闇夜の交錯

作者:小鳥遊彩羽

「――ここか」
 何かに引き寄せられるような感覚と共に楝・累音(襲色目・e20990)が訪れたのは、とある山奥の村。だが、目の前に広がる風景は長閑な田舎のそれではなく、一言で言うならば『モザイク』だった。
 月の出ていない、夜。手にした明かりを掲げてみても、モザイクの向こうがどうなっているかの判別はつかない。
 暫し考えるような間。それから、累音は静かにモザイクへと足を踏み入れる。
「これは……」
 モザイクの内部は纏わりつくような粘性の液体で満たされており、更に、元の地形や建物などが捏ね繰り回されて繋ぎ合わされたような、歪な風景が広がっていた。
「――っ!」
 その時、不意に感じた気配と殺気に、累音は咄嗟に明かりを手放し刀を抜き放つ。
「このワイルドスペースを発見出来るとは、お前はこの姿に因縁のある者なのか?」
「……お前は」
 累音の目の前に現れたのは、影を纏った黒ずくめの男。それが『誰』であるかを思案する累音を鋭く睨みつけながら、男は尚も続けた。
「だが、ワイルドスペースの秘密を漏らす訳にはいかない。――ワイルドハントである俺の手で、死んでもらおう」
「……問答無用という訳か」
 落とした声に答えはなく、寧ろこれが答えだと言うように、男は累音へと襲い掛かった――。

●闇夜の交錯
 自らをワイルドハントと名乗るドリームイーターによる事件の報告が多く寄せられる中、とある山奥の小さな村を調査していた累音がそのワイルドハントに遭遇したようだと、トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)は急ぎ集ったケルベロス達に伝える。
 現地をモザイクで覆い、その内部で何らかの作戦を行っていたらしいドリームイーターは、累音の暴走時の姿をしており、このままでは累音の命が危ないとトキサは続けた。
「今から現地に向かうから、皆には累音君の救援と、ワイルドハントの撃破をお願いしたいんだ」
 ワイルドハントは累音に似た姿をしているが、刀を持たず、その身に纏う影のような力を使っての攻撃を主に行ってくる。戦いの場は粘性の液体で満たされているものの、行動に支障をきたすようなことはなさそうだとトキサは続けた。
 更に、時刻は真夜中だが、ワイルドスペースの内部は不思議と――人家の明かりまでもがバラバラにされて繋ぎ合わされた結果か明るくなっており、視界が遮られることもないだろう、と付け加えて。
「相手は累音君が暴走した時の姿を借りているだけの偽物だ。だから遠慮なく……と俺が言うのも何だけど、倒してきてほしい」
 ワイルドハント、及びワイルドスペースに秘められた謎は多いが、ヘリオライダーにも予知出来なかった事件に累音が辿り着くことが出来たのは、『敵』の姿とも何らかの関連があるかもしれない。
 ――けれど、今は何よりも。
「累音君を助けられるのは皆だけだ。――行こう」
 トキサはそう言って、ヘリオンの操縦席へと向かった。


参加者
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)
アラドファル・セタラ(微睡む影・e00884)
月織・宿利(ツクヨミ・e01366)
香・褐也(盲目ディストピア・e09085)
蓮水・志苑(六出花・e14436)
御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)
楝・累音(襲色目・e20990)
斑鳩・朝樹(時つ鳥・e23026)

■リプレイ

「うえ、……なにここ、気持ちわる……べちゃべちゃするし……へんに明るいのが、よけい気味悪いんだけど」
 ワイルドスペースへと足を踏み入れた途端身を包む不快感に、翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)は思い切り顔を顰めてへの字口。
「……ちぐはぐな世界だな」
 ずっと眺めていると酔ってしまいそうだとアラドファル・セタラ(微睡む影・e00884)は零しつつ、自然に溢れた山里の風景を早くも恋しく思っていた。
「それにしても一体何故、暴走姿を借りているのだろうな。……まあ、先ずは累音を救出することが最優先だが」
 アラドファルの声に、御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)がああ、と頷く。
「謎の多い空間だが、今は、楝さんの元へ急ごう」
 ――遠くて近い所から響く戦いの音。
 異質な空間にあって、それを辿るのは然程難しいことではなかった。
 音の聞こえる方へ目をやり、斑鳩・朝樹(時つ鳥・e23026)は静かに呟く。
「可能性の一つとは言え、自身の姿を奪われる事は……心が漣立つものでしょうね」
 半ば独り言にも似た響きに、蓮水・志苑(六出花・e14436)が小さく頷いた。
「もう一人の自分と対峙する……こう聞くと自分自身と向き合っていると聞こえは良いですが。ワイルドハントは姿を借りただけの偽者、気持ちは良くありません」
 不可思議な空間、偽物との対峙。そして、孤独との戦い。
 志苑自身も己のワイルドハントと対峙したからこそ、それが決して心地の良いものではないということは良くわかる。
「楝さんが心配です、早く行きましょう」
「存外、累音も待ちくたびれとるかもしれんしなあ」
 香・褐也(盲目ディストピア・e09085)の幾分かのんびりとした声は、張り詰めた場の空気をほんの少し和らげるよう。
「うん、……急ごう」
 案じるような瞳を向けるオルトロスの成親をそっと撫でてやりながら、月織・宿利(ツクヨミ・e01366)は静かに、だが確りと頷き――そして、ケルベロス達は駆け出した。

 影が踊り、焔が舞う。目の前にいる『それ』は踏み出す足の動き一つとっても完全に別の存在だとわかるのに、その姿に否が応でも押し込めていたものを暴かれる。
 何もかもが歪んだ世界で己と向かい合う黒ずくめの男に、楝・累音(襲色目・e20990)は舌打ちひとつ、焔に焼かれた腕を押さえた。
「因縁ねぇ……その血生臭い格好を選ぶとは、貴様も相当悪趣味だな」
「――死ね」
 累音の声にただ一言、ワイルドハントはその身に纏う影を揺らめく蝶へと変える。
 対し、累音は放たれた蝶ごと貫くように漆黒の棍を繰り出した。
「そんな所まで真似るのか。ワイルドハントとやらは」
 黒蝶が触れた先から命を抉り取られるような感覚に僅かに眉を顰めながらも、一瞬の攻防の最中に目についた――右腕に走る切り傷と火傷の痕に、込み上げる不快感を隠すことなく吐き捨てる累音。
「……何にせよ、此処で貴様になんぞくれてやる命はないのでな。抗わせて貰おうか」
 今はまだ、護らなくてはならぬ者がいる。やらなければならないことが、残っている。
 例えこれまでひた隠しにして来たこの姿を――血で汚れた手を持つもうひとつの自分を、大切な仲間達に知られてしまうとしても。

「――かさね!」
 ワイルドハントが踊らせた焔の前に、飛び込んできた小さな人影。
「……っ、宿、」
 見間違えるはずもない宿利の姿に、累音は思わず息を呑む。
 一方の宿利も、累音と良く似た姿のワイルドハントを前に、驚きを隠せずにいた。
 その出で立ちは、宿利も知っているものだった。出逢ったのは偶然、けれど忘れようもない、微かに鉄の香りを纏った――彼のもう一つの姿。
 だが、『それ』は彼ではない。
「――今度は、私がかさねを護るよ」
 これまでずっと護られてばかりだったから。だから今度は私の番と、宿利は累音へ笑い掛ける。
「邪魔をするな!」
 ワイルドハントが怒りを滲ませ、ケルベロス達を睨みつける。そうして宿利へ襲い掛かろうとしたが、すかさず横合いから踏み込んだ蓮の縛霊手の一撃を喰らい、網状の霊力に囚われた。
「知り合いの姿で現われるのは、本人でなくとも不愉快だな」
 蓮が落とした声に、オルトロスの空木もワイルドハントを威嚇するように唸りながら神器の瞳で睨みつける。正義の炎に包まれた夢喰いの男へ、褐也が叩き込んだのは流星の煌めきと重力を纏う蹴りの一撃。
「無事、みたいやな。よう粘ったなあ」
 累音の様子を確かめ、安堵の息と共に褐也は笑う。見殺しにするつもりなど毛頭なかったし、このような場所で命を落とすなど、哀れどころではないと。
 その間に他のケルベロス達も素早く布陣し、ワイルドハントへと向き直った。
「私もお手伝いさせていただきます」
 大切な友である宿利にとって家族も同然の累音は、志苑にとっても恩のある存在で。
 だからこそ力を尽くすことは厭わないと、志苑は雪花舞う氷華の刀に雷の霊力を纏わせ、神速の突きでワイルドハントを穿った。
「手加減はいたしません。人真似をした報い、受けていただきます」
「累音、かさねというのね、あなた」
 ルーンの呪力が光り輝く斧を振り下ろしながら、ロビンは確かめるようにその名を呼んだ。
「自己紹介は、あとで。死んでないなら、一旦うしろに下がってちょうだい」
 そう、今は目の前の『敵』を倒すことが先。とは言え、敵は自己紹介をする間さえ与えてくれそうにはなかったけれど。
 もっとも、互いにケルベロスであるということがわかれば、それだけで共に戦う理由としては十分で。
「より真っ黒い方が敵、対してそんなに真っ黒じゃない方が累音……と」
 棍での一撃を呉れて、間違わぬようにと真剣な表情で両者を交互に見やるアラドファルに、ロビンはぽつりと続けた。
「……この殺気じゃ、相手を間違える心配は、なさそうよ」
「――恩に着る」
 この場へ集ってくれた仲間達へそう告げて、後方へと下がる累音。
「ご無事で何より。反撃と参りましょうか」
 本当にと頷きひとつ、朝樹は素早く魔術切開を施し、累音がワイルドハントから受けた傷の殆どを癒し切る。
「対八人になった訳やけど、これでも累音を狙うん? ……口封じとか、大変やんなあ」
 挑発するように手をひらひらと振る褐也を睨みつけるも、ワイルドハントの答えは決まっていた。
「ワイルドスペースの秘密を知ろうとする者は、一人残らず死んでもらう!」
 剥き出しの殺意にも動じることなく、朝樹は嫣然と微笑んで告げた。
「いいえ、偽物さん。倒されるのは、……あなたですよ」

 敵は本人ではないから、こちらとしては何の遠慮もなく叩き潰すことに変わりはなく。また、これくらいで彼が惑わされたりはしないと知っているから、その辺りの心配もないのだけれど。
 暴走した自分と向かい合うというのは、自分と同じ姿と戦うというのは、果たしてどのような心地だろうと蓮は考えながら、ちらりと累音に目をやり、彼の攻撃に続いた。
「……来い、くれてやる。代わりに刃となれ」
 累音が刻んだ星の輝きを散らす蹴撃に合わせ、蓮は自身の霊力を媒体に古書に宿る思念を己の身に降ろす。形をなした赤黒い影の鬼が巻き起こした風が雷を伴って夢喰いを切り裂くと、空木が神器の剣の一撃を見舞い、更に、
「続きます、御堂さん」
「うん、私も。成親もお願いね」
 続いた志苑の手の中で非物質化した刀から霊体のみを斬る斬撃が放たれ、宿利が瞬時にしてワイルドハントとの距離を詰めた。
 ワイルドハントの腕の傷を視界に捉え、宿利は一瞬顔を歪める。
 それは、二人がまだ幼かった頃、累音が宿利を守るために負った傷。
 ――『それ』は、姿を借りただけの偽物が軽々しくつけて良いような物ではない。
「どんなに姿を似せても……貴方は、偽物。私の大切な家族を、これ以上傷つけさせたりはしないから」
 花のように可憐に、一瞬に。急所を切り捨てる剣撃と成親が見舞った神器の剣による一撃に、ワイルドハントは顔を歪ませ、黒の花弁を踊らせた。
「……っ、」
 前衛へばら撒かれた花の毒を吸い込んだ宿利は思わず口元を抑えるが、すぐさま朝樹が地面に展開させた黒鎖が癒しと守りの魔法陣を描き出す。
「背中はお守り致します。惑いなく全力でどうぞ」
「――ん」
 朝樹の言葉に頷き、ロビンは一振りのナイフを手にワイルドハントへ迫ると、
「くちづけするわ、あなたに」
 そっと唇を寄せた刃で、影のような黒ずくめの身体を切り裂いた。
 仲間の顔をしているから、少しばかり心が痛むのは否定出来ない。
 けれど、間違いなく敵だとわかるから。
「悪いが容赦はしない」
 夢喰いの懐へ飛び込んだアラドファルが螺旋を籠めた掌を触れさせる。内側から爆ぜる衝撃に血――ではなくモザイクの塊を吐き出したワイルドハントに猟犬の如く黒鎖を絡めながら、褐也は至極残念そうに肩を竦めてみせた。
 噎せる血の香りはこんなにも心を昂ぶらせてくれるというのに。
「なんや、興醒めや」
 血ではない、そのモザイクが突きつけてくる――累音の姿を借りただけのそれがただのデウスエクスに過ぎないという現実が、途端に心を冷めさせる。
(「これじゃ、人を殴ってる感覚がないやないか」)

 一対一ならばワイルドハントに分があったかもしれない。
 だが、八名のケルベロスに対し一体のワイルドハントでは、その差は明白だった。
 死角から踏み込んだロビンが影の如き斬撃で密やかに急所を掻き斬ると、一気に増やされた状態異常にワイルドハントは殊更に動きを鈍らせる。
 そんな夢喰いを見て、ロビンは常と変わらぬ茫とした声で告げた。
「ねえ、ずいぶんと足も腕も重そうね。そんなので、わたしたちに、ついてこられる?」
「この程度……!」
 ワイルドハントは尚も強情な態度を崩さないが、終焉は近いだろうと朝樹は感じていた。
 ゆえに、これまで仲間達の癒しに徹していた朝樹は薄紅の霧を呼び寄せる。
「夜見つ国へ、散り逝きなさい。……散り逝く極まで、惑い続けなさい」
 刀を置いた刀剣士は何を刃と変えるのだろう。
 荒ぶる魂か、血濡れた手か。その答えをこの『影』は持ち合わせてはいない。
 闇と紛う姿も、本物と対峙すればやはりただの影でしかないのだ。
「が……ッ!」
 薄紅の不明瞭な視界に惑う夢喰いを覆う、触れられぬ霞の檻。満ちる混沌に神経を支配されて固まるワイルドハントへ、志苑が凍れる刃を振るう。
「舞うは命の花、訪れるは静謐、白空に抱かれ終焉へお連れいたします」
 降り頻る六花、花開く白雪、――それは、散り逝く命への献花。
 志苑が繰り出す氷の斬撃が、雪の花弁を散らしながら幾つもの軌跡を描いて夢喰いの男を切り刻んだ。
 自らの消滅が近いことを悟ったワイルドハントは一瞬たじろぐような動きを見せるものの、目の前に立ちはだかった褐也の瞳に宿る光に射竦められたかのように身を強張らせる。
「――逃がさへんよ」
 口許に笑みを、けれど瞳には残虐な光を湛え、褐也はぞっとするほどに白く光る月を呼び寄せた。
「狩りに興じる奴は、直ぐに獲物に代わるんやで」
 月に隠れて蠢く闇が、影の鎖を編み上げてワイルドハントを縛る。歪みと狂いの闇に囚われた夢喰いの身体へ、アラドファルは星を落とした。
「ただのコピーなら良いが、姿を借りることが――心に踏み込んだということならば」
 尚更許すことは出来ないとアラドファルが告げた刹那、落ちた星が線で繋がり、痛みを走らせる。
「おのれ、おのれぇ……っ!」
 定められた終焉に抗えぬと知った夢喰いの男は、せめて最期に一矢報いようと、残された力の全てを振り絞り累音目掛けて黒き蝶の群れを踊らせた。
 だが、その呪詛が累音に届くことはなく。
「これ以上は傷つけさせないって、言ったでしょう……!」
 命蝕む蝶の羽ばたきを受け止めた宿利は、その瞳に強い光を灯して男を見つめ、揺らがぬ想いを口にする。
 命を吸い上げても、最早ワイルドハントに力は残されておらず。
「楝さん」
「お願いします」
 鉦吾の形をしたスイッチに指を滑らせれば、累音を鼓舞する色鮮やかな風が吹く。
 そうして蓮は累音を呼び、志苑も刀を収めながら一歩下がって。
 例えその正体がドリームイーターに過ぎなくとも、因縁のある者が自らの手で決着を着けるべきだろうと、想いを、力を託すように。
 仲間達が見守る中、累音は静かにワイルドハントの元へ歩み寄る。
「……ケルベロスの、――俺の姿を借りたのが、運の尽きだったな」
 そして、累音は自らの霊力を籠めた刀身から、青い炎の蝶を踊らせた。
 揺らめく蝶はふわりと夢喰いに触れて、二度と醒めない夢の深淵へ引き摺り込むように、その心を、命を奪い取る。
 終焉の訪れと共に黒ずくめの身体は忽ちの内にモザイクと化し、砂のように崩れて消えていった。

 ワイルドハントの消失と共にワイルドスペースも消え失せ、周囲の風景は長閑な山村のそれへと戻った。
「あの姿は……どうか忘れてくれ。その方が恐らく幸せだ」
 累音がぽつりと落とした声に仲間達はただ頷き、誰もそれ以上を問うことはしなかった。
「とりあえず……お風呂はいりたいねえ」
 先程まで身を包んでいた粘性の液体の感触がまだ残っているように思えて。ロビンはふるりと身を震わせながら、何とはなしに周囲に視線を巡らせる。
(「姿に因縁のある者……その言葉が何だか引っかかる」)
 ワイルドハントの出現は、場所よりも累音、あるいはケルベロス自身に関係があるのだろうかアラドファルは考える。その答えはまだ得られそうにはないけれど、こうも同じことが続くようでは心地良く眠れないのも確かで。
 早く解決すると良い――そう願うように、アラドファルは星の瞬く夜空を見上げた。
「楝さんも、皆さんもご無事で良かったです」
 ようやく安堵の息をつき、微笑む志苑に蓮も小さく頷いて。
「さーて、帰るでー。五体満足かいな?」
 怪我を負った者にヒールを施しつつ、褐也はのんびりと笑う。その表情や気配に、戦いの最中に垣間見えていた狂気はもうなかった。
 朝樹が伸ばした手に、触れるものは何もなく。既に閉じてしまった異界の名残すら、まるで最初からなかったかのようで。
 自身もこの淫魔の身が仮初の姿なれば、いずれ『そういった』存在と向き合う時も、もしかしたら来るのかもしれない。
 ふと思い描いたのは藍色の人影。けれどそれ以上思考することはなく、朝樹は何もかもを普段通りの柔い笑みの中に仕舞い込んだ。
「ええ、帰りましょう」

 家族を、大切なものを護ることが出来たと、累音の無事に宿利も安堵し、自分のそれよりも大きな彼の手を引いた。
 帰りましょう、と笑えば、累音も確りと頷き。繋がれた手を握り返すと、己のために力と想いを尽くしてくれた仲間達へと笑って告げた。
「お蔭で助かったよ、世話をかけて済まなかった。――では、帰ろうか」

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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