三色魔女のハロウィン~赤の悪戯

作者:志羽

●三色魔女のハロウィン
 ハロウィンイベントが開催される通り。
 そこは今、橙や紫、黒といったハロウィンぽい色で包まれていた。
 そして、そこを通る人々もいつもとは違う。
 母親に手を引かれる小さな女の子はとんがり帽子にマント。そして星のステッキを振るう。小さな男の子は狼のような帽子をかぶってがおーと追いかけっこ。
 小さな子供だけでなく、大人もまた楽しげだ。
 本格的なハロウィンコスプレは恥ずかしいけれどマントを羽織るくらいならできなくない。悪ふざけのようにシーツを被ってお化けのふりもまた楽しい。
 そんな賑やかさを持った通りは、ハロウィン前の賑わいを見せていた。
 しかし今日はまだ前日だというのに、そういった姿の人たちは多い。
 それは何故かというと――トリックオアトリート!
 その声と共に周辺の店を回ればお菓子や、割引クーポンが貰える期間なのだとか。そしてハロウィン前日、当日はさらにおまけがつく。
 それは少しすたれた通りをにぎわせ様と考えた人々のイベントだった。

 そんな賑やかな様子を――近くのビルから見つめる魔女がひとり。
「おっ! 楽しそう! いいねいいね、ハロウィンの賑わいだね!」
 その魔女はここにしようと背後に控えたパンプキョンシーたちへ視線向ける。
「お前達が暴れれば、ハロウィンの魔力を持つ魔女がきっと現れる」
 おびき出す為に行っておいでと魔女は笑った。
 その力を奪えば、アタイは、超越の魔女になれるのだから――そう呟いて、赤の見習い魔女・フォティアは姿を消した。

●予知
「ハロウィンです」
 そして、ドリームイータ―の魔女達が動き出したみたいなのだと、夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へと告げた。
「皆にお願いしたいのは赤、青、緑の三人の魔女が起こしている事件なんだ」
 三人の魔女たちは、この時の為に量産していた屍隷兵、パンプキョンシーを使って、ハロウィンを楽しむ人々を襲撃するようなのだ。
 その目的はハロウィンの力を持つ魔女を探し出して、その力を奪う事。
 ハロウィンで盛り上がる人達を襲撃する事で、目的の魔女が現れると考えているようなのだとイチは続けた。
「ハロウィンの魔女、っていうのがどんなものなのかは分からないけど、このままだとハロウィンを楽しみにしてる人たちが襲われちゃうんだよね。それはもちろん放っておけない」
 ということで、襲撃される場所に向かい、敵を倒してほしいのだとイチは続けた。
「敵の、パンプキョンシーの目的は『魔女を探し出す』事なんだよね。だから、自分たちはハロウィンの魔女であるように見せかければ、一般の人たちを放っておいて皆に向かってくると思う」
 その点を上手に使えば、一般人に被害を出さず、撃破もしやすいだろうとイチは続けた。
 そして、戦いの様子を見た三色の魔女が、ハロウィンの魔力を持つ魔女であると判断すれば戦場に現れて力を奪おうとするかもしれないとイチは言う。
「もし、三色の魔女が現れたなら、可能なら撃破もしてほしいところ」
 そう言って、イチは周辺の状況を話し始めた。
 襲撃されるのは小さな通り。雑貨屋や可愛いカフェ。それから本屋や服屋などもあり商店街となっている。
 ハロウィンコスプレをして『トリックオアトリート!』と言うとどこの店でもお菓子をくれたりクーポンをくれたりというイベントをしているのだ。
 当然人もいるのだが、パンプキョンシーは通りの東側の入口から現れる。そのあたりにいれば、敵を抑えつつ、人々は西側に逃げてもらえるだろう。
「パンプキョンシーはそれほど強くはない相手だけど油断せずにね」
 折角のハロウィン。台無しにしないためにもよろしくとイチは言う。
「一般の人たちもだけど、皆もハロウィン楽しみたいもんね」
 だから、さくっと片付けてきてほしいとイチはケルベロス達を送り出した。


参加者
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)
ベーゼ・ベルレ(ツギハギ・e05609)
サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)
宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)
レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)
齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)
王・美子(首無し・e37906)

■リプレイ

●楽しいその日に
 ハロウィンイベントが開催される通りには仮装をした人々が大勢いた。
 この通りにある店のハロウィンキャンペーン。トリックオアトリートの声は愉しげに響いている。
 そして人々の中にケルベロス達もまた混ざっていた。
 それはハロウィンを脅かすものに対するためなのだけれども。
「折角のハロウィン、楽しんでいきましょーっ!!」
 今日は見習い魔女姿。シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は魔女のほうきに跨って笑っている。
 お菓子くれないといたずらしちゃうぞと子供達に笑いかけ、飴をプレゼントのサプライズ。
 この時間は楽しいのではあるのだが、本当に心の底からはまだそうなれない。
(「今年のハロウィンも、魔女たちが暴れまわってるんだね……」)
 まずはその愁いを払わなければとシルは思う。
 その見習い魔女の従僕として付き従う吸血鬼の齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)。
 執事服のベストを赤に。白シャツの右首元から血のような、赤い染みができているのはお食事の跡といった所。
「今宵は沢山の若者達がいる。ふふっ、美味しそうではないかがそれは、この魔女様の仕事が終わってからの事――今から楽しみだ」
 と、光闇が意味ありげに笑い零せば、小さな子たちはきゃあと声上げて逃げていく。
 シルは見習い魔女。同じ雰囲気にならないように、とサフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)は女王のような魔女に。
 パンプキンカラーとモチーフのとんがり帽子にミニマント。マキシ丈のワンピースは魔女服で、手袋は赤。蝙蝠モチーフのレギンスとブーツを合わせてハロウィンの魔女を名乗る。
 魔女の姿に似合ってると宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)は笑う。
 楽しくて美味しい、魔女の宴。
 そんなハロウィンは季由も大好きなものだ。
「そんな楽しい時間を、めちゃくちゃにはさせないさ。ミコト、菓子食ってる場合じゃないぞ」
 と、傍にいるおデブで丸い虎猫の翼猫は頭の上でふんと鼻を鳴らす。一声鳴かないのは、さっき子供からもらった飴を咥えていたからだ。
「トリックオアトリート!」
 と、声をかけられて、季由は振り向く。魔女の手下、真紅の頭巾被って南瓜の形した籠にはお菓子。
「魔女からの施しだ!」
 季由は子供たちへお菓子を。
 レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)は周囲の様子に笑み浮かべる。
 赤インクで汚した白衣。ポケットには赤い液体の試験官。手袋した手に注射器とマッドサイエンティスト。その傍のイードは実験体のように赤い包帯姿だ。
 その隣でどうかな、とくるっと回ってみせたのはラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)だ。
 経験少ないハロウィンと、滅多にしない演技にウキウキノリノリ。
 赤色のキョンシー風中華衣装にそでを通し心躍らせているのは、その様子を見れば一目瞭然。
「レクト、似合う?」
「ラグナの格好、かわいいね」
「レクトは……」
「……あんまり変わらないとか言わない」
 いつもと違うよとレクトは言うけれど。
 医学生であるレクト。赤インクで汚してあっても白衣は白衣。いつも着ているような印象がやはりある。
 ひゅうと、冷たい風が吹き始める時間。
 王・美子(首無し・e37906)は冷える、と真っ赤なレザーコートの裾を翻す。
 赤毛のオオカミの被り物。その首では地獄が踊る。
 そして手には血塗られたパイルバンカーを無駄に振り回し荒々しく立ち回りつつ、狼の咆哮の音声を流す。
 その声は被り物の中にも響くもので、うるさいのが難点だった。
 通りは仮装した仲間もいて、賑やかだ。
 そんな様子をベーゼ・ベルレ(ツギハギ・e05609)は見ていた。
 にへらと笑いたくなるのを我慢しつつとある店先で、ヌイグルミのふりをして座っている。
 その隣ではミミックのミクリさんも一緒に動かずに待機中だ。
 動き出すのはパンプキョンシーが現れてからだ。
 その時刻は夕刻と、聞いている。
 そろそろ、パンプキョンシー達が現れる時間がやってくる。

●ぱんぷぱんぷ・きょんしー
 楽しい時間は続かない。
 入口に現れたのはかぼちゃのような帽子をかぶり、札を張られたパンプキョンシーだ。
 ぱっとみれば、お揃いの衣装を着たハロウィンのコスプレかと思うかもしれないがそうでないことを、ケルベロス達は知っている。
 敵の登場にベーゼは動き出す。
 動物変身――まるでハロウィンの魔法で目醒めたように、ぐわわっと大きく伸びをするように。
「さあ、魔女が来ます。道を開けてあちらへ」
 と、レクトはそれとなく周囲の人たちを避難してもらう方向へと導く。
 その、ひらいた道を歩いて。
「何処へ行こうと言うのだ、魔女を恐れるか?」
 長い髪をさらりと払いながらサフィールは傲岸に、気まぐれに。魔女らしく振舞う。
「さぁ、楽しいパーティーを始めましょっかっ」
 黒いマントを翻せば、裏地の赤が踊る。シルがプリンセスモードを発動させ一層魔女っぽさを増していく。
 その前にラグナシセロも立って、パンプキョンシーへ向かって手下らしく。
「偉大なる魔女様、魔女見習い様方にお仕えしているのです。魔女様の前に立ちはだかる敵は薙ぎ払います!」
 その言葉に合わせてオラオラ、道を開けろとばかりに美子も振舞う。
 パイルバンカー振り上げれば、それは威圧にもなる。
 けれどまだ興味を持って残ろうとする人たちもいた。
 美子はその近くに寄ってオオカミの一声。
 すると小さく悲鳴あげてそそくさと離れていく。
 大きな騒ぎにしないように、周囲から人々は離されて巻き込まぬように整っていった。
 季由も行かせないとパンプキョンシーの前に。
 さっきお菓子をあげた子供たち――その笑顔は眩しくて、嬉しいものだった。あの笑顔を守りたい。
(「傷つけさせはしない」)
 そう思う傍ら、羽根の生えた南瓜、もといミコトがいる。
 ベーゼはのそりとパンプキョンシーの前へ立ちはだかりコワイ顔。
「捨てられたおれ達に命をくれたハロウィンの魔女サマをお護りするのだ~。が、がお~!」
 その身は包帯ぐるぐる巻き。ふかふかの綿がところどころ飛び出たようなヌイグルミイラ男。
 その隣でミクリさんもお揃いの赤いバンダナ揺らしてぴょんと跳ねる。
「ふむ、こやつらの血は美味しそうでは無いが、我が主に仇なすのであれば容赦はせんぞ!」
 光闇はパンプキョンシーを見定めるように言い放って、その一歩を踏み出した。
 現れた敵、パンプキョンシーは守りの硬いものが二体と、攻撃力の高いものが一体。
 まず、狙うのは守りの硬いものからと狙いが定められる。
 シルは魔女っ娘らしく、魔女の箒に偽装した風精の涙『シルフィード・ティアーズ』を振り下ろす。
 先に狙うのは守りの硬いパンプキョンシー。
 ヒールドローンで守りを固めつつ、季由は攻撃力の高いパンプキョンシーの抑えに回る。
 傍らでミコトはぱたぱたと羽ばたき、清浄の風を皆へ。
 そして応援とレクトとラグナシセロはカラフルな爆風で仲間達を鼓舞する。
 ラグナシセロは仲間の強化支援をメインに。
 レクトは仲間達の回復を担いつつ、戦況を確認し何かあれば皆に知らせる役目を負っていた。
 さらに、守り固めるように皆の足元にケルベロスチェインが走る。
 美子がしゃらりと走らせるそれは、守りの力を高める魔法陣を描いていた。
 星の名を持つエアシューズでサフィールは駆ける。
 一気に距離詰めて放った飛び蹴りにパンプキョンシーの動きは鈍る。
 続けて同じ敵を光闇も狙ってその脚向ける。
 流星の煌めきと重力を載せた蹴り。その一撃は敵の足を留める衝撃を持っていた。
 それとは別のパンプキョンシーが攻撃を仕掛けて来る。ぐっと拳を握りこみ、振り下ろしてきたそれから仲間を守るようにベーゼは飛び出す。
(「おれの手は、魔法の手じゃないっすけど……誰かを護ることなら、出来るから!」)
 攻撃受けたその場所は確かに痛い。けれどベーゼはギュッと掌握ってパンプキョンシーを見据える。
 と、その身をそよりと風が撫でる気配。
「優しき願いに応えて集え」
 レクトが呼び込んだ風が、仲間達を癒していく。
 それは雨上がりのような、優しい緑の匂いを纏った風だった。
 その風を感じながら光闇はルーンアックスを大きく振りかぶった。
 そして、敵の頭、その一番上からたたき割るように振り下ろす。
 さらに好きには動かせないよとその足元狙うように美子は制圧射撃を駆ける。
 その攻撃にパンプキョンシーは三体とも、動きを鈍らせて動きが抑えこまれていた。
 攻撃は重なり、敵の力は確実に削がれている。
 それを感じながらベーゼもまた、魔女のしもべらしく。
「アイツにイタズラしてやるぞお。が、がお~!」
 まず先に飛び出したのはミクリさんだ。
 かぱっと開けた口でがぶっと噛みつきに。
 続けてベーゼはその爪ぴゃっと出して振り下ろす。
「ハロウィンも魔法も皆を笑顔にできるもののハズだから……それを台無しになんて、させるもんかっ!」
 攻撃しながら零れた言葉は、ベーゼが胸に抱えていた想いだ。
 それを耳にして、シルもそうだねと力強く頷く。
「今日のわたしは魔女見習いっ」
 なので、魔法は少し大人し目に……と思いつつ。
「魔女の秘術、とくとご覧あれッ!! ……ひかりになーれーっ!!」
 よろめいたパンプキョンシーの懐で増幅魔法『六芒増幅』を使用した、精霊収束砲を向ける。
 放たれた攻撃、それと同時にシルの背には1対の青白い魔力の翼が展開され、反動からその身を支えてもう一撃。
 その砲撃に貫かれ、守りに何度も入っていたパンプキョンシーはその身を散らすように消えていく。
 まずは一体、次の狙いも守りに長けたものを。
 二体になった敵は崩しやすい。
「さすが魔女見習い様! 手下も頑張ります!」
 ラグナシセロはシルに言葉を送りながら一番星の標べをもってかける。
 狙うのは守りの硬いほう。とんと軽やかに地面蹴って、身軽に急所狙った蹴撃を繰り出す。
 イードが後方から突撃をし、そのあとを追うようにレクトも走る。今は回復の必要ない時と、その脚を向けた。
 漆黒と深紅のブーツの底には刃。その刃で繰り出す斬撃がパンプキョンシーを捕らえていた。
「ファイアーボールをおみまいっすう! ……ああっ包帯があ!」
 あちちっ! とベーゼは手をぱたぱたふって消火。自分で巻いた包帯。不器用ながら一生懸命巻いた包帯の端に攻撃と同時についた炎。
 それを慌てて消しつつ放った炎弾はパンプキョンシーの上で一層激しく燃え上がる。
 その、絶賛炎上中のパンプキョンシーに向かって、首元の地獄の炎をなびかせながら美子はパイルバンカーを振りかぶった。
「トリック! オア! トリート!」
 銃床でいつもなら殴るのだが、今日はあいにく、手にしているのがパイルバンカー。
 その一番硬い場所で思い切り殴れば、その衝撃に敵は耐えきれず崩れ去っていった。
 そして――最後の一体。
 攻撃が集中すれば敵の疲弊も早い。
 けれど、魔女が現れるような雰囲気は今の所、感じられず。
「試しに『暴虐の幻狼』でも名乗ってみるか」
 美子はオオカミの被り物の下で小さく零し、杭を構えた。
「我こそは暴虐の幻狼――ウルフクラウドなり」
 と、その名を語り氷結と共に杭をパンプキョンシーへと打ち込んだ。
 びきびきと音たてて、身体の一部を凍らせていく敵。
 それでもなんとか、攻撃をと蹴り上げてきた。
「サフィール、チャンス!」
 攻撃を庇いに入って、隙は生まれる。
 季由の声にああとサフィールは頷いた。
 最後のトドメは、魔女らしく。
 それでおびき出せるかもしれないのだから。
「サフィ様、援護します!」
 と、ラグナシセロはオウガ粒子を振りまく。
 その力は、狙いの精度を高める力。
「ふふ、そろそろ飽きた。葬ってやろう」
 サフィールは紡ぐ。
 魔石にて契約せし四大精霊を一同に喚起し、その大いなる力を解放する上級精霊魔術。
「千の夜の盟友達よ、四大の精よ。時は満ちれり、大いなる饗宴を此処に……!」
 魔女らしく、すっと狙い定めて精霊たちの力を借りる。
 岩槍が貫き、水が荒れ狂う。風が斬り、裂き火は華のように咲いて無慈悲なまでに蹂躙を。
 その攻撃にパンプキョンシーは耐えうる術を持たず、その場に崩れ落ちて。
 ハロウィンを脅かすもの達はすべて、果てたのだった。

●魔女はこない
「終わり!」
 現れたパンプキョンシーは倒され、通りから危険は去った。
 そしてここに見習い魔女が現れる様子はなかった。
「騙ってみたが、誘われちゃくれないか」
 ま、そうだろうなと美子は紡ぐ。
 そしてシルは現れないのはちょっと残念と零していた。けれど、無事にこの場所を守れてよかったと実感もここにある。
「皆様お疲れ様でした、今回は目的の魔女は現れませんでしたが別の所の誰かが倒してる事でしょう……さて、この時間を皆様楽しみましょう」
 光闇は、戦いは終わったのだと言葉にする。
 そして視線で示した先には、戦い終わったのを感じて少しずつ戻ってきた人々の姿があった。
 少しずつ戻ってきた人たち。
 すると。
「トリックオアトリート! ありがと!」
「わ!」
 あげる! と子供たちがお礼を言いながらイタズラをしていく。
 サフィールは驚きながらも、かわいいイタズラと笑っていた。
「ミクリさん、ほどけかかってるっす」
 ベーゼはミクリさんの頭の上でほどけかかっていた包帯をきゅっとリボンに結び直す。
 これでばっちりとベーゼは笑む。
「う、わ……重っ」
 ずしっと、季由の頭の上におちつく南瓜。赤いジャックランタンのミコトは終わったからお菓子をくれというようにたしたしと前脚で頭を叩いてくる。
 仮装した分、いつもよりもちょっと重いと文句言うが、これがいつもの雰囲気。
 それを目にして、戦い終わったという時間が湧き上がってくる。
「レクト! 俺の演技どうだった?」
「なかなかだったんじゃない?」
 こうすればもっとキョンシーらしかったかもとラグナシセロはパンプキョンシーの動きを思い出し真似してみる。
 戻ってきた、楽しい時間。
 人々や通りに被害を出すこともなく守れた事にレクトはほっとし、微笑み零した。
 楽しいハロウィンは、守られたのだと。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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