抜き打て、悪路の抜刀術!

作者:baron

「998、999、1000。よし、次だ」
 丘に在る林で太い樹に木刀を横薙ぎに叩きつけていた男が、規定回数を終えると次の練習を始めた。
「1、2、3……」
 今度は斜め正眼から、袈裟切りの態勢で少しずつ変更しながら叩きつけていく。
 ただポーズは違うのに、同じ場所を選んでひたすら叩きつける。
 それが終ると履き物を下駄に変えたり服装をダボダボな物に変えたりしながら、異なる態勢や条件で同じ場所を狙って叩きつける。
 仕舞いには柄に油を塗って、滑り易い木刀に持ち替えてどんな条件でも同じ場所を狙えるように練習し始めた。
「誰だ!」
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 そんな時、丘の上から現われた少女が現れる。
 ぶっきらぼうに用件だけ告げる少女に、男は頷くと背中に木刀を担いだ。
「むうん!」
 男は背中に回した木刀の柄に、ダボダボの服の裾を巻き付け長さを誤魔化してから、一足飛びに切りかかった。
 更に肩に峰を叩きつけるようにして加速し、勢いを付けて急加速で叩きつけたのだ。
 それは鞘に入って居なくとも、確かに抜刀術であった。
 だがしかし……少女は平然とした顔で、澄ましたものだ。何しろ彼女はドリームイーター普通の人間の攻撃が通じるはずもない。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 少女は顔に掛った練習用の油だけをふき取ると、手にした鍵で男の胸を突き刺した。
 すると男は倒れ……代わりに書生風の吹きそうに着変えたような、男にそっくりなナニカが立って居たのだ。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 と少女が告げると、男にそっくりなナニカは町中を目指して丘を下りて行った。


「武術を極めようとして修行を行っている武術家が襲われる事件が起こる。武術家を襲うのはドリームイーターで、名前は、幻武極」
 ザイフリート王子が説明を始めた。
「出現するドリームイーターは、襲われた武術家が目指す究極の武術家のような技を使いこなすようで、なかなかの強敵となるだろう」
 王子が強敵と言った事で、何人かがハッキリと顔色を変えた。
 ある者はゴクリと喉を鳴らし、ある者は獣めいた危険な笑みを浮かべる。
「強敵かえ?」
「そうだ。油断はできんだろうな」
 幸い、このドリームイーターが人里に到着する前に迎撃する事が可能なので、周囲の被害を気にせずに戦う事が出来るだろう。
 ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)の確認に王子は頷きながら静かに説明する。
「敵は一体で元凶や部下のドリームイーターは居ない。幸いと言うべきだろうな」
 回りは林で周囲を気にすることも無いと王子は付け加える。
「こいつは居合い術を元に、鞘が無くとも使えるように本人なりに改良した技を使うようだ。同じ態勢から変幻自在に、あるいは異なる態勢から同じ場所を狙う事が出来る」
「居合いというよりは抜刀術じゃな。不意打ちされる・不意打ちすることを前提にした技というところかのう」
 王子の説明にミミは少年漫画や少女漫画、あるいはドラマなどから抜き出したの資料を眺めた。
 どれも少ない動きで高速の斬撃を繰り出したり、狭い場所や走りながらなど難しい条件なのに平然と技を繰り出している。
 道場剣法ではなく、常在戦場の達人相手との戦闘とあって武術はタイプのケルベロス達はうむうむと頷いているようだった。
 戦闘は闘い易い条件ばかりではないので、共感できるところがあるのだろう。
「このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようなので、戦いの場を用意すれば、向こうから戦いを挑んでくることだろう。それとせっかく修練した部武術を奪う技盗人を倒して来てくれ」
「技盗人か。確かにドリームイーターっていうよりはそれっぽいな」
「そうじゃのう」
 王子が地図を置いて出発の準備を始めると、その場に居た者の中でスケジュールの合う者は相談を始めた。


参加者
蒼樹・凛子(無敵のメイド長・e01227)
アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488)
百鬼・澪(癒しの御手・e03871)
東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)
アイクル・フォレストハリアー(ラディアントクロスオーバー・e26796)
篠村・鈴音(焔剣・e28705)
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)
ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)

■リプレイ


「見つけ次第挑んで、一般人の犠牲を出す前に倒さんといかんのじゃが……」
 ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)はキョロキョロと丘の下から探し始めた。
 見え易い道を遠くまで睨んだり、見え難い斜面を覗き込んで見上げたり。
 林があるせいか何かと見え難い、これでは人相が悪くなってしまうではないか。
「何を好き好んでこのような場所で修行して居るのか……」
「どんな状況でも全力を出せる修行自体には意味がありますよ。判らなくもないですね」
 ミミの愚痴を拾ってリチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)が肩をすくめる。
「こういう愚直に一つの技を極めんと同じ行動をし続ける人、私大好きですね。まあ発見さえすれば向こうから挑んで来るらしいですし、そんな人を邪魔をする物はとっとと消し飛ばしてしまいましょう」
「向かってくるって、そんなに戦いが好きなの? 変わってるね」
 リチャードの言葉にアルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488)は首を傾げた。
 意味が判らないのではなく理解できない。
 何故無為に戦う必要があるのか、闘うとしても何故正面からなのかサッパリ理解できない。
「その辺りは本人ではなく、武術を極めようと熱心な気持ちを抜き出し利用されたせいじゃろうな。ドリームイーターじゃから一般人も襲うじゃろうが」
「人の気持ちを弄び、利用せんとするデウスエクスですか」
 ミミがだからこそ速く見付けねばと説明すると、蒼樹・凛子(無敵のメイド長・e01227)は首を振って怒りを沈めることにした。
「わたくしも一人の武術家として、武を極めんとする気持ちはわかります。ゆえにその武をかすめ取るような真似、許せませんわね」
 そう言って凛子は軽く鍔に指を掛け、濃い口を僅かに切った。

 何故ならば、誰かが丘を降りて来たからだ。
 こんな場所に一般人が来るのはレアだが、手に刀を下げているとあっては探している敵の他に考えられまい。
「ここから先へは進ませません。わたくし達が相手です」
『ほう……』
 同じ居合い術の使い手でも、凛子と敵とでは用法が違う。
 方や柄元を握り込みながら様子を窺い、方や抜き放って初動の態勢を整える。
「「いざ尋常に……勝負!」」
 両者は丘を滑る様に走り出し、草むらを踏み越えてクルリと回転。
 互いに様子を窺いながら、シャッ! と初撃が降り降ろされる。
『もう斬った……と言いたい所だが、中なかに良い反応だ』
「そうは問屋が降ろさない……。とでもお返ししましょうか。しかし、どこからでも攻撃できるというのはかなり厄介ですね……」
 態勢を入れ換えたと思った瞬間に、篠村・鈴音(焔剣・e28705)が割り込んで来た。
 体当たり気味に凛子の位置と入れ替わり、振るう暇は無いので斜に構えたままの紅い刀で弾く。だが防いだはずなのに勢いを殺す為に少し後ずさりせざるを得ない。
 動作は見えない威力は高い……まったく格上とは聞いているが、なんともデタラメである。
「ですがこれ以上はやらせない」
 鈴音は流体金属を隆起させ、巻き込んだ周囲の鉄塊の類を構造材にして巨人と為した。
 そのまま繰り出す巨腕は轟と唸って振り降ろされる。
 そこへ飛び込むのは、カバーされていた凛子だ。
「先ほどの借りは合力にて。次はわたくしの番です。蒼龍の刃、見切れますか?」
「了解! タスク!」
 鉄槌と化した剛腕に隠れ、鞘走る剣閃は空を断つ。
 紅の剣士と蒼の剣士は共に手を携え、ドリームイーターに立ち向かったのである。


「剣の達人かっこいいのぅ。見てるだけでよかったなら、わらわ最高じゃったんだがのぅ」
 しかし、今の流行りはハンマーなのじゃ。
 ミミは身も蓋も無いことを言いながら、ハンマーを変形させて砲戦モードに切り換えた。
 豪砲を放って牽制し、敵の足元狙って動きを止める。
「紛いものであっても、元が確かな方ならその精度は確かなもの、なんですよね」
「それほどに凄い剣術でも犠牲になるのですね。とにかくドリームイーターが剣術として使えるものにして人を襲ったら大変です」
 百鬼・澪(癒しの御手・e03871)と東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)は顔を見合わせて、咄嗟に分担を決めた。
「傷は私と花嵐が治します。鍛え上げたものをご本人の元にお返しするためにも、気を抜かずに参りましょう」
 澪はさっと手を振って雷電の結界を周囲に築き、それでも治りきらない深い傷の場合は箱竜の花嵐が治療する予定だ。
「町には行く事もなく誰も斬れずに終わるのです。剣術のほうが有利とされていますが殴ってあげますよ」
 菜々乃は翼猫のプリンと共に前に出て、挟み込むことで街へ抜けれぬように抑え込む。
 そうして流体金属をまとわりつかせて作りあげた鉄腕で、殴り掛ったのである。
「そろそろいっかにゃ? そのままガンガン行くにゃあ」
 アイクル・フォレストハリアー(ラディアントクロスオーバー・e26796)はこちらの前衛が敵に取りついた所で、その心意気を応援する事にした。
 味方がツワモノと戦いたいのであれば止めることは無い。むしろ助かると思いながら負けるなガンバレと歌を唄って援護する。
「これで態勢は整いましたかね? ですがザイフリート王子の視点で強敵です。油断せずに行きましょう」
 リチャードは味方が包囲網を築いたのを確認してから、鋭い踏み込みで切り込んだ。
 敵が左右に動くのに合わせて、味方はそれを許さず移動範囲を巧みに封じ込めている。
 ならば追い込んでやろうと冷気すら帯びる一撃を浴びせて、時間を味方に付けるのだ。
『やるな貴様ら。そうこなくては』
「そんなに戦うのが好きなら相手になってあげるよ。お前の武術を見せてご覧」
 アルケミアは狐面を降ろしながら、仲間の影を通るようにして戦場に姿を隠した。
 そして隙を見つけて踊りかかり、飛び蹴り喰らわせて足を止めに掛る。

 だがやられっぱなしのはずはなく、アッサリと切り返して反撃の刃が訪れた。
 戦場は混戦であり、情勢は二転・三転して行く。
『ならば見せてやろう!』
 敵は刀を短く構えて横薙ぎに振るうと、同時に態勢を入れ換えることで次なる技の発射台と化した。
 一撃すると刀を引くのではなく、軽いターンを掛けて強制的に初動の態勢へ。
 放てばまた新しく態勢を入れ換えて、次々に新しい相手を求めて凶刃を振るって行った。
「おっとっと。やらせたりはしませんよ」
「そういうことです。こんなとこでやられはしませんので」
 菜々乃と鈴音は素早く分担して敵の攻撃に立ち塞がった。
 サーヴァント達も引き連れ壁役になると、猛威を体で抑え込んで行く。
 速くて回避するのは無理だが、来ると判って居れば構えて受け止めることはできる。
「生憎と流派といったものは持ち合わせていないけど、それでも多少は楽しめるでしょう。アン、ドゥ、―――トロワ」
 死を贈ろう。
 アルケミアは飛び蹴りから着地すると同時に、体を倒して急加速で動き出した。
 踊るようなステップで死を刻み、軽快にナイフが閃いて行く。右に左に、あるいは戦場という名のホールを迂回してグルリと死の舞踏を踊っていくのだ。
 剣士と剣士、そして拳士たちのダンス・マカブルは始まったばかりだ。


「剣術を使うなんて漫画みたいでかっこいいですね。この速度と威力を人間が再現できればかっこいいのですがそこまでいきませんでしたか……」
 元もとは人間でも出来る様な業なのだろうが、流石にこの威力はデウスエクスでなければ出せない。
 無理にやろうとすれば速さだけ・威力だけなのだろうと、菜々乃は少しだけ残念に思う。
「その代わりにかっこよく強キャラっぽくなってる人がいますが、強い敵と戦うのは私も嫌いじゃないですからね。いざ勝負なのです」
 菜々乃はそう言うと、庇いきれず最も傷の深い者に月光の加護を降ろした。
 これでは塞がり切らないが、仲間も治療し始めたので十分であろう。
「これで少しでもみなさんを守れますように……」
 澪は雷の防壁を二重にして、傷を塞ぐとともに負荷を軽減することにした。
 敵の攻撃は凄まじい威力だが、範囲攻撃であることと予め防具を揃えているので一撃で落とされることは無い。
 ならばこちらの動きが止まり、攻め手が失われることをこそ惜しんだ。
「んー。にゃら、あたしも予定を継続するにゃ」
 危険と言う意味では、タフな前衛よりも後ろに切り込まれた方が危険ではある。
 アイクルは歌を継続し、次第に声量を上げて範囲を拡大し始めた。
 後方も守れば後はガンガン行くだけだ。ならば護れている今は我慢して防御する時だろう。
「さて、援護くらいはしましょうかね。お行きなさいお嬢さん達」
「では遠慮なく!」
 リチャードは煙管を加えると、煙の代わりにグラビティで練り上げた精神波を吹き出した。
 まさしく煙の様にてきにまとわりつき、その隙を付いて鈴音たちが駆ける。

 まずは直線の鈴音が一太刀目、遅れてもう一人が空を迂回して飛び込む。
「上下から挟み討ちですよっ!」
「了解なのじゃ。まともに飛び込んでは刀で攻撃されて重傷になりかねんからのぅ」
 鈴音が放つは地磨りの残月。……と言えば聞こえは良いが下段斬りが引っ掛り蹴飛ばして強引に抜刀加速!
 振り上げられた刀を囮にして、ミミは光の翼を広げて襲いかかった!!
 更にテレビウムの菜の花姫が切り刻まれた木々やら散った花やらを投げつけて牽制攻撃を続行する。
「今です! 我は水と氷を司りし蒼き鋼の龍神。我が名において集え氷よ。凛と舞い踊れ!」
 居合い術の使い手である凛子が初めて抜き身を晒す。そして眼前に白刃を構えヒョウ、ふつと蒼龍の吐息を吐いてから瞬時に飛び出した。
 それは彼女の一族に伝わる龍の剣技のひとつ。刃に乗せた氷の息吹が消えぬ間に神速の斬撃で叩きつけ、その切り口を凍らせし魔性の剣。
 凍りついた傷口がまるで氷の華が咲くかのようだという。
『フフハハハ! ここは死地か……愉快愉快。これを乗り越えたらば更に強く成れるということよ!』
「頭どうかしてるんじゃない?」
「生き残れる奈良じゃが、恰好良いとは思うのぅ」
 不敵なモノ言いに対し、アルケミアとミミはそれぞれのペースで感想を浮かべた。
 流石にケルベロスに囲まれて余裕とは思えない。剛胆と言うよりは狂気の産物!
 どんな状況でも戦いに臨むように改造でもされているのだろう。いずれにせよ、戦いは佳境を迎えつつあった。


「これでも喰らうにゃ!」
 それから何度目かの攻防で、アイクルが激震させた大地が、血を割りながら迫る!
『なんのこれしき! 逝くぞ!』
「これを食らったら流石に危険ですね……。まあ、喰らったらの話ですが」
 敵はそれでも怯むことなく、リチャードに死の刃が向けられた。
 迫るは担ぎ抜刀、敵である悪路童子が持つ最強の技だ。
 だが少し前の攻防で後衛が狙われた時は、壁役の一人が防ぎ止めている。
 範囲攻撃ならまだしも、単体攻撃を壁役全員が防げないという可能性は低いだろう(単体攻撃ゆえに危険な威力ではあるが)。
『受けよ、真・夢魔刃剣!』
 背中に担いで長さを誤魔化した刀が、肩で峰を跳ねながら加速する。
 同時に右手柄元から左手柄尻に持ち手がシフトし、都合50cmから1m近い距離が延びる!
「くっ。耐性付きの眼鏡がなければ危いところでした。しかしこれで逃がしませんよ、そぉーい!」
 鈴音は受けた筈の刃が押し切られるのを感じて、頭を反らして致命傷を避け、肩の肉で挟み込んで血肉の白羽取りを敢行した。
 そして筋肉で刃をガッシリと掴んだまま、自由になった紅刀で横薙ぎに胴を薙ぐ。
 上がる血飛沫を裂ける空間が押しきることで、消しゴムのように消して行った。
『魅事為り。だがしかし!』
「暑苦しいよ。もうおやすみ」
 浅いか? ニヤリと笑った悪路童子は直も刀を振りあげようともがく。
 アルケミアはそこへ脇から忍びよりナイフを深々と脇腹へ埋めた。
 そして一撃離脱を掛ける際、グルリと刃を回転させて傷を留めている筋を切って行く。
『おのれ!』
 そこで敵の様子がガラリと変わった。
 形相こそ変わらないものの、膝をついて刀を杖に立ちあがる。
「膝を突いた? そろそろみたいですので、一気に攻め立ててしまいましょう」
「りょーかいなのじゃ」
 リチャードが剣を握って押し込みに入ると、今度はミミが豪砲放って牽制に出る。
 カンと弾かれた所を強引に落しつけ、そこへ仲間達が殺到した。
「やったー、インプもやってやるにゃ!」
 アイクルは棍をヌンチャックのように振り回して攻撃し、そこへキャリバーのインプレッサがひき逃げ。
 ドスンばすんと鈍い音がして敵の動きも遅くなる。
「傷は私が何とかしますので、攻撃をお願いします」
「えっと、じゃあ判りました……ありがとうございます」
 澪は掌底で真っ白な生体電流を菜々乃に打ち込むが、まるで撫で撫でされているような気分だ。
 残った傷はプリンがやってしまったので、菜々乃は再び流体金属を集中させて掴み掛った。

 巨大な金属の手が相手の動きを止めると、トドメの刃が振り降ろされた。
「これで決めます。蒼龍の奥義受けなさい!」
『ゆめ、外す事無かれ!』
 凛子は再び奥義を放つのだが、今度は鞘に納刀してから抜刀。
 神妙にして精妙、僅かに行った息継ぎに氷の息吹を載せて、抜刀と同時に首を落とす。
 ゴロリと転がる首からは、氷の花が赤く咲いて血は吹き出ることがなかった。
「さようなら。生まれ変わるならばどこかで、でなければいずれ」
「終った? あとは治療して帰えるだけかな?」
 凛子がキンと刀を仕舞うと、アルケミアは霧散するドリームイーターを眺めた。
「被害者の人を保護した方がよいかもですね」
「では修復を始めましょうか。みんなでやれば直ぐ終わりますよ」
「そうじゃのう。テレビでやってるような剣術をゆっくりみたいんじゃが。もちろん手当てはするからいけるかのぅ?」
 菜々乃と澪がそういってヒールを始めると、ミミは木々などの残骸を集め始める。
 サーヴァントも含めて全員で整理や治癒を行うと、戦場に残る傷痕はすっかり消え去った。
「抜刀の要諦は脱力と体の流れにあり。構えをしている抜刀術では抜刀すると予告しているようなものなので、普段の体勢から即抜ける抜刀術を開眼するといいのではないでしょうか?」
「この人の技はハイピード剣技だと思うので、今流行りの縮地とかどうでしょう。シュっと走ってズバです」
 全て終ったところで被害者の元に向かう傍ら、リチャードがそんな事を提案し鈴音は別のアプローチを口にした。
「どっちもで良いけど、あたしの華麗な戦いぶりを見せたいものにゃ」
 アイクルは二人の会話を聞きながら自分がいかに彼に戦うか胸を張る。
 それがどんなものであるかは別にして、この日の戦いも無事に終わった。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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