三色魔女のハロウィン~ケルベロス・バンケット

作者:東間

●忍び寄るは、半人前魔女の魔手
 夜空の下、テーブルの中央に鎮座するジャック・オ・ランタン。
 その周りを綺麗に埋めるスイーツ群は、華麗で不思議。
 チョコペンで1つずつ違う表情を描いたお化けのカップケーキ。満月や星空をアイシングで描いたクッキー。『謎味』『ほんのり甘いよ』というプレートが添えられているのは、狐色の表面に星屑チョコチップが降る淡い虹色パウンドケーキ。
 黒、赤、紫、青とチョコレート製の瞳が描かれたプチシュークリームのピラミッドは、ほんのり恐ろしく、黒猫チョコレートが乗った紅芋タルトは愛らしい。
 デフォルメされた骸骨フェイスが目を惹くチョコ饅頭や、魔法陣が浮かぶどら焼き、夜空を切り抜いた水羊羹――と、和菓子も揃った甘い宴の席は29日から3日間開催されていた。
 そして今日はその2日目、30日の夜。
 仮装した人々で賑わう会場は、明日も大賑わいとなるのだろう。だが、そこを見つめていた青色の娘、半人前魔女・チオニーの目が密かに光れば暗雲が立ちこめる。
「あそこからハロウィンの力を感知しました。あなた達、あそこへ向かいなさい」
 暴れて。暴れて。暴れて。暴れて。
 そうやってハロウィンの力を持つ魔女を誘き出して。
 命令に頷いたパンプキョンシー達が次々飛び出していき、会場に生まれたざわめきが悲鳴に変わる。チオニーはパンプキョンシー達の『働き』を暫し見つめた後、これでよし、というように頷いた。
「赤や緑では、超越の魔女になっても、『ジグラットゼクス』の皆さまのお役にたてるかどうか……だから、私こそが、超越の力を手に入れて超越の魔女にならなければならないのです」

●三色魔女のハロウィン~ケルベロス・バンケット
 ハロウィンの力を求め動き出したドリームイーターの魔女達。
 その中の3人――赤、青、緑が、この時の為にと量産していた屍隷兵・パンプキョンシーを使い、ハロウィンイベント『仮装して楽しもう! 魔界のスイーツパーティ』を襲撃させるという。
 敵の目的はハロウィンの力を持つ魔女を見つけ、その力を奪う事。
「ただ、『ハロウィンの力を持つ魔女』が何なのかはわからなかった。かといって襲撃事件を無視は出来ないからね。敵を倒して、ハロウィンイベントと、それを楽しむ人達を守ってほしい」
 ラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)曰く、『自分達がハロウィンの魔女である』と思わせる事が出来れば、屍隷兵は一般人を放置してケルベロスへ向かってくる。
 一般人に被害を出さず、屍隷兵の撃破が狙えるという事だ。
「それと、戦いを見て『あれがハロウィンの魔力を持つ魔女だ』と思った三色の魔女が、力を奪いにやって来る可能性もある」
 三色の魔女が出現した場合、現時点で戦闘能力が不明な相手との連戦になる。
 だが、可能なら撃破してほしいと男は言った。
「イベントが芝生広場での立食スタイルだから、イベントに参加しつつ『ハロウィンの力を持つ魔女はここにいる』ってアピールするのも手かな」
 アピール出来れば、敵は一般人を無視してやって来る――とはいえ、人気イベントのようで参加客は多い。
 柵で囲まれた内側、会場内は仮装した警備員に対し一般客が圧倒的に多く、会場外にはイベントに参加しようとやってくる人が複数いるようだ。
 イベント会場に現れるパンプキョンシー達はさほど強くない。
 口から発する怪音波と、拳法家のような動きから繰り出す殴打。そして印を結び自己回復を使ってくるが、しっかり作戦を立てて行けば大丈夫だ。
「そういえば去年もこんな風に事件が起きたね。あの時みたいに、華麗な活躍をお願いするよ? ケルベロスさん」
 そう言って浮かべたのは、信頼を滲ませた笑顔だった。
 それは去年ケルベロス達が見せた戦いぶり、そして勝利を覚えているからこそ。
 今年も勝利を収めて――楽しい楽しい、ハロウィンを。


参加者
春日・いぶき(遊具箱・e00678)
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)
六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)
サイファ・クロード(零・e06460)
成瀬・涙(死に損ない・e20411)
臼井・うたかた(いつか花冠を・e39780)

■リプレイ

●彩宴
 甘い物と不思議な住人達が集う宴の席は、夜でも係なく賑やかで明るい。そこにふわ、と漂ったモノが彼らの視線をフードの男――春日・いぶき(遊具箱・e00678)へ向かわせる。
 住人達と目が合ったいぶきは、艶々の赤眼シュークリームをぱくり。手近な所にいた妖精へ一口サイズの菓子を勧めると、暫しあちらへ、と促した。くるりと振り返るついでに周りを見れば――ああ、丁度良い。此処を拝借。
「我らが魔女さまが魔法を加えたお菓子をどうぞ」
 ――さぁ、一緒に素敵な夢を見ましょう。
 声と共に、ふ、と場が暗くなった。そしてドン、と立ち上がった煌めく雷壁が会場を包み込み、あちこちで驚きと歓声が上がる。
「今宵、宴に魅入られ魑魅魍魎が蘇る……」
 このしわがれ声はどのお婆さん? そんな様子で顔を見合せる住人達は楽しげだ。フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)も目を煌めかせ、秘密の仮面がもたらす『魔力』宿した声を高らかに響かせる。
「我らが守護者、ハロウィンの魔女を紹介しよう!」
 いぶきの傍、ぽかりと開けた場所へ、流れる軽快なテクノポップと共に歯車が踊る夜色の外套がばさりとはためいた。
 スマートに振る舞いながら行くのは、スチームパンク魔女のサイファ・クロード(零・e06460)。その後をキャッキャと笑い声が続くが――誰もいない。『透明幽霊だ!』とちびっこ警察がはしゃぐ中、しゃららと銀の光が舞い散る。
「さあさ、魔法使いのショーが始まるよー。今宵は魔術の大盤振る舞い。お菓子片手に上等の魔法に酔いしれてくれ」
 お次は魔法の杖が黄色い小鳥に変わり、小さなお姫様達も『ひよこちゃん!』と大喜び。
 『一工夫』加えたサイファの声はよく届き、ふんわりとフェロモンも流れていけば、ゾンビや警官がふにゃりと笑顔――だけれど、酔いしれそうな存在はこれだけじゃない。
 ふわ、ふわ。立派な尻尾を立て、優雅に、優雅に。今宵は氷の魔女様、な翼猫スノーベルがゆるりとお座りすれば、目が合ったゾンビドクター達が『はわわ』と興奮している。
「みゃあ」
「……かしこまりました。全ては、スノーベル様のおもゆくままに」
 心地良い声と共に届けられる雪や氷――の菓子。ドクター達の目が自分とスノーベルを見比べるのに気付き、成瀬・涙(死に損ない・e20411)は自分がスノーベルの使い魔なのだと自己紹介をした。つまりメインはスノーベル!
「やっちゃってください、先生」
「みゃあん」
「うっ、エレガント可愛いッ!」
「おや? あちらの魔女は……」
「え、今度は誰?」
「何々!?」
 期待に満ちた声と瞳が、光に照らされても尚輝く翼を見た。自分達より少し高い位置を滑るようにふわりと流れていくのは、白とロゼと黒。そして。
「わ、ナノナノちゃん可愛い!」
 今夜だけの特別仕様、蝙蝠風ナノナノ・ポムが、蝙蝠の羽根飾りをパタタとさせれば再び『可愛い』の声。けれど目の前にやってきた魔女――黒のローブデコルデに身を包んだ臼井・うたかた(いつか花冠を・e39780)の唇が弧を描いた途端、ポッと赤くなる。
「うふふ、最早埋めるべき欠損を持たない完璧なる私から恵みを与えましょう。存分に浸りなさい、ハロウィンの悪夢に」
「ひゃ、ひゃい……」
 美しく妖艶な魔女から宝石菓子を与えられて心がとろけたら、お次は。
「あれっ、もう出番……?」
 だらけていた六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)の傍、バタバタしているネズミは黒ローブを整えようとしている風に見える。小さなお世話係兼使い魔の頑張りに深々見は気付かぬまま、エレクトリカルな音楽と共に少し背を伸ばした。
「仕方ないから動こっか……今日頑張れば来年までまた休めるもんね……」
 普段の彼女を知る人が見たら『自然体過ぎね?』と思っただろう。何故ならハロウィンの魔女はハロウィンの時だけ現れる――つまりそれまでは自宅警備故に導き出されるのは驚きの自然体!
「じゃあ、何か魔法でも……んー…なんと、このネズミが空を飛ぶよー」
 逃げかけるネズミ。むんずと掴む深々見。そして。
「わあ凄い!」
「でしょ? ほーら魔法いっぱいだよー。寄っておいで―」
 豪快に夜空へ放たれたファミリアシュートを見て、子供は無邪気にはしゃいでいる。そこへザッ、と黒ローブが翻った。
 流れる音楽は打って変わって重く響く。黒ローブに赤青緑の宝石飾りを煌めかせ、サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)は『なあ』と従者へ声をかけた。
「明日は何の日だあ? おい」
 わかってんだろと語る目に、宴を彩るは従者が役目、とキソラ・ライゼ(空の破片・e02771)は軽く頭を垂れた。シルクハットの下から濃紺の焔を揺らし、主から住人達へと振り返れば燕尾服の裾がくるっと舞う。
「宴の力を魔女さまに捧げよ、世界を繋ぐ門を開け放て!」
 溢れた銀の光は場への花道となり、盛り上がっていく空気にサイガはそうだ、と笑う。今宵は宴。ならばすべき事はひとつ。
「もっと飲め食え夜通し騒げ!」
 宙を舞った蝙蝠菓子に更なる歓声が上がり、シャッターを切る音の合間にくすくすと秘密の笑い声。
 絢爛豪華な魔女達が通り過ぎれば、テーブルのジャック・オ・ランタンは明滅し、音楽に合わせてキノコ達も踊る。見事に身を隠し、謎の演出家となっていたフィーの『幻想のオーケストラ』も、宴に彩りを添える愛らしさ。
「ふふ、似合ってるか判らないけど楽しいわね、仮装にお芝居」
「……うん。楽、しい」
 うたかたと涙が柔らかな視線をこっそり交えた時、宴に新たな登場人物が加わった。しかしそれは招かれざる客。とんがり帽子の魔女は遠慮なく殺気を広げた。

●開宴
 人々がざあっと、統率の取れた動きで離れていく。早くあっちへと誰かが言えば、こっちですと警備の声。その迅速な流れは、運営・警備・一般客――ケルベロス達が施した事前の備えが宴の場に届いていたからこそ。
 人々が去る中、残されるのはテーブルを彩る菓子の群れと宴の飾り。そして闖入者を仕置きすべく待ち構えていた『魔女と従者』達。
「宴を土足で荒らすたぁ当然、俺が誰だか知っての上だな?」
 敢えて怒りを強く見せたサイガの目がパンプキョンシーを捉え――目が帽子の鍔に隠れた一瞬、今度はサイファの金目が敵を捕らえ、その手が何かを掴むような仕草を見せる。
「魔女の意向だ。従え」
 心身がぐらりとするような眼差しは4体全てへ平等に。
 そのうちの1つを庇い、多めに受けたパンプキョンシーへと降り注いだのは、深々見が竜槌からドカンとお見舞いした竜砲弾と、キラキラ眩しく重たい星の蹴撃。涙の後、スノーベルの鋭い爪が敵の青白い肌を引き裂いた。
 すると、血を流した1体と別の1体が大きく口を開けた。すう、と細い音が聞こえた次の瞬間、形容しがたい音波が前衛目掛けて迸る。
 サッと飛び出したスノーベルとポムが一瞬身を縮こまらせるが、小さな仲間達はぷるっと体を震わせると、どこかキリッとした目で敵と向かい合った。
 宴の一員が見せた頼もしさに彼らの主だけでなくフィーも笑み、『cardium』をくるりと踊らせる。
「皆の安全も、イベントの盛り上がりも、ぜーんぶ護ってみせるから!」
 宴はまだ途中。ハロウィン本番も、これから。
 光から溢れた物語の住人達が、今宵の主役たる仲間達の為にとオーケストラを『奏で』だす。
 前に立つ仲間達へ支えが贈られる中、うたかたが敵に贈ったのは御業の手。ぐん、と伸びた手が敵を鷲掴むその間に、ポムが涙をハート型バリアで可愛く包む。一瞬の間に飛び交う繋ぎと攻防。これが、実戦。
(「定命化以来久々の――感覚取り戻さなきゃ」)
 しっかりと敵を見据えるロゼの目に、雫が映った。
「魔女さまの邪魔をするとは不届きな。大人しくしていなさい」
 怒れる従者いぶきによる骨の髄まで蝕む毒の雨。そこへ重なるように今度は光り輝く一閃が見舞われる。
「楽しくなくては興も削がれよう」
 宴とはそういうもの。何より魔女様に捧げるのならばと、斧を掴む手から地獄炎を溢して笑うキソラと、いぶきの目はしっかりと合い――そして。
「うーん、従者スペック的な意味で火花を散らしてるよーな……」
 まあいっか。深々見は考えるのを止めた。
 後ろへ数歩下がりつつ頭を抑え首を振って、と、コミカルな動きをした1体より少し手前。顔を見合わせ、うう、と唸った2体がほぼ同時にしゅぱっと構えた。鋭く舞うように、流れるように。繰り出される一撃を、今度はサーヴァントではなくうたかたと涙が受ける。
 青い目は無言で『傷付けさせない』と語り、ロゼの目は甘く煌めいた。
「奥手なご主人様にも早く逢いたいわ」
 青い青い、半人前の。
 拒絶するような声をパンプキョンシー達が響かせる。血を流す1体が構え――ガヅッ、と。頭に拳がめり込んだ。
「真の魔力を振るうまでもなし。おう、」
 顎でくい、と指したのは拳の勢いのまま地面に激突した1体。声を向けたのは、白髪に虹色走らせる従者。
「片しとけ」
「――、仰せのままに」
 キソラの声が、肩が若干震えていたのは気のせいだ。今日はお召し物の関係で目元が隠れがちな魔女さまが、ちょっと物理魔女っぷり過ぎただけで。
「なあお前。魔女さまのお力はこんなものではないぞ」
 何せ、軽い言葉とは対照的に繰り出すものは容赦なしだ。
 キソラのアドバイスは残念ながら最期まで届かず。しかし代わりに聞いたものはあと3体。此方の魔女さまは物理系。ならば彼方の――そ、と手の甲を差し出した魔女うたかたさまは、如何か。
 紡がれる声が、力が、パンプキョンシーを絡め取る。甘く苦い魔法がとけないうちに、ポムの作るハートがスノーベルを、フィーの起こした銀の煌めきが前衛を確かに支えていった。
 自分の傍でくるっと飛び、短くみゃあと鳴いた家族に涙はかすかに『うん』とだけ。けれど充分。癒しを任せ、自分は不可視の地雷を一斉に爆発させた。
 そう来ると思っていなかったのか、パンプキョンシー達は悲鳴を上げながら慌てふためいている。サイファは額に手を当て、やれやれと首を振った。
「前座じゃなくてキミに会いたいんだけどな」
 だから今はこのスイッチを押すよ――と、カチリとやればカラフルな爆発が前衛を華麗に彩った。
「あんたにも見える? 炎に認められし者のオーラが」
 きっと見えただろう。そして次に見たのは、爆煙を裂いて飛び出してきたいぶきと、彼の振るう十字柄のナイフだった筈。
「これ以上恐ろしい思いをしたくなければ魔女さまに傅きなさいな――って、おや」
 『痛み』ごと斬られた敵がドサリと倒れ、一度は演出上夜空の彼方へ飛んだ杖が再びネズミとなり、魔力と共に3体目を貫いた。
 元々の実力差と、標的を集中させた上での火力向上は、パンプキョンシー達の反撃を許さない程に速い。
「散れ、価値のねえザコが」
 サイガの蹴りが触れた瞬間、侵し拡がった降魔の気が内側から凄まじい勢い――と、ビビットカラーになった『中身』と一緒に――爆散する。
 威力と『なにゆえ』に目をぱちくりさせた深々見だが、はっ、と感じ取った。これは好機。その空気に気付いたフィーが、それじゃあコレあげるよ、と雷撃でいぶきを賦活すれば準備は万端。
 最後のパンプキョンシーが気付いた時には、もう。
「オレらの視線を一身に浴びるなんてラッキーじゃん」
「ええ、本当に。しかも魔女さまをお二人も」
 サイファの金目が、いぶきの紫眼がくすりと笑い、
「そこのカボチャ……ハロウィンの魔女が命じます……お菓子を……お菓子を持って来るのです……」
 深々見の青い瞳が欲望に真っ直ぐ煌めいていた。

●再宴
 パンプキョンシーが倒れ、砂になって消えていく。
 残念ながらお菓子は持ってこられなかったが、ケルベロス達の勝利というゴールはやって来た。
「お菓子は無事ですね、良かった。お腹が空いているのに、敵が目の前で引っくり返したらどうしようかと」
 にこり微笑むいぶきはいつものいぶきだが、『食べ物の怨み』を、いぶきであろうとケルベロスであろうと買ってしまったなら恐ろしかろう――そう感じさせる何かが、そこにあった。
「うん、わかる、わかるぜイブキ。お菓子は大事だ」
 サイファも真剣な顔で頷き同意する。勤労学生故に苦労している身として、玄人として、パーティの主役ともいえる食べ物が食べられる事なく駄目になるなど許せない。
「しっかし青い魔女は出てこなかったな。ナンパ失敗っつーやつ?」
「そうみたいね。私達の演技を見せられなかったのは、残念かも」
 少しだけ痛んだ所をヒールし、周囲を見てからりと笑うキソラと、ふんわり微笑むうたかた。パンプキョンシーの主は見られなかったが、その為にと考えに考え付くし、皆と作り上げたものはとにかく面白かった。
「なぁにが魔女だっつのー、あっつ」
 殺気を収束させたサイガが、ぽいっとローブを脱ぎ捨て身軽になる。黒い衣装は、演技中に演出として使ったヒールと合わせ、幻想さを増した芝生にふわりと落ちた。
「っま、お陰様でトリックは腹一杯。明日のトリートはさぞ美味いんじゃねぇの。……まぁまぁイケんなコレ」
「えっマジ? オレも食いたい。目一杯楽しんできっちり片したから、腹減って。……ん、イケるイケる」
 キソラも魔法陣どらやきを『ひょいぱくり』。そんな男達の横で、フィーはテーブルに並ぶ菓子の群れを――会場を照らす光を見て笑う。来た時と変わらない彩りが、ちゃあんとある。
「良かった。全部、ちゃんと護れたね」
「……ん、はっぴー、……はろ、うぃん」
 こくり頷いた涙の腕の中、優雅に振る舞っていたスノーベルが『素』に戻り、みゃあと鳴く。その周りを、一緒に盾印のサーヴァントとして頑張っていたポムがパタパタ飛び回っている。
 深々見も緩く『いぇー』と小さく拳を上げ、その目は謎味と書かれた淡い虹色パウンドケーキへ。味を知る人がいるとすれば。
「避難してもらった人達、呼びに行こうか」
 人々が戻れば、イベント会場は始めの時以上の盛り上がり。何せイベントを守り抜いた英雄と一緒なのだから、人々の笑顔はどうしたってとびきりのものになる。
「ハロウィンの魔女により、宴は護られた……さあ、楽しい夜を!」
「イエーーーイ!!」
 フィーが音楽を流せば、若者は菓子を片手に元気に弾け、大人も節度を保ちつつ弾けていく。たまに、小さな住人が悪いキョンシーにお菓子を取られないかと確認しに来るけれど。
「安心して、怖い魔女はもう居なくなりました」
 ――え? まだここにいる?
「ふふ、そうかもね」
 魔女うたかたが、悪戯な微笑みを浮かべるだけ。
 さあさ楽しみましょう。
 2017年の、摩訶不思議な夜を――!

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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