華麗なる神馬

作者:星垣えん

●馬、人、そしてカレー
 カレーの香りがする。
 藤・小梢丸(カレーの人・e02656)が山奥の寒村に足を運んでいたのは、そんな言い知れぬ感覚が胸の内に生じたからだった。
 歩を進めるたびに道は険しくなるが、小梢丸はその予感(カレーの香り)に突き動かされるように、着実に山中の秘所へと向かった。
 そして行き当たる。一帯を不気味に覆う、モザイクの空間に。
「モザイク……? これはまさか……」
 小梢丸はモザイクの内部に足を踏み入れる。
 内外の境界線を越えた瞬間から、体に粘りつくような何らかの感覚を覚えた。空気ではなく、粘性の液体で満たされているというのがしっくりくるだろうか。しかし何ら問題なく呼吸はできているのが不思議だ。
 中の光景は支離滅裂だった。家屋のものらしき壁板やら、草花や木々が千々に切り取られてごちゃまぜに配されている。そこにあったものが気まぐれでパズルのように分解されてあるような、気色悪さが渦巻いている。
 だがそんな奇怪な空間の中にあって、唯一正常な形を保っているものがあった。
「……ケルベロスだと? このワイルドスペースにたどり着くとは……もしや貴様、この姿と何か因縁がある者か?」
「……その姿は!!」
 口をひらいたそれに対し、小梢丸は目を見開いた。
 半人半馬の異形がそこにいた。人のような上半身に、馬の顔と下半身。雄々しくたなびく尾に、強靭な筋肉が覗く体、鎌のような戦斧や身を固める青い鎧が苛烈な戦士を思わせる。
 その姿に、馬のウェアライダーたる小梢丸は何かを感じ取った。
 と思ったが、ちょっと違った。
「なんてことだ! 僕としたことが……カレーではなく、カレーポットに導かれてしまったなんて!」
「いやすごいな!? 着眼点すごいな貴様!?」
 ダンッ、と地面に拳を下ろした小梢丸さんに、厳格な戦士っぽかったお馬さんがたまらずツッコんでしまう。確かにね? 確かにお馬さんは銀色に輝くカレーポットを携えているけれども!
「カレーが食べられないなら帰ろうかな」
「いや待てーい!!?」
 己を突き動かす衝動の正体がカレーではなくカレーポットだったという事実にテンションダダ下がりの小梢丸は踵を返したが、お馬さん――ワイルドハントは圧倒的な速力で回りこみ、行く手を遮る。
「このワイルドスペースに踏み入った者を生きて返すわけにはいかん。貴様にはここで死んでもらう!」
「そんな! 人を呼び出しておいてカレーも用意してないくせになんて言い草だ!」
「いや最初から呼んでないからーー!」
 マイペースすぎる抗議を繰り出す小梢丸へ、ワイルドハントは殺意みなぎる戦斧を振り下ろす。
 どうする小梢丸! もう帰れそうにない空気だ!

●カレーポットに釣られて窮地に陥った人を助けなくては!
 ワイルドハントについて調査していた小梢丸が、調査先でドリームイーターの襲撃を受けた。
 ものは言いようって感じだけど、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は小梢丸さんの名誉のために細部とかをいろいろ伏せてケルベロスたちにそんな感じに伝えました。
「自らをワイルドハントと名乗るそのドリームイーターは、現場をモザイクで覆ってその中で何らかの企みを進めているようです。となるとそれを目撃した小梢丸さんを生かしてはおけないはず……このままでは小梢丸さんの命が危ないんです。急ぎ皆さんで現場に向かい、ドリームイーターを撃破して下さい!」
 セリカの表情からは切迫したものがうかがえる。デウスエクスと1対1では、経験を積んだケルベロスとて敗北は必至だ。事態は一刻を争う。たとえモザイク内部の雰囲気がどれほどアレな感じになっていようともですハイ。
「モザイクの中は特殊な空間になっていますが、呼吸もできますし動きが制限されるようなこともないので戦闘に支障はありません。敵となるドリームイーターは半人半馬の姿をしていて、これまでの報告を考えればこれもおそらく小梢丸さんが持つ別の姿……なのだと思われます。尋常ではない脚力、装備した戦斧を用いた攻撃に注意して下さい」
 救出に赴くケルベロスたちに必要そうな情報を手短に伝えると、セリカは一行を自身のヘリオンへと導いていく。
「小梢丸さんの救出、どうかよろしくお願いします」
 歩きながら、セリカは小さく頭を下げた。


参加者
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)
藤・小梢丸(カレーの人・e02656)
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)
竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)
ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
星川・薫子(トレースマニア・e41263)

■リプレイ

●ただいまお届け致します
 モザイクがゆらめき、そびえたつ。
 藤・小梢丸(カレーの人・e02656)の救出に赴いたケルベロスたちは、漂う山気をその身に感じつつ、目前のワイルドスペースをねめつけるように見ていた。
「カレーを求めて迷い込んじゃった……というのが藤さんらしいですが、早く助けに行かないと!」
 カレーを愛する同志の行動に、ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)はあきれたような得心したような表情を作る。隣で小さく鳴いた小竜のマンダーも、心なしかため息をついたような気もします。
「うむ、カレーポットで藤殿をおびき寄せるとは卑劣な……」
「そのうえ藤殿をまねておきながらカレーを持っていないとは……! 紛い物にも程があるわい」
 ガラムの言葉に応じ、天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)と竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)はワイルドハントの行いを咎める。カレーを持っていないだけでこの言われよう、お馬さんもびっくりですね。
「とにかく早く藤さんと合流しなくてはいけないね」
 たまたま居合わせたみたいな微妙な立ち位置のまま依頼に同行してしまった瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は、『カレーなくして小梢丸にあらず』という周りの口ぶりを訝しげに感じつつもきっちりと仕事はこなすつもり。
 ちなみに小梢丸とそれほど親しいわけでもない、というのは右院だけではない。
(「小梢丸とは面識はないけど、それでもみんなの顔を見ればどれだけ慕われているかってのは分かるぜ」)
 誰かの危機と聞きつけて参戦したロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)は、集結した仲間たちを見渡し、彼らの表情から小梢丸がどういう人間であるかを理解する。
 そして視線を彼らの手元に滑らせた。
 カレーである。
 皆、カレー持ってきてる。香りすげえ。
(「カレーどれだけ好きなんだよ!」)
 ロディ、魂のツッコミである。
「まだ交わした言葉は少ないけど……それでも藤さんは同じ師団の仲間なんだ! 待ってて藤さん、このカレーは絶対に届けて見せるから!」
 そんなロディの胸中を知らない星川・薫子(トレースマニア・e41263)は、保温ポットを掲げて思う存分にボケる。いや当人にその意識はなくちゃんと小梢丸を案じてのことなんだけどね?
「さあ行こう。次々とツッコミが繰り出されているらしいし……小梢丸さんが危ない!」
 もはやシリアスな空気を醸し出そうともしないで、熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)は少し楽しげにワイルドスペースにずにゅーんと突入。なんてことだ、これ救出のノリじゃねえよ!

●新しいカレーよ!
「ひとまずは音を頼りに藤殿を探すでござる」
「小梢丸は激しいツッコミにさらされているみたいだしな。何かツッコんでいる叫び声があったら間違いなくそこにいるはずだぜ!」
 そう言うや、対象捜索のために日仙丸とロディは耳を澄ました。どこかでツッコミが起きるはず、と。そんな手段で探される小梢丸さんっていったい。
「どこにいるのじゃ藤殿……!」
「藤さん、ボケて私たちに居場所を知らせて……!」
 真剣な顔で探す一刀と薫子だが、やはりもうノリがアカンよね。真面目にやればやるほどアカンくなるパターンですわ。
 だが、ワイルドハントと小梢丸を見つけるためにはそれが有効だったという悲報。
「くっ、なんて激しいツッコミなんだ! 流石にボケの僕でも受けきれない……それもこれもすべて、カレーポットなんかに気を取られたから、ぐぬぬ……!」
「その台詞がふざけているでしょうが!」
「ふふふ、でも僕は知っているぞ。背景色で見にくいけれどそのカレーポットからはもやや~んと……」
「ちょ、背景色とか何を言っているゥ!!」
「カレーが入っているに違いない! そのカレーをよこせえええ!」
「ええい抱きつくな鬱陶しい!!」
「うわーーーっ!!」
 やってますわ。ボケとツッコミが完全にやりあってますわ。
「間違いない! 小梢丸さんだ!」
 まりるが皆を見回す。仲間たちもこくりとうなずいた。今のやりとりで小梢丸がいると確信できる悲しみである。
 全速で急行するケルベロスたち。
 両者の姿を発見したとき、小梢丸は健在ではあったが、お馬さんの攻撃にひたすら耐える劣勢を強いられていた。
「それ以上やらせはしないぜ!」
 戦場に到達し、いの一番にワイルドハントに向かったのはロディだった。速力を上げ、小梢丸に戦斧を振り下ろさんとする敵の横っ腹に全力で吶喊した。
「っ! 加勢だと!?」
「みんな、来てくれたんだね!」
 不意の攻撃をくらったワイルドハントは、警戒して距離をとる。
 ロディが作ったその時間を利用し、右院は小梢丸にある物体を投じた。
「藤さん! カレー持ってきたよ!」
「カ、カレーだって!」
 放られた物体に「とう!」と食いつく小梢丸。
 手にしたそれをじっと見直すと――おにぎりだった。
「おにぎり……いや、これは!」
「そう、そのおにぎりの具は……カレーだよ! 凍った具をあったかご飯で握るだけのアレだよ!」
「なるほどいただきまーす」
 力説する右院に乗せられ、小梢丸はぱくりとかぶりついた。
 口内にひろがるのは――強烈な梅の酸味でした。
「ひどいだまし討ちだよ!」
「あ、ごめんなさい。うっかり梅とおかかも持ってきてたんだった」
「カレーだと言われた分、余計にダメージが……」
「ええい何をやっているゥ!」
「うわーっ!?」
 繰りひろげられる小ボケに耐えられず、たまらず小梢丸にツッコむ馬。実はおにぎりを取り違えるボケは、小梢丸から敵の注意をひこうという右院の策だったのだが、肝心のリアクションを取るのが小梢丸なのでまったく成功していない。逆効果やで。
「スライディングツッコミ返しー!」
「ぬっ!?」
「今ですよ、ボンダー!」
 わちゃわちゃをかき消すような調子の良い発声とともに、馬の足元へ盗塁王も裸足で逃げ出す滑りこみをまりるが仕掛けた。そうしてあっさりとワイルドハントの意識をひきつけると、その間にガラムがボンダーに簡単美味なレトルトカレーを小梢丸にデリバリーさせる。
「カレーだーっ!」
 歓喜する小梢丸。ほかほかの白米と一緒にもぐもぐ。
「おのれ緊張感はどこへ行ったっ!」
「お食事の邪魔はさせません!」
 やはり放たれるお馬さんのツッコミであるが、今度は薫子がラビット・ブーツから蹴りだしたオーラによって遮られる。そもそもがお食事をしている場合ではないとかは考えません。
「藤さん、どうぞ食べていて下さい! その間は私が守ります!」
「ありがとう! ゆっくりと頂くよ!」
 座りこんでカレーを食す小梢丸を背にして、薫子は毅然と、眼前の厳つい馬を見据える。
(「私は皆に比べたらまだまだ力不足……でも、皆が少しでも動きやすくなるように!」)
 薫子の心中にあるのは、未熟を自覚したうえでの覚悟。きっととっても胸を打たれるシーンだったはず、後ろでカレーを黙々と食ってる奴がいなければな。
 と、なんだかんだで手厚い防護で小梢丸を敵の手から遠ざけることには成功した。だがいくらかの手傷は免れなかったはず、と日仙丸は螺旋の力を宿した掌を小梢丸の背に打ちこんだ。破壊ではなく、癒しのために贈られた螺旋が彼の体内を駆け巡る。
「これでたくさんカレーが食べられそうだ!」
「カレー無き場所で藤殿を死なせるわけにはいかぬでござるからな」
「福神漬けにトッピングも持ってきたぞ!」
「うぅ……ありがとう、ありがとう」
 一刀が治癒のための気力を与えがてらに差し出した各種トッピングを、遠慮なくカレー皿に取りながら、小梢丸は涙した。こんなにも自分の窮地に仲間たちが駆けつけてくれるなんて……カレーを持ってきてくれるなんて!

●香る戦場
 蹄鉄が高鳴り、戦斧が乱れる。憎きボケたちを殲滅する、とでも言うようにワイルドハントは嵐のように暴れまくっていた。
「きゃーえっちー!」
「ちょっ、誤解を招く言い方はやめろぉぉ!!」
 荒れ狂うお馬さんの戦斧にお洋服を千々に破られたまりるが、わざとらしく悲鳴をあげる。おまわりさんこいつです、と。慌てて首をふって訂正するお馬さん。
「あっ、熊谷先輩が暴漢に襲われている!」
「語弊が百点満点なのは誰どわーーっ!?」
 謂れなき罪を着せる薫子の声にワイルドハントがふり向いたが、そこに彼女の姿はなく、代わりに一筋の風のような何かが目の前を横切った。思わずのけぞる馬だが、その隙をついて足元へ滑ってきたのは今度こそ薫子。敵の隙を生み、そこを突く。ひたすらに観察眼を極めた『トレースマニア』の薫子ならではの技である。
「くっ……カレーがどうのとほざく男の仲間だけはある。まったくひどい連中だ!」
 ちっとも真剣な雰囲気になってくれないケルベロスたちに、ワイルドハントは嫌気が差してきたのだろう。吐き捨てるようにそう言った。
 だがそんな敵の言葉を、一刀は肩をすくめて一笑に付す。
「その口ぶり、まさしくカレーを軽視した物言いじゃが、やはりわかってないのう。姿形だけを盗み取り、その姿へ至った思いを顧みぬとは。だから貴様は紛い物なのよ」
「! …………いや別に紛い物で十分というかむしろそのほうが良――」
 身も蓋もないことを言い始めたワイルドハントを達観したような瞳で捉え、一刀は差し佩いた日本刀の柄に手を添えた。
「グッ……アァッ!」
 瞬間、ワイルドハントはその身に深々と刀傷を刻まれていた。一刀が刀を抜いた様子はない。少なくとも相手はそう見ていた。一刀自身も斬った意識はない。
 だが斬ったのは紛れもなく一刀の一振りだった。研ぎ澄まされた一撃は彼我の誰にも認識されることなく、ただ静かに……なんかいい感じだった台詞に水を差そうとした馬をスパッと排除しました☆
「しかし竜峨殿の言う通りとんだパチもん臭でござるな……もしやこやつだけ実はワイルドハントとか関係なくハヤシライス派の回し者なのでは?」
「なんだって!?」
 ヒールドローンを駆使して仲間の治癒に勤しんでいた日仙丸がぽつりと漏らした一言に、小梢丸は尋常ならざる反応を返した。ポットの中身がハヤシ……?
「こんなカレーのない所にいつまでもいられるか! 僕は帰らせてもらう!」
「ぶげえっ!?」
 一刀に斬られて脚プルップルだったお馬さんへ、怒りの鉄拳をお見舞いする小梢丸。
「このまま畳みかけるぜ!!」
 経緯はどうあれ戦局の天秤はこちらに傾いた。そう察したロディはモビルディフェンサーを砲撃モードに変形、両腕に装着された2つの砲口から全エネルギーを敵に射出する。
「ぬっ……おおぉ!!」
「俺も一役買わせてもらうね」
「!?」
 ロディのマキシマグナムを受ける馬の死角に回りこみ、右院が質実剛健な騎士剣を閃かせた。斬るというより叩きつけると言うほうがふさわしい一撃が、ワイルドハントの装甲を砕き、荒々しく肉を裂く。
 重ねられた攻撃に、ワイルドハントはたたらを踏み、膝を折った。
 それを見て取るや、ガラムは天高く跳躍する。
(「華麗忍法継承者として、負けるわけにはいかないのです!」)
 右脚をちらりと燃え立たせ、まっしぐらに降下した。
「華麗の力、今ここに!」
「ぐ、ぐおおおぉーーー!!?」
 世界中から集めたカレーの力、燃焼するスパイスの香りをまとわせた蹴撃がワイルドハントの屈強な肉体を貫く。お馬さんはとても良い香りがする馬肉と化して……じゃなくて死んだ。
 敵の消滅を受け、ワイルドスペースは霧散していく。
「カレーの勝利だ!」
「ハヤシライス派の策謀を打ち破ったのでござるな」
 ぐっ、と拳を突き上げる小梢丸。そしてこくりとうなずく日仙丸。カレー派とハヤシ派の抗争だったかのような空気はやめろ。

●本番だ!
 山の空気に乗り、カレーの香りが拡散する。
 ケルベロスたちは馬を倒したそのノリで、そのままカレーパーティへと移行していた。
「小梢丸さんお疲れさまでしたー。まずは駆付け一杯、カレーをどうぞ。金沢カレー、仙台牛タンカレーに広島牡蠣カレー……いろいろあるけどどれにします?」
「うおー、カレー!」
「私、保温ポットに入れて持ってきました!」
「ふふふ感謝感謝。やっぱりこの山にカレーの気配を感じたのは間違いじゃなかった!」
 まりるに種々のご当地カレー、薫子に『昔懐かし甘口お子様カレー』と『薫子特製星型人参たっぷりカレー』を勧められ、小梢丸は結果的においしいカレーにありつけたことにほくそ笑む。
「拙者はキーマカレーを持ってきたでござるよ。もちろん通販で入手でござる」
「わしはカツカレーじゃ。下山するにも体力が要るからのう」
「役得役得。これはもう今まで食べられなかった分をしっかり取り返させてもらうよ」
 きっちり型を取ったご飯に乗ったキーマカレー、そして悠然と鎮座するカツが輝くカツカレーがそれぞれ日仙丸と一刀から供されると、小梢丸はすかさずスプーンを差しこんで一瞬で口に運ぶ。
「そしてここで追いガラムマサラですよ」
「ぶふっ!?」
 そこまでカレーを欲するなら、という親切心でマンダーと一緒になって小梢丸の口にガラムマサラを投入するガラム。おかげで小梢丸が悶えてる。
「オレはホットロッドことロディ・マーシャル。よろしくな! これとりあえず差し入れだぜ!」
「げふっ! あ、ありが……ごほっ! ごっほっ!」
「だ、大丈夫か……?」
 颯爽とレトルトの手羽先カレーをもって、小梢丸に自己紹介をするロディであったが、粉をぶちこまれた人は咳きこんでそれどころではなかった。おかげでロディは初対面の相手の背中をさする羽目になりました。
「ワイルドハントはカレーの力は求めてなかったのかなー……でもそれなら小梢丸さんの姿を使うな、と。とまれ、皆でカレーを堪能出来て何よりですわー」
「そうだね、おいしいおいしい」
 ワイルドハントの目的について思索……とみせかけ、ひたすらカレーのシェアを進めていくまりる。そして着々と胃袋に収めていく右院。考え事をするにはこの場はおいしい匂いに包まれすぎているからね、仕方ない。
 パーティが賑わいを見せる一方、日仙丸とガラムはお馬さんが消滅したところでじっとしゃがんでいた。
 視線の先には、ぽつんと例のカレーポット。
「ふむ、やはりカレーは入っていなかったようでござるな」
「この形の入れ物は『グレイビーボート』とも言うらしいですね。でもグレイビーボートはカレーを容れるものでもないしアメリカが発祥だそうです。それなのにカレーのイメージが強いのはなんででしょうかねぇ」
「博識でござるなあ、マサラ殿は」
「コレに入ってると、なんか高級な感じがするのです。……やっぱ持って帰りたいですねぇ」
 じぃ、と熱い視線をポットに送るガラム。
 うん、当人たる小梢丸は特にカレーポットには興味を持っていないようだし、気になるなら持って帰っていいんじゃないかな?

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。