「へんな気分だわ」
山道を歩く足を止め、安海・藤子(道化と嗤う・e36211)はあたりを見渡した。
事件の予兆を感じて彼女が分け入った山の向こうには、小さな集落があった。
妖精の伝承を歌い継ぐ一族の末裔である藤子。過去の記憶を失ってはいるが、追放された故郷とは、こんなところだったのではないだろうかと、なぜか思う。
実際は、似ても似つかないのだろうが……。
「不思議と入ってみたくなる。そういうことね」
廃屋だらけの限界集落。人口は、もはや両手で数えられるほどだろうか。その中心地は、モザイクで覆われていた。
先はまったく見通すことができない。
意を決して踏み込んでみると、かつてそこに存在した分校の校舎や役場の支所などが幾多ものパーツに分解され、同じく分解された石段やアスファルトと組み合わさって、無秩序に折り重なっていた。
「まさか、ここが……?」
思わず声が漏れる。あたりはまとわりつくような、奇妙な液体で満たされている。とっさに息を止めたが、どうやら液体の中でも呼吸はできるようだ。
「……お前は、この姿に因縁がある者なのか? このワイルドスペースに踏み込んでくるとは」
「!」
振り返った先にいたのは、黒衣を纏った女。首には錆び付いた太い鎖が結ばれた、重々しい首輪。そして、全身に浮かび上がる奇妙な文様。
しかしながら胸元は、大きなモザイクで包まれていた。
「まぁ、お前が何者であろうと、新たな獲物にすぎない。ワイルドハントである俺の手で、死んでもらおう。秘密が明らかになるわけには、いかないからな!」
現れた藤子自身……否、ワイルドハントは鎖をジャラジャラと鳴らし、砂利を蹴って飛びかかってきた!
「藤子ちゃんが、ちょっとマズいことになっちゃったみたいなの」
皆を呼び集めた崎須賀・凛(ハラヘリオライダー・en0205)が、緊張した面もちで皆に告げた。
バリッ。
ポテトチップスの大袋を開き、皆の方にも向ける。
「もぐもぐ……。
藤子ちゃんはワイルドハントについて調べてたんだけど、その途中でワイルドハントを名乗るドリームイーターの襲撃を受けちゃったみたいなの」
コンソメ味のポテトチップスを3枚ばかしいっぺんに摘まみ、凛は口に運ぶ。時間がないからね、と。
「もぐもぐ……。
敵は山の中の集落をモザイクで覆っちゃって、中で何かの作戦をしていたみたいなんだけど……。
とにかく、いくら藤子ちゃんが強いっていっても、1対1じゃ勝ち目はないわ。急いで助けに向かって、ドリームイーターをやっつけちゃって!」
そう言って凛は空になった袋を丸めて、今度はのりしお味とバーベキュー味の袋をまとめて開いた。
「もぐもぐ……。
モザイクの中はヘンな液体で満たされてる、不思議な空間なんだけど。呼吸は出来るし、みんなが行動するのに問題は無いと思うわ。
急いで向かえば、藤子ちゃんがやられるまえに到着できると思う。
で、その敵なんだけど……」
凛は手に取ったチップをパリッといい音を鳴らして噛み砕く。
「ドリームイーターは藤子ちゃんの姿をしてるけど、外見を奪っただけの敵だからね。遠慮はいらないから。
鋭い爪で襲いかかってくると思うけど、爪に見えるそれは『心を抉る鍵』だから、気をつけて」
「私の予知より早く藤子ちゃんが事件に気づいたのは……敵の姿と、なにか関係があるのかな?
まぁ、そんなことは後回し! 絶対に藤子ちゃんを助けてきてね!」
参加者 | |
---|---|
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768) |
天崎・祇音(埋没神霹靂・e00948) |
武田・克己(雷凰・e02613) |
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996) |
シンディ・ローレンス(ブラストルバニー・e25842) |
御忌・禊(憂月・e33872) |
安海・藤子(道化と嗤う・e36211) |
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784) |
●奇怪な空間
「安海も大概ざんしな。依頼の帰りに寄り道でもしてたのざんしかね?」
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)はそう言って口の端を持ち上げたが、足取りは急ぎに急いでいる。
「みなさん、急ぎましょう……安海さんが危険……です」
「モチロンネ! お世話になってる藤子サンのピンチとあらば、気合いもジュウブンデース!」
御忌・禊(憂月・e33872)の背をバンバンと叩いて、シンディ・ローレンス(ブラストルバニー・e25842)はどんどん先に進んでいく。
「聞けば、敵は安海さんの姿を模しているとか……許せませんね!」
と、リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)が憤る。
問題の場所は、降下した場所からさほど遠くない。話に聞いていたとおり、人気のない集落の中心がモザイクで覆われていた。
「こいつが、そうか。面倒なことをやってくれる」
武田・克己(雷凰・e02613)が肩をすくめる。
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784)はその傍らにありながら、克己の言葉など聞こえなかったように、無言でモザイクを睨んでいた。
ワイルドハントとやらが何者か知らないが、倒すべき敵ならば倒すだけのこと。それだけだ。
着物の袖を襷で縛りつつ、天崎・祇音(埋没神霹靂・e00948)は気合いを入れた。
「安海殿、無事でいておくれ……いざッ!」
祇音は意を決して、モザイクの中に飛び込んでいく。
中へと入った一同はみな周囲を見渡し、それぞれの表情で驚きをみせた。
なんという不可思議な空間だろう。
「ブロックで作った玩具の家を、適当に分解して適当に組み直したような……」
「バラバラに分解した子供が戻せなくなってしまったような?」
「オウ、それね! その隙間に木の枝や石コロを、てきと~に混ぜ込んだ、そんな感じデス!」
奇妙な形に成り果てた分校の校舎を眺め、克己とリュセフィーは口々に呟いた。
シンディも手をたたき、合点がいったという表情を見せる。
相手が意図してやっているのか、それとも偶然こうなっているだけなのかは、さっぱりわからないが。
「ふむ、実に興味深い……奇妙な液体ざんしな」
自分の手を見て、笙月が誰に言うともなく呟く。
身体にまとわりつくような、不快な粘液があたりを、そして一行の肺の中までも満たしている。水中のように少しふわふわした感触はあるが、浮き上がることはできない。だから、この液体がどこまでを埋め尽くしているかなどは、知りようもなかった。
最初は戸惑ったが、すぐに慣れて動き回れるようになる。
「早く、安海さんを探さないと……」
禊は緊張した様子で周囲を窺ったが……探し回る必要などはなかった。金属と金属とが激しくぶつかり合う、戦いの音が響いてきたのだ。
アルシエルが、ほかの面々を後目に駆け出す。仲間たちも液体をかき分けるようにして、後を追った。
「あたしの姿のワイルドハント、ねぇ?」
安海・藤子(道化と嗤う・e36211)は仮面を投げ捨て、目の前の『自分』に相対した。
「まぁ、どんな相手だろうと紐解くのがわたしよ。貴女も楽しい相手だわ」
そう嘯き、
「我が言の葉に従い、この場に顕現せよ。そは静かなる冴の化身」
と、詠唱を開始した。周囲に無数の氷が生み出され、それは集まって大きな固まりとなり、龍の姿へと変じていく。
「全てを誘い、静謐の 檻へ閉ざせ! その憂い晴れるその時まで……!」
龍は大きく口を開いてワイルドハントに襲いかかり、その爪で切り裂き、そして太い胴で締め上げた。
しかし敵はそこから脱すると、自身にまとわりつく氷を振り払う。
「お前は、俺の獲物となるだけの存在よ」
敵の胸元のモザイクが、巨大な顎のように大きく開かれる。防がんと咄嗟に伸ばしたケルベロスチェインごと、モザイクはかぶりついた。
夥しい量の血が吹き出て、あたりの液体と混じって漂う。
藤子はなおも鎖を構えて応戦するが、敵の突進は止まらない。鋭い爪が胸元に深々と食い込み、眼前に、本人さえ忘れている過去のトラウマが浮かび上がって襲いかかってきた。たまらず膝をつく。
「く……」
「ヘイ、ユー! 藤子サンの姿を真似て、どうするつもりでーす?」
「それ以上の狼藉は、許さんッ!」
シンディの放った竜砲弾が、ワイルドハントに命中した。
「ヒットねッ!」
敵はその衝撃に吹き飛ばされ、乱雑に積み上げられた廃屋の杉板を、まるで発泡スチロールのように砕きながら転がった。
「我、狼なり。我、大神なり。我……大雷鳴! 轟けッ!」
祇音の四肢が獣のそれへと変じていく。地を蹴り、倒れたままの敵に向かって雷を宿した拳を叩きつけた。
胸の骨が砕ける音がはっきりと聞こえたが、それでも敵は何事もなかったかのように立ち上がる。
「遅くなって……申し訳ありません」
藤子に向かって頭を下げた禊は、
「僕らの仲間を、返していただき、ます……!」
と、鎖を伸ばした。ワイルドハントの手足に幾重にも絡みつくが、それでも敵は慌てる様子もなく、冷たい表情のままこちらを見据えていた。
「可愛げのない奴ざんしな」
苦笑した笙月は、
「安海、無事ざんしかね? 相変わらず、無茶をしているようざんしな」
と、手を引いて助け起こした。敵の攻撃を防ぐ分身を生み出してやりながら。
「無茶するつもりはなかったんだけどね。どうやら、お招きいただいちゃったみたいなのよ」
「顔つきはずいぶんと物騒だが……どこから見ても藤子そのものだな」
克己は刀を中段に構え、油断なく敵を窺う。
「ご無事……とは言い難いかもしれませんが、間に合ってなによりです」
傷は、笙月の回復だけでは癒しきれない。リュセフィーも駆け寄って、緊急手術を行った。
藤子の方は任せてもよさそうだと判断したアルシエルは、
「誰のどんな姿を写し取ろうが、叩き潰すまでだ」
そう言ってわずかに顔をしかめ、取り出した紙兵を宙に放った。
「来るよ!」
アルシエルの言葉に応じたかのように、ワイルドハントが跳んだ。
●ワイルドハント
「させるか!」
克己が刀を突きこみ、ワイルドハントの鋭い爪を受け止めた。力を込めて払うと、相手はたたらを踏んだものの、すぐに飛び下がって体勢を立て直す。
そこに禊が、氷結の螺旋を打ち込んだ。
しかし敵はそれを身をよじって避ける。
「く……速い」
悔しがる禊を、ワイルドハントは冷たい目で睨んだ。放たれたモザイクに押し包まれ、顔をしかめて膝をつく。知識が、奪われる。
「私が治療する。任せて」
リュセフィーを制したアルシエルは、溜めたオーラを放って禊の傷を癒す。同時に、身体の痺れもなくなった。
「任せられそうね」
代わりにリュセフィーは、雷の壁を生み出して仲間を援ける。
嵩にかかった敵のモザイクが巨大な口を開いて襲いかかり、肩にかぶりつかれた祇音は思わず、刀を取り落とした。
「く……やりおる」
腕全体を血で染めて、舌打ちした祇音は得物を拾い上げた。血で、滑る。
「くそッ!」
克己が舌打ちした。防ごうとしたが、間に合わなかった。
「俺の顔をしているからといって、遠慮はいらないぞ」
と、藤子が笑う。笙月も鼻を鳴らして、
「女だといっても単なる見た目、1枚の皮。仮に当人だったところで、大人しく女扱いされるタマざんしか?」
女は殴らぬ、斬らぬというのが流儀である。しかし敵は外見こそ女であれ、恐るべきデウスエクスなのだ。
仲間たちも、歴戦のケルベロスの力を計算に入れていないはずがない。防ぐだけでは、勝てそうにない。
「仕方がない」
改めて、克己は刀を構え直す。
「強敵デスからね! その方が、話は盛り上がるってモノ! そして最後に勝つのは、ワタシたちなのデースッ!」
声を張り上げ、シンディが突進していく。全体重と加速度とを乗せた体当たりを受けたワイルドハントが吹き飛ばされる。箱が積み上げられたように隆起したアスファルトを突き崩し、敵は大の字になって倒れた。
「Yeah!」
拳を握りしめて歓声を上げたシンディだが、敵がまるでバネ仕掛けでもあるかのようにすぐさま飛び起きたのを見ると、
「オゥ、ヒトスジナワではいきませんネー……」
と、肩をすくめた。
ケルベロスたちは幾度も痛撃を与えてはいたものの、敵はギリギリのところで致命傷は避けている。そして致命傷でないために、ワイルドハントは何度でも立ち上がってきた。
無表情な、藤子の顔をしたままで。
モザイクが、克己を襲う。
「く……!」
敵の爪を刃で弾き、襲い来るモザイクを咄嗟のところで避けていた克己だったが、今度は防ぎきれずにモザイクに飲み込まれた。
膨大な知識を奪われ、額からは脂汗がにじみ出る。
それでも、
「知識を喰らった程度で真似できるほど、俺の歩いてきた道は優しくはない……!」
相手を睨み据えると、雷の霊力を込めて突きを繰り出した。
「風雅流千年、神名雷鳳。……この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
鴉のような漆黒の衣が裂け、衣服に隠されていた部分の肌までも、異様な文様で覆われていたことが見て取れる。
「守りはあたしたちに任せてちょうだい。まだ、やれる」
藤子がケルベロスチェインを伸ばし、敵をからめ取った。
「だったら天崎ぃ、ふたりでいっちょ暴れてこようか?」
「応よ、あこやん!」
笙月と祇音が同時に飛んで、追撃を仕掛ける。
しかし、ワイルドハントはからめ取る鎖を力任せに引きはがし、足もと近くに生えていた「止まれ」の標識を蹴って跳んだ。笙月の『螺旋掌』はわずかに狙いをそれ、標識を吹き飛ばすだけで終わる。
しかし、
「それだけ隙が生まれれば、十分よ」
嘯いた祇音の身体は液体の中に浮かび上がっていた。浮力を生まぬ液体を、流星の煌めきと重力とを込めて突っ切った。
●夢幻
ワイルドハントが、児童の机やら椅子やらが生えているブロック塀を砕きながら、斜面を転がり落ちていく。
まるで映画のスタントだ。スクリーンの映像としては大迫力だが、建物の破壊に巻き込まれたところで、デウスエクスにとっては。
「痛くもかゆくもありまセン!」
シンディは大槌を構えたまま斜面を駆け下り、埃で液体が濁ったせいで姿を見失ったデウスエクスを追う。
それにしても、このワイルドスペースはかなり広い。報告にあった中でも、大きい部類に入るだろう。村の一角を飲み込んでいるのだから。
「何らかの方法で過去の記憶……時を拾い上げたざんしか……?」
「あるいは、ここは流動する鏡のようなものか……?」
笙月とアルシエルとはそれぞれにこの空間の謎を思案するが、手がかりになるものもなく、推論に推論を重ねているだけだという自覚はある。
「現れるハシから倒していれば、ソノウチわかりマース! ファイアーッ!」
再びシンディの『轟竜砲』が轟き、跳躍しようとしたワイルドハントの足を止めた。
「大雑把な話だが、そういうことざんしな。アルシエル、フォローをお願いするざんしよ!」
声をかけられたアルシエルは、
「……言われなくても、やることは、やる」
と、誰の耳にも届かぬほど小さな声で呟くと、ナイフを手に間合いを詰めた。鋸のような刀身が、敵の身体を引き裂くように傷つけた。
そこに、
「妖刀『滅』よ、全てを滅する汝が破壊の波動よ……解き放て!」
笙月の声とともに、かまいたちが敵に襲いかかる。ワイルドハントは肩から腹へと深々と切り裂かれ、一瞬だけ、目を大きく見開いた。
しかし敵は、血をまき散らしながらも飛び込んできた。鋭い爪が、アルシエルに深々と食い込む。胸の辺りが熱くなり、こみ上げてきた大量の血を口から吐き出す。しかし、その傷以上に。
「く……なんて顔をしてるんだ、俺は」
仲間などいない。立ちはだかる者はすべて叩き潰す。目的のためなら、なにもかも切り捨てられる。
そんな自分自身の姿がトラウマとなって、襲いかかってきた。
血相を変えたリュセフィーが、従者に向かって叫ぶ。
「行ってください!」
それに応じてミミックが、素早い動きで飛びかかった。蓋を大きく開けて喰らいつく。敵は追撃を諦めるしかなかった。
その間に、
「これで、苦しみを打ち払ってください……!」
辺りを覆ったオーロラのような光が、トラウマをかき消していく。
「お前は、なんだろうね? 絶望の果てに生まれた存在なのか、それに呼ばれた存在なのか……はたして」
自分と同じ顔をした者の瞳をのぞき込みながら、藤子は呟く。返事を期待したものではなかったが、
「ワイルドスペースの秘密は、語らん!」
と、ワイルドハントは怒声を放ってモザイクを飛ばしてきた。
あぁ、これは『自分』ではない。姿形が少しばかり似ているだけの、ドリームイーターだ。
モザイクに飲み込まれながらも、奇妙に納得がいった藤子は口の端を釣り上げた。地獄の炎弾を敵に叩きつける。
「しっかりせよ!」
祇音の指図に応じて、霊魂を周囲に漂わせたボクスドラゴン『レイジ』が、傷を癒してくれた。
禊が、刀を構える。
「人の心にズケズケと踏み込んでくるとは……心の傷を手繰れるのは、あなただけではありません……よ!」
踏み込みとともに、その刃は音もなく、ワイルドハントを切り裂いた。
「ううううッ……!」
その傷と、過去の記憶とが敵を苛む。
「消えゆくがいい!」
空を絶つ祇音の刃はワイルドハントの全身の傷に深々と食い込み、敵は最期にひとつ、大きな血の固まりを吐き出して、絶命した。
「見事な一太刀じゃったの、御忌殿」
「いえ……祇音さんこそ」
褒められた禊が、面映ゆそうに頬をかく。
そうしている間に、ワイルドスペースは崩壊を始めた。
反射的に目を閉じたケルベロスたちが再びまぶたを開いたとき、そこは何の変哲も無い集落の一角で、廃校となった校舎や役場の支所が一校を見下ろしていた。
「オー、ノゥ! 何か回収できればよかったんですがネー」
大げさな身振りで天を仰ぐシンディの傍らで、アルシエルは苦笑を浮かべてかぶりを振った。
さほど、期待してはいなかったが。
「ありがとう、助けに来てくれて」
さすがに、藤子は疲労困憊のようだ。安堵の息をつき、石段に腰を下ろす。
「ご無事で、なによりです」
リュセフィーが駆け寄った。負傷しているが、重傷というほどではない。
「なんだ、妙にしおらしい」
笑った克己は隣に座って、手を上げた。察した藤子が、応じて手を叩く。
「奴らがなにを目論んでいるのかは……そのうちわかるざんしかね」
と、笙月が肩をすくめた。
「ひとつ、あやつらの策を破ったのじゃ。そのうち、敵も馬脚を現すじゃろうて。
次の戦に備え、我らも早々に休息するのが肝要じゃろう」
祇音に促され、一行はその場をあとにした。
残されたのは、事件などなにも起こらなかったかのような、人気の無い集落のみ。
作者:一条もえる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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