三色魔女のハロウィン~荒ぶ色

作者:ヒサ

 カボチャを模した暖色の照明、デフォルメしたゴーストの飾りをあしらったガーランド、カラースプレーやらナッツやらを満載したカラフルな菓子。この夜だからこその特別な品々が夜のモールを彩っていた。
 ライトアップされた噴水を中央に据えた中庭に面した飲食店は、期間限定の軽食や飲料の宣伝をあちこちに掲示し、翼を広げた蝙蝠をモチーフとした装飾を纏う店員達が笑顔を振りまく。仮装姿でお越しのお客様にはワンドリンクサービスなどと呼び込む声、夜が更ける前には帰るよと子供の手を引く親子連れ、どの店から行こうかと案内図が印刷されたリーフレットを広げる女性グループ、テーブル一杯に広げた焼き菓子を食べさせ合うウィッチと着ぐるみの黒猫、相席良いですかと交流を試みる初対面と思しきお化け達。
 アルコールは無いけれど菓子ならば大量に供される、ハロウィンの名目で前夜から開かれた宴。穏やかなれど熱を孕むその光景に、青い魔女が目を留めた。
「あれならば、目当ての魔女をも誘き出せることでしょう」
 彼女は引き連れていた量産型屍隷兵──三体の『パンプキョンシー』を顧みる。
「あの催しを襲撃なさい。そして、ハロウィンの力を持つ魔女を呼び寄せるのです」
 命じ、そうして彼女は小さくごちる。
「必ずや魔女の力を……青の私こそが超越の魔女に。『ジグラットゼクス』の皆さまのため」

 今年もまたドリームイーター達がハロウィンの力を求めて動くようだ。篠前・仁那(白霞紅玉ヘリオライダー・en0053)は、競い合う三体の魔女がハロウィンの魔力を求めている旨をケルベロス達へ伝えた。
「彼女達は、屍隷兵を使って各地のイベントを襲撃するようなの。それで、あなた達には、そのうちの一件に対処して欲しい」
 仁那が導く先は、青の魔女の配下に依る襲撃が行われる夜のショッピングモール、そのイベント会場である中庭。まずは三体の屍隷兵を撃退し、イベント及び人々への被害を抑えて貰いたい。襲撃の少し前に、周囲の一般人同様の来客を装い現場で待ち伏せするのが良いだろうとヘリオライダーは言った。
「彼女達の目的は、ハロウィンの魔力を持つ魔女を探し出して力を奪う事、らしいので、あなた達がそうであると思わせられれば、被害を広げずに済むと思う」
 ハロウィンの雰囲気を大切にしていれば良いのだろうか、件の魔女達にとっては目当ての魔力を有している様子であれば女性に限らないのだろうか、などと仁那は首を捻っていたが──突き詰めればケルベロス達の工夫と演出次第となろう。
 そうして上手く屍隷兵達をあしらえれば、その様子を目にした魔女を誘き出せるかもしれない。青の魔女──『チオニー』にとって魅力的な力の持ち主(達)が現場に居るのだと知らしめる事が出来たなら、彼女を呼び寄せ倒す事も不可能では無いだろう。
「屍隷兵達は、屍隷兵としては多少強いめの個体のようだけれど、あなた達ならば大丈夫だと思うわ。あなた達が敵の注意を惹いてくれれば、周りのひと達も巻き込まれる前に逃げられるでしょうし……テーブルだらけだから、戦うのには少し不便かもしれないけれど」
 だからこそ人々も避難し易い。上手く事を運べたならば、彼らの身の安全に関してはケルベロス達が手を割かずとも問題無かろう。
「それより、もしも魔女を呼び寄せられたなら、連戦になるから……試すのなら、十分に備えておいて貰えるかしら」
 生憎魔女の能力に関しての情報は掴めていないのだが、とヘリオライダーは肩を落とした。
 だがそれでも、出て来る敵を全て退ければ人々を護れる。そしてそれが出来るのはケルベロス達だけ。
「負担ばかりを申し訳ないのだけれど、力を貸してちょうだい。……それで、無事に戻って来て貰えるとわたしは嬉しいわ」


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)
罪咎・憂女(憂う者・e03355)
丹羽・秀久(水が如し・e04266)
四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)

■リプレイ


 作戦の都合上、予め主催側に話を通しておけたらと彼らは考えた。
 が。忙しく立ち働くスタッフ達曰く、責任者の類もまたイベントの進行と指揮の為にてんてこ舞い。ゆえにケルベロス達は、根回しは断念すべきとの結論に達した。イベントを妨げるわけには行かぬし、元よりあまり時間を掛けられない。かと言って末端から伝言を頼めば混乱の元となろう。
「皆様が楽しめなくなってしまってはなりませんものね……」
 シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)が、机上の整頓を終えて休めた手を頬へ遣る。彼女らが確保したテーブルは、情報と共に入手する事となった飲食物等で埋め尽くされていた。
「品質管理されているものであれば、一般客の持ち込みや配布も構わないそうです」
「子供に配る時は特に、アレルギーに気をつけてやって欲しいそうだ」
 初めで躓いたとはいえ目的は成せようとシルク・アディエスト(巡る命・e00636)が微笑み、携えた荷の中身を整理していたシヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が補足を添えた。彼女らは周辺の警戒がてら菓子を配るつもりだった。
「じゃあこれ、少し持って行って貰っても良いかな?」
 一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)が机上から、密閉された菓子の容器の幾つかを取り上げ手渡す。彼女は元々多少飲み食いしつつ待機する予定でいたが、運び込まれた諸々はその許容量を大きく超えていた。
「僕達はあまり離れ過ぎないようにしたいところですが……」
 辺りを見渡した藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)が小さく唸る。敵を惹き付ける為には纏まって行動して目立つ方が良かろうが、人々が危険に晒される可能性がゼロでは無い事を思えば固まり過ぎているのも危険。
 加えて女性陣は、ともすれば人波に呑まれかねない。声すら届かぬ範囲には行かぬよう、単独行動にはならぬよう、と配慮するのがせいぜいか。彼らはひとまず魔女役と従僕役のペアを作り散らばった。

「トリックオアトリート?」
 動き易さと華やかさを両立した派手な衣装に先の尖った魔女の帽子や靴等を合わせた出で立ちのシルクが人々へ声を掛けて回る。
「わあ、可愛いですね!」
「お菓子、良いですか?」
「ええ」
「どうぞ」
 魔女が宙へ上げた菓子を、大きな南瓜頭のデフォルメ感漂う使い魔に扮した丹羽・秀久(水が如し・e04266)が受け止め差し出すと拍手が起きた。
「悪戯だとどうなるの?」
 好奇心に目を輝かせる少年には、目にも留まらぬ速さで手を振った魔女が、編んだ蔓草に花を飾った冠を贈り、驚きと喜びの声を引き出す。
「楽しんで頂けたなら何よりです。良きハロウィンを!」
 可愛らしい魔女と南瓜頭の取り合わせは瞬く間に噂の的となり、彼らの周りには人だかりが出来つつあった。
「ふふ、大人気でらっしゃいますわね」
「あの様子では足りなくなるかもしれませんねえ」
 少し離れた位置でそれを見ていた、黒い猫耳と尾を身につけたシグリッドが微笑む。黒衣を纏い肩に青い駒鳥を乗せた景臣が更に遠くへ目を配っていると、視界の外から声を掛けられた。
「あの、お写真撮らせて貰えませんか?」
 近い声に視線を落とせば、シグリッドと同じ年頃の少女達が寄って来ていた。仮装客達の写真を集めているらしい。
「ええ、どうぞ」
 なので快諾する。と、何故か驚かれた。
「い、イケボさんだった」
「てっきりモデルのお姉さんかと……あ、すみませんっ」
「解りますわ。ご主人様は素敵でございますものニャー」
 つややかな黒髪を結い上げた魔女の中性的な姿に騒ぐ少女らへシグリッドが頷く。折角黒猫なのでおどけて見せた。と、仕込んだ飴の効果で血の色に染まった舌が覗きまた小さく騒ぎが起こる。
「え、見せて見せて!」
「わあ凄い、面白ーい」
 少女達のはしゃぐ様がまた別の人々を呼ぶ。穏和に目を細め脱線を見逃した景臣は、新たに寄って来た者達に対応しつつ警戒を続ける事にした。

「魔女だ」
「悪そう?」
「赤いお姉さんは騎士さまっぽいけど」
「でも南瓜……」
 物陰からこちらを窺う子供達の声に、罪咎・憂女(憂う者・e03355)は南瓜マスクの下で苦笑した。きらきらしい紅衣を纏うリアルな南瓜頭を連れた、毒々しい液体(但し無臭)の滴る携帯用釜を担ぎ黒ローブに身を包んだ古風な老(婆の面を被った)魔女という二人組は本格的に過ぎた様子。
「魔女様、子供達がついて来ていますが……声を掛けた方が良いでしょうか」
 暫し悩んだ南瓜頭は、前を行く魔女を恭しく呼び止めた。
「確かにこのままでは危険だな。頼めるだろうか」
 頷いたシヴィルは、必要になった時の為にと菓子を幾らか預けて南瓜頭を送り出す。南瓜が来たー、魔女の手先かー、等と彼女らの扱いを決めかねている様子の子供らが騒いでいる前へ辿り着いた憂女は屈み。
「こんばんは」
「え、あ……こんばん、は?」
 南瓜が普通の挨拶を寄越して来た事に驚いたか、彼らはあっさり静まった。二、三言葉を交わして菓子を与えると、返礼にと幼い両手一杯の飴山を差し出される。
「……それは、良ければ我が主へ」
 片手の塞がった憂女が受け取るのは厳しい為、シヴィルを示した。その頃には子供達の認識も、彼女らは善い魔女と従者らしいと落ち着いたらしく、無邪気に指示に従ったが。
「──魔女さまっておばあちゃんじゃなかったの!?」
 新たな騒ぎが起こる。怖格好良い仮装の中身は優しそうなお姉さん二人組であるとのギャップの威力か、彼女らは子供達に大変懐かれる事となった。
「団長達もお菓子足りなくなったりとか無いかなあ」
「なんなら私、届けて来るぞー?」
 飲み物を片手に、仮拠点としたテーブルの周辺を見回っていたアヤメを見上げる四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)は、椅子の上で行儀良く座っていた。但し着ぐるみの狼姿だったので、『お座り』の命令を受けた犬のような格好で。
「混んでるから四つ足は無理そうだよ?」
「うーん、それだと狼っぽく無くなりそうだなー」
 『らしさ』は大切だとリーフは首を捻る。傍へ戻って来たアヤメも三角帽子を被ったまま、ローブの袖を押さえて机上へ手を伸ばす。塩気が欲しくなり、小さなパイを盛った皿から挽肉入りを発掘した。二人がかりでも、ここの食料を消費しきるにはまだ掛かりそうだった。
「けどこの分なら、ボク達は店員さん達のフォローをするくらいで済みそうかな?」
 ウイングキャットが空から見ている為もあり警戒態勢に問題は無い。仲間達が人を集めていることで、身軽な彼女達ならばスムーズに動けそうだった。


 そして。
「魔女様方ー! 敵が来ましたぞー!」
 声を張り上げたリーフがチビを連れ、敵の方へと駆け出した。近くでそれを聞いたアヤメは即座に状況を確認する。シルクが人混みを抜けて来、秀久が周囲に警告を叫ぶ。これならばシヴィル達もすぐに対応出来よう。戦場へ向かいながら駒鳥を杖へと変えた景臣は前方へ赤い蝶を放ち、シグリッドが近くのスタッフへ対応を依頼する。
「これは本当に危ないから、ボク達ケルベロスに任せて離れて!」
 アヤメもまた周囲の者達に指示を飛ばし合流を目指す。直前までの間、ケルベロス達があまりにも人を惹き付けた為か、人々はこれも何かの催しかと興味を示しており危機感に欠けていた──恐慌状態よりは良いのかもしれないが。

 屍隷兵達は笑い声のようなものを発しながら、手近にあった会場の装飾に手を出していた。そのうちに電飾が断線しその一帯が暗くなる。辿り着いたケルベロス達は事故になる前にと、戸惑いゆえか状況への理解が追いついていなかったか付近に留まっていた人々へ避難を促した。
「折角のハロウィンを台無しにさせるわけには参りません」
 紅蝶達が薄闇を染め護りを形作る。全くです、と憤慨するシルクが棒付飴を模した砲身を構えた。
「我が主の命だ、排除させて頂く」
 魔女の僕としての台詞と共に憂女が刀を振るう。近くに捉えた一体が、悲鳴と思しき声をあげた。
「? ~~!?」
「────!」
 刃を向けられてようやく屍隷兵達は彼らを敵と判じたか、不明瞭な声を。敵意ばかりでは無く喜ぶような色も見えたのは、目当ての魔女達を釣れたと考えたか。
 三体は一斉にケルベロス達へ飛び掛かって来た。高く跳んだ一体の蹴りは前衛を越えて憂女を鋭く襲い、素早く踏み込んだ一体の拳はシルクの態勢を崩し痛みを与え、これ以上はと三体目の前に立ちはだかった景臣の体はしかしこれ幸いとばかりに掴まれ連撃を喰らう。
「──これはこれは」
 防御の上からなお大きな衝撃を受けたものの、景臣は堪えた様子を示す事無く微笑む。この相手は護りを度外視し攻撃に注力するタイプと見えた。
 敵達は互いに距離を取り散開しており、戦法にもそれぞれ違った個性があるようだ。援護の雷を受けたシルクはそれでも拭いきれぬ後遺ゆえに仲間達へ警戒を促す。憂女を襲った個体は狙いの正確さを武器にしている様子。
「注意してお護りしないといけないって事ですね」
「やられる前にやるのが良いかなー」
 打たれ弱い後衛が襲われれば被害が大きくなり易い。集中攻撃を受けるような事があれば前中衛もただでは済まぬだろう。秀久がドローンを展開し、敵へ蹴りを見舞ったリーフは間合いを調節しつつ威嚇する。
「──マジカルチェンジ完了、ハロウィンセイバー見参! 厄介な敵とて私達ならば負けはしないだろう。成敗してくれる!」
 ローブその他を脱ぎ捨てたシヴィルの衣装が明色の少女らしいものに変わる。特製ドローンに仕込んだ花火の光を浴びての変身ぶりに、遠巻きに様子を窺っていた人々が声をあげた。
「魔女さま格好いいー!」
「ケルベロスさん達、頑張ってー!」
 観戦と応援をする気らしい彼らへ危険が及ぶ事は、此方が余程劣勢にでもならぬ限りは無さそうではあるが。
「早く片付けないとだね」
「治癒はお任せ下さいまし、深手になどさせませんわ、ニャ!」
 ここまでで彼らが得た手応えから判断した限りでは、不手際の無いよう立ち回る事は十分に可能。気合いを込めて拳を握るシグリッドが黒猫の演技を思い出す程度の余裕はあった。頑張ろうね、とアヤメが皆へ明るい笑顔を向けた。


 手近な個体からの各個撃破を目指し、ケルベロス達は狙いを集中させる。盾役を多く配した事は負荷の分散に繋がり、攻撃に回る者達はそちらだけに注力する事が許された。
 秀久の蹴りを受けてたたらを踏んだ敵を砲撃が迎え撃ち、高熱と閃光に依り一体目を排した。次いで景臣が中衛を狙い杖を振るう。炎弾が夜を裂き、提げた小さな南瓜の照明がふわり揺れ。追って駆けた憂女が操る熱は彼女が纏う緋色をより鮮やかに照らし上げ、敵へと墜ちる流星の如く。
「次はあちらか、承知した。頼むぞアルジャーノン!」
 仲間の動きに合わせシヴィルは頭上に跳ねたファミリアへ命じた。突き刺さる魔弾に悲鳴をあげた敵は、身に残る熱の侵食に怒声とも苦鳴ともつかぬ音を撒きながら反撃に動く。だが、真っ直ぐ彼女へ来るのでは無く、彼女が護るべく気を配っていた後衛を狙い跳躍した為、応じて秀久が地を蹴った。
 届く前に防ぎ、衝撃に彼は眉をひそめたけれど、案じる仲間へ平気だと返す。治癒が遅れる事も無く、彼らは継続して各々の役目を果たして行く。
 その中で、敵の僅かな隙すらも活かし得る路を見出したアヤメは快活な色を一時潜め、空の手をくるり翻す。
「──私の手は、花を散らす氷雨──」
 詠唱と共に淡く光の粒が舞う。電飾を灯したように辺りを照らし、その中を少女が跳んだ。高く闇に紛れれば、常人の目には行き先へと瞬時に転移したかのよう。観客達が感嘆の声を洩らすのを遠く聞く。
 敵を強襲し、連打に繋げる。籠手を嵌めた拳を構え突撃するリーフと位置を入れ替えたその隙間に、雷壁が広がる様を見る頃、未だ幼さの残る『魔女』の顔に再び笑みが咲いた。
「猫の目よりも鮮やかに……堅牢なる光にて、皆様をお護り致しますニャ」
 上品に微笑んでシグリッドは『主人』の杖を真似るよう小さく指を振る。最後に口元へ着地させて彼女は一つウインクを。言葉の通りに堅く織られた護りが仲間達を冒す呪詛を消し飛ばす。
「今の私は狼だからなー、引き裂いてやるんだぞー!」
 敵の間近で振るわれたリーフの腕が獲物を打ち据え、チビが操る術環が立て続けに魔法を掛ける。抗うべく藻掻く敵へしかしそれを許さず景臣は、伸べた腕を伝い出でる黒流体を槍と成す。
 そうして断末魔を聞き流し、彼は周囲へ目を走らせる。現状、敵にも人々にも異常は見当たらず、あとは射手を仕留めるだけ。突っ込んで来たその相手へ矛を納めた流体で応じた。
 同じく辺りを警戒する憂女は万一に備えて退がり、標的を狙い定める事に集中する。たとえ何事も無く済むのだとしても、こうして自陣の殲滅力を増す事は、この場に少しでも早く安寧を招く事に繋がるのだから。


 そうして、それなりの時間を要したものの危ない場面はほぼ無いままに。
 夜の色をした装甲靴が炎の尾を引いて、石畳を打ち鳴らす音が終わりを報せた。ケルベロス達に依り屍隷兵は殲滅され、会場には人々の歓声が溢れる。
 とはいえケルベロス達にとっては未だ油断ならぬ状況で、彼らは慎重に辺りを窺う。その空気を察してか、人々もまたほどなく静まり返る。
 暫し沈黙が場を支配したが、ケルベロス達の目にも気になる点は特に無く。
「他の場所へ向かった方々が魔女の誘導に成功した、と見て良さそうでしょうか」
「であればここはもう安全、という事に?」
 これ以上何事も起こらぬならば、人々は緊張から解放される。ケルベロス達の戦いぶりを見ていた為だろう、客達は恐怖や疲労よりも興奮と喜びの色濃い様子ではあったが、それでも異常事態の収束は早い方が良い。であればと彼らはひとまず安堵する。
 その後、やはり異変は起きないようだと判断してケルベロス達は人々へ、終わったと声を掛けてやる。と、再びの歓声があがった。
 傷と周囲の手当にあたるケルベロス達は、彼らに乞われてイベント再開の号令を掛ける事となった。それにより活気を取り戻した会場には、念の為の見回りも兼ねてもう暫く滞在する事にする。すれ違う人らに労われたり礼を言われたりしながらも、今度は純粋に客として楽しむ事が許されそうで。
「折角ですし、良ければ皆で一枚どうですか?」
 人前に出るにあたって仮装姿を整え直した仲間達とそれを囲む人々へ、カメラを向けて秀久が誘う。と、お兄さんも映らないと駄目だよ、と笑い交じりに咎める声と共に三脚が供された。

作者:ヒサ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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