六本木の幻想魔獣~ネメア・ザ・ミスティックテイマー

作者:鹿崎シーカー

 東京都・六本木の外れ。
 立ち並ぶビル群を遠目に見ながら、ひとりの女が物憂げな溜め息をこぼす。波打つプラチナブロンドの髪に、緑の瞳。洒落たデザインの巨大な鍵を杖代わりに突き、第一の魔女・ネメアは空を仰いだ。
「まさか、ジグラットゼクスが直接乗り込んでくるとは……。これは、わたくし達パッチワークの魔女の作戦が滞っているのが原因なのでしょうね」
 額に手の甲を当て、目を閉じる。重い呼気を漏らしつつ、肩に被さるライオンヘッドのあごをさすった。不鮮明な映像めいて所々モザイクに覆われたライオンをなで、一人つぶやく。
「こうなれば、ハロウィンの中心たる六本木の街を制圧し、パッチワークの魔女の力をジグラットゼクスに見せつけねばなりませんわ」
 三度息を吐きだすと、ネメアはその場でくるりと回転。彼女の視界から街が消え、異形の怪物達が埋め尽くす。人間と複数の動物を繋ぎ合わせた外見の魔獣の群れは、獣臭をまき散らしながら鼻を荒げる。ネメアは鍵をわずかに持ち上げ、地面に強く打ちつけた。
「お進みなさい」
 冷徹な表情を浮かべ、背後の街へ鍵の先を突きつける。
「その蹄で牙で爪で、勝利を勝ち取るのです」
 魔獣達が雄叫びを上げ、我先にと街へ駆け出す。猛進と咆哮。震える地面と空気を肌で感じるネメアは、六本木の街並みに目を細くした。


「はい! 毎年恒例ケルベロスハロウィンの時期だけど、毎年恒例ドリームイーターがハロウィンに事件を起こすみたいです!」
 真面目で硬い表情のまま、跳鹿・穫は強めに言い切る。
 暦は十月、ハロウィンの月。そのハロウィンの魔力を狙い、ドリームイーターが活動を開始したようだ。
 勢力を率いるのはパッチワークの魔女が一人、第一の魔女ネメア。人と動物を繋ぎ合わせた姿の幻想魔獣型屍隷兵の軍勢を率いる彼女は、ハロウィンの中心地・六本木を制圧し、魔力を奪い取ろうとしているらしい。
 彼女達は実に六ケ所の制圧に成功しており、制圧地点からは光の柱が一本ずつ空に伸びている。恐らくはこれがハロウィンの魔力なるものなのだろう。
 この魔力がどういった力を持つのかは不明だが、ネメア達に渡せば必ず彼女らは利用しようとするに違いない。皆には制圧地点のうち一つに向かい、幻想魔獣型屍隷兵の撃退と光の柱の破壊を依頼いしたいのだ。
 現状の制圧地点、及び制圧戦力は以下の通り。

 1、六本木中学校。敵は老人の頭部・獅子の胴・コウモリの羽根・九本のサソリの尾を持つマンティコアの群れ。
 2、六本木グランドタワー。ワシの頭部・シマウマの胴・カラスの翼を持つヒッポグリフの群れ。
 3、東京都立青山公園南地区。黒翼を持ち、目とひづめに蒼炎を燃やす漆黒の一角獣ペガコーンの群れ。
 4、国立新美術館。鳥の足と蛇の尾を持ち、肩に女性の頭を生やした獅子スフィンクスの群れ。
 5、東京ミッドタウン。ヤギ角を生やした女性・犬・竜の三つの頭、獣人となった女性の上半身、竜の下半身を持つキメラの群れ。
 6、六本木ヒルズ。全種類の屍隷兵からなる群れと、それを統率する第一の魔女・ネメア。

 皆にはこれらのうち一つを狙って攻撃してもらうことになるのだが、ここで注意。上記は戦力が低い場所から順にリストアップしており、マンティコアが一番戦力が低く、ネメアの軍勢が一番高い。また、光の柱を消滅させるには軍勢の掃討、あるいは光の柱へ接近し叩く必要があり、軍勢を掃討するにはマンティコアの群れでも三チーム以上が必要になる。
 できるだけ多く光の柱を破壊するなら、複数チームで連携して戦力の低い場所へ優先攻撃するのが望ましいが、戦力が集まらなければ光の柱だけ破壊して撤退する作戦でも問題ない。
 勝利条件は光の柱を破壊すること。どこを狙い、どういった作戦を立てるかは、皆の判断に一任する。
「なかなかシビアな状況だけど、みんなならなんとか出来るって信じてるよ。あ、制圧された場所の避難は終わってるから、そこは心配しなくて大丈夫。ネメアの軍勢を蹴散らして、楽しいハロウィンにしようね!」


参加者
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)
篁・メノウ(紫天の華・e00903)
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
カーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)
ミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)
アリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)

■リプレイ

 校庭の空を鎖が貫く。漆黒の縛鎖は爪をといでいたマンティコアの胴を締め上げ一本釣りめいて引き上げた。空中でマンティコアをつかんだドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)の手中で鎖は黒炎と化し炎上。そのままマンティコアを振りかぶる!
「ぬぅああああああああああああああああッ!」
 直球で投擲されたマンティコアがグラウンドに集る群れに突っ込み着弾。爆発する黒炎にあぶられ狂乱する屍隷兵達へシルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)が黒翼を広げて特攻をしかける。青黒い全身鎧の両腕が燃え、巨大な刃へ姿を変えた。
「死ねぇぇぇぇぇッ!」
 咆哮を上げシルフィディアは両手を振るう。二つの蛇腹剣がしなり敵群を襲撃! 縦横無尽に走る刃が獣の体を引き裂いた。振り回される剣の間をぬって着地したドルフィンは地を蹴り手近なマンティコアに肉迫し巻き上げるように蹴り上げる。打ち上がる胴を真横から打つ蛇腹剣!
「カッカッカッ! どうしたどうした! わしらは敵じゃぞ? かかって来るが良いッ!」
「気色悪いゴミ共がウジャウジャと……あの目障りな柱ごとぶっ潰してやるッ!」
 喜色と怨嗟の声が響くと同時、一体がしゃがれた遠吠えを放った。錯乱していたマンティコア達も体勢を立て直して次々に吠え、サソリじみた尾から鋭い針を乱射する! すぐさま跳ねる蛇腹剣が針の群れを打ち払い、その隙間を飛ぶドルフィンが拳で防ぎ撃ち落とす。だが次の瞬間弾幕が倍化! 防ぎきれぬ針が二人をかすめて削り、突き立った。
「そこまでだッ!」
 瞬間、ブーメランめいて回転飛翔した刀が針の弾幕を端から蹴散らし跳ね飛ばす。後方から駆け寄る篁・メノウ(紫天の華・e00903)は漆黒の刃を引き抜き加速。無数の分身を生み出し針の嵐に突撃していく!
「篁流剣術……『幻月』ッ!」
 分身が一斉に動き、針を片っ端から撃ち落とす。虚空に刻む多量の銀閃。帰ってきた回転刀をつかみ取ったメノウは二刀を振るい最後の針群を防ぎきる。動きかけたマンティコア達の足元に銃弾を撃ち込み、リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が声を張り上げる。
「突出しすぎるな! アリッサム、フォロー急げッ!」
「はいッ!」
 呼ばれたアリッサム・ウォーレス(花獄の巫竜・e36664)が発光。優美に踊る彼女の足元から放射状に光が広がり、校庭をネモフィラの花畑に変貌させる。それを横目にリューディガーは仲間達に連続発砲。銃口から飛んだ光が味方に当たり背中に山羊座のマークを刻む。素早くリロード!
「風さん、ミスル! 合流急げ!」
「応ッ!」
 風めいた速度で岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)とミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)が駆けた瞬間、リューディガーは空に発砲! 夜空から前線を照らす月じみた光。
「ウカツ! よもや一番槍をとられようとは! 負けてはおられぬぞ!」
「はいはい。じゃ、やりますか」
「イヤーッ!」
 風太郎は高く跳躍! 空中で合体させた二丁拳銃を突き出しドリルめいて回転しながら飛行する一体に突っ込んでいく。地の面々に針を乱射する獣の腹を、銃口の光パイルが貫いた。風太郎はなおも回転!
「ギャラクシィーブライトォッ! ニンジャッ!」
 風太郎が引き金を引き、マンティコアの目と口がまばゆい閃光を放つ! 獣の胴が高速膨張!
「スパイラルドライバァァァァァッ!」
 マンティコアが爆発四散した。空中の輝きに目を細め、ミスルは右手を伸ばす。すさまじい速度で伸びたツルがドルフィンを襲う個体に巻きつき、締め上げる! 苦悶する獣へドルフィンは人差し指を突き出した。老人の眉間が潰れ顔面陥没! その首筋をリューディガーがナイフで裂いた。返り血を浴びながら地面を転がり立ち膝姿勢で銃撃を敢行。アリッサムに駆ける個体の足を撃ち抜いた。
「大人しくしてやがれッ!」
 足を潰された個体にカーネリア・リンクス(黒鉄の華・e04082)の銀針が飛ぶ。銀針を受けた個体は身震いし針を九本まとめて射出! とっさにガードしたカーネリアにアリッサムは花粉めいた粒子を浴びせて即治療。舌打ちして針を抜いたカーネリアへ飛びかかるマンティコアの前に割り込んだメノウは刀を突きつけ切っ先を揺らす。
「篁流剣術……『朔月』ッ!」
 マンティコアの目がかすみ、頭部が縦一文字に裂けた。そのあごをメノウが蹴り上げ直立を強制。カーネリアは勢いよく地を蹴りつける!
「よっしゃいくぜメノウ! とっととカタして次行くぞ!」
「りょーかい。篁流格闘術!」
 一緒に零距離まで踏み込み身をひねる。炎と紫光を宿した掌底が放たれ獣の腹にめり込んだ!
『「雪崩・裂鋼」ッ!』
 マンティコアの腹部が破裂! 血と肉片をまき散らす上半身を二人同時に斬り上げ介錯。その時、残る個体が空に吠え、広範囲に針をばらまいた。即座に跳び下がる攻撃役と入れ替わったドルフィンとリューディガーの防御に次々と針が突き立っていく。直後、二人の腕や肩が裂け黒ずんだ血が噴出!
「毒かッ……!」
 動きを止められた二人の頭上を風太郎が飛び越えた。前方回転しながら連射される光線を浴びたマンティコアの尻尾が二本上向き風太郎に向かって毒針を飛ばす。交錯する針と光が両者をかすめニンジャ装束から黒い血を、毛皮から霜を散らせる。レーザーを前方に撃ち後退した風太郎は肩越しに叫ぶ!
「ミスル殿ォッ!」
「はいはい」
 ミスルの腕を覆う植物が花を咲かせ実を結ぶ。実が弾け飛び弾丸めいて飛翔した多くの種子が尾を明後日の方へ曲げ針の軌道をまとめて逸らした。黒翼を広げ背から獄炎を放出したシルフィディアは縛られた個体へ一気に接近、鉄塊剣を振りかぶる!
「消えろ、この……汚物がぁぁぁッ!」
 黒く燃える大剣が獣を強打! マンティコアは炎上しながら体育館の壁へ突撃、突き破って奥の壁にぶつかり血の染みと化した。リューディガーとドルフィンに噛ませた攻性植物から光を注ぐアリッサムは体育館の中へ視線を凝らし、目を見開く。
「中です! 中に七体……いえ、八体!」
「他の班も終わったっぽい! 一気に行こう! 篁流回復術!」
 片目を閉じたメノウが足の毒針を引っこ抜いて刀を掲げる。刃に紫光を収束させ、一閃!
「『祓風』ッ!」
 紫の風が吹き荒れ仲間達を叩く。針を受けた味方の身からどす黒い瘴気が噴き出し風と共に消え去っていく。同時に全員が土を爆ぜさせて疾走! 開いた体育館の暗がりへと突入した彼らの周囲でいななきが反響。アリッサムの点けたライトに照らされた一匹が翼を広げて飛びかかる! 火の粉をまいたカーネリアがその顔めがけて飛び蹴りを繰り出す!
「『吹雪』ィッ!」
 牙むく顔面を炎の草履が強打し吹っ飛ばした。一方垂直ジャンプした風太郎は宙でプロペラめいて回転しながら床へレーザーを発射する。床に円弧の焼き痕を刻む光線が突進途中のマンティコア達を打ち払う。弾かれた一体にミスルが手を伸ばし、もう一体をリューディガーが銃で照準。放たれた種と鉛弾が屍隷兵の肉体にめり込んだ! 叫ぶリューディガー!
「今だ! 始末して先を急ぐぞ!」
「よかろう! いざ参る!」
 踏み込みで床をへこませ、ドルフィンが銃撃を受けた一体へ突っ込んだ。握られたクリスタル手甲が空色に輝く。
「強者と戦えぬとは残念! じゃがたとえそれでも戦は戦じゃ! 喰ろうてやろうぞ!」
 体勢を立て直したマンティコアの毒針弾幕に切り裂かれながらスライディングし真下へ滑る! 敵の体下に潜り込んだドルフィンはそのまま空色のボディブローを繰り出した。腹にガントレットが食い込み血のような赤い光を吸い上げる。
「ふぬぁああああああああああああッ!」
 潰れた声を上げるマンティコアを、ドルフィンは真上に殴り飛ばした! 垂直上昇した先には空を飛ぶシルフィディア。赤黒い鎖を巻きつけ、漆黒の炎を宿した足を振り上げた彼女は殺気立った眼光を飛んでくる個体に向ける。
「お前達雑魚に構ってる暇はない! 死ねッ!」
 黒炎のかかと落としが獣の背中を打ち砕く! 胴体の骨をまとめて砕かれた獣は血を吐いて落下、床にたたきつけられ血煙を噴いた。一方でミスルの種を食らった個体が体のあちこちを爆発させる。白目をむいてよろめく屍隷兵にさらに追い打ちの種が着弾。うちいくつかが破裂し傷口を押し広げていく。摺り足めいた歩法で走り収めた刀の鯉口を切った。
「篁流剣術……」
 ふらつく個体に数歩で迫する。手の中で刀の峰を下向け、抜刀!
「『三日月』ッ!」
 三日月状の銀閃が閃きマンティコアの肩口を断つ。続いて踏み込んだ右足に力を込めて左足を突き出した!
「『氷鎚』ッ!」
 前蹴りがひげを蓄えた口に炸裂! 折れて飛び散る歯を振り払い、足を押し込み蹴り飛ばす。放物線を描いて飛翔し床を転がった個体が動かなくなったのを確認し、リューディーガーは周囲を確認。他班が残りを始末したのを察知すると仲間へ喚起。
「クリアだ! 屋上まで一気に抜けるぞ!」


「イヤーッ!」
 ハードル選手めいて蹴破られたドアが飛ぶ。驚いて振り向く数匹のマンティコアとその背後に立つ光の柱を前に雪崩れ込んだケルベロス達! 即座に掃射される毒針を刀をプロペラじみて回すメノウと防御姿勢を取ったドルフィンがガードしそのまま走る!
「効くかッ! 所詮馬鹿の一つ覚えだ!」
「やはりわしらを止めるにゃちと物足りんようじゃのう!」
 威嚇じみて喉を鳴らしたマンティコア達が羽ばたき上方から二人に襲いかかった。衝突寸前、二人の背後から跳躍した四つの影がそれらをまとめて蹴り返す! 屋上を転がり立ち直る四匹へ風太郎とカーネリアがダッシュで突撃!
「邪魔だお前ら! そこをどけぇッ!」
「目標目前! 押し通るッ!」
 二丁光線銃を交叉した風太郎とフェンシングじみて切っ先を向けるカーネリア。再度足音を鳴らして走ってくる獣を後ろ回し蹴りと連続突きが迎え撃つ!
「イヤーッ!」
「篁流剣術! 『月光散らし』ッ!」
 草履の裏が一体を撃ち、刺突のラッシュがもう一体の顔面肩口を穴だらけにする。怯んだ二匹の頭を踏み台にして跳んだ二人を狙い、対空砲火の如く毒針が放射。こめかみに汗を浮かべ夜空を撃ち抜くリューディガー。銃口から吹いた花嵐が大量の毒針を巻きこんで空の彼方へ吸い込まれていく。花粉に似た光の粒子をばらまきながらアリッサムは屋上入り口を振り返る。扉から押し寄せる追手の群れとそれを押し止める他班!
「皆さん! 増援は今せき止められてます! このまま押し切って!」
「とりあえず、制圧すればいいんでしょ」
 そう返すミスル腕の植物が追加で実を結んで破裂。屋上を突っ切った種子弾丸はサソリめいて針を突き出すマンティコアに命中し、隙を生み出す。爪と針を相手に立ち回っていたドルフィンがアッパーカットでマンティコアを無理矢理立たせ両手の指で全身を突く。硬直するマンティコアを置いて垂直ジャンプ! 足元を漆黒の蛇腹剣がハサミじみて交錯し、胴を寸断してのけた。
「とっとと消えろクズめ……お前達に構ってる暇はない!」
「やりおるわ!」
 シルフィディアに笑みを見せるドルフィンに、リューディガーの花嵐が吹き荒ぶ。二体を他班に任せリューディガーはナイフを持って残る一体の腹に突き刺す。そのまま滑らせ胴を切開! 臓物をぶちまけて倒れる獣を捨て置き、合図を飛ばした。
「制圧完了だ! 柱を壊せッ!」
 彼の声を受けたカーネリアとメノウが刃を翻し、光の柱に高速接近! 構えた刀に注がれる、地獄の炎と紫苑の光。
「オレ達の力を見せるぜ相棒ッ! グラビティの力を結集し、今こそ放つぜ篁の技ッ!」
「これこそは、異邦の神を屠る剣……篁流剣術!」
 そして二人は同時に剣を大上段に振り上げ、力任せに振り下ろす!
『「満月」ッ!』
 二重の剣閃が太い光の柱に食い込む! 被弾箇所からほとばしる閃光を一身に浴びながら二人は歯を食いしばって剣を押す。表面がガラスの如くひび割れ、破砕音と共に亀裂がどんどん広がっていく。風太郎は両手の光線銃を頭上で組み合わせ、斜めに跳躍。合体し完成した巨大なランチャーから光のパイルをのぞかせドリルめいて回転! 螺旋状の光を引きながら、杭を打つ!
「受けるが良い銀河の輝きッ! ギャラクシィーブライトォッ! ニンジャッ! スパイラルドライィバァァァァァァッ!」
 パイルが柱に接触し、甲高い悲鳴を奏でる。引き裂かれ、穿たれた穴から噴出した魔力が全員の視界を一面光に変えていく。加えて連続の衝撃が柱に響き、光の柱が激しい軋みと共に亀裂を広げる。渾身の力を叩き込んだケルベロス達の咆哮が夜空を突いたその瞬間、柱は儚いサウンドを鳴らして砕け、大量の光をほとばしらせた。


 夜空に光が降り注ぐ。
 総攻撃によって砕け散った光の柱。そこから解放され、流星群めいて流れる魔力の光を見上げ、カーネリアは呆然とつぶやいた。
「……壮観だぜ」
「……ああ」
 ナイフを袖口にしまい、直立したリューディガーは光の軌跡を目で追った。地面に落ち、鈴に似た涼やかな音色を響かせて消えていく流星。カーネリアの横で倒れたメノウは硬い床の上で寝返りを打つ。
「なにはともあれ、これでお仕事終了っと。あー疲れた」
「な、何とか終わりましたね……あの、大丈夫……ですか?」
「平気じゃ!」
 上目遣いのシルフィディアに強く言い切ったドルフィンが、直後不服げに肩を落とした。
「しかしやはり不完全燃焼気味かのう。魔女とやらにはまた今度手合せ願うするとして。今回はー……まぁ、嫌がらせじゃな」
「致し方あるまい」
 物足りなさそうな顔のドルフィンに、風太郎が神妙にうなずく。六本木ヒルズの方へ眼差しを向け、とつとつと語り始めた。
「順当に行けば、今回破壊できた柱は六本中二本。全破壊も首魁討伐もできなんだが……ともあれ、今は全員の無事を喜ぼうではないか。後にも色々あるであろうが、それはその時考えるでござるよ」
「今日が三十で、明日がハロウィン? またひと悶着あるのかな」
 事もなげに言うミスルを背後に、風太郎は街の彼方を鋭く睨む。
「さて。あのネメアなる魔女、一体如何にして動くでござろう」
 一方その頃。光降り注ぐ校庭を、アリッサムは一人胸に手を添えて歩く。光の着地点や目の前まで来た光を注意深く眺め、漂う残滓に手を触れる。両手の攻性植物達に魔力を吸わせて調査する傍ら、視界の端に小高く積まれた塚を発見。それはズタズタに引き裂かれた死体の山であった。
 アリッサムは一瞬顔をしかめると、死体の山にそっと近づき、ネモフィラの花をふもとに添える。光の雨が注ぐ中、彼女は手を組み、祈るように目を閉じた。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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