静寂切り裂く十五夜草

作者:なちゅい

●人は自然に還ろう計画
 十五夜草といえば。
 一般的にはシオンと呼ばれる植物で、オニノコシグサ、オモイグサなどとも呼ばれる。
 高さは成人男性の平均身長よりも高く、中央は黄色の薄紫色の花を咲かせる。丁度、中秋の名月くらいの時期に咲く事から、十五夜草とも呼ばれている。

 鳥取県の山間。
 写真家、門口・果歩が1人車を走らせてやってきていた。
 彼女がわざわざこんな場所までやってきたのは、十五夜草を撮影する為。あまりお目にかかることのできない植物ということもあり、風景の撮影を行いながらここまでやってきたのだ。
「やっぱり、空気が美味しいな」
 大きく深呼吸する彼女は高台からの景色を一望する。遠く、日本海まで見ることができた。
 一通り眺めた彼女は目的の十五夜草を発見し、撮影を始めたのだが……。
 その十五夜草の周辺にいつの間にか、大きな葉を翼のように背負った少女が現れ、十五夜草に謎の花粉を振りかけていく。
 キシャアアァァァッ……。
 十五夜草は見る見るうちに巨大、異形化していき、奇怪な声を上げ始めた。完全に攻性植物と成り果ててしまったのである。
「えっ……!?」
 何が起こったのか分からず唖然としていた果歩へと攻性植物化した十五夜草が襲い掛かり、自身に取り込んで体の一部としてしまう。
「立派な攻性植物になりました♪ にへらー」
 その少女……攻性植物の鬼胡桃の姫ちゃんは脱力しそうな笑みを浮かべ、この場から消えて行ったのだった。

 季節も移り変わり、衣替えの時期になってきた。
 ケルベロス達の服装も、半袖から長袖へと様変わりしていたようだ。
「ようこそ、来てくれてありがとう」
 そんな中、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はいつもの服装と笑顔でケルベロス達を出迎えた。
「野に咲く十五夜草が静寂を破り、事件が起きると聞いたが」
 集まるケルベロスの中から、樒・レン(夜鳴鶯・e05621)がそんな話を持ちかける。リーゼリットもそれを聞いて、うんと頷く。
 現場は、鳥取県の山間。
 植物を攻性植物に作り替える謎の胞子をばら撒く、人型の攻性植物が出現するという。
 その胞子を受け、野山に咲いている十五夜草が攻性植物に変化し、その場にいた女性写真家を襲って宿主にしてしまう。
「依頼としては、この攻性植物の撃破だね」
 攻性植物は1体のみで現われ、配下などはいない。
 女性の体から巨大化した十五夜草が突き出たような姿をしており、3つの形態を使い分けて襲ってくる。
 蔓触手、埋葬といった比較的よく目にする形態の他、怪しげな香りを振り撒いて相手に幻惑を見せつける形態で相手の攻撃の手を止めてくるようだ。
「取り込まれた人は攻性植物と一体化していて、普通に攻性植物を倒すと一緒に死んでしまうよ」
 助けるには、相手にヒールをかけながら粘り強く戦い、攻性植物を攻撃していく必要がある。そうすることで、戦いの後に取り込まれた女性を救出できる可能性が生まれるのだ。
 現場は鳥取県の山間にある一本道の道路。その脇の野山で交戦することになる。ほとんど人が通らない場所なので、人払いの必要はない。
「あと、人型攻性植物の姿はこの場にはもうないようだね」
 これまでとは違い、人型の攻性植物が介入してきた事件。その相手のことは気になるが……。
「今は、攻性植物の撃破を優先してほしい。できるなら、寄生された女性も救出してあげて欲しいかな」
 ケルベロス達にそんな要望を告げたリーゼリットは改めて、よろしく頼むよとメンバー達に握手を求めるのである。


参加者
灰木・殯(釁りの花・e00496)
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)
楚・思江(楽都在爾生中・e01131)
御門・愛華(竜喰らいの落とし子・e03827)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)
エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)

■リプレイ

●黒幕は気になれど……
 鳥取県山間部。
 この地へと降り立ったケルベロス達は事件が起こるとされる現場を目指し、山を登っていく。
「攻性植物の寄生事件は前からあったけど、最近のは黒幕が居るんだよね」
 その途中、赤頭巾姿の少女、フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)が仲間達へと確認するように話す。
「攻性植物が人型を成して現れる……。季節の移りと共に敵の思惑も変わっている、その兆候なのかもしれませんね」
「……攻性植物を育成する存在、放っておけばかなりの脅威になりかねませんね」
 眼鏡の奥から柔和な表情を浮かべ、灰木・殯(釁りの花・e00496)がそんな推論を語るのに、金髪のポニーテールを揺らして歩く、ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は、黒幕である人型攻性植物の活動に警鐘を鳴らす。
「……今までは野生動物と出会う事故みてえなもんだと思ってたが、意図的に操ってるやつがいるってぇのは、見過ごせねえな……!」
 ただでさえ声の大きい、楚・思江(楽都在爾生中・e01131)の発した言葉は山間だとよく響く。一部はこだまとなって聴こえていた。
「だが、その前にまずは……一仕事だな!」
 思江の言葉と共に、メンバー達は道路脇、背丈の低い草が生える場所で蠢く十五夜草の攻性植物を発見した。
 キシャアアァァァッ……。
 奇怪な声を上げる敵へ、ケルベロス達は近づいていく。
 狼の獣人、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は会敵と同時にその攻性植物が伸ばす蔓触手を切り払うべく、捕食モードとしたブラックスライムを飛ばす。
 だが、敵も素早い。後方に飛びずさることで、攻性植物は強襲したヴォルフの一撃から逃れて見せた。
 付近の植物を出来る限り傷つけぬようにと気遣い、フィーは森の小路を使う。
「果歩さん、助けに来たよ」
 フィーが呼びかけた相手は、攻性植物の苗床となってしまった女性写真家、門口・果歩だ。道中で彼女は果歩のカメラを回収していた。
「中秋の名月に、その時期に咲く花たぁ、風雅なもんだ」
 思江が言うように、十五夜草……本来は、綺麗な薄紫の花を咲かせる植物のはず。
「……だが、お前さんはちと違うみてぇだな」
 目の前の植物は奇形と成り果て、人間に寄生する存在と成り果てている。
「気になることは多々あるが……。むざむざと、犠牲を出してやる訳にはいかぬ」
 必ず救出をと、その身を包むほどに巨大な翼を持つロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)は構えを取る。
「尻尾掴む為にも、果歩さんを助けないとね!」
「ええ、まずは目先の患者を救わねば」
 黒幕の存在は一端脇に置き、フィーが目の前の女性の救出に臨む。
 周囲を見回す殯。ほとんど人が通りがからない場所ということもあり、全力で攻性植物の対処に当たれそうだ。
「さあて、こっからは持久戦だ、みんな、準備はいいか?!」
 大声で仲間達に確認する思江の呼びかけに、左腕に撒いていた包帯を解く御門・愛華(竜喰らいの落とし子・e03827)は大丈夫と頷いた。
「何の罪のない人が犠牲になる世界なんて、絶対に認めないよ」
「これ以上、犠牲者をだすのはさけなければ。……かならずたすけましょう」
 ぼんやりした印象のエドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)だが、彼もまた女性の救出を目指して動き出す。
 キシャアアァァァッ……。
 敵意を見せるケルベロス達に対し、攻性植物は一行を新たな獲物と認識して蔓触手を伸ばしてくるのだった。

●寄生された女性の救出を
 攻撃を仕掛ける攻性植物だが、数人のケルベロス達がそれよりも速く動く。
「ごめんなさい。絶対に助けるから、我慢して下さい!」
 愛華が包帯を解いた左腕から獄竜ヒルコの力を解放する。
「いくよ、ヒルコ」
 彼女は呼びかけた左腕を竜の腕に変化させ、攻性植物へと叩きつけて行く。
 相手の回復メインでの立ち回りを考えるロウガも、初撃は攻撃を行う。
 コートの裏から落としたライフルを足で蹴り上げた彼は舞い上がったその砲身を手にし、敵に照準を定めて。
「煌めけ!! 勇気を宿した調停の光!!」
 砲塔に集めた光をロウガが一気に撃ち放つと、命中した攻性植物のグラビティを中和してその活動を弱めていく。
 思江は仲間の攻撃で宿主が弱っていることを察知し、直接施術を行ってその体力の回復を行う。
 まだまだ戦いは始まったばかり。出来る限り、寄生された女性の体力は気遣う必要がある。
 キシャアアァァァッ……!
 ただ、その寄生主であり、一体化している攻性植物も体力を取り戻すこととなる。そいつは蔓触手を広げ、ケルベロスへと襲い掛かってきた。
 そこでUFO型のドローンを展開させて前に出たのは、チームで最も小柄なエドワウだ。
「ううっ……」
 蔓触手を受け止めた瞬間、エドワウは光の盾を展開するが、衝撃を殺しきれ切れずに打ちつけられてしまう。
 自身を省みぬエドワウを気にかけ、テディベア型ボクスドラゴンのメルが自らの属性を注入していた。
 こういった危険な攻性植物を生み出す黒幕について、ウォーグは改めて脳裏にちらつかせる。
「……いえ、今は被害者を救出することに全力を尽くしましょう」
 彼女も敵の攻撃に身構えながら、ボクスドラゴンのメルゥガがブレスを吐きかけるのに合わせて、竜と化した腕で敵の蔓触手を薙ぎ払う。
「長期戦は覚悟の上。着実に挑んで参りましょう」
 暴れ狂う相手に対し、殯は不敵な笑みを浮かべる。
 攻性植物は、そう簡単に寄生した女性を手放したりはしないだろう。だからこそ、女性の体力を維持させつつ、攻性植物を徐々に弱らせねばならない。
 敵に鋭い視線を向けた殯は仲間と連携して対処に当たり、星型のオーラを蹴り出すことで攻性植物の守りを打ち砕く。
 ほぼ同タイミング、フィーは仲間の回復の為にと、傷つくエドワウに更なる光の盾を展開していった。
 その間、ヴォルフは被害者、門口・果歩の容態を見つめる。
「すぐに危険な状態になる、というわけではないだろうが……」
 このペースで10分以上交戦が続くとは思えぬが、常に女性の状態は見続ける必要があると、ヴォルフは判断する。
 自身の主観による女性の状況を仲間達に伝えたヴォルフは、「奈落」の名を冠した偃月刀(えんげつとう)に稲妻を纏わせて素早く突き出す。
 身体に痺れを走らせた攻性植物は地面に根を下ろし、この近辺の侵食を始める。
 シャアアアアァァァッ……。
 この身体は渡さない。ケルベロス達には、攻性植物がそう主張しているようにも見えたのだった。

 十五夜草に取り付いた攻性植物は、相当な自信家なのだろうか。地面の侵食し、ふんぞり返っているようにも見える。
 ウォーグはそんな敵の態勢を崩す為、竜騎の御旗・聖槍形態を突き出し、ポニーテールを揺らしつつ加速して敵の根元を狙う。
 確かに敵の足止めには成功できたが、やはり寄生された女性が気になるところ。
「ちょっと攻撃しすぎだよ」
 フィーの呼びかけを受け、殯は攻撃の手を止めて回復に当たる。魔術切開とショック打撃に女性は小さく呻くが、それでも幾分か体力を取り戻していたようだ。
 再び攻撃に動き出す攻性植物。女性の頭上に咲いた花々を小刻みに揺らすのを見たヴォルフが、牽制の為にと近場の小石を投げつけていく。
「気をつけろ、何か来るぞ」
 ヴォルフはそのまま、仲間へ呼びかける。
 根の動きを刹那止めはしたが、攻性植物は体勢を崩しながらも頭上の花から怪しげ香りを振り撒いたのだ。
 身構える愛華。その手前に飛び出すウォーグが代わりに香りを吸い込むこととなる。彼女は何か幻を見たらしく、攻撃の手を鈍らせてしまっていた。
「周りを削ります」
 左手の魔竜と右手の虹龍の指輪にグラビティ・チェインを纏わせ、愛華は眼前の相手へと殴りかかっていく。
 その時、女性の表情が険しくなったのを見て、ロウガはすかさず癒しに回る。
「舞うは許しの花、癒しの円環――祝福の五色、其の身に宿りて闘う力に――全てはやがて還る刻(イノチ)の為に――」
 ストレートの髪に咲かせた薔薇から、ロウガは紅・蒼・紫・黒・白の花弁を舞わせる。彼は相手の時間に働きかけることで、その傷を癒した。
「しっかりしろよ、今助けてやるからな!」
 思江もまた緊急手術を重ね、女性の回復に入る。
 回復攻撃が繰り返される中、エドワウもまた状況を見ながら、キャットスタンプで相手を思いっきり蹴り付けて足止めしようとした。
 シャァァァ……。
 少しずつ、攻性植物は動きを鈍らせているが、なかなかに戦況が大きく変化しない。ケルベロス達は辛抱強く、敵を回復させながら攻め立てていく。
 今回、後方から戦況を俯瞰するフィーは、過剰攻撃、回復過多を気がけて、仲間達へと声をかける。
 その上で、状況が好転するきっかけを待ちながら、彼女は仲間達に緊急手術と光の盾を主に繰り返していった。

 攻性植物が侵食する野山の上、ケルベロスの戦いは続く。
 殯は禍々しい形をしたナイフ「朱殷」を振るい、攻性植物に切りかかる。
 最小限の動きで繰り出される彼のナイフ捌きは非常に的確であり、さながらオペを行うかのようだ。
 さらに、エドワウが相手の出方を伺いながら、斧を強く叩きつけ、女性の足元から伸びる根元へと叩きつけた。続き、ボクスドラゴンのメルは封印箱に入り、渾身の体当たりを繰り出す。
「壊しの剱、逃れ得ぬ過去を抉り裂く!!」
 ロウガは手にする星辰の剣を大きく振るい、攻性植物の根元を切り払う。その度に敵は暴れ狂い、前線メンバーを強く攻め立てる。
(「撃破優先にならぬことを願うばかりだが……」)
 現状は、ウォーグ、エドワウが持たせてくれている。ボクスドラゴンのメルゥガも盾となるメンバーの回復に注力してくれていたようだ。
 思江も一行の方針が撃破切り替え……つまりは女性の救出断念という決断に至らぬかどうかと気がけながら、大きく息を吸い込む。
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおあああっっ!!!」
 山にこだまする思江の雄たけび。その轟音は攻性植物の体に痺れを与える。
 シャァァ、ァァァ……。
 だが、攻性植物はぎこちない動きで再度根を広げ、周囲の侵食を進める。ウォーグは自身の考えが塗り潰される感覚に耐え、日本刀を手に敵の体へと切りかかった。
「…………」
 攻性植物の攻撃に耐える仲間へ光の盾を展開させ、フィーは攻性植物を注視し続ける。
 その時、敵の頭上や体から生える花や蔓触手がだらりとしなだれ、女性の体から剥がれかけてきていた事に気づく。
「もうちょっと我慢してね! 諦めちゃ駄目だからね!」
 フィーは女性に向かって呼びかけた。後一押し。メンバーは皆、それを察して攻撃に転ずる。
 ヴォルフは女性に取り付く攻性植物目掛け、殺意を向けた。
 それは、純粋な『殺す為の対象』に対する興味と好奇心。
 救出対象の体調を考えずに済むのであれば、後はその殺意を攻性植物へとぶつけるまでのこと。
 戦闘狂であるヴォルフは最も火力の期待できるブラックスライムでの一撃で攻性植物の身体を飲み込もうとする。
 シャ、アァァァ……。
 だが、攻性植物はただでは倒されまいと、大きく体を動かして抵抗する。
 そんな攻性植物など目もくれず、愛華は両手の「虹龍の涙」と「魔竜の瞳」を光らせ、光の巨人に変身した。
「もう大丈夫だよ。おねえちゃん」
 愛華は寄生された女性の体を優しく抱きしめる。
 アアァァァァ…………。
 眩い光りに灼かれた攻性植物はついにうな垂れ、瞬く間に枯れ果てていく。
 倒した攻性植物に興味をなくしたヴォルフが目を背けると、一陣の風がその残骸を散らしてしまったのだった。

●もっと素敵な写真を
 攻性植物がいなくなったことで、エドワウが周囲に円盤型のドローンを飛ばす。それらは戦場となった野山にヒールを施し、侵食された大地を元に戻していく。
 そして、その一部は倒れた門口・果歩の周りを飛び、回復に当たっていた。
 周囲に癒しの雨を降らせていた思江も、果歩に緊急手術を施して介抱する。
 さらに、ロウガが五色の薔薇の花びらを果歩の頭上に舞わせていく。
 その時、彼女が目覚めたことで、シャイなロウガははにかんでみせた。
「門口・果歩さんですね?」
 殯は相手の身元を確認した上で、事情説明を行う。
「行楽シーズンも、植物の周囲に出向く際はご注意を。『何事も備えあれば憂いなし』と言いますから」
 その上で、殯は昨今の攻性植物の活動について伝え、注意歓喜を行っていた。
「あとこれ、カメラ! 大事なものだよね」
 紫色の薬液の雫を振り撒いて周囲のヒールに当たっていたフィーも、果歩に駆け寄ってカメラを手渡す。
「写真が大丈夫か、確認お願いします」
 愛華がそう促すと、果歩は機材を含めて確認する。壊れた部分は愛華が光の盾を展開させて補修していく。
「果歩さんて、写真家さんなんだって?」
 すでに仲間達が果歩にヒールを行っていたこともあり、フィーは個人サイトなど彼女の写真家としての活動について話すことにする。
「あの、よければ、お写真みせてくれませんか」
 それに、エドワウも好奇心から興味を示す。
「おれ、風景の写真みるの、すきなんです。いったことないところに、散歩してるような気がして……」
 それならと、果歩はSNSなどにアップした写真をケルベロス達に見せてくれた。
 別の山々や、清流、海の光景。自然のありようをファインダーに凝縮した写真が並ぶ。
「いい写真ですね……。とってもよく撮れて綺麗です」
 愛華もエドワウも、しばしそれらの写真に目を輝かせていた。
「多少の災難はあったが、お前さんのお陰で俺ぁこんな花があることを知ったんだ……。この花が月に似合うってのもな」
 そんな中、思江が周囲を見るよう促す。幻想に交じり、野山には十五夜草が花を咲かせていた。
「だから、これからも色んな写真を撮って、新しいものと出会わせてくれやな!」
「……あのね、怖かったと思うけど、めげずに素敵な写真、撮り続けて欲しいな」
「ありがと」
 思江に合わせ、フィーもフォローの言葉を口にすると、果歩はゆっくり立ち上がる。
 ケルベロス達の激励に気を良くした彼女は早速、十五夜草に近づいてシャッターを切り始めたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
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