね」
ノアが呟く。『無明の灯』より解き放たれた炎が爆発を起こし、マンティコア達を飲み込んだ……いや、その爆発に殺傷能力はない。
「本日の運勢は大凶。ラッキーアイテムは――」
嘲るように笑うノア。途端、マンティコア達の足元が陥没した。『偶然』地盤沈下が発生したのだろう。何たる『不運』だろうか? だが、それだけでは終わらない。グラウンドに設置してあった巨大なポールが、他チームの味方ケルベロス達の攻撃の余波で切断され、無数の金属の槍と化し、穴の底で蠢くマンティコア達に『不幸にも』降り注ぐ。
這う這うの体でマンティコア達は穴より這い上がるが、一匹は文字通りの串刺しのオブジェと化した。ビクリ、と体を震わせ、そのまま動かなくなる。
「――必要ないね」
『モロスの託宣(モロスノタクセン)』。魔界の旧き神が用いたと伝えられる、運命を操る魔術を再現するとされるノアの術式は、魔力による衝撃で対象の因果にズレを引き起こし、敵対する対象への『不幸』を引き寄せる。その効果は……見ての通りだ。
間髪入れず、ノアのウイングキャット、『コレール』がリングを飛ばす。そして、そんなノアの身体を、茜が描いた守護星座の光が包み込む。
「援護だよ!」
前衛のケルベロス達へ、援護の光を放つ、茜の守護星座。
「うん、ありがとう。後で褒めてあげる」
ふふ、と笑いつつ、ノアが呟いた。
「予想以上に、醜悪な姿ざんしね……!」
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)が振るった如意棒の一撃が、マンティコアの尻尾、無数の毒針を装填した武器に直撃する。ぎぎぃ、と悲鳴をあげるマンティコア。
「魔女の、好きには、させないの……!」
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)の縛霊手から、巨大な光弾が放たれ、マンティコア達を纏めて飲み込む。マンティコアの内一匹が、そのまま消滅した。
「まとめて逝きな、珍獣どもが!」
キルロイ・エルクード(ブレードランナー・e01850)のリボルバー銃が怒涛の連射をみせ、文字通りの弾雨となった弾丸がマンティコア達に突き刺さる。
「マンティコアね……イノシシとか熊とか、山で猛獣の相手は慣れてるの。あなたも、斧の錆にして血抜きして腹に米詰めて炊いてあげようかしら!」
両手に斧を携えて、コマキが突撃する。
「乙女心を刃にのせて、舞ってみましょうこの一戦!」
星のように煌く魔力は龍に由来し、菫のように匂やかな魔力は妖精に由来する。二つの魔力を込めた斧を振りかぶり、マンティコアの一匹に接近、思い切り振り下ろした。
「『星菫乙女斬り(セイキンオトメギリ)』!」
マンティコアが切り裂かれ、絶命した。それを隠すように、薄紫の光が周囲を彩る。
「これで……フィニッシュだね!」
レム・ベルニカ(睡魔・e40126)の『たんぽぽ砲』より発射された砲弾が、マンティコアの身体に穴をあける。
ひとまず、校庭の敵は片付いたか。このまま校舎に向かえば――。
と、その時、校舎とは別の方向から、何かが崩れ落ちる音が聞こえた。
別チームのケルベロスによる攻撃の余波で、体育館の壁が粉砕したのだ。
いや、それだけならいい。問題は。
「中です! 中に七体……いえ、八体!」
別チームのケルベロスからの報告。どうやら、体育館内部にも、敵が巣食っていたらしい。
無視は出来ない。放置しておけば、背後をつかれる可能性がある。
他チームのケルベロス達は、既に攻撃に入っているようだ。
遅れまいと、ケルベロス達は、体育館へとなだれ込んだ。
●10月30日:体育館
体育館はそこそこの広さがある。すでに8体中、6体は他のチームを相手取っている。
「なら、わたし達が相手するのはそこの2体かな?」
言うや、アルケミアが駆けだす。二振りのナイフをかざし、踊るようにマンティコアを切り刻む。
ノアの魔眼がマンティコア達を錯乱させ、コレールは清浄な風を発生させ、ケルベロス達を援護する。
「それじゃ、キミの『物語』を語らせて貰うんだよ」
茜が『ミエノチギリ』を振るい、魔王・妲己の『物語』を辿る。ミエノチギリは大妖狐の九尾扇。それより発せられるは、幽世に吹き荒れる風。
「凍っちゃえばいいんだよ!」
その風にさらされたものは、その身を氷に浸食される。それが茜の『「ミエノチギリ」に幽世の霊気を宿らせ解き放つ(シノカゼ)』。
マンティコアの身体が氷に浸食される。とりわけ一匹の被害は甚大であり、その様は、さながら氷の彫像のようである。
「趣味の悪い彫像ざんしな」
笙月は呟き、ドラゴニックハンマーで凍り付いたマンティコアを殴りつけた。
凍り付いたマンティコアは、衝撃により爆散。破片はキラキラと輝きながら辺りに降り注ぐ。
「――ふむ、散り際は、美しくありんすな。あまり触れたくはないざんしが」
「みんな、がんばるのー。今回は……体育館の陣?」
和が九尾扇を振るい、味方の動きから陣形を生み出し、仲間たちをサポートする。
「ちっ、珍獣共が、うじゃうじゃと居やがる!」
キルロイが吐き捨てつつ、螺旋の力を撃ち放つ。
「ほんとね、もっとかわいい顔してればよかったのに!」
巨大な斧を振り回し、コマキが斧を叩きつけた。
「まぁ、仮にかわいくても、厄介な奴、って所に変わりはないかもね!」
レムが飛び、電光石火の蹴りをマンティコアに叩き込んだ。
マンティコアは飛びずさり、尻尾の毒針を一斉に射出した。
毒針が前衛のケルベロス達に降り注ぐ。ケルベロス達は、それぞれ回避を試みる。だが、雨のように降り注ぐそれを完全に回避しきることは困難だ。かすめた部分から体に毒が回るのを感じる。
「お前……調子に乗り過ぎだっ!」
アルケミアが叫ぶ。
途端、マンティコアの付近に、魔力で生成された真球体が現れた。それは重力を発生させると、周囲の瓦礫などを巻き込み、マンティコアを強く引き寄せる。最初はこらえていたマンティコアも、ついにはその球体に吸い寄せられた。瓦礫に巻き込まれ、揉みくちゃにされたところで、反転、強力な斥力が働き、全てを弾き飛ばした。
『星喰(ホシハミ)』と呼ばれるアルケミアのグラビティ。その威力は星を砕く牙に追随するともいわれる。
弾き飛ばされたマンティコアは、ぐったりと倒れて動かなくない。もう立つことはないだろう。
「大丈夫?」
怪我の心配をし、尋ねる和に、
「――――、大丈夫、だよ。今は、休んでられないし、ね」
茜が答えた。
「そうね」
コマキが言った。
「他のマンティコアも片付いたみたい。屋上へ向かいましょう」
その言葉に、ケルベロス達は頷いた。他のチームと共に、校舎へと突入する。
●10月30日:校舎内
ケルベロス達は、屋上に向けて、最短距離を走る。
校舎内部を駆けるレムは、進路や状況に些細な物でも変化がないか、辺りを観察しながら行動していた。
それ故に、気づいてしまった。
あたり一面に散らばった、学生たちの私物。
乱暴に、乱雑に投げ出され、倒れている机や椅子。
そこで何が起きたのかを。
占拠された場所には、一般人は残っていない、ヘリオライダーは、確かそう言った。
残っていない。言い換えれば、襲撃時には、一般人は……この学校の生徒たちは、ここにいたはずだ。
それが残っていない、という事は。
いや、逃げたのだろう。皆、無事に。そう思いたい。
そう思わなければ――。
「大丈夫かい?」
レムに声をかけたのはキルロイだ。
「うん。ちょっとだけ、嫌な考えを、しちゃって」
そうか、とキルロイは頷いた。
「……大丈夫だ。あたりが荒れてるのは、皆無事に避難して、それから奴らが暴れたからだ。お前さんの嫌な考えってのは、大外れだ」
にやり、とキルロイは笑った。
ああ、それは嘘だ。
レムは、キルロイが嘘をついていることを、なんとなくわかっていた。
でも。
「……そうだね」
今はその嘘にすがろう。
●10月30日:屋上
ケルベロス達は屋上に到達した。
上空には月が輝き、まるでそこを目指すかのように、直径8mほどの光の柱が、空へ向かって伸びている。
光の柱の中には、何かが吸い上げられている様子が見える。
これが、ハロウィンの魔力とやらだろうか。
速やかに破壊しなければ。
そう決意するケルベロス達の前に、三度マンティコアが立ちふさがった。
そして、背後。
校舎内にまだ残っていたのだろう、マンティコアが屋上への階段を上り、やってくる。
「よし、前は任せる。そして、後ろは俺達に任せな」
他チームのケルベロスの一人が、そう宣言した。そのケルベロスが所属するチームが、背後で攻撃を開始する。
こちらも負けてはいられない。
「さて、珍獣見学サファリパークもコイツで終点だ」
キルロイが言う。
「光の柱まで、もうすぐ。がんばろー!」
和が言う。
10月30日。この日、最後の戦いが始まろうとしていた。
マンティコア1体は、ケルベロス8名であれば、十分以上に戦える相手である。現在は、総勢24名のケルベロスに対し、相手はマンティコア8体。万全の状態であれば問題なく撃破できるだろう。だが、ケルベロス達はこれまでに、既に20体近いマンティコアと戦ってきている。当然、道中で負った傷も多い。
だが、如何に苦しい戦いとて、ここで負けるわけにはいかない。
最後の力を振り絞り、ケルベロス達は奮戦する。
「いい加減、倒れてくれないかな!」
月下に、アルケミアが舞う。二振りのナイフ。それで以てマンティコアを切り刻む。ぎゃぎゃ、と悲鳴をあげ、マンティコアが絶命。
正面にいた4体のマンティコアの内、2体はこれで処理できた。残る2体は、もう一方のチームが戦っている。
「こっちには多少余裕ができたようだ。後ろのメンバーへの援護も行おう」
ノアが言って、催眠の魔眼の魔力をマンティコアに叩きつける。
「もうすこし、だよ! 頑張って!」
茜が星座の紋章を描き、笙月がドラゴニックハンマーでマンティコアを殴りつける。
和が陣を作り、皆を援護する。
「あばよ、珍獣野郎」
つぶやき、キルロイの放った『聖女を穿つ魔弾(メイデンキラー)』が、マンティコアの急所を貫いた。悲鳴をあげ、マンティコアが動かなくなる。
「こいつでラストか!?」
キルロイが叫んだ。
他のチームも、マンティコアを片付けたようだ。これで障害はすべて排除された。
「急ぐでありんす、はやく柱を破壊しなければ……!」
笙月の言葉に、ケルベロス達は走った。他のチームのケルベロス達も、柱へと向かう。
「近くで見ると……きらきらしてて、きれい、かも……」
和が言う。
「そう、ざんしね……いえ、今は」
そう言って、笙月は構えた。すべてのケルベロス達が、最後の一撃を放つために、各々武器を構える。
「妖刀『滅』よ、全てを滅する汝が破壊の波動よ!」
笙月が叫んだ。妖刀と呼ばれし『滅羽』、それが精進の末に神格化した結果得た、本来の能力であるとされる『全てを滅する力』。それを用い、不可視の衝撃波、『かまいたち』を発生させ、敵を滅する。
「……解き放て!! 『陰翳断罪(バニシングブレイド)』!」
衝撃波が、ケルベロス達の攻撃が、光の柱へと迫る!
そして――。
●10月30日:月下の終焉
キラキラと輝く、光の雨が、辺りに降り注いだ。
光の柱が吸い上げていた、ハロウィンの魔力。
光の柱が壊れた今、行き場を失ったそれは、辺り一面に、光の雨と化して降り注いでた。
それは、戦場には似つかわしくない光景だったかもしれない。
いや、或いは。ここまで戦い、そして勝利したケルベロス達を、祝福する物だったのかもしれない。
(「……結局、光の柱については分からないまま、ざんしね」)
笙月は、内心呟いた。
光の柱は粉々に粉砕され、回収などは困難だろう。
結局、敵の目的も現在では謎のままだ。
「……まぁ、ひとまずは良しとするざんしか」
ふぅ、と笙月は息を吐いた。
あたりでは、作戦の成功を見届けたケルベロス達が、安堵の、或いは喜びの表情で、降り注ぐ光る雨を見つめている。
光の雨はしばらく降り注いだ。
空には、その光に負けじと、月が輝いていた。
10月30日。
ケルベロス達に起きた一連の事件。
その一つが、光の中、終わりを迎えようとしていた。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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