鎌倉ハロウィンパーティー~ひとりぼっちのハロウィン

作者:佐枝和人

 町を、華やかな雰囲気が包んでいる。
 鎌倉の町は、まもなく始まるハロウィンパーティーの喧噪に沸き立っていた。仮装をした人々が行き交い、屋台や出店の準備も進んでいる。
 そんな光景を横目に、一人町の片隅でたたずむ少女。うつむいてため息を吐き、ずれた眼鏡をそっと戻す。ハロウィンの楽しい雰囲気も、友達のいない彼女には、高嶺の花に思える。
「あなたも、一人なのですか?」
 突然そんな言葉をかけられ、少女は顔を上げる。いつからそこにいたのか、赤い頭巾をかぶった女の子が立っていた。
 女の子は音もなく少女に近づく。止める間もあればこそ。女の子は手にした鍵を、少女の左胸に突き立てた。
 鍵は心臓を正確に捉え、少女は倒れる。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 女の子の声。倒れた少女の横に、現れる影。尖った帽子、黒い洋服に箒を持ったその姿は、魔女の装いそのものだった。
 しかし普通の仮装と違うのは、仮装の間から見える肌が、モザイクに覆われていること。
 魔女の姿をしたドリームイーターは、人混みの中に消えていった。

「みなさん、たいへんなのです!」
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)が、集まったケルベロスたちにそう語りかける。
「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんが調査してくれたのですが、日本各地でドリームイーターが暗躍しているようです。出現しているのは、ハロウィンのお祭りにひけ目があった人のようです」
 ドリームイーターは、ハロウィンパーティーの当日、一斉に動き出すのだという。
「ドリームイーター……ハロウィンドリームイーターは、世界でいちばん盛り上がるパーティー会場に現れます」
 それはつまり、鎌倉のことだ。
「パーティーの時にドリームイーターが現れたら、たのしいお祭りがめちゃくちゃになっちゃいます……」
 ねむは、悲しそうに目を伏せる。
「そんなことにならないよう、ドリームイーターを倒してください!」
 その言葉に、ケルベロスたちはうなずいた。
「ありがとうございます。ハロウィンドリームイーターは、魔女さんのかっこうをしているみたいです」
 もっとも、箒を持っているからといって、飛ぶことができるわけではないようだ。
「モザイクを飛ばして、包まれた人の知識や、平静や、夢を食べちゃうんです! 食べられたらどうなっちゃうんでしょうね?」
 不思議そうな顔のねむ。
「ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れます。ですので、パーティーが始まる少し前に、パーティーみたいに楽しくしてたら、おびき出すことができるんじゃないでしょうか」
 そうすれば、パーティーに支障をきたすことなく、戦うことができるだろう。
「みんなが楽しみにしているハロウィンパーティーを台無しにする……しかも、寂しい人の気持ちを利用するだって……。許せんな!」
 話をじっと聞いていた近衛・翔真(ウェアライダーの螺旋忍者・en0011) が、怒りに満ちた声を上げる。組んでいる腕が、怒りに震えていた。
「みんな、ハロウィンドリームイーターを倒して、パーティーの平和を取り戻すぞ!」
 気合いを入れる翔真の横で、ねむはぺこりと頭を下げた。


参加者
天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)
ヴォル・シュヴァルツ(黒狗・e00428)
黒田・稔侍(ブラックホーク・e00827)
アイン・オルキス(半人半機の刺客・e00841)
リデル・フライシュッツ(魔弾の射手・e01414)
ディクロ・リガルジィ(静寂の魔銃士・e01872)
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
播磨・玲(ウェアライダーの巫術士・e08711)

■リプレイ

●待ちわびたハロウィン
 鎌倉の町に、どこか浮かれた雰囲気が漂っている。
 ハロウィンがやってきた。町は飾り付けられ、パーティー会場へとその姿を変える。あとは本格的にパーティーが始まるのを待つのみ。
 そんな町外れに、ケルベロスたちはいた。
「ぎぶみーちょこれーと!」
 天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)の朗らかな声が、町に響き渡る。
「十夜、それは間違ってるぞ」
 冷静にツッコミを入れるのは、黒田・稔侍(ブラックホーク・e00827)。仮装をしてくる仲間達に合わせて、吸血鬼を模した装い。黒のロングコートが、稔侍が漂わせるシニカルな雰囲気と奇妙なほどに似合っている。稔侍からハロウィンクッキーをもらえず、十夜は頬を膨らませた。
「……お菓子も悪戯も欲しい時はどう言えば良いンだろォな?」
「あれじゃない?」
 鴉天狗の衣装に身を包んだヴォル・シュヴァルツ(黒狗・e00428)は首をひねり。それに答えたのはリデル・フライシュッツ(魔弾の射手・e01414)。球体の関節を露わにした腕で、指さすのは十夜。
「じゃあ、とりっくあんどとりーと! ……これも違う?」
 不満げな十夜だったが、周囲を見回して仮装をしないといけないことに気づいたか、人間型に変身する。金髪で褐色の少年の姿になった十夜だが、寒さには耐えかねて。
「へっくち! 毛皮がねぇと寒い……、何か着てくる……」
 そう言って一旦退場した。
 静かになったと思ったのは一瞬。中央に躍り出たのは、小さな2人の影。
「トリック・オア・トリートー♪ お菓子くれなかったら落書きしちゃうぞー!」
 峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)は魔女の帽子とランタン、自前の羽と尻尾も出し、小悪魔魔女に変身。しかし右手に持つのは魔法の杖などではなく油性ペン。落書きされれば、簡単には落ちないこと保証付きだ。
「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ~」
 こちらは播磨・玲(ウェアライダーの巫術士・e08711)。テレビウムの着ぐるみは白と黒のツートンカラーで、手にした大バサミは、本家テレビウムのつっきーとお揃い。飛び跳ねる玲とつっきーの動きがシンクロする。大小のテレビウムの踊るような動きは、見る者の気持ちを和ませた。
 豊満な肉体を持ち、年齢からすると大柄な恵と、年齢を差し引いても小柄な玲では、随分と身長に差がある。とはいえ、大人から見れば、2人とも幼い子供。いたずらっ子2人とつっきーは道を走り回ると、顔を見合わせてキシシと笑う。
「Trick or Treat.菓子を捧げよ。さもなくば……喰らおうか」
 そこにぐっと本格的な仮装で現れたのはアイン・オルキス(半人半機の刺客・e00841)。その姿は人造人間の怪物風で、刻まれた傷にしろ体から飛び出したボルトにしろ、リアリティを感じさせる。あまりの迫力に、せわしなく動いていた玲が固まった。つっきーが背中を撫でて慰める。
「この腕は、少々動かしにくいな……しかし今の雰囲気には丁度いい」
 植物が絡まった義手を動かしながら首を傾げ、仲間にどうだろうかと問いかける。
「いいんじゃないかな」
「これでいいのか、では次だ」
 答えたのはディクロ・リガルジィ(静寂の魔銃士・e01872)。アインはその答えに納得したのか、今度は歩き方の研究を始めた。その光景に、ウイングキャットの着ぐるみに身を包んだディクロは微かに微笑む。感じていた苛立ちは少し収まるが、この楽しいパーティーを邪魔するデウスエクスに、さらなる怒りがわいてくる。
 ふとディクロが振り返ると、そこにいたのは近衛・翔真(ウェアライダーの螺旋忍者・en0011)。纏っているのは、狼人間の着ぐるみ。
「仮装も楽しいもんだな……おかしくないか?」
「いや、全然おかしくないよ」
 内心笑いそうになりつつ、ディクロは答える。狼男着ぐるみの口の部分から、狼の顔を出した翔真は、狼男が狼男を食べているかのようで、奇妙さは隠せない。しかし、ウイングキャットの着ぐるみに黒猫顔のディクロと並ぶと、どこか不思議な統一感がある。
「わーい、もふもふー」
 恵が抱きついてきて、もふもふした毛皮に顔を埋める。まずはディクロに、続いて翔真に。柔らかい感触が、恵の頬を優しく刺激する。
「さあ、パーティを始めよう!」
 ディクロの声が響く。仮装が揃い、準備は整った。手伝ってくれる仲間たちも加わり、賑やかにお菓子配りが始まる。
「はいどーぞ、お菓子だよ」
「妾の菓子を持っていくのじゃ」
 東雲・苺と時神・綾がお菓子を振る舞う。受け取った恵と玲が、ほくほく笑顔で口に運ぶ。
「あっあのっ近衛さん、よかったらこれ……」
 相良・美月は魔女の格好、準備したマカロンを翔真に手渡す。翔真は礼をいうと、ひょいと口中に。
「うん、美味いな。ありがとう」
 そういって笑う翔真に、美月もややぎこちなく笑顔を返した。
「この翼、よくできていますね」
 白と黒の着物を着て、銀毛の九尾を模したメルキューレ・ライルファーレンはヴォルの羽根を触る。取り出した手錠に、ヴォルは苦笑しながらクッキーを取り出し。
「ホラ、南瓜クッキー……こら、ハル! テメェ、つまみ食いすンじゃねェ!」
 横から奪い取ったのは、ウイングキャットのハル。取り返そうと手を伸ばすヴォルに、ハルはプイと顔を背ける。
「お猫さまはこっちですよ」
 メルキューレは軽くハルの頭を叩き、代わりのカニカマを差し出した。
「あげる側ってのも、悪くないわね」
 カボチャランタンのマーク入りクッキーを配りながら、リデルは微笑む。関節を露わにしているだけに、機械的な印象を与える彼女のそんな表情は、いつも以上に印象的だった。タキシードを着て帰ってきた十夜が受け取るが、一瞬の隙をついてボクスドラゴンのアグニが強奪する。
「あ、アグニ! それはオレ様がもらったお菓子だぞ!」
 追いかける十夜、逃げるアグニ。主従の追いかけっこが始まる。
「やれやれ……。ほら、俺がやるから、仲良くしろよ」
 呆れ気味に稔侍が差し出したハロウィンクッキーを、十夜は大喜びで受け取った。
「さて、翔真さん、ダンスでもどう?」
「ダンスか……、やったことはないが、やってみよう」
 どこからともなく音楽が流れてくる。ディクロは洗練された華麗なステップ、翔真はぎこちなくも豪快に。2人が踊ると、やんやの歓声が起きた。
 盛り上がるケルベロスたち。わき起こる歓声。飛び交うお菓子。本番のパーティもかくやと思われる騒ぎのなか、ディクロの髭がぴくりと動いた。
「おいでなすったようだな。覚悟を決めろ」
 稔侍が皆に注意を促す。仮装の牙が、きらりと輝いた。

●現れるハロウィンドリームイーター
 虚空より、それは姿を現した。黒い服装に尖った帽子、手には箒。見た目だけならハロウィンパーティーの参加者として全く違和感のない姿だ。モザイクに覆われていることさえ、幻想的な雰囲気を醸し出している。
 しかしその体から感じられるのは、幸せなパーティーに対する確かな敵意。
 普通の人間なら恐怖に逃げ出しそうなその存在を、ケルベロスたちは怯むことなく受け止める。
「来たか。お前の相手は私達だ」
 植物を絡ませた腕を突きつけ、アインは告げる。
「魔女狩りだねっ!」
 玲はこれからの戦いにうきうきしている様子さえ見せ、腕を鳴らす。どこか間違ったその言葉に、つっきーの画面が切り替わり、渋面になった。
 臨戦態勢を整えたケルベロスたちに、ハロウィンドリームイーターも反応。体のモザイクが増幅していく。
「させないよっ!」
 反応し機先を制したのは恵。高速で詠唱した呪文とともに、飛び出したのは魔法の光線。命中したドリームイーターの動きが止まった。
「お、恵やったな! オレ様も続くぜぇ!」
 十夜は高速で演算、ドリームイーターの弱点を看破すると、その一点にJackal of Libraを叩き込んだ。調和と破壊を司る剣が、ドリームイーターを刺し貫く。
 ディクロは腕に重力を集中させる。その力に、着ぐるみが破れ本来の腕が露出した。手にするのは月禍。大きく振りかざすと、破壊力抜群の一撃を見舞った。
 機先を制されたドリームイーターだが、反撃。モザイクが浮遊し、ケルベロスに襲いかかる。狙うのはヴィル。鴉天狗の仮装ごとその体を包み込むと、知識を喰らっていく。
「ヴォルさん!」
 恵が心配の声をあげる。
「これぐらい……なンともねえっての!」
 ヴォルが答える。受けたダメージに体が揺れるが、声からはかけらほども痛みを感じさせない。傷ついた腕を操り、ゾディアックソードで地面に描くのは守護星座。その光がヴォルの傷を癒やすとともに、前衛の仲間達に加護の力を与えた。
「参加したいから友達が欲しいなんて、なんだかおかしい話」
 リデルが呟く。球体関節の脇から飛び出したミサイルポッドが、一斉に火を噴きドリームイーターにミサイルの雨を降らせた。
「自分から進んで行かない人が、降って沸いたように楽しみだけ貰えるわけないわ」
 その言葉は、どこかにいる夢を奪われた少女への忠告だった。
 稔侍はリボルバー銃を構える。両手でしっかりと構え、狙いを定める。銃を放つ以上誰もが行う当然の動き。しかしそれも高い技術に裏打ちされれば、見る者に感嘆の念を抱かせるほどに洗練される。
「覚悟を決めろ。この弾丸は必ずお前を撃ち抜く!」
 引き金を引く。稔侍のワンホールショットが、狙い過たずドリームイーターを打ち抜いた。
「存分に戦えるよう、支援しよう」
 アインの腕の攻性植物が、光り輝く果実を宿す。そこから漏れ出す光が、仲間達に力を与えた。
「いっくよー!」
 玲が念じると、半透明の御業が現れる。放つのは炎の弾丸。ドリームイーターの体を、炎に包んでいく。
 そこに間髪入れず翔真。炎に包まれた足で、ドリームイーターに蹴りつけた。玲による炎とも合わせ、ドリームイーターの衣装は激しく燃える。
 猛攻を受けたドリームイーターだが、まだまだ生命力はある様子で、さらなる敵意をケルベロスに向ける。激しい戦いの火ぶたが、切って落とされた。

●祭りを妨げる者
 ドリームイーターのモザイクが飛ぶ。狙うのはリデル。
「つっきー、皆を守ってね!」
 命中する直前、割って入ったのはつっきー。モザイクに包まれ、画面が暗い色になりながらも、受けきってみせる。
「ありがとう、助かったわ」
 礼を言うリデルに、玲とつっきーは同時にサムズアップ。大小2体のテレビウムが喜んでいるかのように見える。
 ドリームイーターの攻撃は重い。しかしその攻撃は、ヴォル、つっきー、そしてハルとアグニが中心となり、身を挺して受け止めていく。ついた傷も、玲が癒やしていく。
 攻防が続く内、次第にドリームイーターの体には傷が蓄積されていった。体は炎と氷に包まれ、動きも阻害されている。ケルベロスたちの連携攻撃は、ドリームイーターにつけいる隙を与えない。
 リデルは日本刀を手に取った。鞘から抜くと、鋭利な刃が鈍い光を放つ。心を研ぎ澄まし、踊るようなステップでドリームイーターに接近。月を思わせる起動で振るった。日本刀は正確にドリームイーターを捉え、その動きを阻害する。
「動きは止めた。今よ」
「ああ、任せておけ」
 リデルと稔侍の会話は短く、それでも意思は十分に通じる。築いた信頼関係がなせる業だろう。体内のグラビティをエネルギーに変え、銃弾に乗せて放った。受けたドリームイーターが、その威力によろめく。
「好機だな、続こう」
 アインがモザイクロッドを振るう。発する火の玉が、ドリームイーターに命中し炸裂。燃えさかる炎がドリームイーターを包み込んだ。連係攻撃が大きなダメージを与えたことを察し、日頃冷静なリデルが僅かに微笑んでアインを見る。
 もはや戦いの流れは完全にケルベロスのものとなった。それを見逃す彼らではない。一気に勝負を決するべく、全力で攻撃を繰り出す。
 ハルが鋭い爪でドリームイーターをひっかいた。シンプルではあるが効果的な攻撃を露払いとし、本命の一撃を放つのはヴォル。
「オレは綺麗な狐と遊びたいンでな、魔女はお呼びじゃねェッつーの!」
 相棒の姿を思い浮かべ、精神を研ぎ澄ませる。ヴォルとドリームイーターの距離が、縮地方により一気に短縮。振るったゾディアックソードが命中した瞬間に、黒い雷の力を注ぎ込む。ドリームイーターの体から稲光が巻き上がり、体内を黒雷が蹂躙する。
「……痺れるだろ? 黒い雷の力はよ」
 黒雷閃を受けたドリームイーターの動きは、目に見えて鈍った。
 そこに追撃するのは翔真。氷結の螺旋を放つと、ドリームイーターに命中、凍りつかせる。恵に視線を送ると、恵は頷き、そして目にも止まらぬ早さでリボルバー銃を抜き撃ち。
「ついてこれないでしょ」
 ケルベロスですら目で追うのがやっとの速度で、放たれた弾丸はドリームイーターを捉えた。
「さあ、オレ様に見下ろされる時間だぜ!」
 十夜は精神を集中し、逆打ツ刻を発動。体に刻まれた紋様の力が解放され、ドリームイーターを幻影が包み込む。幻覚にさいなまれ、動きが阻害されるドリームイーター。そこにアグニが炎の息を吐き出した。時に喧嘩しても、やはり主従の息はぴったりだ。
 玲がそこに続いた。御業の力が降りてきて、ドリームイーターを鷲掴む。放たれたとて、ドリームイーターにもはや通常の動きはできない。
「やっちゃって!」
 その言葉に応じたのはディクロ。喧噪を拒み、敵を静寂させんと、肥大化した猫尾でドリームイーターを拘束する。既に動きを封じられたドリームイーターには、抵抗の手段すらない。そこに連続で放たれる銃弾の雨。
「煩い、煩い」
 心底うんざりしたように、ディクロは吐き捨てる。銃弾はドリームイーターの体を、さらに蝕んでいった。
「覚悟は、決まったか?」
 稔侍は問いかけると、正確無比のワンホールショット。銃弾はドリームイーターをの体を貫く。
 もはや息も絶え絶えとなったドリームイーター。アインはリデルに視線を向けた。
「支援を行う。行け」
 腕部から飛び出す無人機が、リデルの攻撃を援護する。リデルは頷くと、ドリームイーターに近寄った。
 動きもままならないドリームイーターに、リデルが微笑みかける。それは悪魔の狡猾なる微笑み。瞬間、迸る目映いばかりの閃光。願いは脆く、祈りは届かず。五感を奪われ、ドリームイーターは崩れ落ちる。
「――貴方の祈り、頂いておくわ」
 最後にかけるのはその言葉。倒れたドリームイーターは、光に包まれる。やがて炸裂音とともに、魔女のオーナメントへと姿を変えた。そのまま飛んでいき、近隣で一番高い木に引っかかる。魔女のオーナメントは、他のハロウィン飾りと見比べても何の違和感もなく。新たなハロウィン飾りとして、木の上で光り輝いた。

●ハロウィンパーティーへ
「翔真、カメラ好きなんだってなー? じゃあ写真撮ろうぜ、写真!」
「お、いいな!」
 十夜の提案に、翔真は大喜び。準備していた、本格的な一眼レフカメラを設定。戦場をバックに、皆の集合写真を撮る。この戦いの記念となる写真。しかしこのあとパーティーが始まれば、記念の写真や品物は、更に増えていくことだろう。
 アインは黒鋼・義次の協力も得て、町を癒やしていく。戦場に刻まれた幾多の傷が、ファンタジックな味わいも加わりながら癒えていく。
「綺麗になったな」
 アインは協力してくれた友の言葉に頷き。
「修復率100%。これで目的達成だ」
 高らかに、任務の完了を宣言した。
「あと、何喰ったらそんなに大きくなれるのか教えてくれ!」
「俺か? 俺もそんなに大きい方でもないが……」
 そう言いつつも、翔真は十夜の問いに答え、好きな食べ物を話し始める。肉やらたこ焼きやらやたらと美味そうで、十夜は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「もし会うことができたら……お祭り騒ぎの中を引っ張り回してあげるからね」
 恵は、ドリームイーターの被害者となった少女に思いを馳せ、そう呟いた。せっかくのハロウィンパーティー。誰もが楽しめる方が良い。
 戦いは終わった。さあ、パーティーの始まりだ。

作者:佐枝和人 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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