悪夢の強制脱衣

作者:雷紋寺音弥

●服なんて着ていられるか!
 既に廃墟と化して久しいビルの一室で、なにやら怪しげに蠢く影が。
 羽毛の生えた鳥頭の異形を中心に、パンイチ半裸で集まっている男達。どうやら、今日も今日でビルシャナが、また頭の痛くなるような教義を広めているらしく。
「上着に下着……その衣服が何であれ、俺は通りすがりの他人が着ていた衣服という衣服を、通り魔的に破りまくってきた! 場合によっては、強制的に脱がせても来た!」
 そのため、今では通り魔かつ変質者として警察に追われる身。だが、それでもよく考えて欲しいとビルシャナは続けた。
「俺は衣服という拘束具に縛られた愚かな人間を、原初の姿に解放してやろうとしただけだ!」
 仮に、これが人間の血を好む殺人狂だったならば、衣服どころか命まで奪われていたはず。それに比べて、何と自分は優しいことかと、どこか陶酔したような表情になってビルシャナは続け。
「それに、考えてもみるがいい! 今の衣服はとにかく長持ちするものが多いが、それでは経済が停滞して回らんではないか!」
 衣服を破られてもなお衣服を求める者は、新しい衣服を買うために金を使い、それが経済の発展にも貢献するだろう。つまり、自分は人々の購買意欲を奮起させ、新たなる消費を生み出しているのだから、どちらにしろ間違ったことはしていない。そう言ってドヤ顔で語るビルシャナに、周囲のパンイチ男達も、何の疑問も持っていないようで。
「そうだ! 人間が太古の昔に忘れた心を思い出すため! もしくは、経済を回すため! 俺達も衣服を破って破って、破りまくってやるぜぇぇぇっ!!」
 恐ろしく傍迷惑な教義に賛同する信者達の叫びで、廃ビルの中には異様な熱気が漂いつつあった。

●服破り通り魔
「うぅ……。最近、ようやく変な人達がいなくなったと思っていたら、またこんなビルシャナが……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、恐ろしく何かに怯えた様子で、自らの垣間見た未来について語り始めた。
「榊・凛那(神刀一閃・e00303)さんの心配していた通り、通りすがりの人のお洋服を無理やり脱がせたり、破いたりするビルシャナが現れました。その、ビルシャナの主張なんですけど……人間に原初の心を思い出させたり、新しいお洋服を買わせたりするためなんだから、何も悪いことじゃないっていうもので……」
 なんというか、この時点で無茶苦茶な話だった。要するに、変質者の通り魔が自分の悪事を棚に上げ、あまつさえ正当化しているだけではないか。
 もっとも、こんなビルシャナでも、信者を連れているというのだから頭が痛い。いったい、何をどう勘違いすれば、こんなやつの話に耳を傾けてしまうのだろう。
「ビルシャナの周りには、信者になった男の人達が10人います。その人達の格好なんですけど……えっと……全員、パンツ一枚で、後は何も着ていなくて……」
 ねむが思わず言葉を濁した。まあ、そりゃそうだろう。もうじき寒い季節の到来だというのに、身の程知らずというか、なんというか。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要ですけど……普通に説得しただけじゃ、全然聞いてくれないと思います」
 ビルシャナの影響力は極めて強く、一度でも魅入られてしまうと、正論など通用しなくなってしまう。重要なのはインパクトなので、彼らの目を覚ますための、衝撃的な説得を行う必要がある。
「戦いになると、ビルシャナは縫い目の弱い部分を狙って攻撃したり、回転して突撃したり、流れ星みたいな光を飛ばしたりして、お洋服を破こうとしてきます。それと、上手に説得できていないと、ビルシャナの配下にされていた人達もサーヴァントみたいな感じになって、戦いに参加して来ちゃいます」
 中には鋏やカッターナイフを持っていたり、パンツ脱がしの達人を自称したりする者も混ざっているが、しかし彼らの戦闘力は最弱レベル。そのため、下手にビルシャナを倒す前に倒してしまうと、簡単に昇天してしまう。
「こ、こんな人達が増えたら、ねむもお洋服を破かれちゃうんでしょうか? うぅ……も、もう、怖くてお外を歩けません!」
「確かに……放っておいたら、普通にまずいよね、これ……」
 ドン引きしつつも覚悟を決めて、立ち上がったのは成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。正直、物凄く相手にしたくなかったのだが、これも世のため人のためと、強引に割り切ったようだった。


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
榊・凛那(神刀一閃・e00303)
ティセ・ルミエル(猫まっぷたつ・e00611)
六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)
六連星・こすも(ヤクトフロイライン・e02758)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
除・神月(猛拳・e16846)
羽衣乃・椿(衣改の魔女・e20239)

■リプレイ

●イカれた正義
 埃臭い空気の漂う廃ビルの中。ビルシャナ出現の報を受けて現場へと向かったケルベロス達だったが、その心境は複雑だった。
「うわぁ……。本当に、パンツ一枚になってるし……。こんな季節に、あんな格好して風邪引かないのかなぁ……」
 ビルシャナを取り囲んでいるパンイチ男達を前に、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)は、早くもドン比きした様子で呟いていた。
「変態相手の依頼って、ほぼ顔見知りばかりな気がするのって気のせいかしら? お嫁にいけないようなことになったらどうしましょう……」
「うぅ……。どう考えても、脱衣以上の下心に発展してもおかしくない予感がたっぷりです……」
 これから起こるであろう戦いの行末を想像し、六連星・こすも(ヤクトフロイライン・e02758)と羽衣乃・椿(衣改の魔女・e20239)の二人は、既に及び腰になっている。だが、そんな彼女達以上に、衣服を破られると困る者もいるわけで。
「今回のビルシャナもまたひどい……」
 お付きのメイド二人を見守る赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)の顔には、もはや不安しか存在していなかった。もっとも、当のメイド達は既に殺る気……もとい、やる気だけは満々だったが。
「御嬢様、ご心配なく。凛那……いいね?」
「うん、蘭華姉。お嬢様だけは何としても……!」
 場合によっては自らの犠牲も厭わない覚悟を決め、六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)と榊・凛那(神刀一閃・e00303)の二人は、颯爽と武器を抜き放って前に出た。
「む……あれは?」
 メイド達の姿に気づいたのか、信者達が早速、刃物を片手に迫って来た。思わず張り倒したくなったものの、ここは耐え時、我慢の時。
「なんて、ひどい教義なのです。まったく非生産的なのですよ」
 殆ど屁理屈にしか聞こえないビルシャナの教義を否定しつつ、ティセ・ルミエル(猫まっぷたつ・e00611)もまた憤慨しながら前に出て。
「もしもしポリスメン……じゃなかった! とりあえず、まずは鳥頭以外をなんとかしないとな!」
 警察を召喚したい誘惑を堪えつつ、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)もまたビルシャナの悪事を糾弾すべく歩み出る。そんな彼らの姿を目にしたビルシャナは、これ幸いとばかりに、周囲に集まっていた信者達をけしかけて来た。
「お前達、あそこにいる連中を衣服の呪縛から解き放つべく、今こそ我が服破りの極意を実践するのだ!」
 自分は正しい。自分は正義。そう考えて欠片も疑わないビルシャナの瞳は、もはや狂気に近い色が宿っている。
 だが、ここで怯んだら、全ては終わり。喧嘩上等とばかりに拳を掌に打ち付けて、除・神月(猛拳・e16846)は信者達を睨み付けた。
「服を無理矢理脱がすのが犯罪だとカ、そんな道徳を今さら説く気はさらさらねーヨ?」
 大切なのは、その身を以て主義主張を通す覚悟があるか否か。場合によっては、力づくで試してやる。
 一触即発の空気の中、廃ビルの中で犯罪を賛美するビルシャナに迎合した信者達へ、文字通り身体を張った説得が開始された。

●不毛の肉体
 衣服を破りまくることで、強制的に衣服の購入を促進させる。そんなビルシャナの主張ではあったが、当然のことながら穴だらけ。
「経済効果って言いますけど、そんなに頻繁に破かれたり取られたりする度に買い直すのって結構な出費になるんですよ!」
「ってか、あんたらはどうなんだ? パンツ一丁を毎日替えたところでタカが知れてるし」
 どうせ買うなら、もっと高級な衣服を買って着回してみろ。パンイチ姿でドヤ顔を決めている信者達に、椿とロディは早々に突っ込みを入れた。
「それに、みなさんはそうして買い直すことになった時に、弁償してくれるんですか!? 人の物を無理矢理取ったり、ダメにしたりするだけでも悪い事なのに、その補填も被害者がする事になるなんて、いい事のはずないじゃないですか!」
「人様の衣服を勝手に破いて新しいのを買わせて経済回すとかぬかしてるんなら、まず自分から服とかそういうのを買って、定期的に買い替える事で回そうぜ」
 お前達のやっていることは、正義でも何でもなく単なる犯罪。しかし、骨の髄までビルシャナの主張に浸ってしまった者達の心は、そう簡単には揺らがない。
「うるせー! 高額出費、結構なことじゃねーか! 俺達からすれば、タンスの中に金を溜め込んで使おうともしない、そっちの方が守銭奴だぜ!」
 自分達は、あくまで正義を執行しているだけだ。弁償することなど端から頭の中にないようで、信者達は好き放題に叫ぶだけ。
 これは酷い。限りなく酷い。あまりに屈折した極論に、いちごもまた溜息を吐きながらも諭すような口調で信者達に告げた。
「当たり前ですけど、人前で裸はダメです、無理矢理なんてもっての他です。……というか破られなくても普通に服は買います」
 世の中は、衣服だけで経済が回っているわけではない。被服費ばかりに余計な出費を奪われれば、自分のようなアイドルは、ファンにCDを買う余裕がなくなり死活問題になると伝えてみたのだが。
「はぁ? 本当のアイドルファンだったら、自分の服を全部売って、素っ裸になる代わりに全額CDに変えるべきだろ!」
 そんなに衣服を破られたくなければ、先に全部売ってしまえ。裸になって困るというなら、胸と股間に買ったCDを代わりに貼っておけ。いちごの説得を前にしても、信者達は頭の痛くなるような切り返しを叫ぶだけだった。
 いかん、こいつら筋金入りの変態だ。絶対に脱がす。なにがなんでも脱がす。完全に脱がすことだけしか頭にない信者達に、とうとう凛那がブチ切れた。
「……うん、主張は分かったよ。でも、経済を回すつもりなら、そっちから範を示さないと良くない? 言行一致!」
 そんなに裸が好きならば、まずは自分から裸になれ。銀光一閃。はらりと落ちる、信者のパンツ。だが、完全なる全裸にされたにも関わらず、彼らはいよいよハッスルして、鼻息を荒げながら突進して来る始末。
「ヒャッハァァァッ! こいつは、脱がし合いってやつかぁ?」
「面白そうだな! 俺も行くぜぇっ!」
 お互いに、脱がし脱がされれば平等だ。そう叫びながら何人かの信者達が、片手に鋏やカッターナイフを持ってケルベロス達へと迫る!
「うわぁぁぁん! 変態が襲ってきたぁぁぁっ!!」
 股間を強調するような姿勢で襲い掛かってくる信者達に、早くも理奈が涙目になって後ろに下がった。
 こうなったら、もう説得を諦めて、物理的に沈黙させた方が良いのではないか。そう、誰ともなしに思ったところで、信者達の前に躍り出たのはティセだった。
「お洋服、大事ですよ。可愛いお洋服着てる女の子はお嫌いですか?」
 背丈の短い、フリルが施されている純白のワンピースを翻し、ティセは改めて信者達に語って聞かせる。
「あたしは、男の人はカッコイイ服着てる方が好きですよ。好きな人のために服を選ぶのって楽しいです」
 まあ、実際に好きな人はいないのだが、それはそれ。もっとも、信者達の目はスカートの中から一瞬だけ覗いたショーツに釘漬けになっており、説得を聞ける状態ではなかった。
「もー、結局、えっちなことがしたいだけじゃないのです? そんなことばっかりやってるから、モテないのです!」
 下心丸出しな信者達に、ティセはちょっと怒ったような口調で告げる。だが、その程度で収まってくれるほど、彼らのビルシャナに対する信仰心は低くなく。
「カッコイイ服を着てる男が好きだぁ? 服の善し悪しで男を品定めしようとか……それもこれも、全部衣服が悪いんだ! 衣服こそ、諸悪の根源なり!」
 あろうことが、逆ギレしてティセに襲い掛かろうとする始末。変態趣味に変態思考、それに内なるコンプレックスまで刺激された結果、信者達は爆発寸前!
「まー、あたしも女だしナ。場所によっちゃー、ひん剥いてやったりやられたりってのが楽しいのも分かるからヨ」
 半ば呆れながらも、神月はティセを守るようにして立ち塞がりつつ、信者達へと少しばかりの賛同を示し。
「……でも、てめーらは駄目ダ。服が邪魔だってんなラ、最後の一枚まで脱いでからかかってこいヤ! その一枚ガ、野性を邪魔するモンだろーガ!」
 脱衣を極めようというのであれば、下着さえ脱ぎ捨ててしかるべき。最後の一枚に拘るのは、まだまだ心が未熟な証拠。そう言って、信者達のパンツを強引に引っぺがしたところで、すかさずこすもが床に自慢の一撃を叩き込んだ。
「寒そうな格好の人たちの説得には、これです!」
 一瞬にして床が凍結し、周囲に広がる冷たい空気。衣服を着ていれば大したことはなかったかもしれないが、半裸に近い格好に、この寒さと冷たさは少々堪える。
「ぬぉぉぉっ! さ、寒ぃぃぃっ!!」
「だ、だが、ここで服を着てなるものか! 俺は絶対に服など着な……ブヘックション!!」
 先程、凛那や神月によって脱がされた信者達が、一斉に身体を丸めて動かなくなった。
 ほら見ろ、言わんこっちゃない。当然の結果だとばかりに冷たい視線を送るケルベロス達。その上で、蘭華は震えている信者達に向けて、ここぞとばかりに畳み掛けた。
「明王の『羽毛』も衣類の材料、ダウンジャケットに詰めたら暖かい筈……。でも、全裸が至高なら『羽毛』も害悪ではありませんか?」
 本当に全裸を至高とするなら、全身の肌を余すところなく露出すべき。正に、諸刃の剣とも言える奇策ではあったが、しかし凍えている信者達の顔は、何故か雷に打たれたような表情になっており。
「た、確かに、言われてみればその通りだ! 全裸を至高と言いながら、俺達はまだまだ甘かったのかもしれん!」
「そうと解れば、行動あるのみだぜ! 今すぐ脱毛エステに行って、全身の毛を永久脱毛じゃぁっ!!」
 髪の毛は元より、眉毛や腋毛や股間の毛まで、全身を文字通り不毛の肉体にすれば問題ない。そんな無茶苦茶な真理に到達し、彼らは今まで寒がっていたのも忘れ、素っ裸のままビルの外へと駆けて行く。
「あれ、放っておいていいのかな……」
 お巡りさんに見つかったら最後、確実に逮捕されるであろう後ろ姿を、理奈がなんとも微妙な表情で見送っている。だが、そんなことよりも今は、残った信者とビルシャナへの対応が優先だ。
「ふん……軟弱なやつらめ! だが、俺達はこの程度の寒さなんかにゃ、屈しないぜ!」
「その通りだ! 今こそ、お前達の力を奴らに見せつけ、俺達の本懐を遂げるときなのだ!」
 ビルシャナの号令に、残っていた信者達が一斉に声を荒げてケルベロス達に襲い掛かる。廃ビルの中は一転して、頭のネジが吹っ飛んだ信者達による、狂気の服破りゾーンへと変わってしまった。

●奥義、脱衣真拳!
 通り魔的に他人の衣服を破ることを正義とするビルシャナを、盲目的に賛美する信者達。その内の何名かは連携プレーによってビルシャナの支配から解放できたが、しかし数が数だけに、全ての信者を改心させることは無理だった。
「ヒャッハァァァッ! どいつも、こいつも、全員素っ裸にしてやるぜぇぇぇっ!!」
 鋏やカッターナイフを手に、次々と襲い掛かって来る信者達。なんとも厄介な連中だが、しかし下手に攻撃すれば簡単に死んでしまうので、やってられない。
「そんな寄ってたか、ひゃうっ!?」
「ひぃっ! お願いだから、ぱんつだけはやめてくださいっ!!」
 もはや遠慮することは何もないと、信者達は椿やこすもに襲い掛かり、その衣服をズタズタに破いて行く。身体へのダメージこそ大したことはないが、それでも精神的ダメージは深刻だ。
「や、やっぱり目つきとか手つきとかいやらしくなってますっ! だめ、ダメですー!」
「ひゃうっ!? 見ちゃダメぇっ!!」
 椿は殆ど下着同然の半裸、こすもに至っては全裸に近い状態にまで服を破かれ、その場で恥ずかしい場所を隠しながら動けなくなっている。
「うぅ……し、下着まで破るなんて、反則です……」
 同じく、ティセも服を破かれ、両手で胸元と下半身の、それぞれを隠さねばならない状態に。もっとも、年齢の割に大きな彼女の胸を片腕で隠すのは不可能に近く、却ってエロさを増した格好になっていたが。
「はわわ……。こ、これ以上、えっちなのは駄目ですよぉ!!」
 両手で顔を隠しつつも、いちごは指の隙間から周囲の光景を覗きながら、懸命に桃色の霧を散布して仲間達の破られた服や傷心を癒して行く。足りないところは、ボクスドラゴンのアリカにも手伝わせる念の入れようだが、そんな行いをビルシャナが黙って見過ごすはずもなく。
「フハハハッ! 食らえ、脱衣シューティングスター!!」
 強烈な蹴りより繰り出される無数の星が、いちごに向けて放たれた。間髪入れず、身を呈して守りに入った蘭華だったが、当然のことながら、代わりに彼女の服がボロボロに。
「御嬢様、危な……きゃあぁっ!!」
 メイド服のベルトやリボン部分、それに胸から下をバッサリと破かれ、下乳から臍まで丸見えの状態に! おまけに、スカートもずり落ちてしまい、ゴシックなデザインの下着も大公開!
「くっ……! こうなったら、お嬢様に被害が出る前に斬れば……いやぁぁぁぁっ!?」
 代わりに斬りかからんとした凛那だったが、ビルシャナに一太刀浴びせた隙を狙われ、彼女もまた信者達に服を中心から斬り裂かれてしまった。しかも、どうやら中まで刃が達していたらしく、下着まで破かれて丸見えの一歩手前にまで追い込まれ。
(「ぐはっ!? こ、これは刺激が強過ぎる……」)
 先程から、女性陣に代わって信者達に当て身を食らわせていたロディだったが、さすがに我慢の限界だった。
 これ以上は、脳みそが沸騰して倒れてしまいそうだ。思わず目を逸らしたロディだったが、間の悪いことに、そこに立っていたのは神月だった。
「服破りィ? 別に、あたしは脱がされても関係ねーしナ! それとも、あたしの鍛えた腹筋、観賞してーのかヨ?」
 半裸の姿であるにも関わらず、豪快に笑いながらビルシャナと拳を交える神月の姿。それを正面から直視してしまい、さすがのロディも両目を瞑って耐えるしかなく。
「ぐおっ!? ふ、不覚……」
 その間にも、一人、また一人と床に転がる信者達。それでもゾンビの如く襲い掛かってくるのは鬱陶しいが、今は彼らの相手をしている場合でもない。
「うぅ……こ、こんな恥ずかしい格好をさせて……許しません!」
「MAX! ぶちかます!」
 ヤケクソになって繰り出されたこすもの一撃がビルシャナの身体を凍らせ、そこへ降り注ぐのはロディのアームドフォートによる全力射撃。それに怯んだビルシャナへ、今度は凛那が斬り掛かり。
「我が剣、我が心、束ねて一刀と為さん。されど、我が剣は曇りを許さず。其は唯、守(も)る者の為、道を拓く刃なれば! たぁぁぁぁっ!」
 正面からビルシャナの翼を叩き斬り、無数の羽毛が宙を舞う。
「くっ……馬鹿な! この俺が、押されている!?」
 ここに来て、ビルシャナが初めて驚愕の表情を浮かべたが、もはや怒り心頭のケルベロス達を止める術はない。
「爆発しちゃえです!」
「紫が命を別つとも……此方の不浄、神雷(アクセル)にて全て振り切れ! 華の剣姫!」
 ティセの思念がビルシャナを爆破したところで、大型グローブを装着した蘭華が魔法金属の剣を弾頭として射出する。刃の精霊を乗せた一撃が、文字通りビルシャナの額に突き刺さった。
「ここで術を使ったら……。でも、みんなの為なら……!」
 これは好機だ。もう、躊躇っている暇もない。完全に覚悟を決めたのか、椿もまた躊躇いを捨てて呪文を紡いだ。
「わが身を纏いし衣よ、この一時は敵を刻む鋭糸の刃となれ!」
 瞬間、彼女の纏っていた下着が鋭い糸の刃と化し、ビルシャナの身体をズタズタに斬り刻む。代わりに彼女自身は全裸になってしまったが、巨大モモンガ……もとい、動物変身した理奈が、すかさず彼女の前を覆うように飛来したので問題なかった。
「ハハハッ、楽しー技だナ! お前も、丸裸にしてやんヨ!」
「なっ……! も、もしや、その技は!?」
 ボロボロになったビルシャナへ、最後は神月が不敵な笑みを浮かべつつ仕掛ける。
 戦いを通して、お前の技は全て見切った。多くの者を脱がして来た技で、今度は自らが剥かれるがいい。
「ぐぁぁぁっ! 俺の正義は……不滅だぁぁぁっ!!」
 技が決まった瞬間、全身の羽毛が抜け落ちて、ビルシャナもまた窓からビルの外へ吹っ飛ばされ昇天して行く。後に残されたのは、破れた衣服の残骸と、虚脱状態になって倒れている信者達のみ。
「すみません……お疲れ様でした」
 このまま半裸で放置しておくわけにもいかないと、いちごは凛那と蘭華へメイド服を取り出して渡した。
「御嬢様が無事なら何よりですわ……」
「もう、蘭華姉も泣かないでよ……!」
 感涙の涙を流し、左右からいちごに抱き付くメイドが二人。今の自分達の格好も忘れ、胸元にいちごの顔を抱き締めて涙しているのだが。
「あわわ……そ、それより、早く着てくださいっ!!」
 いちご本人にとっては、これほど恥ずかしいことはない。顔に伝わる柔らかくも温かな感触に赤面しつつ、完全に硬直したまま動けなくなっていた。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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