10月30日、夜。
あちらこちらにジャック・オー・ランタンが並び、鮮やかな装飾が施されて――ハロウィン一色に染まったその街では、ハロウィンの前日から賑やかなパーティーが開催されていた。
思い思いの仮装に身を包み、互いに菓子を贈り合う人々。子供達は大きな南瓜のバスケットを抱えて駆け回り、大人達はそんな彼らの様子を微笑ましげに見やりつつ、手を取り合って踊って。
「――ハロウィンの力を感知しました」
しかし、そんな楽しい時間を過ごす人々を、影から見つめる少女の姿があった。
「あの集団を襲撃すれば、ハロウィンの魔力を持つ魔女と遭遇出来るかもしれません」
青色の少女は祭りに興じる人々を指差し、従えていたハロウィンカラーの怪物――キョンシー達に、一つの命令を与える。
「暴れて、暴れて、ハロウィンの力を持つ魔女を誘き出しなさい。あなた達、パンプキョンシーの力を見せてみるのです」
命じられるまま、人々を襲うべく影から躍り出るパンプキョンシー達。
異形の闖入者達に場は一瞬にして騒然となり、逃げ惑う人々の悲鳴で溢れ返った。
暴れ回るキョンシー達の姿を見つめながら、少女――青の半人前魔女・チオニーは呟く。
「赤や緑では、超越の魔女になっても『ジグラットゼクス』の皆さまのお役に立てるか微妙です。だから……」
――私こそが超越の力を手に入れ、超越の魔女にならなければならないのです。
●夢煌めくマジカル・ナイト
ハロウィンの力を求め、ドリームイーターの魔女達が動き出したようだと、トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)はケルベロス達に告げる。
「皆にはその中の一つ、赤と青と緑の、三人の魔女が起こす事件をお願いしたいんだ」
三色の魔女達の目的は、ハロウィンの力を持つ魔女を探し出し、その力を奪うこと。
そのために量産していた屍隷兵・パンプキョンシーを使い、ハロウィンを楽しむ人々を襲撃させることで、どうやら目的の魔女が現れると考えているらしい。
ハロウィンの力を持つ魔女がどういったものかは不明だが、ハロウィンを楽しむ人々が屍隷兵に襲われるのを見過ごす訳にはいかないだろう。
そこで、この屍隷兵を倒し、ハロウィンを楽しむ人々を助けてほしい――というのが、今回の依頼である。
「パンプキョンシーの目的は『魔女を探し出す』ことみたいなんだ。だから、皆が『ハロウィンの魔女』であるように見せかけることが出来れば、パンプキョンシー達は皆に襲い掛かってくるはずだよ」
これを利用すれば、一般人に被害を出さずに屍隷兵を撃破することも難しくはない。
「あと、皆の戦いぶりによっては、この三色の魔女を誘き出すことが出来るかもしれない」
戦いの様子を見た三色の魔女が、魔女に扮して戦うケルベロスをハロウィンの力を持つ魔女だと判断すれば、その力を奪おうと襲い掛かってくるかもしれないのだ。
よって、もし三色の魔女が現れた場合は、可能ならば魔女も撃破してほしい――そう、トキサは続けた。
パンプキョンシーは全部で四体。その攻撃方法は屍隷兵らしく、殴ったり蹴ったりといった単純なもので、個々の強さも然程ではない。ケルベロス達の力があれば、難なく倒すことが出来るはずだ。
そして、肝心の『三色の魔女』については――その能力は判明していないのだと、トキサは申し訳なさそうに告げる。だが、強敵であることは間違いないだろう。
「皆で無事にハロウィンの当日を迎えられるよう、どうか、よろしくね」
そう言って説明を終えると、トキサはヘリオンの操縦席へと向かった。
参加者 | |
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ロゼ・アウランジェ(ローゼンディーヴァの時謳い・e00275) |
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033) |
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707) |
チャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596) |
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116) |
遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166) |
ルペッタ・ルーネル(花さがし・e11652) |
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083) |
束の間の夢に興じていた人々の元に現れた、招かれざる客。
パンプキョンシー達が暴れ始めると瞬く間に辺りは騒然とし、逃げ惑う人々で溢れ返った。
だが、そんな人々の間を縫うように、歩み出る者の姿があった。
「恐れることはありません、魔力なき者達よ」
三角帽子にマントを羽織り、手には杖、そして所々に南瓜やキャンディの飾りを散りばめたウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)の姿はまさに魔女と呼んでも差し支えのないもの。
あまりにも堂々とした佇まいに、パンプキョンシーだけでなく、パニック状態になっていた人々も惹きつけられて。
「我こそはケルベロスにしてハロウィンの魔女。ハロウィンの魔力を得て、今宵の私は無敵です」
そして、どこからともなく取り出されたお菓子や煌めく魔石が観衆達の元に降り注ぐ中、ウィッカは高らかに宣言した。
「私に従う者達よ、そして魔力なき者達よ。宴の続きを望むのならば、私の声に応えなさい。……トリック・オア――?」
――トリート!!
人々の歓声が沸き起こる中、他のケルベロス達が一斉に躍り出る。
「甘いお菓子にちょっぴり辛い悪戯に、笑って踊って楽しい魔法の夜! ハロウィンの始まりです!」
「皆さん、大丈夫! 楽しいハロウィンのお祭りを守ってくれる本物の大魔女さまが、偽の魔女の手下なんて蹴散らしちゃいます♪」
和風のドレスに雪を散りばめ、雪乙女に扮したロゼ・アウランジェ(ローゼンディーヴァの時謳い・e00275)がフェスティバルオーラを放ち、お揃いの衣装に身を包んだ遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)が凛とした佇まいで呼び掛けると、歓声はより大きく、ケルベロス達の追い風となる。
「ここには沢山獲物がいるね~。どの魂が、魔女様に捧げるものに相応しいのかな~?」
頭に小さな南瓜の仮面を飾り、ミニスカート丈の黒いローブに身を包んだその姿は、死神をモチーフに。葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)は笑顔で大きな鎌――ではなく、斧をぶんぶん振り回す。
「ウィッカ様の活躍、しっかり見ていてくださいね!」
見習い魔女のルペッタ・ルーネル(花さがし・e11652)は、ポシェットから南瓜や蝙蝠の飴をえいっとばら撒きながら笑顔も振り撒いて。
「ハロウィンにに紛れて悪い魔女が悪さを企んでるみたいだから、わたしたちがみんなのハロウィンを守るよ!」
可愛らしいゴシックドレスの吸血姫、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)も、満面の笑みを浮かべながらルペッタと共にキープアウトテープで戦場を囲う。
「今宵はハロウィン! 大いなる魔女に導かれ、我は蘇らん!」
演出の一つでもあるブレイブマインのカラフルな彩りと共に、声を張り上げたヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)は、地獄の炎を纏う炎の騎士としてウィッカの前で一度跪き、それから勇ましく剣を構えた。
「これより少々余興が始まりますゆえ、安全な場所にて御覧あれ」
黒のタキシードにマント、そして顔の上半分を覆う仮面――チャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)は、さながらオペラ座に棲む怪人のような雰囲気と共に人々へ呼び掛けると、ウィッカの元へ向かい、恭しく一礼をして告げた。
「お嬢様、準備は滞りなく」
「では、これよりパーティーを始めましょう。魔力なき者は観客として盛り上げるのです」
ウィッカは虚空に指先を伸ばし、素早く魔法陣を描く。
それは、新たな宴の始まりの合図。
「紅蓮の焔、連なりて爆裂せよ!」
すると、魔法陣から生まれた超高温の焔弾が、パンプキョンシー達の只中で次々に爆ぜた。
ハロウィンの魔女とその配下達という設定の元、ケルベロス達は観客達の声援にお菓子を投げるなどして応えながらパンプキョンシーを倒していく。
「錆び付いた剣を抜き放ち、埃に塗れた盾を掲げん。――いざ、死者の夜明けは来たれり!」
ウィッカを護るように立ち回りつつ、地獄の炎を纏わせた剣を叩き付けるヴィットリオ。ハロウィンらしく飾りつけられたライドキャリバーのディートも、内蔵されたガトリング砲で敵群を薙ぎ払う。
「黄昏より来たる。黒の帳――」
イズナが差し出した手のひらから黒い光を帯びた蝙蝠の群れが飛び立ち、パンプキョンシーをその命ごと覆い尽くす。
ノートを広げ、そこに描かれたオレンジや赤の花をなぞるルペッタ。
「花よ舞い、どうかみんなに伝えて下さい――」
するとルペッタの胸の内に灯るあたたかな想いを抱き、花弁が仲間達の元に降り注いだ。お揃いの花飾りをつけた魔女帽子を被る翼猫のリルも、尾を飾る花輪を飛ばし彩りを添えて。
時折即興の歌を織り交ぜながら、光と氷のプリズムを幻想的な虹色のポルカに乗せて、ロゼと鞠緒は甘く優しく澄んだ歌声を響かせる。
ロゼの歌声が極光の癒しを降らせれば、鞠緒の歌声で氷から生まれた南瓜や蝙蝠の人形達が軽やかなステップを刻んで。テレビウムのへメラと翼猫のヴェクサシオンもそれぞれ南瓜の雪だるまと雪猫に化けて、戦場を愛らしく駆け回る。
「あなた達の魂を捧げたら、魔女様も喜んでくれるかな~?」
素早く懐へ潜り込み、静夏は炎を纏った左の拳を叩き込む。同時に上がった大輪の花火が夜空に咲くのに合わせチャールストンが極限まで高めた精神を解き放つと、パンプキョンシーの身体も花火のように爆ぜた。
「お嬢様の鮮やかな魔法に、招かれざる客人達もすっかり虜となっているようで。お嬢様こそハロウィンの魔女に、いえ、――超越の魔女に相応しいでしょう」
チャールストンが敢えて声を大きくしたのは、この場にいないもう一人の『主役』に聞かせるため。
「もし仮にこの場に他の魔女を名乗る輩が出たとしても、到底お嬢様には敵いますまい」
さあ、と最後の一体を示しながら後方に下がるチャールストンにウィッカは頷き、ファミリアロッドを元の蝙蝠へと変えた。
「悪しき者達よ、私の力を思い知りなさい」
魔女の力を受け取った蝙蝠が、流れる星のように一直線に最後の一体を射ち貫いて消滅させる。
「さすがです、ウィッカ様!」
ルペッタが笑顔で楽しげな声を上げたその時。
不意に冬を思わせる凍てつく風が吹いたかと思うと、そこに一人の少女が佇んでいた。
「現れましたね、青の半人前魔女・チオニー」
少女の纏う色彩は、ハロウィンのあたたかなそれとはまるで正反対の『青』。
確かめるように呟くウィッカを見つめ、チオニーは唇を開いた。
「あなたがハロウィンの魔女ですね。その力、赤と緑に代わりこのチオニーが頂きます」
「……いいえ、倒されるのはアナタですよ」
彼女への礼儀として仮面を外し、チャールストンが微笑むと、
「私達、とっても強いから……覚悟してね?」
静夏がにっこりと笑って斧を構え、そしてヴィットリオは――、
(「あれ? 魔女出てきたし演技はもうやめていいのかな? ……いいや、せっかくだし続けよっと」)
などと思いつつ、改めて剣を構え直した。
「半人前風情に、ハロウィンの魔女は務まらんわ!!」
「そこの魔女の力を奪い、私は一人前になるのです……!」
手に持つ氷色の杖を構えるチオニーを見て、ロゼと鞠緒が観客達へ呼び掛ける。
「皆さん、これより先の戦いは、危険を伴います!」
「ですので、ここからすぐに離れて下さい!」
同時に、ウィッカが人々を遠ざける『気』を放った。
「大丈夫です、このハロウィンの素敵なお祭りは、わたしたちが必ず守りますから……!」
この場を離れてゆく人々へ、ルペッタが想いを託して。
「そうだよ、せっかくのお祭りなんだもん。早くやっつけて、続きを楽しもう!」
「――邪魔をするのなら、あなた達も纏めて倒して差し上げます」
無邪気な笑顔を見せるイズナに、チオニーは手にした杖を差し向け何かを小さく呟いた。すると氷の礫を伴う風が吹き荒れて後衛を襲い、すかさず盾を担う者達が己の身を投じる。
「我は盾なり! ……って、流石にもういいか、――ディート!」
普段の口調に戻りつつウィッカを庇ったヴィットリオは炎を纏うディートを駆ってチオニーへ迫り、自らも地獄の炎を絡めた剣を叩き付けた。
「さすがに強いですね……でも、わたしたちは負けませんっ」
刺すような痛みを覚えつつ、けれどリルが運ぶ澄んだ風にルペッタは一つ息をつき。力強くチオニーの元へ踏み込むと、大地をも断ち割るような強烈な一撃を見舞う。
「大丈夫、皆さんは私が守ります!」
ロゼは明るく笑って、白銀のオウガメタル――エストレージャの粒子の煌めきを前衛に重ねた。ロゼの想いごと届けるようにヘメラも心温まる動画を流して。
「ヴェクさんも、お願いしますね」
鞠緒の声にヴェクサシオンが翼を羽ばたかせて清涼な風を呼び、その風に乗って鞠緒は理力を籠めた星のオーラを刻む。
「いくよ~! ルーンディバイド!」
掛け声と共に、金色のルーンが煌めく巨大な斧を振り下ろす静夏。
「わたしたちの本気、見せてあげるねっ!」
守りを剥がされたチオニーへ、畳み掛けるようにイズナが雷光纏う槍の穂先でチオニーを貫き、更にウィッカが放った蝙蝠のファミリアがジグザグの軌跡を描いて戒めを増幅させた。
身を強張らせたチオニーの杖を、目にも留まらぬ速さで放たれた弾丸が砕く。
「それにしてもその外見と纏う雰囲気、そして超越の魔女を目指す強い意志。……実に好みです」
「……私は、貴方達のような人は嫌いですが」
引き金に指を掛けたまま戯れに紡ぐチャールストンへ、虚空から氷の剣を飛ばしながらチオニーは答えた。
チャールストンの言葉は紛れもなく本心からのものだったが、自分達がケルベロスであり、『彼女』がデウスエクスである以上、その道は決して交わることはなく、ゆえに導き出される結末は一つしかない。
無論、そんなことはわかりきっている。
だからこそ、今は『今』として、この饗宴あるいは共演を楽しむのも――きっと悪くはないだろう。
「皆さん、攻撃が来ます! 気をつけてください……!」
手にした本を開くチオニーを見てロゼが注意を促した直後、現れた巨大な雪だるまが前衛を押し潰そうと降ってきた。
「……っ、さすがにこれは痛いな、でも!」
二人分のダメージを一つの身体で受けてヴィットリオは顔を顰めるも、全身を襲う鈍い痺れをものともせずに踏み込んでいく。
この身を包む、失くした心の残滓の焔。それを一点に集め鍛え抜かれた技量をもって繰り出せば、チオニーの表情も苦痛に歪んで。
「ほら、こっちだよ♪」
「――余所見はなさいませんよう」
すぐさまイズナが螺旋を籠めた掌で触れて衝撃を送り、死角から迫ったチャールストンが音速の拳を叩き込んで吹き飛ばす。
「さぁ、踊りましょう! 光の織り成す虹の舞台をご覧あれ!」
癒し手として惜しみなく、美しい歌声を響かせるロゼ。光と虹の織り成す幻想的なポルカがヴィットリオの傷を癒し更なる守りの加護を齎せば、その旋律を辿るように鞠緒が魔力を籠めて送り出した白いハツカネズミがチオニーへと体当たりした。
やがて、幾度かの攻防の末に、ケルベロス達の猛攻とその身を蝕む数々の戒めに、支えを失くした人形のようにチオニーがその場に膝をつく。
「そろそろ頃合いでしょうか」
「……どうして、勝てないのですか、私は……」
呆然とするチオニーに、ウィッカは淡々と告げる。
「言い忘れていましたが、私達はケルベロスです。この意味がわかりますよね?」
「っ、ケルベロス……!?」
チオニーは、そこでようやく自身がこの場に誘き出されたことに気が付いたようだが、既に遅かった。
「夏より熱い炎の花よ、夜の空へと咲き誇れ!」
チオニーの懐へ入った静夏が、跳び上がりながら炎を纏った左拳で渾身のアッパーを繰り出す。
「……っ!」
強かに撃ち込まれる衝撃と同時に、再び夜空に咲く大輪の花火。鮮やかな色に目を瞠るチオニーの視界を、イズナが解き放った黒光の蝙蝠達が覆い隠した。
「あなたの夢は醒めないまま。もう、何も見えないでしょう?」
「いや、……嫌あっ……!」
黒の帳を払おうと必死に杖を振るチオニーだったが、最早、彼女の力は脅威ではなく。
「そんなに動くと疲れるでしょう。ですから少しは――」
休んでみるのも悪くないと思いますよと穏やかな声で告げたチャールストンが、少女の細い足を銃弾で打ち貫く。
「どうして、あなた達が……」
「――アナタがデウスエクスで、アタシたちがケルベロスだっただけのこと。……ハロウィンの魔女でも変えられない、運命の皮肉ですな」
足の先からモザイクが溶けるように少女の身体が解けていく。それでもまだ抵抗を止めないチオニーは、折れ掛けた杖を足掛かりにして立ち上がろうとして、己を貫く新たな衝撃に崩れ落ちた。
夜空に響く、涼やかな鳴き声。ルペッタが伸ばした手に、ファミリアのハチドリ、セフィが舞い戻る。
「ウィッカちゃん!」
ルペッタの呼ぶ声に頷き、歩み出るウィッカ。
「ハロウィンの、とはつきませんが、本物の魔女の力をお見せしましょう」
ウィッカはファミリアの蝙蝠を融合させ、半透明の幻影合成獣に変えて放った。
「――あ、……」
見るもおぞましい姿の獣に呑み込まれ、モザイクの煌めきが零れて消える。
それが、超越の魔女を目指した一人の半人前魔女の、最後だった。
戦いで傷ついた会場にヒールの光が灯り、幻想色の花が咲き綻ぶ。
退避していた人々も戻り、辺りは先程までよりも華やかな喧騒に包まれた。
「お菓子もまだ配り終わっていませんし、私達も続きを楽しんでいきませんか?」
「賛成です! 折角のパーティーですもの、楽しみませんと!」
「嬉しいです! わたし、日本のハロウィン、初めてなんです!」
ロゼの提案にはい、と手を挙げる鞠緒に、きらきらと瞳を輝かせるルペッタ。勿論、他の仲間達も頷いて。
「戦ってお腹もすいちゃったし、美味しいごはんはあるかな~?」
楽しげにきょろきょろと辺りを見回す静夏の視線の先では、早速子供達に囲まれるウィッカの姿が。
「いいですか、私がハロウィンの魔女であるということは秘密ですよ」
と、子供達の前ではあくまでもハロウィンの魔女を演じ切るウィッカであった。
「えへへ、みんなが楽しそうで、わたしたちも楽しくなるね♪」
「そうだね、……守ることが出来て、良かった」
イズナの言葉に頷き、溢れる人々の笑顔を見て、ヴィットリオも笑みを覗かせる。
喧騒を一人離れた所で見つめながら、チャールストンは無意識に煙草を取り出そうとして――手を引っ込めた。
「……本当に、皮肉ですな」
落とした言葉は、誰の耳にも届くことはなかったけれど。
今宵ばかりは煙草の小さな火ではなく、このハロウィンの煌びやかで幻想的な光を手向けの花に――。
作者:小鳥遊彩羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 0
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